3分でわかる経営戦略論

マイケル・ポーターのファイブ・フォース・モデルとは

 企業が置かれている業界の分析手法の代表的なものにファイブ・フォース・モデルがあ
ります。市場に存在する5つの競争要因をもとに、業界が持つ魅力度を測定し、分析するための手法です。

△業界構造を把握できるファイブ・フォース・モデル

 ファイブ・フォース・モデルは、米国の競争戦略の権威であるマイケル・ポーター氏によって生み出された経営手法です。市場に存在する5つの競争要因を認識して、業界が持つ魅力度を測定し、分析することができます。?業界内の競合の存在、?新規参入障壁の高さ、?代替品の存在、?顧客の力、?供給業者の力からなる5つの視点をいいます。

 新規参入者が業界に出現すれば、市場競争は激化します。例えば販売価格の値下げ競争が始まり、製品の供給過剰の状況に陥ってしまうこともあります。新規参入組みが新たなビジネスモデルを投入することにより、従来の業界ルールが破壊され、新規の業界ルールに取って代わられることもあります。

 顧客の交渉力は業界構造を左右する大きなファクターとなります。ある特定の顧客が業界の総取引量に占めるウェイトが非常に大きい場合、顧客パワーが強固になります。例えば、トヨタ自動車などのガリバー企業が該当します。購入する製品が差別化されていない場合や、競合が数多く存在する場合、顧客の収益力が低く値下げ圧力が大きい場合なども、顧客パワーが大きくなります。

 いっぽう、供給業者の交渉力は、業界そのものが独占あるいは寡占状態にあるような場合、顧客に対する優位性が向上します。代替製品のない特殊な製品のような場合や、顧客が供給業者にとって重要顧客でない場合も、供給業者の交渉力が顧客よりも増大します。

△業界の魅力度の判断はどうするか

 業界内に競合が多く存在すれば、業界の魅力度は低いと判断できます。競合に打ち勝つための企業努力は大変なものになるからです。参入障壁の低い製品・サービスを対象とする業界では、同業者の容易な進出を促すため、競争が激しくなり、業界の魅力度は低下します。特殊なノウハウや技術、設備などを必要としない製品やサービスでは、数多くの企業が参入してきます。

 このため、コスト競争が激化し、利益率が低下するのが一般的ですので、業界の魅力度は低いものとなります。

 売り手と買い手の関係で、業界構造を把握することもできます。顧客(買い手)の購買における交渉力が強ければ、売り手企業側の立場は弱くなり、業界の魅力度も下がります。

 以上のように、ファイブ・フォースにおける力関係のバランスは、外部環境要因である景気変動や製品・サービス特性、競合の存在などによって、様々なパターンをとることになります。

マイケル・ポーターバリュー・チェーンとは

 企業活動は、プロセスが生み出す価値の総和ともいえます。プロセスのつながりから生み出される価値の連鎖というもので、企業活動を捉えることができます。

△企業活動が生み出す価値にフォーカス

 バリュー・チェーン(価値連鎖)とは、米国の経営戦略の権威であるマイケル・E・ポーター氏が提唱した概念です。企業における開発、調達、生産、販売、サービス業務などの各々の活動が、サプライヤーを含めた企業内外でどのような連携関係を持たせて付加価値を生み出すかを検討する考え方を指します。

 マイケル・E・ポーター氏が提示するバリュー・チェーンのモデルでは、価値連鎖は、購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスという5つの主活動、および調達活動、技術開発、人事・労務管理、全般管理(インフラストラクチャー)の4つの支援活動からなっています。

 ここでは、プロセス思考の発想が要求されます。製品を生み出す企業活動では、各々のプロセス、例えば、開発というプロセスや調達、生産というプロセスが有機的にチェーン(鎖)のようにつながっています。

 人、組織、情報、モノ、金などが介在する価値の連鎖のデザインが不十分なものであると、経営効率は悪化し、プロセスのコストは増加し、スピードは低下します。企業が付加価値を高めるオペレーションを実践していくためには、付加価値を生み出すための個々のプロセスが企業の最終の成果にどのようなレベルで貢献しているのかを評価する必要があります。

 現状打破を図るため、企業活動における価値連鎖の強み・弱みを見極め、弱いところは強化することで、競合に負けない企業体質の形成を図ることができます。

 企業活動では、企業収益の向上と売上の拡大のために関連部門が密接に関連しながら、人、モノ、金、情報の有効活用による経営資源の最適化を図ります。企業活動の価値連鎖における情報の共有化、及び一元管理を図っていくことが、スピード経営には不可欠になっています。

■戦略的マーケティングの4P&4Cとは

 戦略的マーケティングでは、4P&4Cとして知られているマーケティング・ミックスのアプローチ手法があります。

△顧客と売り手の両サイドから見る4P&4Cとは

 売り手の視点からみた4Pとは、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プレイス(流通チャネル)、プロモーション(広告、セールス・プロモーション、ダイレクトメール、パブリシティ)から構成されます。買い手側の顧客から見た4Cとは、顧客にとっての価値(Customer Value)、顧客の負担(Cost to the Customer)、入手の可能性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)からなる4Cとして表現できます。

 マーケターがマーケティング・ミックスを販売の観点から見たものが4Pであり、顧客が価値や問題解決のための購入と考えているものが、4Cと呼ばれているものです。

 顧客のニーズは、企業側との双方向のコミュニケーションを通じた製品・サービスの提供です。製品やサービスが入手しにくければ顧客の手元に届きません。顧客は、製品・サービスを容易に知ることができる手段や環境を待ち望んでいるのです。

 そのため、製品の使用や廃棄に要するトータルコストが、製品価格として妥当かどうか、競合の製品と比べることで、選択を決定する購買プロセスを見抜き、顧客の購買行動の決定の主要因子を明確にするアプローチが大切です。
 ベネフィットとしてよく使われるのは、カスタマイゼーション、利便性アップ、迅速かつ優れたサービス、コンサルティング、会員限定のインセンティブ、などです。

 ここでは、eマーケットプレイスに見られるサイバースペース上での電子商取引に対応できる業務プロセスと顧客管理システムが要求されます。流通チャネルも多様化し、電子カタログ、電子メール、インターネット関連のWebサイトや携帯電話上でのバナー広告やブログなど、新規のアイデアを伴ったマーケティング手法により、価値伝達の手段とそのプロセスは今後、大きく変貌してくることが予想されます。

電子商取引ビジネスにおける差別化のアプローチ

 電子商取引ビジネスでは、製品・サービスの差別化をどこで図って行くべきか、顧客により多くのベネフィットをどのような形で提供していくべきか、これらに対する答えはインターネットの特性をよく理解したうえで、マーケティング活動に反映していかねばならないでしょう。

 顧客データベースシステムの強化による顧客へのきめ細かい対応の仕組みの構築や、電子メールや電話の問い合わせに対して迅速な回答ができるバックオフィスの充実化がキーとなるでしょう。ここでは、物流システムの整備や、迅速な顧客の納期回答、決済手段のセキュリティ確保の仕組みなども差別化のアプローチとして有効です。

■フィリップ・コトラーの競争的マーケティング戦略とは
 マイケル・E・ポーターの競争戦略では、市場シェアの視点が明確に取り込まれていま
せん。マーケティング戦略の権威であるフィリップ・コトラーは、競争的マーケティング戦略において市場シェアの概念を植え込んでいます。

△市場シェアでポジショニングする競争地位別戦略

 フィリップ・コトラーは、マーケティングにおける市場地位のポジショニングの視点で、競争的マーケティング戦略を編み出しました。市場における企業の相対的規模および地位と、マーケティング戦略との関係を明らかにしています。市場シェアの視点から、マーケット・リーダー、マーケット・チャレンジャー、マーケット・ニッチャー、マーケット・フォロワーの4つの分類からなる市場地位のポジションを提示しています。
 マーケット・リーダーは、市場で最大のマーケット・シェアを有している企業のことです。競争企業の標的ともなる存在です。リーダー企業の狙いとするところは、市場でのトップの地位を維持することです。マーケット・シェアを維持・拡大するとともに、市場規模全体を一層大きくするために必要な方法を発見することがマーケティング・リーダーの目的となります。
 マーケット・チャレンジャーは、市場の地位でマーケット・リーダーには劣りますが、リーダーに次ぐ豊富な経営資源と市場シェアを有しています。チャレンジャーは、リーダーから市場シェアを奪い、リーダーの地位を脅かす存在です。新製品の投入や低価格戦略などによって、リーダーに戦いを挑んでいく戦略を採ります。
 あるいは、イノベーションによる画期的商品の市場投入やサービス改善、製造コスト低減、広告・販売促進の強化を図るアプローチもあります。リーダーの弱点を発見し、その攻めやすさを評価したうえで、攻撃対象をリーダーにするか、あるいは、追随企業ないしは弱小企業に的を絞るかを決定することになります。
 マーケット・リーダーにすべての追従企業が挑戦するわけではありません。マーケット・リーダーが総力戦で望めば、対抗企業は、病弊して、再起不能となるケースも出てきます。
マーケット・フォロワーの戦略は、マーケット・リーダーの反撃を受けないように現状のシェアを維持し、市場での生き残りを模索します。フォロワーは、リーダーを模倣し、低コストへの努力と高い品質やサービスの維持に傾注する戦略を採ることで、一定のシェアを安定的に獲得することを目指します。
 いっぽう、マーケット・ニッチャーは、ニッチ市場を狙い、集中化戦略を採用します。ニッチ市場では、まず、利益を確保できるだけの市場規模と購買力があるかがポイントになります。次に、成長潜在性があり、自社の経営資源を最大限に発揮できるだけでなく、大手企業の参入が難しい市場であることが要求されます。


■ボストン・コンサルティング・グループのPPMとは
 経営戦略の策定の手法として、製品と事業に焦点を当てたPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)があります。

△4つのカテゴリーで事業を特徴付けるPPM
 PPMは、1960年代半ば以降の米国で巨大コングロマリット企業による事業再編の中で、大手コンサルティング・ファームのボストン・コンサルティング・グループが開発した経営戦略策定の経営手法です。PPMの手法では、事業・製品の魅力度を表す市場成長率と、業界における事業・製品の強さ・弱さを表すマーケット・シェアからなるマトリックスで評価して、事業の重点分野と撤退分野を選別し、経営資源の最適な組み合わせを検討できます。
 PPMでは、市場成長率とマーケット・シェアの2軸からなるマトリックスによって、事業を、?花形製品(高成長・高シェア)、?金のなる木(低成長、高シェア)、?問題児(高成長、低シェア)、?負け犬(低成長、低シェア)に区分し、企業全体として最適な経営資源の配分(ポートフォリオ・マネジメント)を検討することができます。
 多角化を行っている企業では、各事業領域をSBU(Strategic Business Unit:戦略事業単位)と呼んで、事業別の採算管理をシビアに行っているところが多くあります。PPMにより、自社が保有する人材、モノ、金、技術、ノウハウ、及び情報などの経営資源をどのように各事業に最適配分すれば、経営効果の最大化が見込めるかを判断できます。選択と集中の視点で、戦略的重点事業分野と撤退事業分野を見極め、経営資源の最適化を図り、事業運営を図っていくことができます。 
 場合によっては、強い事業の優れた人材や経営手法を弱い事業に水平展開することで、シナジー(相乗)効果を狙うアプローチや、他社の経営資源を活用するために、買収、合併も選択肢に入ってきます。金のなる木の事業で稼いだキャッシュは、成長著しい問題児の事業や花形製品に投入され、将来の有望事業に育成していくための戦略がとられます。
 花形製品は、市場シェアが高く、成長率が高いため、売上高の向上が見込めますが、市場の成長が著しいため、事業を維持し、競合に対抗するために必要な投資も増加するのが一般的です。花形製品では、成熟期に達するまで市場シェアを確保し、金のなる木にもっていく事業戦略がポイントになります。
 PPMの適用で注意すべき点は、市場成長率とマーケット・シェアの2軸だけで評価するため、場合によっては評価軸が不足し、経営判断を誤ることがあるということです。
 PPMを使いこなすためには、事業ドメインというものを知っておくと有効です。企業における事業のドメイン(事業領域)は、顧客、ニーズ、コア・コンピタンスの3つの軸で捉えることができます。ターゲットとする顧客は誰なのか、顧客のセグメント化がポイントになります。


マッキンゼーの7Sとは
 マッキンゼーの7Sは、組織を評価するうえで有効な経営分析手法です。企業戦略におけるファクターの多様性と相互関係を表すことができます。

△組織を多角的に評価できるフレームワーク
 世界的なコンサルティング会社のマッキンゼーは、7Sという組織評価モデルを開発しています。7Sとは、Structure(機構)、Strategy(戦略)、System(システム)、Staff(人材)、Skill(技術)、Management Style(経営スタイル)、Shared Value(共通の価値観)の7つからなる組織のファクターを指しています。
 Structure(機構)では、事業部制組織、マトリックス組織、プロジェクト組織、機能別組織、ネットワーク型組織など、事業特性や組織目的によって各種の組織形態が選択されます。
 Strategy(戦略)では、企業の競争優位を確保し、経営資源の最適化を目的とした経営方針とアクション・プランを評価します。
 System(システム)では、企業のオペレーションの仕組みや企業ルール、情報システムを評価します。
 Staff(人材)では、組織の人材の特徴や特性、能力の視点から、戦略推進の源泉となる人材を評価します。
 Skill(技術)では、組織が有する技術やナレッジ、組織能力を評価します。Style(経営スタイル)では、企業文化や企業風土を評価します。
 Shared Value(共通の価値観)では、企業の経営理念や社会的な存在意義、従業員の行動規範や価値観を評価します。
 7Sのモデルでは、Shared Value(共通の価値観)を組織の求心力とみなし、7Sを統合するものとしています。7Sのそれぞれのファクターは、有機的な結合を保っている状態が理想です。7Sの中で、整合性を保てないような状況に陥った場合は、そのファクターにフォーカスし、組織の改革を図っていくことになります。

■アンゾフの製品・市場マトリックス多角化戦略とは
 アンゾフは、企業成長のフレームワークを製品・市場マトリックスで提唱しました。ど
の市場にどのような製品を供給するかを明確に解き明かした成長戦略です。

△4つの製品・市場マトリックスとは

 アメリカの経営学者H・I・アンゾフが著した経営戦略の古典「グループで製品・市場の成長の方向性を示す製品・市場マトリックス企業戦略論」で紹介された手法です。新製品を輩出できない企業は、いずれ、顧客ニーズの変化に追随できず、資本市場から撤退を余儀なくされることになります。アンゾフは、既存製品と新製品、既存市場と新市場という枠組みにフォーカスし、そこで策定されるべき戦略を、2×2の4パターンに類型化しました。
 企業は、既存の製品および市場をベースに事業拡大を図っていくことで、事業成長を目指します。アンゾフは、横軸の製品と縦軸の市場からなるマトリックスにおいて、4つのパターンに戦略を類型化しました。すなわち、市場浸透戦略、市場開発戦略、製品開発戦略、および多角化戦略からなる4つの戦略を製品・市場マトリックスに配置しました。

●市場浸透戦略のアプローチ
 市場浸透戦略では、既存市場において、既存の製品を浸透させる戦略を練ります。企業にとって新たな経営資源投入の負担とリスクが少ない戦略といえます。
 この戦略では、マーケット・シェアの拡大を図るために、既存顧客に対する顧客単価の増大を図るとともに、未だ自社製品を購入していない顧客に対しては、販売を促進していくことになります。
 ここでは、製品の原価の低減による販売価格の値下げや、流通の合理化を進めていくアプローチがとられます。

●製品開発戦略のアプローチ
 既存の市場で、新規の製品を市場投入していく戦略です。既存顧客に新製品をいくつも勧める戦略が当てはまります。既存顧客には、なじみある製品を通じて、顧客ロイヤルティを企業が獲得しているため、新製品に対しても、抵抗が少なく、ブランド志向や、指名買いによる購買行動が期待できます。

●市場開発戦略のアプローチ
 新市場に対して、既存製品の浸透を図り、売上の拡大を狙う戦略です。この戦略では、まったく新規のエリアを市場開拓する場合だけでなく、既存商品の新用途開発による市場開拓のアプローチもあります。
 例えば、肌を美しくする女性用化粧品を、肌のスキンケアに敏感な男性向けにも販売するようなケースが挙げられます。

多角化戦略のアプローチ
 多角化戦略は、既存市場、既存製品の範疇からはみ出た戦略のことです。新市場において、全くの新製品を投入する戦略です。多角化戦略の目的には、事業のリスク分散やシナジー効果の追求などがあります。

■ナレッジ・マネジメントとは

 多様な顧客のニーズにきめ細かくカスタマイズ化で対応できる知的財産戦略を有する企業のみが競争優位のポジションを確保できる時代が到来しています。

△目に見えない資産(Intangible Asset)を管理するナレッジ・マネジメント(KM)

 個人の頭の中にこもっている知識を暗黙知と呼んでおり、言葉やイメージなどに容易には表現できないものです。形式知とは、個人的経験としての暗黙知言語化し、コード化したものです。

 ナレッジ・マネジメント(Knowledge Management)とは、個人に埋没しているノウハウや経験、知恵などの目に見えない知的資産(暗黙知)を組織で共有し、体系的に管理、活用することにより、組織の知的生産性の向上を図っていく手法です。

 ナレッジ・マネジメントは、暗黙知の提唱者であるマイケル・ポラニーに端を発し、その後、米国のピーター・M・センゲや、野中郁次郎によって進化してきています。

 従来、企業の資産は、目に見える資産(Tangible Asset)に重きを置いた経営を行ってきました。土地、建物、設備など、製品を生み出すための資産をいかに多く所有し、効率よく使用するかによって、企業業績は左右されました。

 ところが、現代では、目に見えない資産(Intangible Asset)である知的資本をいかに活用するかという知的財産戦略を持たない企業は、厳しいサバイバル競争に生き残れない時代になっています。

 例えば、知的財産権の代表格である特許の分野では、大手企業が、活用されないで埋没している自社の保有特許の活用に向けて、知的財産戦略を打ち出しているところが多くあります。

 知識創造のプロセスでは、知識資産は、個人、組織、企業の各レベルへの昇華のステップを辿っていく過程で、その内包する付加価値のレベルを上げていき、企業にとって、戦略的価値を持つものに転換されます。知識資産の蓄積・測定においては、企業内に散在する知識資産を分類、層別化、体系化するプロセスを踏みます。

 経営戦略、事業戦略の観点から、体系化された知識資産に重み付けを行い、事業のコアとなる知識資産を明確にし、ビジネスモデルの源泉に結び付けていくことになります。

 目に見えない資産(Intangible Asset)の代表格は、キャッシュを投じて獲得した人材やノウハウ、技術、IT資産のソフトウェアやブランド・エクイティ(ブランドの資産及び負債を表わす概念のことで、米国のデービット・A・アーカーが提唱)です。

 優秀な人材の活用により、企業内において、経験・ノウハウが蓄積され、最適な経営が実践されます。 

 ここでは、ナレッジ・マネジメントの導入により、ビジネス・プロセスの付加価値を向上させることができます。個人が所有するナレッジ(知識)や経験・ノウハウを、組織として蓄積・共有・活用することで、目に見えない資産(Intangible Asset)の価値は向上します。目に見えない資産(Intangible Asset)である知的資本を組み替えたり、新規に導入したり、活用することによって、決算書には直接には数値で表記できませんが、収益向上という数値の結果となって表れてきます。

 この意味で、キャッシュ(決算書の目に見える資本)とナレッジ(目に見えない知的資本)は相互に転換の連鎖を繰り返すものであるといえます。


■コア・コンピタンスとは

 コア・コンピタンスとは、企業の核となる強み(競争力)のことで、C・K・プラハッドとG・ハメルが提唱した概念です。利益の源泉となり、他社と比較して優越した自社独自のスキルや技術を指します。

△企業競争力の決め手となるコア・コンピタンス
 内部環境分析としての自社分析では、技術力、販売力、ブランド力、シェア、収益性、売上高、及び経営資源としての人材、組織、ノウハウ、スキルなどの強み・弱みの分析対象要素があります。

 コア・コンピタンスは、多角化した企業を樹木に見立てて、生命力の源である根をコア・コンピタンス、幹と大きな枝をコア製品とし、細い枝をビジネス・ユニット、さらに葉や果実、花を最終製品と解釈しています。コア・コンピタンス、すなわち核となる企業競争力の強化には、集団学習と多様な技術やノウハウの統合化が決め手になることを示しています。

 ミクロ環境要因では、コア・コンピタンス以外に、その企業を取り巻く業界構造や市場があります。競合分析では、市場におけるシェア、参入障壁、業界構造、強み、弱みを検討します。市場規模、成長性、顧客動向、顧客ニーズ、購買行動、ライフスタイルなどは市場分析の対象となります。

 多角化事業を行なっている企業では、不採算事業を抱えて苦しんでいるところが多くあります。このような企業では、不振事業は、リストラを行うと同時に、本業のもつ魅力や強みを洗い出し、そこに経営資源を集中することによって、事業基盤の強化を図ることができます。コア・コンピタンスは、本業のなかにこそ、キャッシュフローを稼ぐための源泉が潜んでいることを示してくれます。

△マクロ分析のPEST

 いっぽう、マクロの視点で外部部環境分析を行う手法にはPESTという手法があります。政治、経済、技術、文化、環境、人口統計が対象となります。PESTは、市場に影響を与えるものは何かを見極め、マクロ環境の変化を4つの切り口で分析します。
マクロ環境の変化を見る要因には、政治的環境要因(Politics)、経済的環境要因(Economic)、社会的環境要因(Social)、技術的環境要因(Technology)があります。これらの頭文字をとり、「PEST分析」と呼んでいます。

 政治的環境要因には、企業経営全般に関わる法制度の変化、戦争、規制緩和などがあります。経済的環境要因には、マクロ経済の変化、民間設備投資動向、人口動態変化、公定歩合の変動、地価動向、消費者物価指数などが挙げられます。

 社会的環境要因では、人口構成やライフスタイルの変化などに着目します。技術的環境要因みは、IT技術革新、基盤技術の開発、新規マネジメント手法などがあります。


■ベンチ・マーキングとは


 ベンチ・マーキングは、競合他社や優れた企業と自社の実力を比較する分析手法です。ギャップを明確にし、それをベースにして改革のあるべき方向を打ち出すことができます。

△優秀企業とのギャップ分析で改革を進めるベンチ・マーキング

 ベンチ・マーキングは、先進的な同業他社や競合他社の優れたビジネスのやり方や業務プロセス、製品、サービス、財務などを自社のものと比較、分析し、そのギャップを埋めるための企業改革を図っていくための手法です。ベンチ・マーキングの起源は、米国のゼロックスが業績不振に陥っていたとき、ロバート・C・キャンプがコンサルタンとして経営指導した手法に求めることができます。

 ベンチ・マーキングでは、企業の核となる能力やノウハウ、技術、マネジメント・スキルなど、いわゆるコア・コンピタンス(企業の核となる強み)を見極める必要があります。

 次にこのギャップを埋め、競合に打ち勝つために目標基準を設定し、ビジネスの改革を図っていきます。ベンチ・マーキングにより、目標とすべき企業のベスト・プラクティス(優れたビジネスのやり方)に習い、アクション・プランによる改革を図っていくことができます。
ベンチ・マーキングの方法論の代表的なものには、?戦略的ベンチ・マーキング、?競合ベンチ・マーキング、?プロセス・ベンチ・マーキング、?社内ベンチ・マーキングの4種類を挙げることができます。

 戦略的ベンチ・マーキングでは、世界レベルの経営戦略のベスト・プラクティスを見習って、戦略の方向性を明確にし、経営資源の戦略的な最適配分を行ないます。


■製品ライフサイクルPLCとは 

 製品のライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)は、製品が市場に投入されてから撤退するまでの一連のサイクルのことをいいます。導入期、成長期、成熟期、衰退期という4つのステージから構成されます。

△製品、事業の年齢に応じた最適な戦略を練る製品ライフサイクル

 PLC(Product life Cycle)とは、製品や事業、ブランドの年齢を導入期→成長期→成熟期→衰退からなる4つのフェーズで捉え、製品や事業、ブランドがどのフェーズにあるのかを見極め、フェーズごとに最適な戦略を策定するマーケティングの手法です。ライフサイクルのフェーズごとに売上や利益率が上下に大きく変動するため、フェーズの特性にマッチした競争戦略やマーケティング戦略が要求されます。

 導入期では、設備投資や、研究開発投資、およびマーケティング費用の比重が大きく、市場の認知度も低いため、事業の立ち上げ当初は、キャッシュフローがマイナスとなるのが一般的です。

 ここでは、販売促進のための各種の施策やブランド構築のアプローチが要求されます。市場が小さく、売上の伸びが低いため、競合の参入も比較的少ないケースです。

 成長期では、製品やサービスの市場浸透が進むにつれて、投資回収が可能になってきますが、競合の参入も増えてくるため、収益性は思ったほどには上がらず、低コストを武器としたコスト・リーダーシップ戦略や、機能やデザインなどで製品の差別化を図ることにより、利益率の向上を図ります。生産設備の強化やマーケティング活動に要するコストが膨らむため、キャッシュフローはマイナスになりがちです。

 成熟期では、市場が成熟し、投資回収が本格的に進み、収益性の高い事業となり、キャッシュの増加が期待できますが、競合の参入による競争激化のため、売上高、収益性の低下に陥りがちです。市場の細分化による新規顧客の開拓も必要となります。

 成熟期には、競合他社との差別化を図るアプローチが要求されます。衰退期では、製品・サービスの陳腐化が進み、競合製品の進出により、製品・サービスの市場における魅力度も下がってきます。市場は、縮小傾向となり、事業の採算悪化により、事業の見直し、撤退などの選択肢も要求される段階となります。

 競合ベンチ・マーキングでは、世界中の同業の競合他社と業績、経営方法、プロセス、方法論などの違いを見極め、競合に優位に立つための方策を検討します。

 プロセス・ベンチ・マーキングでは、具体的な業務活動のプロセスを改善します。開発プロセスは競合に勝っているが、生産力が弱い場合には、生産力の強化に向けた戦略を練ります。

 ここでは、革新的な生産方法の開発や生産設備の増強、生産システムの強化といった選択肢が浮上してきます。

 例えば、生産リードタイムがライバルに比べて2倍かかっているケースや一人当たり売上高がライバルよりも少ないことが判明すれば、そのギャップを埋めるためにいかなる対応を図っていくべきなのかを検討することになります。

 社内ベンチ・マーキングでは、グループ企業、他工場、他事業所など、対象が企業グループ内に存在し、社内でのベストな手法やプロセスの水平展開を図ります。

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■システム思考のセブン・ダイアモンド・ルール
 
 情報システムは、知識、情報をコントロールし、企業経営活動を支援するための知能マシンといえます。コンピュータは、科学の粋の集合体であり、知性の結晶です。自動車運転のスキルが優れているドライバーが最新の自動車に乗れば、その優れた性能を発揮できるような快適なドライブが楽しめますが、運転の下手なドライバーが運転すれば、場合によっては、事故を起こし、最新の自動車は鉄屑となるばかりではなく、前後を走っていた回りの自動車と衝突し、大きな影響を周囲の人に与えかねません。

 情報システムも、自動車と運転と同様のことが言えます。運転のスキルは、システムのデザインのスキルやシステム運用のスキルに該当します。ここで要求されるスキルは、情報システムをうまく活用するためのスキルです。自動車でたとえれば、行き先に該当するソフトウェアというコンテンツを決定するのは、ドライバーではなく、クライアントです。プロジェクトリーダーは、ユーザーのニーズを要求仕様という形で受け取り、それをコンピュータという知能マシンにシステム化しなければならない役割を担っています。

 ここでは、企業のビジネス・マネジメントの知識やスキルも必須です。ユーザーが要求する内容を十分に理解できないままシステム化してしまうと、情報システムは暴走し、ユーザー、関連する部門や企業に多大なリスクを与えることになります。 21世紀中には、コンピュータは、高度な知的自律機能を備え、インターネットを介して、あらゆる情報、知識、ノウハウを吸収し、自己修復、自己成長を図ることができるような知的生命体に近いものに姿を変えていることでしょう。プログラムのバグを自動修復し、ソフトウェアのバージョンアップも自動で行い、外部環境変化にも自在に対応できる知性を備えていることでしょう。

 例えば、会計基準が変更になれば、コンピュータは、そのルールを自動的に学習して、自動的にソフト変更を行い、画面に表示される項目や、帳票の内容も自動で修正してしまうような機能を持っていることでしょう。ハードの構成管理やソフトウェア管理のわずらわしさから開放される日が近い将来、やって来ることでしょう。 コンピュータとシステム思考でもって付き合うことで、無限の可能性を秘めた知能マシンである情報システムからその優れたパワーを引き出すことができるのです。

 では、システム思考とはどういうものなのか。筆者は、システム思考には、次に示すような7つのポイントを「システム思考のセブン・ダイアモンド・ルール」を必須条件として提示します。システム思考のセブン・ダイアモンド・ルールルール1.事象はインプット、アウトプットの構造で考えるルール2.事象に関連するファクターを洗い出し、グルーピング化、抽象化、数式化するルール3.事象は、ロジカル化し、マイナス面、プラス面の表裏で見るルール4.事象におけるパラメータを変化させて、シミュレーションするルール5.図解でイメージ化し、事象間の連環、連携の関係を明らかにするルール6.事象は基本軸・系を設定して、単純化、モデル化、DNA化するルール7.事象の体系化、フレームワーク構築を試みる

■ビジネスプロセスの革新戦略−IT時代の調達プロセスにフォーカス−   

 消費者と企業における購買行動はインターネットのパワーによって大きく変化しています。従来のリアルビジネスのやり方に比べ、利便性やコストの点で優れたインターネット活用のビジネスモデルが、大手企業だけでなく中堅・中小企業でも活発です。

 その中でも、特に各業界でインターネットを活用したネット調達が活発です。中間マージンの削減効果や調達コストの低減、調達スピードの向上、さらには調達先の選択肢の拡大を狙うものです。インターネットで顧客と直接販売を行う購買スタイルはビジネスモデルとして試行錯誤をくりかえしているところはあるものの、ネット調達の流れは様々な業界で調達のインフラとして定着してきています。産業界における調達分野はまだまだ原価低減努力の未開拓の領域であり、ビジネスモデルの開拓の余地が大きいといえます。



■自社の強みが発揮できる顧客ターゲットを狙おう!

 ネット調達の場であるeマーケットプレイスとはどのようなものかについて概観しながら、企業間におけるネット調達への取り組み方を考えてみましょう。  

売り手企業として、中堅・中小企業が数多くのeマーケットプレイスから最適なところを選んで参加する場合は、まず第1に、自社の製品・商品やサービス、及び事業の特性がサイトにアクセスする顧客のニーズにマッチするかどうかがポイントになります。

 オープンマーケットにおける価格の透明性と合理的商取引が進展するなかで、顧客ターゲットを明確に絞ることが大切です。中堅・中小企業においては、自社の強みを最大限に発揮できるような顧客価値の提供を図っていく事業展開がポイントになります。

 顧客に提供するコンテンツには、自社の独自性で勝負できる競争優位に立ったビジネスモデルの創造能力が要求されます。例えば、グリーン調達が企業課題としてクローズアップされていますが、リサイクル可能な製品を提供できる技術、ノウハウをベースに製品提案できる企業は、今後、ビジネス拡大のチャンスが開けてくるでしょう。

 顧客によっては、ISO9001やISO14001プライバシーマークの取得を取引の前提条件にしているところもあり、企業体質の強化が問われます。ノウハウ、技術の不足は、共同受注が可能なeマーケットプレイスに参加することでカバーすることも可能です。多数の中堅・中小企業の会員からなるバーチャルカンパニー(仮想企業)の形態を活用するわけです。このパワーを活用すれば、経営資源に余裕のない中堅・中小企業にとって、自社の強みの分野に特化した事業戦略を実践していくことができます。 

Web-EDIを武器に顧客サービスの向上を図ろう! 

 第2のポイントは、Web-EDIを徹底して活用したビジネスモデルを検討するということです。Web-EDIは、顧客へのサービスレベルの向上とグローバル市場を目指す企業にとって不可欠な手段です。
 自社でサーバーシステムを導入せずに、サーバのレンタルやホスティングサービス(運用管理代行)を利用して経費を抑える選択肢もあります。このように、手軽なWeb-EDIを活用すれば、資本力の弱い中堅・中小企業でも世界の市場でチャレンジできるITインフラを提供してくれるわけです。

 近年、従来の製品中心のビジネスから脱却し、製品とサービスを融合させて、いかに顧客が満足する価値を提供できるかという視点からビジネスプロセスを見直す企業が増加していますが、ここにもWeb-EDIの活躍の場があります。 

 例えば、サイト訪問者のWebアクセスのパターンを解析し、サイトアクセスパターンに応じた魅力のある提供情報の更新により、戦略的なマーケティングアプローチを図ることで顧客ニーズに答えるサイトが数多く出てきています。 ブロードバンド化が進展する中で、Web3Dのツールにより、立体感のある製品の3次元動画像によって販促効果を狙うことも可能です。電子メールによる販促効果などで顧客に密着したサービスを提供している企業もあります。

■プロセスの電子化ではコスト低減を追求しよう! 

 第3のポイントは、ネット調達では、見積もり依頼・回答、承認・決済、など受発注に関わる一連のプロセスをリアルビジネスと連携させ、トータルでIT化できる仕組みが低コストで実現できるかが生命線になるということです。 サイバー空間におけるネット調達のビジネスでは、対面販売とは違って、様々な制約が新たに発生し、納期と品質の保障に支障を来しているサイトも多く、リアルビジネスに比べて反ってコストアップを招くこともあります。

 ホームページや電子メールなどによる情報のやり取りには限界があります。ここではネット調達に対応できる企業活動のオペレーションの基盤をしっかり形成できるかがポイントになります。 コスト面では、参加費用に見合うだけのメリットが享受できる仕組みがなければ参加企業数の拡大は見込めず、サイト運営費用の確保も難しくなります。魅力的な顧客価値を提供するためには、受発注プロセスの電子化や物流サービスの充実化を図り、利便性のアップや間接業務コストの低減を図る必要があります。

 参加会員へのインセンティブの提供も重要です。大手のeマーケットプレイスのサイトでは、会員増加の伸び悩みから、従来の固定料金制から従量課金制へのシフトにより、収益拡大を図るところもあります。 サイトの収益性の追求では市場や事業の特性、競合サイトに対する優位性確保などの観点から、様々なビジネスモデルが模索されているのが現状です。

■セキュリティを確保しよう! 

 第4のポイントは、ネットセキュリティの問題をクリアし、安全な決済手段を確保することが極めて重要であるということです。決済における企業情報の漏洩や不正利用のケースが多発し、セキュリティの確保が社会的問題になっています。 

 しかしながら、取引先の与信紹介、決済手段など、電子商取引におけるセキュリティの問題は、電子認証やデータ暗号化技術の進展や新形態の代行業者の出現とともに少なからず解決されていくでしょう。

■物流機構を整備し、社内基幹システムとの連携を図ろう! 

 第5のポイントは、顧客からのJIT(ジャスト・イン・タイム)生産対応の要求に機敏に対応できる物流機構の整備を図るとともに社内基幹システムとの連携を図っていくことです。 まず、需要量の変化への対応や短納期納入対応など、顧客のニーズが厳しさを増している中で、スムーズな製品供給を可能とするような物流体制をしっかりと構築しておく必要があります。

 いわゆるロジスティクスの改善・改革においては、例えば、専門の宅急便の業者を使って物流管理と決済管理を外部委託する方法があります。アウトソーシングのアプローチにより、物流コストの低減と物流ノウハウを取り込むわけです。ここで留意すべきことは、物流専門業者はできる限り、1社あるいは2社程度に絞って、物流管理の集中化を図り、物流情報と物流コストの一元管理を図る仕組みを組織的に構築しなければならないということです。 

 さらに、調達プロセスの改革では、見積もりコストの分析・査定の要となるコストデータ・ベースを構築し、コストの標準化を図ることが大切です。社内的に認知された合理的なコスト基準レベルを拠り所にしてコスト最適を目指した調達が組織的に可能になる仕組みを構築するわけです。

 これにより、コスト査定では担当者の経験や勘に頼るリスクが減り、組織的な調達コストマネジメントができます。 調達機能の電子化では、バックヤードに控えている会計システムや生産管理システムとのデータのやり取りが実現できる形態に発展させていくことが全体最適化には不可欠です。

 例えば、ERPを導入済みの企業では、Web−EDIとの連携によって、調達に関わるデータをERPに取り込む仕組みを検討することが大切です。相互の既存システム間におけるデータのやりとりが、帳票やデータの重複入力作業による人海戦術によって無駄なインタフェースコストの発生を招いているような場合には、調達プロセスから会計、生産管理までのデータの流れを一気通貫で電子化することで、大幅なコストの低減とビジネススピードのアップが狙えます。 以上のように、調達の電子化を検討するうえで、バックヤードである物流システム、及び社内基幹システムとの連携の仕組みをしっかりとデザインすることがポイントです。

■企業経営と4つの革新能力 

 インターネットはビジネスや生活に深く根ざし、社会インフラとして不可欠な神経網になってきています。地球上に張り巡らされたこのグローバルなインフラをいかに活用できるかで、ビジネス展開の方向は大きく変わってくるといえます。経営戦略においてインターネットパワーをいかに活用できるかが問われているのです。

 IT時代が企業活動にもとめる重要な革新能力として、まずは「スピード向上能力」を挙げることができます。 スピードは企業活動を効率化し、顧客への製品・サービスの提供能力を高めるからです。スピードが上がれば、生産性が上がり、必然的に製品・サービスを顧客のもとに提供するまでにかかるコストも下がってきます。情報処理能力と情報コントロール能力が企業活動のスピードアップの源泉といえます。企業活動のスピードアップを図るには、ビジネス・プロセスを抜本的に改革できる能力が要求されます。

 第2の革新能力は大競争時代においてライバル企業に打ち勝てる「コスト低減能力」です。 企業は組織的な改善活動の繰り返しのなかで製品・サービスのコスト低減を図り、資本市場が求める適切な利益を生み出し、自己成長を図っていくことができます。ここでは、経営数値に強くなるための基本的な知識として、原価計算や決算書を読み解く専門性の獲得が必須です。 

 第3の革新能力は「経営品質の向上能力」です。ISO9001、ISO14001の国際標準規格を取得できない企業が、市場から締め出されている現状から明らかなように、経営品質レベルの向上は企業の必須の経営課題です。 

 リコール問題や粉飾決算などで企業の存続が危うくなるケースを挙げるまでもなく、経営品質がしっかり確保できない企業は経営が成り立たなくなってきています。IT化を進めていくうえで経営品質レベルの向上を目指した企業活動の仕組みを構築できる能力がビジネスパーソンに要求されるのです。ここでは、コンプライアンス法令遵守)をベースに、ビジネス・プロセスと組織構造を抜本的に見直して、内部統制の再構築を図り、ビジネス・マネジメント能力のブラッシュアップ、革新を図っていく必要があります。

 企業活動のグローバル化の進展の中で、米国企業改革法SOX法)への対応は、企業の規模を問わず、グローバルな経営活動を目指す企業にとってのパスポートとなる時代がすぐそこまで来ています。

 第4の革新能力は「ネットワークの活用能力」です。ネットワークパワーはe−ビジネスにもみられるように新市場の創造を促す源泉でもあります。このようにネットワークパワーが秘める潜在力は非常にダイナミックなものであり、ここに注力できるビジネスパーソンはビジネスチャンスの飛躍的な拡大が期待できるでしょう。 

 各業界において固定費の削減や経営資源統合、などを目指して企業間における合併やビジネス連携が国内外で活発化しています。 ビジネスの連携や統合化における様々な問題も噴出しています。合併しても企業文化の壁の前に赤字決算を強いられる企業もあります。また、既存システム間の統合で失敗するケースも見られます。

 今後のビジネス展開におけるネットワークの活用は経営資源の最適化を図り、グローバルな企業活動を目指す企業にとって不可欠な能力といえます。ビジネスパーソンは、IT化においてネットワークパワーが企業経営を支える重要な屋台骨であることを認識することが大切です。

■ITソリューションと企業経営 

 ここで経営にITがなぜ活用できるのかについて考えてみましょう。ITは企業における経営効率の向上にはなくてはならないものになってきています。ITは経営効率の向上における、てこの役割を担うものでなくてはなりません。

 ITとは、そもそも情報を活用する技術です。企業活動には様々な情報が飛び交っています。販売情報、生産情報、顧客情報、クレーム情報、物流情報、財務情報、人事情報など、企業における関連部門では様々な情報を収集・生成し、取捨・選択・加工して業務活動を行っています。情報の種類は様々であり、部門によっては価値ある情報もあれば、不要な情報もあります。

 また、情報の取得のタイミングも重要であり、クレーム情報や顧客需要動向などの情報は鮮度が要求されます。情報の流通機能がうまく働かなければ情報はただのデータになってしまいます。情報の持つ価値は収集のタイミングといかに活用して付加価値のある企業活動につなげられるかによって決まってきます。そのためには情報の流通機能が正常に発揮されるような仕組み作りが要求されるのです。 

 このように情報を管理し、活用する情報駆使能力はIT化によって飛躍的なパワーを発揮することができます。経営とはこの意味で情報の流通機能を最大限に発揮させ、価値ある情報をタイミングよく発見し、活用する活動であるともいえます。ここにおいて顧客への価値の創造が可能になり、企業の付加価値の向上も期待できます。情報を効率よく管理し、活用できる仕組みはIT化によって実現できるのです。 

 ITには、経営課題に応じて各種の最適なソリューションがあります。流通分野で従来から最も良く使われてきているのはPOSシステムです。コンビニエンスストアでは売れ筋、死に筋商品の動向分析や商品政策への展開に必須のツールになっています。POS端末から収集された商品の購買情報は本部のデータセンターにネットワーク経由で瞬時に伝送され、データウエアハウスで集中管理されます。 在庫情報、発注情報に展開され、商品の補充が物流部門に指示されていきます。物流担当の運転手は携帯端末で物流の指示を受け、搭載した商品を迅速に店頭に届けることができます。各店舗において日々、リアルタイムで収集されたPOS情報は本部のサーバで分析し、店舗毎の売れ行き傾向を把握して、次の商品政策の見直しに活かされるのです。

 このように、コンビニエンスストアにおける企業活動では、POSシステム、携帯端末、データウエアハウスなどの各種のITソリューションが有機的にネットワークで連携されて、顧客に最も好まれる商品の迅速な提供を行う仕組みがあります。ここではITソリューションは企業活動の骨格を形成しており、IT化は企業活動の実践の場においてなくてはならない必須のインフラになっています。

■ITと企業活動の本質とは

 企業活動は、モノの流れ、お金の流れ,人の流れ,情報の流れを切り口にして把握できます。 企業活動においては,組織の各部門の機能,役割分担を明確にし,業務効率の最大化を目指した業務の流れを検討します。

 たとえば,製造業では,マーケティング情報をもとに,製品の企画・開発・設計が行われ,採算に見合う生産方法,部品・材料の調達方法,販売方法が検討されます。在庫を最小限に抑え,かつ最小のコストで,顧客に最短のリードタイム(材料や部品の調達から製品の生産,出荷,販売までに要する時間のこと)によって,製品を提供できるように,生産計画,調達計画,販売計画が組織全体の調整のなかで決定されます。経理部門では,社員の給与計算を行ったり,出張旅費の精算を行います。人事部門では,人材の採用・部門間移動・退職,昇格などに関わる業務を行います。

 企業活動では,企業収益の向上と売り上げの拡大のために関連部門が密接に関連しながら,人,モノ,金,情報の有効活用による経営資源の最適化を図ります。開発,調達,生産,販売,サービス,さらにはサプライヤを含めた価値連鎖における情報の共有化,一元化を実現していくことが,スピード経営には不可欠になっています。情報システムは,このような企業活動を支援していくための経営のツールであり,投資に見合う効果を発揮させることが大切です。経営資源の最適化を図り,効率的な経営を実践していくためには,開発,調達,生産,販売,サービスからなる企業活動のオペレーションマネジメントにおいて,競合他社に差別化を図っていくことが不可欠です。

 ここでは、人材資源、ビジネスのやり方、製品力、技術開発力、生産力、販売力、コストダウン対応力、IT活用能力、組織構造、収益構造などの観点から、自社の強み、弱みを競合他社と比較して見直すことが重要です。 企業活動の生命線は,資本市場の評価に答え得る適切な企業収益を継続的に生み出し得るかどうかにかかっています。しかも,顧客への提供価値において,競合他社よりも優れた製品・サービスを創造しうる経営を実践できなければ,企業の社会的存在価値は市場では評価されない時代に入っています。

 ここでは,業務プロセスの改革・刷新を図り,絶えざるコストダウンができるコストマネジメントの能力も要求されます。 IT時代に勝ち組みの企業に残るために特に注目すべき企業能力は,ITを活用した,競合他社に勝るビジネスモデルの創造力です。IT化において,自社の強みであるコア・コンピタンスに特化した情報武装により,経営を実践して成功している企業もあります。 例えば,営業マンを全く持たず,情報システムだけで営業を行っているある証券会社は,リアルビジネスを凌駕するIT化のビジネスモデルの仕組みによって,証券業界にIT旋風を巻き起こしています。

 事業環境変化の激しい時代には,リスクマネジメントも重要な経営能力の一つです。IT時代では,情報システムにおけるセキュリティマネジメントの重要性が指摘されています。 以上のように,IT経営の実践の場において,IT化と企業能力は深い関わりを持ち,経営戦略の実践はIT戦略そのものにつながっているのです。
  
■ピラミッドとプロジェクトの意味するものとは

  ピラミッドとプロジェクトの意味するものとは□プロジェクトはナレッジの結晶体 古代ピラミッドの構築プロジェクトでは、目的の品質とコスト、納期を達成するためには、建築技術、土木技術、資材を調達するためのロジスティクス技術、天文学、数学など、各種の基幹技術や学問の専門性が要求されたことでしょう。

 多くの労働者や技術者、専門家を効率よく配置し、個々人の技量を最大限に発揮させるには、優れた統率能力と、緻密な計算能力、壮大な構想力を兼ね備えたリーダーが存在したと考えられます。古代、様々な国家レベルのプロジェクトが世界中で行われてきたことでしょう。

 その中には、失敗したプロジェクトもあれば、様々な困難を乗り越えて成功に導いたプロジェクトもあったことでしょう。歴史に残る名プロジェクトとして、後世に言い伝えられるプロジェクト案件を経験してみたいと望むものでしょう。 

 いずれにしても、職業人としてのいきがいや、やりがいにつながるようなプロジェクト活動でありたいものです。熱砂の砂漠に立つ岩石の集積体であるピラミッドの威容と均整の取れた景観には、圧倒されるものがありますが、そこには、緻密に計算され尽くした人間の叡知とエネルギーの結晶が今も息づいています。

 プロジェクトは、ある意味で、均整の取れたナレッジの集積体と言えなくもありません。プロジェクトとは、クライアントの目に見えないニーズをシステムのハードという目に見えるオブジェと、目に見えないソフトというナレッジの集積体に変換する仕事といえます。

 いわゆる有形資産(Tangible Asset)と無形資産(Intangible Asset)の集合体と言えなくもありません。ピラミッドでは、様々な寸法と重量を持つ岩石を緻密な立体強度計算によって適正な位置に配置することで、総体としてのピラミッドが形成されています。ピラミッドを構成する無数の岩石は、システムのソフトを構成する数多くのモジュールにたとえることができます。

 ひとつひとつの岩石の存在は、ピラミッドを眺める旅人から見れば、点の存在にしか見えないでしょう。しかしながら、ピラミッドを構成するこの点に過ぎない一つ一つの岩石は、ピラミッドにとってなくてはならない存在であり、それらの幾つかが破壊されたりすると、徐々にピラミッド本体を崩壊に導く遠因にもなりかねません。システムのソフトを構成する個々のモジュールもピラミッドの岩石と同じような役割を担っているといえます。 
 システムのソフト機能を支える個々のモジュールは、あるべき機能を発揮することで、その存在価値が明確になります。いっぽう、品質に問題があるソフトのモジュールは、システム全体に侵食を繰り返し、場合によっては、システム全体を崩壊に追いやる事態に発展させることもあります。プロジェクトリーダーは、メンバー個々人の能力が、組織のチームワーキングの結果として総体的に発揮されなければシステムは機能しないということをよく認識することが大切です。

 プロジェクトでは、予期しない様々なリスクに見舞われます。困難に直面した時に最初に行うべきことは、自己能力の確認と、不足する能力やパワーに対して支援を仰げそうな上司やメンバーなど、周りのマンパワーをいかに取り込むかということです。自己の力と周りの力を掛け合わせることで、相乗効果が発揮できます。場合によっては、自ら新しいストリーム(流れ)を作り出す努力も必要です。困難なストリーム(流れ)は、自らの意思で変えていかなければ、難局を乗り越えることはできません。

マイケル・E・ポーターの経営手法−ファイブ・フォース・モデルと競争戦略
 業界構造分析に役立つ経営手法−ファイブ・フォース・モデル企業の経営リスク・マネジメントを強化するためには、その事業環境を論理的かつ実際的な視点で分析する必要があります。企業が置かれている業界の分析手法の代表的なものにファイブ・フォース・モデルがあります。

 これは、競争戦略の権威である米国のマイケル・E・ポーター氏が編み出した理論です。市場に存在する5つの競争要因を認識して、業界が持つ魅力度を測定し、分析するための手法です。
 対象の業界を?業界内の競合の存在、?新規参入障壁の高さ、?代替品の存在、?顧客の力、?供給業者の力、の5つの視点で分析します。 業界内に競合が多く存在する状況では、業界の魅力度は低いと判断できます。参入障壁の低い製品・サービスを対象とする業界では、同業者の容易な進出を促すため、業界の魅力度は低下します。代替品の存在は、既存の製品・サービスに対して脅威となりえます。

 また、顧客(買い手)の購買における交渉力が強ければ、企業側の立場は弱くなり、業界の魅力度も下がります。部品・原材料などを供給する供給業者(売り手)の力が強いと、企業側は製品・サービスのコスト上昇のリスクが大きくなり、業界の魅力度は低下します。

■競争戦略とは

 マイケル・E・ポーターは、市場における競争優位のポジションを獲得するために、コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中化戦略からなる3つの基本戦略を提示しています。 コスト・リーダーシップ戦略は、業界内で最小のコストという優位性によって、市場で競争優位のポジションを確保するための戦略です。

 最小コストを達成するためには、製品・サービスのバリュー・チェーン(価値連鎖)の改革や、製品設計の見直し、調達コストの低減や製造ラインの生産性の向上を図るといったアプローチが必要です。

 差別化戦略は、競合他社にはない独自性や特徴を追求し、競合他社の追随を跳ね除けて、独自の土俵で製品・サービスをブラッシュ・アップする戦略です。競合他社にない機能や、デザイン、サービス、インセンティブ、ブランド、配送など、様々な差別化手段があります。 

 集中化戦略では、業界の特定の市場セグメントにフォーカスして、限定された範囲の市場で競争優位のポジションの獲得を狙います。 経営資源に限界がある中堅・中小企業や、ベンチャー企業は、ニッチ(狭い)市場に経営資源を集中化することにより、独自の製品・サービスを創造し、その市場で覇者になることも可能です。


■プロフェッショナルとは−ロード・マップをデザインする指南!

 プロフェッショナルとはプロフェッショナルに飛躍していくためには、日々、ビジネスに関するナレッジの吸収に努め、必須能力の向上を図り、実践の場で、獲得したナレッジを応用展開していく確固としたスタンスを保持している必要があります
 プロフェッショナルへの自己革新とは、狭い領域のナレッジにとらわれない幅広い見識と専門性、人間性を兼ね備えた人材を目指した自己成長を図り、それが、周りのメンバーへ好影響を与え、組織として進化していくことを意味しているといえます。このような好循環の能力開発のサイクルが機能することで、組織としての強みが発揮でき、顧客の信頼を獲得することにつながり、ビジネス展開も良い方向に向かっていく企業体質が形成されるのです。

■市場、クライアント企業のニーズを見極める

 プロフェッショナルに飛躍するためには、自己革新をどのようにイメージし、アプローチしていけばよいのか。 ここで、一つの自己革新モデルを提示しましょう。まず、第一に認識すべきことは、市場のニーズ及びクライアント企業のニーズです。プロフェッショナルとしての市場価値は、市場及びクライアント企業のニーズを具現化しうる能力を備えているかどうかで決まるともいえます。ITの活用により、企業活動における製品やサービスのQCD(品質・コスト・納期)の向上を追求し、クライアント企業が解決したい経営課題を解決しうる能力を発揮しうるかどうかです。

 ニーズの把握と市場価値とは、ペアで考える習慣を身に付けましょう。市場やクライアント企業のニーズとプロフェッショナルの能力との間で大きなギャップがあると、コミュニケーション以前の問題として、プロジェクトそのものが成り立たなくなります。

■世の中の潮流を見極める 

 第二に認識すべきことは、世の中の潮流をしっかりと認識することです。世の中のライフスタイルの変化、消費者の好みの変化、価値観の変化、企業のビジネス形態の変化(アウトソーシンググローバル化現地生産化、など)、及び各業界標準規格動向など、マクロな視点で「変化(Change)」を常に、「継続的に問題意識を持ってウォッチングする習慣」を身に付ける必要があるということです。  世の中の流れを見極めることができない思考力では、市場、クライアントのニーズにマッチしない空の箱だけのアウトプットに陥ってしまうというリスクは避けなければなりません。

コア・コンピタンスを見極める 
 
 第三に認識すべきことは、自己の強み、弱みを把握することです。ここでは、自己のコア・コンピタンス(核となる強み)を見極めることがポイントです。ここでは、特に、自己にとってのライバル(競合)の認識が大きな飛躍につながります。ライバル(競合)の認識は、内なるライバルと外部のライバルからなります。 

 内なるライバルでは、例えば、自己のリーダーシップ不足やコミュニケーション能力の不足も、弱みであると同時に、内なるライバルとして捉えれば、これらの能力不足を克服することが、ライバルの撃退につながるわけです。あるいは、性格的な弱みとして、マイナス思考でものごとを考える傾向があれば、これも内なるライバルとして認識すれば、プラス思考へのチェンジという克服すべき目標の一つとしてクローズアップされます。弱みを強みに変える、あるいは、強みを一層強化するロード・マップを描く必要性を認識することが大切です。 

 ただし、様々な弱みは、一度で短期間に解消することは不可能です。ここでは、「チリも積もれば山となる」の発想へのシフトが重要です。知識の蓄積・学習の反復プロセスである能力開発では、時間が絶対的要素となります。 人間の能力は、大宇宙に匹敵するぐらいの奥深い可能性を秘めたものです。古代の原人の時代から、数百万年の時間の経過を経て、人間のDNAが突然変異と自然淘汰を繰り返し、環境の変化に適応できるものだけが生き残るという、いわゆるダーウィンの進化論によって、21世紀は、革新的な未踏の世界に突入しようとしています。

 道端の石ころの一つ一つがどれ一つとして同じ形のものがないように、人それぞれが持つ能力の可能性にも、必ず、光る個性で覆われたパワーがあるものです。これをいかに早く見つけ、時間をかけて丹念に磨き、光る玉に替えていくかという夢を持つことが自己革新のエネルギーの源泉になります。

 自己革新の根源のパワーを何に持ってくるかは、自己の価値観やものの考え方の違いにより、一意に決めることはできませんが、人類の科学文明の進化の過程を振り返ると、かなえたい夢を現実化するアプローチによって、様々な分野で、技術革新が行われ、現在の文明のレベルに辿り着いたといえます。 また、好きこそ物の上手なれという言葉がありますが、自分の仕事に興味を持ち、好きになることが自己革新の第一歩といえるでしょう。

■自己の将来像をイメージする

 次に認識すべきことは、自己の将来像をイメージし、現状とのギャップを認識することです。このギャップをいかに小さくし、解消していくか、ここでプロフェッショナルを目指したロード・マップを自分の力で、納得の上、オーダーメイドで作成します。作成したロード・マップは、同僚や親しい友人、上司、あるいは、機会があれば、その分野の専門家の意見を仰ぎ、客観的な批評を得ることが、より、現実的かつ熟した(matured)ロード・マップとしてこなれたものになっていくでしょう。 ここで、出来合いのロード・マップを自己に押し付けても定着しません。自己の土壌に合った種を選び、自分の手で、日々、水をやり、大切に育てていくことで、青い芽が出て、枝葉を青くまぶしい大空にのびのびと広げた大樹に育ちます。ロード・マップの作成は、時間をかけて、十分に納得できるレベルまで落とし込みましょう。 

 ここでは、短期的視点(1年から2年のスパン)と中期的視点(3年から5年のスパン)、長期的視点(5年から10年のスパン)の3つのステップに区切って、各ステップでのアウトプット(成果)を明確にし、メリハリを付けたイメージを形成することがポイントです。 人は努力を続けていると、ある時、突然、視界の開けた高みにたどりつくものです。自分で丹念に作り上げた地図(ロード・マップ)を頼りに、アナログ・ロードの連続(安定)な山道から、デジタル・ロードの不連続(不安定)な吊橋にさしかかり、そこを渡ると、新たな山に入り、その山に奥深く入っていくと、突然、地平線の見える青い海の視界が眼前に開けて、海が天まで昇ってくるような情景の中で、そよ風が全身の汗を吹き飛ばしていったという爽快な状況に出会うことが期待できるものです。 

 連続(安定)は不連続(不安定)に連なり、不連続(不安定)は、更なる連続(安定)につらなり、これらのアナログの世界とデジタルの世界の連環サイクルで構成されたモデルが能力開発そのものであるのです。新たな世界に踏み込む決意をして、危なっかしい吊橋を渡るか(1)渡らないか(0)というデジタル・ロードの選択の意思決定は自分で行う状況に追い込む必要があります。自分の辿っている道は果たして目指すゴールに達するのだろうかと日々悩みながら能力開発に取り組んでいる読者もいることでしょう。ここでは、自己責任自己推進のスタンスがロード・マップの実践と完遂には不可欠であるといえるでしょう。

 ところで、第一ステップの短期的スパンにおけるアウトプットで、例えば、データ・ベース技術とWeb技術の習得に設定したとしましょう。このステップの最終時期に達した時、当初の目標が達成されているかどうか、自分で評価し、場合によっては、周囲の同僚や友人、上司から意見を伺ったり、評価してもらうことも必要です。 あるいは、各種の資格試験などにチャレンジすることで、客観的な評価を得ることも可能です。辿ってきた道を振り返り、反省し、目標をクリアできなかった場合は、要因分析を行い、アプローチを変えたり、目標の見直し・変更を行うことも必要になってくるでしょう。

 このように、各ステップごとの区切りでは、モニタリングによる明確な評価が必要であると同時に、軌道修正をかけるスパイラルアプローチが有効です。目標を掲げていれば、日々の努力の積み重ねによって、次第に到達地点に収束してくるものです。まず、成し遂げようという意欲と、必ず達成できるという信念がロード・マップを価値あるものに転換させていくでしょう。 多忙な日々の中で、能力開発に打ち込める時間を作る意識付けが自己成長の環境作りの出発点といえます。ドイツの大詩人ゲーテは、才能は孤独の中で創られるといっています。小刻みな時間を有効活用したタイムシェアリング管理による自己学習の時間作りの習慣付けがポイントであるいといえます。

 能力開発では、コミニュケーションンスキル、専門性、バランス感覚、センス、実行力、調整力、マネジメント能力、革新能力の向上に注力しなければならないでしょう。 プロフェッショナルに飛躍していくためには、ライバルに負けないという内なるキーワードにより、チャレンジ精神の発揮が不可欠です。ここでは、能力を客観的に自己及び上司が評価できる仕組みが必要です。自己の目標レベルと上司の目標レベルのすり合わせを十分に行い、双方が納得できるように十分なコミュニケーションの場を設けることで、能力開発は組織的に機能します。

■体系的な能力評価とスキル・マネジメントの仕組み

 スキル・マネジメント評価の仕組みでは、業務軸、業界軸、専門的な技術軸、及び人材の資質軸をベースに4次元でマトリックス化し、体系的に多角的な視点で評価できる仕組みが必要でしょう。プロフェッショナルに要求される能力は多岐にわたりますが、T字型あるいはπ型の能力開発のアプローチが有効でしょう。得意分野はコア・コンピタンスとして強化することで、差別化できるプロフェッショナル能力を獲得することができます。

 T型では、例えば、ネットワーク技術に特化してチームの第一人者を目指すことで、市場価値の向上も期待できます。

 π型では、ネットワーク技術と企業会計の知識にフォーカスし、コア・コンピタンスの2本柱として、ロード・マップを描く能力開発のアプローチも考えられます。能力評価とスキル・マネジメントの仕組みでは、業務軸、業界軸、技術軸、資質軸からなる人材データ・ベースを活用します。

 ここでは、プロジェクトマネジメント能力に優れた人材、企業会計や生産管理の業務に精通した人材、販売管理に長けた人材、Web技術、セキュリティ技術、ネットワーク技術を十分に活用できる人材というように、専門領域の区分で人材データ・ベースを構築します。さらに、業界分野ごとに人材スキルを区分します。製造業、流通業、金融業といったように細分化し、セグメント別に分類して、人材をデータ・ベース化します。 

 例えば、製造業では、自動車、製薬、食品、繊維、鉄鋼、機械、といったグループで、各分野でのプロジェクト経験やスキルのレベルを管理します。 これにより、自社の人材資源における強み、弱みを明確にし、人材調達戦略、技術調達戦略を練ることが可能になります。機動的なプロジェクト活動を支えるためのナレッジ・マネジメントを実践していくナレッジのインフラが組織的かつ体系的に形成されます。

■プロジェクトにおける万有引力の法則と本質のキャッチアップ
 プロジェクトにおける万有引力の法則と本質のキャッチアップ□ 本質はどうすれば見えてくるのか 物事の本質を究めると複雑な事象がくっきりと見えてきます。表面的な雑然とした数々の事象に惑わされずに、それらの背後にある基本原理や基本軸を読み解くことによって、ビジネスを成功にみちびくことができます。

 プロジェクトに携わるビジネスパーソンにとって、日々、顧客のニーズが変化し、その対応に追われる状況において、このいたちごっこの現状を何とか打開できる方法はないものかと思い悩んでいる読者も多いことでしょう。クライアントがなぜ、こうも多くの仕様変更を繰り返し要求してくるのか。限界というものがあるが、なかなか、相手に切り出せないものです。予算オーバー、人材不足、期限超過、赤字プロジェクトの非難轟々、・・・。

 ここで、本質を究めるということが現状打開策には有効であることをお話しましょう。本質を見極めるということがいかにパワーを発揮するものであるのかということについて考えてみましょう。 万有引力の法則を発見したニュートンは、りんごが木から落ちるということを見て、引力の存在を発見したといわれています。引力とは、まさしく、地球の中心に向かって物体が引っ張られる力のことです。 木から落ちるりんごを見て、この現象が地球の中心に向かって引っ張られているということを見抜いたニュートンは、目に見えない力の存在を肌で感じとることができる能力を持っていたといえます。もし、この万有引力の法則が発見されていなければ、どういうことになっていたでしょうか。

 力F=質量M×加速度αの公式を用いなければ、宇宙ロケットや航空機、自動車、船、高層建築物などは、存在することができないでしょう。 

 精緻な設計を要求する文明の利器は、万有引力の法則のおかげで生まれてきたともいえます。万有引力の法則という、ひとつの事象を見極めた能力は、現代文明に飛躍的な進歩をもたらしました。本質を究めるということが、いかに、関連する周囲の存在への影響力が大きいかわかるでしょう。本質を究めることにより、偉大なパワーを引き出すことができるのです。

■プロジェクトにおける万有引力の法則を発見する 

 皆さんは、万有引力のような偉大な発見は、土台無理な話だと二の足を踏まれることでしょう。日々のビジネスでは、万有引力の法則とはいかないまでも、小さな法則や基本軸なるものは、発見できる機会があるはずです。

 例えば、ある製造業のシステム化のプロジェクトに参画している若手のSE(システムエンジニア)がいたとしましょう。製造業にも様々な生産形態が存在します。大量生産方式を採用しているクライアントもあれば、受注生産方式を採っているクライアントもいます。生産形態が異なれば、システムデザインの基本コンセプトも大きく違ってきます。 

 このケースでは、万有引力や基本軸に相当するものものは、業界事情に精通したビジネスマネジメント知識をベースにした生産形態であるともいえるわけです。基本軸は、ビジネスプロセス全体を司る系とでも言い換えることができます。 ここを見極めることができずに、システム開発に着手してしまうと、クライアントのニーズは全て、違った方向に解釈されてしまうリスクが発生してしまいます。

 以前、A業界で受注生産方式のシステム構築の経験があるから、今回のB業界のクライアントも同じ発想で取り組めば大丈夫だといった判断で、システムデザインに取り組んでしまうと大変なことになってしまいます。 

 業界や対象製品が違えば、同じ受注生産方式でも仕組みが大きく違ってくる場合があります。プロジェクトのスタートにおいては、新規プロジェクトを支配する万有引力の法則とは何なのかをしっかり見極めることが重要です。競合の存在や企業文化が万有引力となる場合もあります。

 これらは、システムの仕組み、性格を大きく方向付けるものであると同時に、システムデザインにおける大きな制約のファクターともなるからです。IT化で狙うべきものは、企業活動におけるビジネスマネジメントの改革・革新です。顧客との関係を強化し、売上および収益の拡大を図るとともに、ビジネスプロセスを見直して、コストの低減と品質の向上を進め、スリムでスピーディな企業活動の仕組みを構築することにあります。

■複雑な事象と経営手法

 この世の中は、不思議な現象に満ちています。そこでは、様々な要因が複雑に絡まりあっていますが、事象としてわれわれに認識できるのは、一つのアウトプットとしての事象です。アカシックレコード(Akashic Record)という言葉があります。この宇宙に存在するあらゆる現象や生命体の知識、経験といったナレッジから構成される超宇宙データベース版とでも言うものです。

 そこには宇宙ビッグバンの過去から現在までに蓄積されてきた莫大な知識や知恵、真理、さらには未来までのナレッジが格納されているといわれていますが、インターネットはこのアカシックレコード(Akashic Record)の巨大なデータベースにアクセスする端末になりつつあるといえるでしょう。

 夜空にちりばめられた色とりどりの星を眺めていると、様々な思いが巡ってくることでしょう。宇宙空間に浮いている巨大な天体や銀河の存在は謎の超集合体です。なぜ、あのような巨大な天体、数多くの星が、宇宙空間上に浮かんでいるのでしょうか。筆者は天文学者ではないので、うまく説明できませんが、素人の頭で思いをめぐらしても、謎だらけの世界といえます。重力の存在とは何なのか。万有引力は存在していますが、それだけでは、宇宙空間に見られる天体のストーリーは説明できません。

 ダークマターという目には見えない物質の存在も指摘されています。数え切れない数の星は、何らかの秩序や物理法則にもとづいて、規則的な移動運動を繰り返しているのでしょうか。宇宙膨張説というものもありますが、プールに浮き輪を浮かべるのとなんら変わりないような状況が、無限の宇宙空間でも存在していることを考えると、全く、説明がつかず、呆然としてしまいます。

 しかしながら、解明できない現象に頭を抱えているだけでは、進歩はありません。事象を構成する要因を洗い出し、それらの関係を明らかにし、何らかの解を結論として論理的な枠組みの中でアウトプットする必要があります。なぜの繰り返しのゴールは、最適解でなければならないのです。人知の限界と、限られた時間、コストなどの制約条件の中で、絶対的な解ではなく、最適な解を追求するところに、経営分析手法の弱みと曖昧さがあるわけですが、納得できるアウトプットにともかく到達することによって、経営分析手法はビジネスパーソンに強みを与えてくれるビジネスツールともいえます。

■経営手法によるビジネス改革

 複雑な事象に取り囲まれた現代のビジネスパーソンは、経営手法がビジネスに役立ちそうだということは、直感的にわかるでしょう。経営手法を幅広い分野を視野に入れて眺めてみると、非常に面白い、興味深く、役に立つ経営手法を発見できます。

 忙しいビジネスパーソンの読者の皆さんは、マンネリ化した業務に活を入れて、なにか、面白いビジネスの世界に入っていきたいと思うことがないでしょうか。ここでも、経営手法が出番となります。面白い手品芸を見物すると、興奮と興味が湧いてきますが、そこには必ず、種明かしが付録としてついてきます。種明かしを教えてもらって初めて、「そういうものか、それなら、自分でもできそうだ、今度、機会があれば、人前で、同じように披露してみたいものだ」という境地に達するのが人情というものでしょう。

 これと同じように、経営分析手法のしくみをこのコ-ナーで種明かしをしてもらえば、ぜひ、日々のビジネスの実践で活用しようという気になってくるでしょう。

■発明王エジソンの謎

 発明王エジソンは、GEというとてつもない巨大企業を世に生み出しました。エジソンは、子供の頃から非常に探究心の強い少年でしたが、謎解きの世界にはまって、そこから、様々な優れた文明の利器を作り出しました。最たるものは、蓄音機と電球でしょう。この二つは、現代社会に大きな恩恵をもたらしました。

 ある意味で、数々の新しい文明の利器を生み出したエジソンの頭脳は、本人だけが知っている経営手法のノウハウを持っていたのかもしれません。エジソンには、これらのノウハウを体系化して、活字の本にするような時間の余裕は全くなく、新しい製品の輩出に全エネルギーを注ぎ込んでいたのかもしれません。エジソン自信が経営手法を生み出したかどうかは定かではありませんが、GEという企業から、様々な優れた経営手法が編み出されてきたのは事実であり、現代のビジネスパーソンは、無意識に使っているのが実態でしょう。 過去から現代に至る数々の経営手法には、99%の先人の汗と努力と、1%の天才的なひらめきに満ち充ちているといえるでしょう。これは、「発明は、99%の忍耐、汗、努力と1%のインスピレーションによるものだ」というエジソンの言葉を言い換えたものです。

■経営リスクマネジメントと経営分析手法 

 企業活動のグローバル化や人材の流動化が進展することで、経営リスクに出くわす確率は非常に高くなってきています。従来の日本企業の強みでもあった均質的な従業員の砦は、今や崩壊し、グローバルな次元での労働力の確保と活用が、大競争時代には企業生き残りの必須条件となっています。 
 
 このことは、裏返して考えてみれば、多様な経済プラットフォームと労働力が潜在的に抱え込んでいる経営リスクが、一挙に、日本企業に到来している構図が成立しているという現実に直面している証となっています。突発的に発生する経営リスクに対応するための手段として、経営分析手法は、とても頼りがいのある経営ツールとなります。過去・現状のデータ分析をベースにして、未来を予測できるからです。 売上拡大のためには、どのような因子にフォーカスして、ビジネス・アプローチのチェンジを図っていけばよいのか、といったビジネスパーソンの悩みが、経営分析手法を知ることにより、ビジネスで直面している問題点や課題にマッチした処方箋を得ることができるでしょう。

■思考力を鍛えるアプローチ

 ビジネス活動は、多様なファクター、企業風土、企業文化、組織、ビジネスプロセス、競合などが絡んでいます。ここでは、多様な分析能力を備えた柔軟な思考力がビジネス活動を支えます。 経済情勢、市場環境、競合や株主の存在などは、企業にとっては、外部環境になります。企業の風土や文化、人材、組織、ビジネスプロセスなどは、内部環境といえるものです。経営資源には、人材、モノ、金、情報などがあります。企業価値を高め、適正な利潤による収益拡大を追求する企業として存続していくためにはどうすればよいのでしょうか。

 ここでは、経営資源をどのように最適に活用すべきかという経営課題を解決するために企業戦略を策定し、戦略を実現していくために最適なビジネスモデルを設計することにより、ビジネスマネジメントを実践していきます。 ビジネスパーソンは、基本的なビジネス知識だけではなく、企業経営者や幹部と渡り合えるだけの経営分析手法を駆使しうる思考力を常日頃から鍛えておく必要があります。ギリシャのことわざに、「教育とは懲らしめることである」という一言があります。中国のことわざにも、「本人が自分の力で理解しようとするまでは教えてはならない」といった意味のような一言があります。

 人間の能力は無限ともいわれますが、脳は鍛えなければ、次第に退化していきます。ビジネスの実践の場では、イラスト入りの優しい入門書の道案内人は存在しないからです。時には、難解な文章で埋め尽くされた書物も紐解いて、自分で汗しながら、じっくり読み込む努力が必要です。

 理解しようという意思による学習プロセスを介して初めて能力は鍛えられるのです。スポーツの世界でもいえることですが、人材というものは徹底的に鍛えられると、ある臨界点に達し、そこを越えると、新たなる能力の飛躍の獲得が期待できるものなのです。 ある日突然、昨日までできなかった苦手な逆上がりが、公園の鉄棒にぶら下がるとひとりでに体が宙に浮いて、眺めのよい風景に変わっていたという体験を持っている読者もいることでしょう。  

■ビジネスマネジメントとスキル
 ビジネスマネジメントとスキル ビジネスマネジメントを革新していくためには、ビジネスの基本構造を理解できる能力とスキルが要求されます。< ビジネスをDNAレベルで解明できる洞察力とは > ビジネスパーソンは、グローバルな次元で競争力をつけなければならない時代に入っています。ビジネスパーソンに必要なビジネスマネジメント知識には様々なものがありますが、ビジネスの本質に迫れる優れたシステム思考の能力を身につけることが大切です。

 ビジネス活動に関係を持つ顧客、企業、人、情報、プロセス、組織など、各種のファクターからなるビジネスモデルを再構築できる能力が、プロフェッショナル人材に飛躍していくためには必須となります。
 ここでは、ビジネス活動についてビジネスの専門知識をベースに、高いコミュニケーションスキルやリーダーシップ能力だけではなく、ビジネスの実践の現場を、DNAレベルの本質にまで迫って洞察できる能力が必須となります。

 そこから、問題点、課題を抽出し、経営戦略、事業戦略に組み込み、企業の体質にマッチした最適な経営課題、事業課題の解決を図るシナリオを練ることができるスキルが必要です。<ビジネスパーソンの絶対条件> ビジネス活動は、多様なファクター、企業風土、企業文化、組織、ビジネスプロセス、競合などが絡んでいます。経済情勢、市場環境、競合や株主の存在などは、企業にとっては、外部環境になります。企業の風土や文化、人材、組織、ビジネスプロセスなどは、内部環境といえるものです。

 経営資源には、人材、モノ、金、情報などがあります。企業価値を高め、適正な利潤による収益拡大を追求する企業であるためには、経営資源をどのように有効活用すべきか、いかなる企業戦略を策定し、実現していくべきかが問われます。ここでは、企業経営に関わるビジネスマネジメントの基本知識を身に付けておくことがビジネスパーソンの絶対条件となります。

■思考力を鍛える
 プロフェッショナルを目指すビジネスパーソンは、基本的なビジネスマネジメントの知識だけではなく、企業経営者や幹部と渡り合えるだけの思考力を常日頃から鍛えておく必要があります。時には、難解な文章で埋め尽くされた書物も紐解いて、自分で汗しながら、じっくり読み込む努力が必要です。理解しようという意思による学習プロセスを介して初めて能力は鍛えられるのです。スポーツの世界でもいえることですが、人材というものは徹底的に鍛えられると、ある臨界点に達し、そこを越えると、新たなる能力の飛躍の獲得が期待できるものなのです。   

■ヒューマン・スキルを極める

 ヒューマン・スキルには、コミュニケーション能力やリーダーシップ能力、プレゼンテーション能力などがありますが、ビジネスパーソンにとって、まず、第一に身に付けるべき能力は、コミュニケーション能力です。クライアントとのコミュニケーションでは、いかに相手の言うことを正確に理解し、それをシステム仕様に展開できるかというイメージ能力が問われます。言葉というものは、話す側と聞く側の価値観、経験、環境などの違いにより、相互におけるギャップが生まれます。このギャップにより、場合によってはプロジェクトの推進に支障を来たします。

 ギャップ解消を図るには、まず、相互を理解し、信頼関係を築くことができるヒューマンスキルのレベルにかかっているともいえます。コミュニケーションスキルでは、様々なテクニックや基本的なアプローチが要求されますが、究極は、人と人との意思伝達であり、相手の考え方や価値観を理解することからスタートすることが大切です。

 ここでは、相手の理解を助けるのにクライアントニーズを図表化するアプローチも有効です。さらに、5W2H―WHAT−IFにより、事象を整理することは、コミュニケーションの基本です。クライアントとのコミュニケーションギャップのリスクを解消するためには、ヒューマンスキルを日頃から実践の場で磨く必要があります。 

 クライアントとの交渉では、様々な難題も持ち上がってくるでしょう。あるいは、専門的なビジネス知識を持ち合わせていないと、コミュニケーションが全く機能しない場合も出てきます。ここでのポイントは、視点やアプローチを変えたり、発想の転換を図ることで、難局を打開できる場合もありうるということです。

■プロジェクトにおけるコミュニケーションギャップとは

 ビジネス改革プロジェクトでは、様々なスキルや経験、能力を持った人材がチームの構成員となります。ここでも、コミュニケーションギャップのリスクが発生します。プロジェクトリーダーは、情報の一元管理の仕組みを作り、プロジェクトに関わる情報は、データベース化し、メンバー間で共有化を図るインフラの整備を行うことが不可欠です。

 情報が特定個人に埋没し、円滑な情報流通の仕組みがなければ、そのプロジェクトはいずれ、方向性を失い、メンバーが各々バラバラのベクトルで行動するため、プロジェクトが立ち往生してしまうケースが多々発生します。メンバーが有するスキルを明確にし、プロジェクト推進の経営資源のパワーとして、最大限に発揮できるようなスキル管理の仕組みを整備することも必要です。メンバー相互間のスキルの強み、弱みを補完し合い、チームワーキングが円滑に機能するように図っていく仕組みが必要です。  

■プロセス思考と経営分析手法の関係

 経営手法は、プロセスの現状把握からスタートしますが、プロセスの見極めが不十分であると、分析結果は当初の意図からはみ出し、とんでもないものになってしまいます。経営手法の中には、ビジネス改革に役立つものが多くありますが、ここでは、プロセス思考を持たないと経営分析手法はその機能をうまく発揮できません。プロセス思考とは、企業活動や顧客の購買行動をプロセスの流れとして捉える考え方です。いくら数多くの現場データを収集し、経営分析手法を活用しても、データの分析結果と実際の状況との因果関係がうまく説明できない場合が起こってきます。

 ここでは、プロセス思考が欠落していることが事象の解明の妨げになっている場合が多くあります。プロセス思考では、企業のビジネス・プロセスや顧客の購買プロセスは、短期間でできたものではないということを頭に入れておくことが大切です。企業の業務プロセスや顧客の購買プロセスは、人類のDNAの進化のように幾多の淘汰を繰り返し、取捨選択されて今日、存在するものなのです。

 そこでは、利害者関係(ステークホルダー)の力学や、生まれ育ちの歴史、背景、環境というべきものが存在します。企業のビジネス・プロセスでは、例えば、開発部門が幅を利かしているような企業では、後工程の調達部門、生産部門などにビジネス・プロセスで大きく負担を強いるケースがよく見受けられます。開発部門の設計変更が多いと、部品、原材料を調達する部門は、大変です。注文の手配を完了したにもかかわらず、突然、発注中止ということになったり、場合によっては、部品在庫が膨らんでくるからです。開発部門の発言力が組織的に強い場合、調達部門、生産部門は、設計変更がなぜ多々発生するのか、発生しないようなビジネス・プロセスに改善すべきだなどと、開発部門に言いたくてもいえない状況になっています。

 このような企業では、ビジネス・プロセスは硬直した非効率なものになっています。設計変更の多発は、数多くの無駄な業務を発生させ、関係する人員を巻き込むはめに陥ってしまいがちです。コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係企業活動におけるプロセスを見極め、ビジネス改革を検討する際には、コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係を見抜くことが大切です。

 例えば、プロセスのスピードを上げようとすると、プロセスのコストはアップするのが一般的です。生産性を上げようとすれば、より多くの作業要員を生産ラインに投入したり、新規の設備投資で生産能力をアップさせる方策が採られます。プロセス・クオリティを上げようとすると、プロセスのコストはアップします。プロセス・クオリティとは、一連の業務プロセスにおける品質のレベルのことです。業務プロセスは、ルールに則り文書化され、定常化されているか、組織的な改善活動が行われているかといったようなことです。クオリティとコストもトレードオフの関係が成立します。
 
 このプロセス・クオリティのレベルが悪化すると、プロセス・スピードの低下を招き、プロセス・コストは上昇します。プロセスのインタフェースの側面も見逃してはなりません。プロセス・インタフェースとは、部門間のプロセスを連携させる情報のやり取りの仕組みを意味しています。すなわち、プロセス・インタフェースとは、IT化そのものでもあるのです。部門間相互で情報のやり取りがうまくいかないとプロセス・クオリティは悪化します。不十分な情報や不正確な情報では、判断に迷いが生じ、業務そのものが成り立たないからです。情報のやり取りがうまくいかないと、プロセス・コストも肥大化してきます。正確な情報を得ようとする担当者は、余分な仕事をこなさなければならなくなるからです。

■SCMと業界標準電子商取引サイト

 SCMと業界標準電子商取引サイト ロゼッタネット、JNX   <SCM(Supply Chain Management)とは> SCMは、流通分野や製造分野で、在庫削減、リードタイム短縮などに効果を発揮する関連企業群の情報一元管理の仕組みを言います。SCMでは、情報システムを駆使して、サプライヤーと親企業があたかも同じ屋根の下で生産情報、顧客情報、商品・製品情報、物流情報などを共有し、全体最適のオペレーションズ・マネジメントの企業活動の仕組みを実現できます。

ロゼッタ・ネットとJNX> ロゼッタ・ネットは、電子部品業界やパソコン業界などが企業間における電子商取引を目的として策定した国際規約のことです。ロゼッタ・ネットでは、受発注や在庫情報など、SCMに参加する企業間でやり取りする各種のデータや業務プロセスを定義しています。サプライチェーンの企業間EC(電子商取引)システムをXML(拡張可能マークアップ言語)により構築しています。

 ロゼッタ・ネットでは、メーカー、卸・流通業者、販売店、エンドユーザ企業など、様々な業種の企業の協力によって、グローバルなサプライチェーンの構築に必要な技術仕様や業務プロセスを策定しています。 JNX(Japanese automotive Network eXchange)は、自動車産業を中心に企業間電子商取引を目的として形成されたセキュアな共通ネットワークのことです。JNXは、大手自動車メーカーやその協力会社、サプライヤーが参加するビッグな電子商取引市場です。自動車業界だけでなく、産業界に幅広く共通で使用できるB to B(Business to Business:企業間電子商取引)のためのネットワークインフラを提供しています。 JNXでは、電子決済による資材調達をはじめ、コンカレントエンジニアリング(開発・製造・サービスなどの各部門による源流段階での一体活動)の推進に必要な各種の情報サービスを提供しています。  

アインシュタインの本質を極める心とは
  物理学者アインシュタインは、1905年に「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」を次々と発表しました。アインシュタインは、ニュートン力学とは違って、相対性理論では、高速で運動する物体では時間の進み方が遅くなるという原理を発見しました。また、一般相対性理論では、重い物体の周囲では時間と空間がゆがむとし、この理論は、はるか上空を飛ぶ衛星の時計が地上より早く進む現象によっても確認できます。 アインシュタインは、「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションのことである」と言っています。「観察したり理解したりする喜びは、自然からの最大の贈り物だ」とも言っています。

 アインシュタインは、複雑な事象の本質を究めるためには、常識を捨て、自然現象に愛着を持ち、深く溶け込んで浸透していく素直な心が大切であるということを言っているのではないでしょうか。

■事象にフィットした視点と心とは  

 本質を見極めるのに不可欠なものに、視点というものがあります。視点とは、物事や事象をどの角度から眺めて、分析、解釈を行うかということです。ある意味で、次々に発生する物事や事象は、複雑に絡んだ因果関係からなる、多様なファクターの産物ともいえますが、切り口によって、見え方が違ってくるということです。人の顔を正面から見た場合と横から見た場合では、明らかにその人が持つ顔の形だけでなく、相手に与える印象も違ってきます。

 米国が人類初で月に宇宙ロケットで人を送り込むことに成功したとき、世界中で賞賛の声が沸きあがりました。このときの宇宙飛行士は、はるか宇宙のかなたから、音声とともに電波で地球の映像を送ってきましたが、ここでは、地球にいる人類は、初めて、自分が存在する場所をはるか宇宙という外から眺めることができたわけです。この体験は、様々な人々に多様な影響を及ぼしたと推測できます。一人の勇敢なパイロットが地球上の人類に与えた感銘とそれによってもたらされたインパクトは絶大なものであったといえるでしょう。宇宙工学は民間分野の産業に転用され、現在のITを生み出したともいえます。

 これらのことから言えるのは、物事や事象というものは、多面体であるということです。その多面体を構成するある一角を正確に真正面から見ようとすれば、視点をその一角の面に合わせてやる必要があるということなのです。ここでは、最適な経営分析手法の選択を誤らなければ、複雑な事象の中に潜んでいる要因間の関係や法則が見えてくるのです。様々な経営分析手法の歴史は、一言で言えば、ビジネスの世界で発生する様々な現象の本質を解明する過程で生み出された分析理論の体系ともいえるからです。 

 様々な業界の、様々な企業風土や企業文化のもとでビジネス活動を行う企業体が生み出したビジネスプロセスは、この多面体にたとえることができます。業界が変われば、物事の視点や考え方もチェンジしなければならないということです。複雑な事象の分析においては、事象の特性にマッチした経営分析手法の選択が求められるということなのです。ここでは、本質を見極め、多様な視点をもつスタンスを確保することが、ビジネスの成功につながっていくのです。  


■グローバル競争時代のスキル−独自性を極める 
 グローバル競争時代の変化に対応していくためには、どうすればよいのか、日々、思い悩んでいる読者もいることでしょう。一つの有効なアプローチは、自己の独自性を磨き、発揮させるということです。独自性がなければ、アウトソーシングされてしまう時代です。他人では代用できない確固たる独自性を身につけることが、自己の成長機会の獲得にも結びついてきます。 では、独自性とは、なになのか。この答えは、各人によって様々ですが、必ず、持ち合わせているものです。問題は、その独自性が時代や市場、本人が属する企業のニーズにマッチしているかがポイントです。しかし、時代と市場は常に変化しています。独自性の追求も外部環境の変化に合わせて柔軟に方向転換を図っていく勇気が求められます。時代、市場に受け入れられる独自性は、市場価値が高くなるため、ビジネスとしても有利に展開するだけでなく、本人にとっても自己のキャリアを磨く上で不可欠なものです。  欧州の有名な自動車メーカーに、高価な高級車でありながら、独自性を追求し、自動車のニッチ市場で確固たる地位を築いている世界的企業があります。この企業では、ドライバーの安全性の確保を製品コンセプトの第一に位置付けています。安全性の徹底的な追求をベースにした自動車の開発は、顧客の支持を受け、優良固定顧客による指名買いにより、安定した事業収益を確保しています。独自性に徹底的にこだわることで、競合他社の参入を阻止し、独自のビジネスモデルが成功するわけです。

■独自性は市場価値を生み出す 

 独自性を何に置くかは、外部環境やライバルの存在、あるいは自己の価値観によっても様々ですが、ここで重要なことは、市場のニーズ、クライアントの求めるものを起点にして、それを満足できるための独自性を追求するというアプローチのあり方です。市場性のある独自性こそが、市場価値を生み出し、自己実現にもつながっていくということなのです。クライアントへの独自価値の提供により、競合他社との差別化を図ることも可能になってきます。

 例えば、流通業界の動向分析では、社内で右に出るものがないというほどの能力を持っていれば、これは、本人だけでなく企業にとっても大きな知的財産となり、企業競争力や収益の源泉となります。独自性を持った人材が数多く存在すれば、経営資源としての人材に重複がなく、企業の強みを発揮できるパワーの源となります。独自性を持った人材育成こそが、今後のスピーディかつグローバルなサバイバル競争に打ち勝つための企業組織存続の秘訣といえるでしょう。

 グローバル競争に打ち勝っていくためには、戦略的な経営アプローチが絶対条件となります。ビジネスパーソンは、経営戦略の策定における基本的仕組みを十分に身に付け、経営戦略がわかるプロフェッショナル人材を目指していくことが大切です。企業活動の新たなる仕組みを不断に追及していくことが企業のサバイバル競争の絶対条件になってきています。  ビジネスパーソンは、顧客ニーズを十分に把握し、IT活用により、ビジネスプロセスの革新を図っていくことができます。 ここでは、顧客へのサービス、ロジスティクス、販売、生産、調達、設計、開発というように、従来の業務プロセスのベクトルを反転させて顧客の視点からビジネスモデルをデザインするというアプローチが重要です。

 全体最適の視点で、顧客を起点ベクトルに据えた業務プロセスの革新を図るとともに、バリュー・チェーン(価値連鎖)の再構築を図ることで、ビジネスのスピードとコストを追求していく能力を身に付ける必要があります。経営的視点とITの視点をベースにして、バリュー・チェーン(価値連鎖)に関わるビジネスマネジメント知識の習得を図ることが不可欠です。各業界のビジネスプロセスの基本をしっかりとマスターしましょう。

 さらに、プロジェクトマネジメントの能力を有することが、ビジネスパーソンにとっては大きな差別化能力となります。限られた時間、予算、納期、人員の制約条件の中で、様々なプロジェクト環境の変動要因に対処しながら、当初の目的を達成するには、強力なリーダーシップの発揮による効率的なプロジェクト運営管理の能力がポイントです。  経営戦略の立案の当初の段階から、経営戦略に関わっている部門の管理者やトップをサポートし、主体的に関わっていくスタンスが要求されます。事業戦略を勘案し、競合に対し差別化を図れるようなビジネス改革は、経営効果となって大きなキャッシュ・フローを生み出します。ここでは、全体最適化の企業活動のデザインをイメージできるかどうかがビジネス戦略の成否に大きく影響します。 
 
■ベンチ・マーキンとは
ベンチ・マーキンとは ベンチ・マーキングでは、自社と目標とすべき成功企業や競合他社との事業力のギャップを分析します。先進的な同業他社や競合他社の優れたビジネスのやり方や業務プロセスを自社のものと比較して、目標基準を設定し、自社とのギャップを埋めるような改善活動につなげていきます。例えば、利益率や製品リードタイム、一人当たり売上高、売上伸び率などを比較指標として事業力を評価します。  ギャップ分析では、事業力の強化をもたらしている要因の見極めを行います。例えば、独自技術力や、販売ノウハウ、生産技術力といったものです。このような事業の差別化や強化に不可欠なファクターを抽出し、KPI(業績評価指標)により数値目標として明確にし、自社の事業力の強化に適用していくアプローチを採ります。 ベンチ・マーキングの方法論の代表的なものには、?戦略的ベンチ・マーキング、?競合ベンチ・マーキング、?プロセス・ベンチ・マーキング、?社内ベンチ・マーキングの4種類があります。  


■プロセスを見極める能力とは
 プロセスを見極める能力とは プロセスを見極める能力は、経営分析手法の基本的アプローチといえます。ここがぶれると分析結果は、満足できないものとなりがちです。□ プロセス思考と経営分析手法の関係 経営分析は、プロセスの現状把握からスタートしますが、プロセスの見極めが不十分であると、分析結果は当初の意図からはみ出し、とんでもないものになってしまいます。経営分析手法の中には、ビジネス改革に役立つものが多くありますが、ここでは、プロセス思考を持たないと経営分析手法はその機能をうまく発揮できません。

 プロセス思考とは、企業活動や顧客の購買行動をプロセスの流れとして捉える考え方です。いくら数多くの現場データを収集し、経営分析手法を活用しても、データの分析結果と実際の状況との因果関係がうまく説明できない場合が起こってきます。ここでは、プロセス思考が欠落していることが事象の解明の妨げになっている場合が多くあります。
 プロセス思考では、企業のビジネス・プロセスや顧客の購買プロセスは、短期間でできたものではないということを頭に入れておくことが大切です。企業の業務プロセスや顧客の購買プロセスは、人類のDNAの進化のように幾多の淘汰を繰り返し、取捨選択されて今日、存在するものなのです。

 そこでは、利害者関係(ステークホルダー)の力学や、生まれ育ちの歴史、背景、環境というべきものが存在します。 企業のビジネス・プロセスでは、例えば、開発部門が幅を利かしているような企業では、後工程の調達部門、生産部門などにビジネス・プロセスで大きく負担を強いるケースがよく見受けられます。開発部門の設計変更が多いと、部品、原材料を調達する部門は、大変です。注文の手配を完了したにもかかわらず、突然、発注中止ということになったり、場合によっては、部品在庫が膨らんでくるからです。

 開発部門の発言力が組織的に強い場合、調達部門、生産部門は、設計変更がなぜ多々発生するのか、発生しないようなビジネス・プロセスに改善すべきだなどと、開発部門に言いたくてもいえない状況になっています。このような企業では、ビジネス・プロセスは硬直した非効率なものになっています。設計変更の多発は、数多くの無駄な業務を発生させ、関係する人員を巻き込むはめに陥ってしまいがちです。

□ コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係 

 企業活動におけるプロセスを見極め、ビジネス改革を検討する際には、コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係を見抜くことが大切です。例えば、プロセスのスピードを上げようとすると、プロセスのコストはアップするのが一般的です。生産性を上げようとすれば、より多くの作業要員を生産ラインに投入したり、新規の設備投資で生産能力をアップさせる方策が採られます。プロセス・クオリティを上げようとすると、プロセスのコストはアップします。

 プロセス・クオリティとは、一連の業務プロセスにおける品質のレベルのことです。業務プロセスは、ルールに則り文書化され、定常化されているか、組織的な改善活動が行われているかといったようなことです。クオリティとコストもトレードオフの関係が成立します。このプロセス・クオリティのレベルが悪化すると、プロセス・スピードの低下を招き、プロセス・コストは上昇します。
 さらに、プロセスのインタフェースの側面も見逃してはなりません。プロセス・インタフェースとは、部門間のプロセスを連携させる情報のやり取りの仕組みを意味しています。プロセス・インタフェースとは、IT化そのものでもあるのです。部門間相互で情報のやり取りがうまくいかないとプロセス・クオリティは悪化します。不十分な情報や不正確な情報では、判断に迷いが生じ、業務そのものが成り立たないからです。さらに、情報のやり取りがうまくいかないと、プロセス・コストも肥大化してきます。正確な情報を得ようとする担当者は、余分な仕事をこなさなければならなくなるからです。

  
■米国企業改革法とはなにか
 企業倫理・企業行動に対する社会的要請は高まり、投資のグローバル化が進展する中で、企業をチェックする投資家の厳しい監視の目が、状況によっては企業にとって命取りになる時代です。 財務諸表を初めとした経営に関わる情報開示(ディスクロージャー)を積極的に進め、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の強化により、企業価値と株主に対する信頼を得ることが、企業存続には不可欠になっています。 2002 年に制定された米国企業改革法(Sarbanes-Oxley Act:サーベンス・オクスリー法)は、エンロンワールドコムなどに見られた不正会計事件を未然に防ぐ抜本的な対策として生まれました。企業の監査報告書に虚偽の記載内容があることが発覚した場合、企業の役員は個人的に責任を追及されます。虚偽の財務報告書に故意に署名をした役員には、罰金並びに禁固が科されるという厳しい法律です。 

 米国企業改革法の主要条項として、302条「財務報告書に対する企業の責任」では、企業のCEOおよびCFOは自社の財務報告の正確性について個人名の宣誓書を添付する義務が定められています。404条「社内管理規定の評価」には、内部統制の評価と年次報告書への記載義務が規定されています。内部統制の評価では、企業における各部門の業務プロセスを詳細に文書化し、フローで明確に記述することが求められます。 米国企業改革法に対応していくためには、内部統制の整備と運用を着実に図っていくことが絶対条件になります。「内部統制の統合的枠組み」は、「統制環境」「リスク評価」「統制活動」「情報とコミュニケーション」「モニタリング(監視活動)」からなる5つの要素と、「業務効率」「財務報告の信頼性」「法令順守(コンプライアンス)」からなる3つの目的により構成されています。 

■戦略とはなにか <戦略の系譜>
 戦略とはなにか。−企業のあるべき方向と目標を明確に示し、競合に打ち勝つためのビジネスの基本計画を練ること。経営史を紐解いてみると、大きな流れとして、中国における孫子の兵法や、有名な「戦争論」を書いたクラウゼヴィッツなどがよく紹介されます。孫子は地形や兵力などの分析に注目して戦略、戦術を練るべきであると説きました。この考え方は、ポジショニングの概念として、ポジショニング学派のハーバード大学教授マイケル.E.ポーターの競争戦略やファイブ・フォース・モデルなどに受け継がれています。ファイブ・フォース・モデルは、獲物の配分の割り振りを分析した理論であると指摘する学者もいます[f:

中小企業診断士・IT資格受験対策講座:損益分岐点改善と経営安全率

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□ 損益分岐点改善と経営安全率
 売上高の拡大が見込めず、今後、売上高が低下する懸念がある場合、いくらまで売上高が減少すると、赤字に陥ってしまうのかを検討する方法はないものでしょうか。このような状況に直面したときに役に立つのが、経営安全率の考え方です。


□ 経営安全率とはなにか
 経営安全率は、赤字になるまでにどの程度の余裕があるかを示すもので、その値が高いほど、収益の安全性が高いことを示しています。余裕の売上高は、売上高から損益分岐点売り上高を差し引いたものになります。この値を売上高で割ったものが、経営安全率となります。
 損益分岐点売上高を売上高で割ったものは、損益分岐点比率と呼んでいます。
   
経営安全率=(売上高−損益分岐点売上高)÷売上高
=1−損益分岐点比率

=1−損益分岐点売上高÷売上高


事業採算検討に有効な限界利益の考え方―
企業経営では、固定費を抑え、製品1個当たりに必要な変動費の最小化を図れるような事業形態を実現することで、コストの低減を図ることができます。

□ 粗利益から限界利益を見る


 売上高から、売上高と比例して増減する費用である変動費を引いたものが、限界利益(粗利益)です。限界利益から固定費を除いた残りが利益になります。逆にいえば、限界利益は、固定費と利益の合計となります。利益がゼロの時の売上高が損益分岐点売上高となります。


売上高 − 変動費限界利益
限界利益 − 固定費 =利益
利益 = 売上高 − 変動費 − 固定費




 損益分岐点により、どれだけの売上高をあげれば費用の全てを回収できるかがわかります。利益を生み出すには、損益分岐点以上の売上高が必要になります。損益分岐点売上高を実際の売上高で割った損益分岐点比率は、売上高の減少に対して耐えられる度合いを示します。この比率が低くなれば利益率は向上します。
ここで、ある目標利益を達成するために必要な売上高は次式によって求められます。

目標利益を出すために必要な売上高=(固定費+目標利益)÷(1−変動費÷売上高)
                =(固定費+目標利益)÷限界利益


 ある一定の目標利益を達成する際に、目標売上高が小さいほど、利益の出しやすい企業体質であるといえます。限界利益率は、売上高に対する限界利益の割合を示しています。限界利益率は高い方が優れています。損益分岐点売上高によっても、売上規模の成長性が把握できます。適正な限界利益率を確することで、成長性の健全性もチェックすることがポイントです。固定費を稼ぐために赤字受注によって、売上の確保や事業拡大を図っているような企業では、採算の悪い事業経営を図っていることになります。


会社経営が順調に行われているかどうかを分析する視点は、収益性、効率性、安全性、生産性、成長性の5つです。企業経営の成果は収益性によって判断できます。収益性は、いかにうまく儲けているかを見るために必要な視点です。収益性は資本の運用の巧拙や製品力のレベルなどにより左右されます。収益性の評価指標として、資本利益率、売上高総利益率、売上高営業利益率などがあります。収益性を判断するのに、損益分岐点分析の考え方も有効です。

株投資では、会社の成長性のチェックは、株価格の上昇に不可欠な視点です。売上の伸びが一時的なものなのか、体質強化をベースにした継続的な伸びなのか、競合他社からシェアを奪うことによる伸びなのか、あるいは市場そのものの伸びに連動しているのかといった視点で判断することが大切です。会社の成長性のチェックでは、売上や利益に関する年々の推移の指標を見ます。企業の成長性を判断する評価指標には、売上高伸び率、営業利益伸び率、経常利益伸び率、自己資本伸び率、総資本伸び率などがあります。


 安全性の分析は、取引先における危ない会社を見分けるために不可欠な視点といえます。安全性の分析には、会社の基礎体力や、負債の支払能力、運転資金など、財務面でのチェックがポイントです。事業環境変化の激しい現代では、会社倒産の危機は常について回ります。順調に推移していた業績が、コンプライアンス問題や、戦争、地震災害など、突発的な事象の発生で悪化する場合があります。取引先の倒産により、現金回収ができずに、倒産の危機に追いやられたり、競合による売上減少で、事業縮小、撤退、倒産の憂き目を見る場合もあります。

安全性の経営指標として、たとえば、支払い能力をチェックする流動比率は、100%以上が最低の安全ラインといわれますが、100%以上の会社でも倒産するケースがあります。期末の押し込み売上によって、利益はアップし、流動比率は改善されます。棚卸在庫の評価方法によっては、原価法を採用した場合、実態の資産よりも大きくなり、流動比率が良く見えたりします。当座比率で厳しくチェックすることもポイントです。

 会社経営の効率性では、会社が資本や資産をいかに効率よく使っているかをチェックします。効率性の指標には、売上債権回転率、棚卸資産回転率、自己資本回転率、総資本回転率などがあります。いかに資本や製品、商品の回転スピードを上げている経営を行っているかを見るためのものです。回転スピードが下がると、資本効率が落ちたり、在庫が増えて、経営効率がダウンし、経営コストの悪化につながってきます。
 
 債権管理の効率性では、売上債権回転日数、及び棚卸資産回転日数を短くしてカネの回収スピードをアップするとともに、買入債務回転日数を延ばして、カネの支払いスピードを遅らせることが基本です。効率性の指標には、他に次のものがありますので、チェックしましょう。固定資産のリース化や、固定費を削減し、変動費化を図ることで、身軽な経営が可能になります。ここで、固定費は操業度の変化によらず常にかかってくる費用ですが、変動費は操業度の変化によって変化する費用です。

 生産性とは、企業の生産活動において、投入する経営資源と産出高との関係から企業の経営効率のレベルを分析するものです。企業におけるものづくりの力を表すものともいえます。生産性の評価では、従業員一人当たりの売上高や売上利益率などをチェックします。生産性は、製品や商品のコスト低減力の評価に直結する視点です。安い人件費で効率的にものを作れるような生産力の向上や、単位時間当たりに生産できる製品の数量がアップすれば、生産性が高くなっていると判断できます。

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図解入門 決算書経営分析力 100の極意(改訂版)

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ITプロジェクト成功のための4つの視点

 ITプロジェクト成功のための4つの視点―






 プロジェクトメンバーが各々の価値基準や判断で情報収集及び情報の取捨選択を行なっては、ビジネス改革の要件定義において実態に合わない新システムの絵を描いてしまうリスクが発生じかねません。




□プロジェクト成功のための4つの視点のコントロール


プロジェクトマネジメントで、最も重視すべきことは、クオリティ、コスト、スピード、インタフェースの視点を駆使することに尽きます。クオリティとは、構築する情報システムの品質です。バグのない情報システムは、クリアすべき、最低条件となります。ここは、妥協があってはならない橋頭堡ともいえるものです。バグの発生は、企業に多大の影響を及ぼします。できあがった情報システムは、企業の従業員だけではなく、そのシステムに関わる顧客、協力会社、得意先など、非常に広範囲のエリアをカバーしているのが一般的だからです。




 ここでは、関係者、関係部門、関係会社からなるステークホルダーにより、プロジェクト・クオリティとしての評価基準を経営的視点から明確にすることも必要です。プロジェクトの評価では、PDCAを回し、モニタリングを実施して、投資対効果の見極めをしっかり行う体制を整備することも重要です。




 プロジェクト・コストは、TCO(Total Cost Of Ownership)という視点で捉える必要があります。情報システムの設計、開発、導入、運用、廃棄に関わる全プロセスに要するコストです。運用コストの比重が非常に大きくなってきている中で、いかに運用の最適化を図れるビジネスデザインをクライアントに提示できるかということが、ITビジネスの差別化の大きなファクターになってきています。




 プロジェクト・スピードは、プロジェクトをユーザーから要求された納期をいかに遵守して、情報システムを構築できるかということを意味しています。スケジュール管理は、プロジェクトリーダーの能力のレベルに大きく関わってきます。プロジェクトメンバーの人材配置をいかにうまく計画し、メンバーが持っている能力をいかに最大限に発揮させることができるかによって、納期をクリアできるかが決まってきます。ここでは、リスクマネジメント能力も要求されます。プロジェクトでは、当初予想しなかった様々なリスクが発生するからです。







 プロジェクト・インタフェースは、現場ユーザーとのコミュニケーション、およびプロジェクトメンバー間におけるコミュニケーションのあり方の問題です。現場ニーズが的確に把握できないと、大きなコストオーバーや納期遅延につながってきます。これは、能力を超えた負荷がプロジェクトチームにプレッシャーとなってきますので、バグの多発にもつながってきます。インタフェース・コストというものを認識することが重要です。コミュニケーション機能がうまく働かないと、コストに大きくはねかえってくるということなのです。

 このインタフェース・コストは、プロジェクトマネジメントにおいてだけではなく、異種システム間のデータ連携の検討においても見逃してはならない視点です。データ連携のためにカスタマイズ費用が大きく発生してくるようなデザインを行うと、インタフェース・コストに跳ね返ってきます。




□ 推進体制の整備とインタフェース機能の発揮


プロジェクトリーダーは、まず、プロジェクトメンバーの役割・責任分担を明確にして、プロジェクトメンバーの組織図を作り、経営トップの承認を得ておくことが大切です。ここでは、プロジェクトの総括責任者、技術責任者、システム設計責任者、運用管理責任者、実行メンバーといったように役割・機能分担を明確にします。

 さらに、ユーザーからは、現場の実務に精通したメンバー並びにプロジェクト全体の企画・調整・推進窓口の役割を担う事務局代表メンバーの参画が不可欠です。プロジェクトの推進体制をクライアント・ユーザに明確に説明し、安心感を与えることも大切です。




 プロジェクト内での情報のインタフェース機能を十分に発揮させるためには、プロジェクトリーダーが中心になって、定期的にプロジェクト進捗状況チェックのための会議を開催することが重要です。プロジェクトメンバー間で意思疎通を十分に図り、プロジェクト推進上の問題点、課題を全員で議論、検討し、コミュニケーションの徹底を図らねばなりません。

 場合によっては、経営トップの参画により、高所からの判断・指示を仰ぐことも必要です。プロジェクト組織はその意味でオープンな議論と意思決定ができる場でなければなりません。問題点、課題を個人レベルで抱え込んでしまい、時間切れになって発覚するといったことがないように組織的なコミュニケーション・インタフェースの形成を図る必要があります。




 会議においては、各メンバーの現状報告から始まり、各役割を担うメンバーに固有の問題点や課題をまずは洗い出す必要があります。その上で、プロジェクトリーダーは、ユーザーのニーズや社内事情、予算、スケジュール、人材資源、技術レベル、実践における難易度、経験度などの視点から調整・判断し、問題点、課題の層別化、優先度順位付けを行います。この際、ユーザーの参画により、現場ニーズをできる限り反映する形でプロジェクトを推進する場作りも必要なケースがあることを忘れてはなりません。




 プロジェクトのインタフェース機能のポイントは、関係者、関連部門、関連企業の理解を得るためのコミュニケーションの場作りが成功するかどうかにかかっているといえます。利害関係が絡む当事者同士の集まりにおいては、部分最適化の論理が幅を利かした発言がIT化の障害要因になることも多々あります。関係者、関連部門、関連企業にIT化の目的・狙いを理解してもらい、十分な協力を得るために、IT化推進に関する説明会や議論の場を設けることが重要です。

 部分最適化の発想からいかに脱却し、全体最適化の視点への転換を図るか、ここにも、インタフェース機能を十分に発揮させるための組織戦略が要求されます。IT化によって、関係者、関連部門、関連企業相互間で生まれるメリット、デメリットをいかに全体最適化の視点で調整していくか、プロジェクトリーダーの調整手腕が問われるところです。

環境変化に対応できるシナリオプランニング―






 IT化では、ビジネスの付加価値を向上させ、スピーディな企業活動を実現していくために、いかに情報を収集し、活用するかというコミュニケーション管理の仕組みをデザインできるセンスがポイントになります。さらに、環境変化に対応できるシナリオプランニング能力が要求されます。




□ コミュニケーション管理と組織戦略


プロジェクトリーダーは、プロジェクトの推進に当たっては、システム開発の負荷を見積もり、作業分割(WBS:Work Breakdown Structure)により、担当者別に作業量を割り当て、スケジュールを決定しますが、ここでは、様々なスキルや専門技術を持った人材が必要になります。多様な人材を束ねて、情報をプロジェクトリーダーが一元管理できるためには、プロジェクト構成メンバーが一致団結して、持てる能力を最大限に発揮できる場作りがポイントです。プロジェクト活動は情報が飛び交う場でもあり、必要な情報をいかに整理し、IT化デザインの源泉として生かし切るかが重要です。プロジェクトを構成する様々なメンバーが作り出す各々のコミュニケーションの場において、インタフェースとしての情報の流通が機能しないと、情報はよどみ、情報の品質の劣化が生じます。現場で収集した情報は、事実なのか、あるいは、ヒアリング時に紛れ込んだ価値判断が上乗せされたものなのか、といったことが起きます。

 さらに、個人的な性格や思考パターンが情報を色付けしてしまうこともあります。その意味で、情報のインタフェース機能としてのプロジェクトのインタフェースが正常に本来の機能を発揮して、プロジェクト活動における情報品質の確保と向上を図れるような場の形成が必須です。ここでは、コミュニケーション管理における情報品質のレベルを向上させるための役割をプロジェクト・インタフェースは担います。プロジェクト活動における情報流通機能を発揮させるためのプロジェクト・インタフェースを組織戦略の視点からデザインする必要があります。




 ここでは、プロジェクトマネジメントの品質向上と効率化を図る上で、5W2H(WHAT、WHO、WHY、WHEN、WHERE、HOW、HOW MUCH)、及びWHAT−IFのチェックにより、混み入った多数の対象事項を層別化し、整理することが不可欠です。これにより、マクロ的なチェックと問題点の発見が容易になり、迅速な対策の立案、組織的な漏れのないアクションへとつなげることができます。関係部門、関係者、関連企業などの相互の関係や、問題点、対策の関係を「連鎖のくくり」で明確にすることがポイントです。

 ある問題がどのような要因に関係しているか、ある対策の前後にはどのような;事前準備や事後対策が必要になるかといったような思考をめぐらせて、多角的にシステム思考でプロジェクトに影響を及ぼす因子を考察、検討していくスタンスが望まれます。同時に、個別の因子については、ミクロの視点で、詳細化・分析を行い、技術的・専門的な対応を図るアプローチも必要です。




□ IT化範囲の特定と契約文書の作成の徹底化


さらに、ITベンダーとの契約段階では、IT化の範囲(スコープ)を明確にし、見積もり予算の範囲内で、スケジュール、狙い、効果の達成度評価指標、及び、成果物(要求定義書、システム設計書、プログラム、運用マニュアル、など)の明確化を図って、文書で取り決めておくことが大切です。

 ここで留意すべきことは、ITベンダーとユーザー企業とのコミュニケーションの円滑化、正確化、迅速化を図るための情報管理体制の整備を図っておくことです。特に、システムの仕様変更が頻繁に起きるケースでは、情報の変更・更新管理の手続きをルール化し、システム開発に支障を来たさないように組織的な対応を図っておく必要があります。

 また、システム化では避けて通れないバグや不測のシステム障害に対して、事前に、想定しうる不測事象対応計画を策定し、ITベンダーとユーザー企業とが十分に相互理解を深めておくことが重要です。不測のトラブルが発生した場合、費用負担をどうするのか、プロジェクトの計画の見直しをどのように行うのか、スケジュール最優先か、コストのオーバーを許容できるのか、品質最優先か、支援体制をどうするかといったことが議論に上ってきます。




 ところで、IT化の対象領域の設定は、プロジェクトの品質を決めるうえで、決定的な役割を果たします。対象領域のレベル設定では、?部門内での業務レベル課題解決のためのIT化、?関連部門を含む業務レベル課題解決のためのIT化、?事業戦略に関わる事業部レベルにおける課題解決のためのIT化、?経営戦略に関わる全社課題解決のためのIT化、?サプライチェーン・マネジメント(SCM)の具現化のような企業内外の関係する企業(サプライヤ、物流業者、販売店など)との連携ビジネスにおける課題解決のためのIT化、に階層化できます。




 さらに、対象領域のコンテンツの設定では、?業務プロセスの改善・改革・革新、?新ビジネスモデルの創造・構築、?既存ビジネスのリエンジニアリング、?新業態の創出、?競争優位の確立、?コスト低減、?ビジネススピードアップ、?企業間連携、?合併&買収によるシステムの統合化、?新製品の輩出、?技術革新への対応(ブロードバンド化や新ITシステム形態など)があります。




 企業において、S1からS11及びTS1からTS5までの評価で、スコアを設定することで、プロジェクト全体の価値を評価でき、複数プロジェクトの優先順位付けに役立てることができます。すなわち、プロジェクトの全体価値=ΣSi×TSiで求めることができます。


 ITマネジメントのアプローチを知ろう!―





ITマネジメントのアプローチでは、実践のステップを関係者に明らかにして、十分な理解を得るとともに、各ステップでの課題とアウトプットを明確にする必要があります。




□ IT化の全ステップの中身


第1ステップから第7ステップまでの全てのアプローチを図表に示します。ここでは、様々な経営手法及びITソリューションをIT化のどのステップで適用すべきかを提示しています。IT化における各ステップごとに、IT化テーマの性格に応じて、経営手法とITソリューションの最適な選択と組み合わせを行うことがポイントです。




 第1ステップでは、企業を取り巻く外部環境と内部環境を分析・把握します。ここでは、SWOT分析やバランス・スコアカードが用いられます。企業における強み、弱みを外部環境、内部環境を睨みながら明確に認識します。ここから、弱みを強みに転換し、強みの一層の強化を図る方策を練ります。




 第2ステップのビジネスモデルのデザインでは、企業の存在目的、企業価値、事業価値を明確にします。経営ビジョンを打ち立て、全社的な共有を図る仕組みを構築します。この経営ビジョンの実現に向けて、IT化のデザインを描くことになります。ここでは、ビジネスの成功要因(CSF:Critical Success Factor)の発見、抽出がIT化の成否に関わってきます。どこにITのメスを入れれば、ビジネスが成功するのかを見極めることがポイントです。例えば、ある企業において、開発力が非常に優れているにもかかわらず、販売力が劣る場合、販売力の強化に向けたIT化の推進を図っていくのが有効であるということになります。




 第3ステップのデータ・アーキテクチャのデザインでは、情報の一元管理が可能な情報共有化の仕組みを検討します。ネットワークシステムの参加企業間におけるデータ連携では、インタフェース・コストをいかに最小化できるかがポイントです。ITの業界標準化動向を見極め、情報共有コストの低減が図れるシステムデザインを図ることが大切です。



第4ステップのアプリケーション・アーキテクチャのデザインでは、バリュー・チェーン(価値連鎖)のリデザイン(再設計)を図ります。ベンチ・マーキングにより、競合や業界の優秀なビジネスモデルと比較し、ギャップ分析を行うことで、ビジネスプロセスの弱みを発見し、改善・改革を図るべく、最適なオペレーションズ・マネジメントを検討します。事業価値、顧客価値、企業価値を高めていくために、いかなるビジネスプロセスが最適なのか、競合を睨みながらエクセレンス・ビジネスモデルをデザインします。




 第5ステップのテクノロジー戦略では、企業にとってのコア・テクノロジーやノウハウ並びにIT技術動向を見極め、既存システムとの融合を図り、競合との差別化を実現できるようなテクノロジー戦略を計画します。


第6ステップでは、ネットワークシステムに参加するステーク・ホルダー(利害関係者)間における利害調整を図り、相互が、IT化のメリットを享受できるようなWIN-WIN(参加者全てが勝利者)の関係をデザインします。




 第7ステップのITキャッシュフローマネジメントでは、IT投資効果を多角的に検討し、企業トップや幹部の承認を得ます。ここで初めて、本格的なIT化のスタート地点を確保できます。


ITプロジェクト企画書の作成では、プロジェクトの狙い・背景をまず、明確に記述することが重要です。なぜ,IT化を進めなければならないのか、事業性や競合他社の動向、業界の動向、技術革新の動向など、企業内外の環境を十分に把握したうえで、現状の問題点を整理し、全体最適化の発想をベースに戦略思考でもって、問題点の解決策を練ります。



問題点を解決するためのITソリューションの選択では、投資効果、現状のITの整備状況、IT人材の情報システムの運用管理能力やスキルなどを見極めたうえで、明確なソリュ−ションの絵を描く必要があります。




プロジェクトの推進においては、様々な問題や障害に万全の体制をもって望まなくてはなりません。プロジェクトの推進スケジュールを関連部門、関係者、ITベンダーとの調整のもとに明確にします。ここでは、?IT化のための現状調査・分析、ユーザ・ニーズのヒアリング、?システム設計、開発、テスト、?システム導入・本格稼働・運用管理からなる日程計画を記述します。




プロジェクト成功のキーは,リーダーシップをとって推進していける優れた人材にかかっているとも言えます。各役割別に必要なスキル、専門性、資質を明らかにし、適切な人材の選抜からなるプロジェクト推進体制を整備することが大切です。




企画書には、以上のように、プロジェクト推進上の問題点、課題を明確にします。KGI、KPIによる定量効果の表現では、目標効果の明細をできる限り金額、数値で記述することがポイントです。














 プロジェクトに関わるコストでは人材資源に関わるコスト、情報システム設計に関わるコスト、情報システムのハード・ソフトの調達に関わるコスト、情報システムの運用管理に関わるコストなど各種のコストを詳細に細分化してマネジメントする必要があります。さらに、プロジェクトにおけるステークホルダーは多面体であると見なして、マネジメントできるスタンスが必要です。




□ プロジェクトのトータルコストを把握する


プロジェクトにおけるコストマネジメントの重要なポイントは、発生コストをトータルで把握し、プロジェクトのターゲットにマッチさせるために、バランスのとれたコスト配分をIT化の各ステップで検討する必要があるという点です。
 例えば、システムの要件定義では、場合によっては外部コンサルタントの支援を仰ぐ必要が出てくるケースもあります。ここではコンサルタント費用が発生します。ハード・ソフトの調達コストの低減化を図るために、ITベンダー間で競合させる状況を作り出す必要が出てくる場合もあります。あるいは、システム設計は社内の経験豊富なITスキルのレベルが高い優秀な人材で賄うことができる場合もあります。システム運用は外注化を検討してコストダウンを図る必要性が出てくるケースもあります。特に、セキュリティリスク対策には上限がなく、投資対効果のバランスの見極めがポイントになります。



このように、コストマネジメントにおいて、プロジェクト推進における様々なアプローチ選択肢のアイデアを創出する能力がプロジェクトリーダーには要求されます。


プロジェクトのコストマネジメントでは、プロジェクトの進行の各ステップにおいて、絶えず継続的に当初に計画したコストレベルに対して、実際に発生したコストを詳細に時系列で把握し、計画値と実績値を比較・分析する必要があります。そして、プロジェクトを推進しながらコストの軌道修正をかけていくスパイラルアプローチがポイントになります。
 ここでは、次回の新たなるプロジェクトの推進時にノウハウとして活用される仕組みを作っておくことも大切です。すなわち、業界標準のコストをにらみながら、経験・実績に裏打ちされた目標とすべき新たな標準コストを更新していくマネジメントが重要です。全社的にオーサライズされたコスト評価基準を設定することにより、IT化プロジェクトにおける優先順位の設定のミスを未然に防ぐことが可能になります。なぜなら、あいまいなコスト評価基準では、プロジェクトの経営効果そのものを客観的に評価できず、経営にマイナス効果となって影響を及ぼすIT化に陥ってしまうリスクがあるからです。場合によっては、数多くあるIT化プロジェクトの優先順位の設定において、誤った判断により、経営戦略、事業戦略に齟齬をきたすケースも出てきます。




□ アウトソーシングの視点とは


業務の外部委託であるアウトソーシングはコスト低減の切り札ともいえるものです


が、適用においては慎重な取り組みが必要です。業務の外部委託であるアウトソーシングはコスト低減の切り札ともいえるものですが、適用においては慎重な取り組みが必要です。



アウトソーシングでは、まず、企業の核となる強みであるコア・コンピタンスを明確にして、外部に委託しても経営資源の観点からデメリットが生じないようなテクノロジー戦略が要求されます。IT化のアウトソーシングのアプローチでは、IT化の企画部門は社内に置き、システムそのものと運用管理業務を外注化したり、ITベンダーと合弁で運用管理会社を作ったりするケースがよく見られます。




デメリットの検討に際しては、選択と集中の発想で、コア・コンピタンスが外部に


流出してしまわないように社内にて確保すべきキー・テクノロジーと外注化してよいテクノロジーを明確に色分けします。企業ノウハウの漏洩・流出といった事態は避けなければなりません。コア技術は企業成長あるいは競合他社との差別化の源泉となるものであり、リスクマネジメントがここに要求されます。

 ITアウトソーシングでは、品質や納期の確保は最重要課題になってくるため、いかに、優秀な現地の人材を確保し、マネジメントできるかによって、ITプロジェクトの成否は決まるともいえます。外注指導では、経営的な支援および技術的な支援を活発に行うことで、アウトソーシングの提携企業と太いパイプを作るアプローチも必要でしょう。外部の経営資源をいかに活用し、グローバルな企業活動をいかに進めていけるか、この問いに答えることができるのは、ITアウトソーシング対する斬新な経営的ビジョンをもった経営トップのリーダーシップにかかっているのです。


ITソリューション戦略の検討において、留意すべきことは、現場ユーザと一体になって企業活動の仕組みの見直しを十分に行うステップを踏まずに、ITソリューションの絵を描いてはならないということです。




□ 経営手法とビジネスプロセス


IT化では、IT投資効果を見極め、経営的視点からITの導入を検討できる能力が不可欠です。企業活動の仕組みの再構築を図っていくステップでは、企業の事業特性や企業文化、さらには、組織特性、製品特性、事業特性などの実態にマッチした最適な経営手法を導入し、ITソリューションで企業活動の枠組みを固める必要があります。



経営手法は、企業活動におけるビジネスプロセスの強み、弱みを見極め、競合に負けているビジネスプロセスを強化するために適用されます。各種の経営手法が企業活動におけるどのビジネスプロセスで活用できるのかをよく知っておくことが重要です。企業活動におけるビジネスプロセス毎にマッチした経営手法にはどのようなものがあるのか、相互の関係をしっかり把握することが大切です。




 例えば、顧客管理強化のための経営手法であるCRM(customer relationship management)では、顧客と製品・サービスを提供する企業とが相互に信頼関係を築いていけるようなきめ細かい顧客管理を行うことができます。企業と顧客の信頼関係の確立を目指して、企業は顧客の消費プロセスに深く関わって行く企業活動の展開が必要です。顧客への個別対応と信頼関係の強化がマーケティングの重要課題になってきています。CRMにより、特定の顧客のセグメントニーズに着目して掘り下げ、そのニーズに合った商品やサービスを開発、提供することで、顧客との緊密な信頼関係を築くことができます。




 企業間連携による全体最適の仕組みの構築に不可欠な経営手法であるSCM(Supply Chain Management)では、IT(情報技術)を活用して、情報の共有化による企業間連携を高め、取引先との受発注、調達、在庫、製造、物流プロセスに関わる情報などを共有し、最適にマネジメントすることで、リードタイムの短縮化や在庫の低減化,流通コストの削減に効果を発揮します。




 企業の供給活動のプロセスにおけるモノ・情報・金の流れを供給連鎖(サプライチェーン)と捉えて、情報システムに参加する企業間でこれらの経営資源全体最適の視点で一元管理できます。ここでは、企業間の枠組みにとらわれず、需要情報、生産情報、顧客情報、製品情報など、企業活動に関わる情報を参加企業間で共有し、あたかも同じ屋根のもとで参加企業が一体化できる仕組みを構築できるかどうかがポイントです。




□ ステークホルダー(利害関係者)からみた評価


多数の利害関係者(ステークホルダー)が参加する情報システムでは、関係者や関連部門、関連企業の満足ある評価を得なければ、プロジェクトの推進に支障を来たし、システムの定着化も図れません。スパイラルアプローチによる評価・軌道修正のフィードバックサイクルが機能するためには、プロジェクト評価項目を明確にしておくことが大切です。


プロジェクトの企画・計画段階では、企業の経営トップをはじめ、利害関係のある関係者・関連部門、関連企業のプロジェクト評価尺度を予め情報収集します。関係者のリーダー格のメンバーからなる会議で十分に議論を尽くし、プロジェクト評価尺度を決定します。これは、プロジェクトメンバーの目標設定を可能にし、モチベーションの形成を促し、プロジェクト推進のエネルギーの源泉となります。



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プロジェクトでは、WBS(Work Break−Down Structure)によって、プロジェクト全体の作業内容を洗い出し、プロジェクト全体の作業負荷計画をもとに、構成メンバーのスキルレベルに応じた役割分担を決め、要員の割り当てを行います。
□ 運命共同体の認識がポイント
チームの構成員は運命共同体であり、情報が共有される情報ストリームの仕組みが機能しなければ、プロジェクトは失敗します。
プロジェクトでは、情報や問題点は、担当者が一人で抱え込むと、そこからダムのように亀裂が広がり、プロジェクト全体の岩盤を破壊しかねません。大洪水を巻き起こし、プロジェクトというダムを消滅させるパワーに変化しかねるリスクがあります。プロジェクトリーダーは、チームワーキングを円滑に進めるために、情報の一元管理の仕組みを、グループウェアなどのITを駆使して整備することが重要です。
プロジェクトで発生する様々な情報は、まず、5W2H−WHAT−IFによるマトリックスにより、整理する必要があります。ITプロジェクトマネジメントでは、多角的な視点で、プロジェクトの構成要素や、プロジェクトに影響を及ぼす因子を洗い出し、目標到達レベルと現状レベルとのギャップを明確にしておくことが重要です。

 ここでは、プロジェクトマネジメントの品質向上と効率化を図る上で、5W2H(WHAT、WHO、WHY、WHEN、WHERE、HOW、HOW MUCH)、及びWHAT−IFのチェックにより、複雑に絡み合った多数の対象事項を層別化し、整理することが必要です。これにより、マクロ的なチェックと問題点の発見が容易になり、迅速な対策の立案、組織的な漏れのないアクションへと展開できます。関係部門、関係者、関連企業など、利害関係者の相互関係や、数多くの問題点・対策の関係を連鎖構造で把握することがポイントです。

 ある問題がどのような要因に関係しているか、ある対策の前後にはどのような;事前準備や事後対策が必要になるかといったような思考をめぐらせて、多角的にシステム思考でプロジェクトに影響を及ぼす因子を考察、検討していくことが重要です。同時に、個別の因子については、ミクロの視点で、目を凝らして詳細化し、分析評価を行い、技術的・専門的な対応を図るアプローチも要求されます。
プロジェクトマネジメントにおけるミクロの視点で重要なものは、コストを分析し、評価し、改善のアイデアをクライアントに提示できる能力です。

 特に、財務分析力、コスト分析力など、経営的知識が重要になってきます。ビジネス知識は、日頃から継続的に、雑誌、新聞、専門書などで吸収する習慣を身に付けていないと、にわか勉強では対応できません。クライアント企業の属する業界事情や業界慣習、独特な思考法、ビジネスのやり方など、業界研究、企業研究も欠かせません。IT=経営という構図が成り立つ時代に入っていることを認識する必要があります。特に、企業の事業の形態や特性によって各種の原価計算手法が存在し、企業会計を駆使できる能力は、SE能力としての差別化には有効でしょう。
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ITプロジェクトマネジメントの極意:ITPM INNOVATION

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 今回は、ITプロジェクトの極意について、ITPM INNOVATION(ITプロジェクト革新)の視点から、筆者の経験と知見を紹介しましょう。詳細は、拙著のIT関連の書籍をご参考にしていただけましたら幸いです。

□スキル情報の一元管理
 プロジェクトリーダーは、プロジェクトメンバー全員のスキル管理を明確にして、プロジェクト対象案件が要求するスキルの内容とレベルに対し、メンバーのスキルの内容とレベルが整合性をもち、マッチするかを十分に確認する必要があります。システムの仕様変更管理の巧拙は、プロジェクトの生産性に直結します。スキルのミスマッチは、プロジェクトの生産性の低下につながります。高度なネットワーク技術が要求されているにもかかわらず、優れたネットワーク技術者がメンバーに存在しない場合、ネットワーク関連の開発フェーズがうまくいかず、システム基盤の確立に支障を来たすことになります。

 スキル情報としては、メンバーの過去のプロジェクト案件での実績報告・評価データや人事管理データなどをデータ・ベース化して、一元管理する仕組みが必要です。プロジェクト案件とメンバー本人のスキルや適正のミスマッチは、本人にとっても不幸であるばかりではなく、人材という経営資源の有効活用を図るうえで、留意すべきポイントといえます。

□要件定義のステップがコスト・納期の生命線
 システムの仕様変更の発生は、プロジェクトを混乱の渦に巻き込むことにつながります。システムの仕様変更が発生すると、仕様変更に伴い、他の開発済みのソフトモジュールに大きな影響を及ぼします。後戻りや手直しが発生し、それに伴い、余分なコストが発生し、予算オーバーや納期遅れにつながります。

 そのため、クライアントのニーズは、要件定義の段階でしっかり把握する必要があり、十分な議論とレビューを行う必要があります。要件定義のステップは、コストと納期の生命線といえます。UMLの手法では、要件はマニュアル化してまとめるステップがあります。クライアントの立場に立って、いかにクライアントのニーズを吸収し、限られた予算・人員・納期の範囲で、システム開発に展開できるかがポイントになります。

 ここでは、システム開発の対象範囲(スコープ)を明確にし、クライアントとITベンダーの双方で十分なコミュニケーション管理による確認を行っておくとともに、契約書に明記しておくことが後々のトラブル防止には不可欠です。スコープを明確化していないと、クライアント側は「あのとき言ったつもりだが」、ITベンダー側は、「そのようなことは聞いていないつもりだが」というような水掛け論に陥ってしまいます。その結果、双方に相互不信の渦が発生し、プロジェクトの推進に支障を来たすことになります。

 このような事態を避けるアプローチの一つには、情報管理の徹底を図る仕組みを構築する方法があります。システム開発段階での変更仕様の要求が発生するたびに、その内容を文書化することで、水掛け論のトラブルが防げます。変更仕様管理ための文書では、変更要求日時、担当者、変更要求内容、変更目的、内容区分(バグ対応、操作性向上、機能向上、新規・改善・削除、など)、対応優先レベル(緊急実施、検討要、却下、など)、影響関連部門、見積費用、などの項目を記録します。

ステークホルダーを納得させるプロジェクトの評価軸を設定する
 プロジェクトの評価軸は、ステークホルダー(利害関係者)の納得のもとに設定することがポイントです。プロジェクト評価軸には、外部環境の視点、内部環境の視点、技術の視点、及びクライアントニーズの視点からなる4つの視点があります。

□プロジェクト評価軸における4つの視点とは
 プロジェクトの成否は、参加する利害関係者の評価で決まります。プロジェクトのアウトプットを客観的に評価するのは、ユーザである利害関係者です。利害関係者には、社内関連部門、社外取引先、関連企業などが関わってきます。プロジェクトリーダーとプロジェクトメンバーが、いくら精魂が尽きるほどにがんばっても、プロジェクトのアウトプットが経営効果となって現れてこなければ、そのプロジェクトは失敗したことになります。システムの定着化に齟齬を来たすと、システム投資は負の遺産となって、償却負担の増大化を招き、収益に影響してきます。

 プロジェクト評価軸は、外部環境の視点、内部環境の視点、技術の視点、及び顧客ニーズの視点からなる4つの視点で評価できます。
外部環境の視点では、外部環境・事業環境変化対応レベル、競争優位対応レベル、及び利害関係者(ステークホルダー)参加レベルの項目によって評価できます。

内部環境の視点では、ビジネスモデル創造・再構築レベル、業務改革レベル、経営資源変化対応レベル、組織変化対応レベル、企業文化・風土変化対応レベル、及びオペレーション・プロセス影響レベルによって評価できます。

技術の視点では、システム連携レベル、既存システム影響レベル、技術的難易レベル、技術革新レベル、要求スキル・ノウハウレベル、及び業界標準化レベルによって評価できます。
顧客ニーズの視点では、案件規模レベル(コスト)、必要要員規模レベル(コスト・納期)、予算規模レベル(コスト)、要求ソリューションレベル(品質)によって評価できます。

 各々の項目において、たとえば、5段階評価により、ある情報化案件に対して、現状の評価レベルに対して、目標とすべき評価レベルを設定し、両者間におけるギャップ分析を行い、認識されたギャップを埋めるために、いかなる戦略課題を設定し、情報化によってその戦略課題をいかに実現すべきか主要成功要因CSF(Critical Success Factor)の絵を描くことになります。ここでのCSFとは、経営面における戦略課題を解決に導くための主要な情報化テーマを指します。


□外部環境と内部環境の視点による評価とは
 ここでは、企業を取り巻く外部環境、経営資源にかかわる内部環境、技術、及びクライアントのニーズからなる各々の視点における評価レベルが情報化にどのような影響を及ぼすかを考えてみます。

 外部環境の視点では、まず、開発・導入した情報システムが、クライアント企業を取り巻く外部環境(経済・政治・他)及び事業環境(競合の動き、市場の動き、顧客ニーズ)の変化に対応できないものであれば、役に立たない、あるいは時代に逆行するオペレーション・システムとして評価されてしまいます。システム開発段階で前提条件として想定していた外部環境や事業環境が短期間に変化し、システムが完成してまもないころ、全く、システムが土俵の外に追いやられているケースに陥ってしまうパターンです。

 競争優位対応レベルの評価では、情報システムの主要目的として、競合に優位に立てるようなビジネスモデルを実現するために、ITを活用しているかという点がポイントになります。情報システムのリニューアル化を図って社内業務の効率化が図れても、業務が楽になっただけで、競合に勝るような経営指標の改善が達成されていなければ、情報化投資の効果は出ているとはいえません。
 また、新規情報システムの導入によって、売上の向上や市場シェアのアップが図れ、リードタイムや在庫が半減したといったような経営効果が見られなければ、プロジェクトは成功したとは評価されません。

 ステークホルダー参加レベルの評価では、たとえば、受発注関連の新規の情報システムによって、取引先企業などの大半に参加してもらえなければ、業務プロセスは、従来業務と新規業務プロセスとが並存することになり、かえって、業務効率の悪化を招く場合が多々あります。さらに、参加企業が少なければ、当然、参加企業のシステム加入・参加費用による運用管理収入の減少を招き、情報システムの運用管理コストの源資を確保できなくなってしまいます。

□内部環境の視点による評価とは
 内部環境の視点では、まず、新規情報システムの導入・改善などによって、従来のビジネスモデルの再構築や、新たなビジネスモデルの創造が図れるかといった切り口で評価します。さらに、業務改革が図れ、体質強化につながっているか、あるいは、組織構造が変化した場合に、情報システムが対応できるのかといったことも評価しなければなりません。

 情報システムが組織構造の変化に柔軟に対応できるような仕組みや仕掛けが備わっていない場合には、その情報システムは硬直化したツールとして、ユーザに活用されない事態を招いてしまいます。さらに、企業文化・風土変化対応レベルやオペレーション・プロセス影響レベルの評価では、新規情報システムの導入・改善によって、かえって従来のオペレーションに比べて悪化するようであれば、そのプロジェクトは失敗とみなされます。

□技術の視点による評価とは
技術の視点では、ネットワーク連携能力が強化され、システム連携レベルの向上が図れなければ、新規情報システムの効果は不十分なものになってしまいます。

さらに、新規情報システムが既存システムに与える影響も考慮されなければなりません。
システム化では、技術的難易レベルによって、開発期間や開発コストが左右されます。新規システムでは、技術革新のレベルが高いものをクライアントから要求されるケースもあるでしょう。

しかも、システム開発を担当するSEやプログラマーは、クライアントから専門性に裏打ちされた高いスキルやノウハウが求められるのが一般的です。特に、企業間連携の強化や顧客との接点の拡大の視点から、インターネットを軸に業界標準プラットフォームを取り込んだシステムの実現への要望が強くなっています。

□クライアントニーズの視点による評価とは
 クライアントニーズの視点では、クライアントの要求する品質、コスト、納期のレベルを詳細化することがプロジェクト推進の前提条件となります。いくらよい品質のシステムが完成しても、当初見積もりを大幅に超過するようなコストと納期遅延が発生した場合、プロジェクトは失敗に帰したことになりかねません。経営品質の向上と経営効果の追求を目的としたシステム化対象案件の実現コストを抑えたいニーズが、クライアントには必ず存在します。

ここでは、クライアントが解決したい経営課題に対するITソリューションを多くの選択肢の中から検討し、最小限の予算規模で、最大の経営効果を発揮できるようなシステム化がクライアントから要求されます。IT投資の回収を迅速に図り、経営効果を発揮させるために、クライアントはプロジェクトの推進期間の圧縮を要求して来るでしょう。

 以上のように、プロジェクトの評価では、多角的な視点で、クライアントのニーズをシステム思考の原点にして、十分に検討することが、プロジェクトリーダーの役割であるといえます。


□ SEの能力とビジネスモデル構築
ITパワーは、インターネット上で資本力の弱いベンチャー企業やニッチ企業が世界の電子商取引市場でビジネスを拡大することを可能にしました。これらの企業の中には、資本力に頼らず、競争優位性のあるビジネスモデルの創造や独自性で勝負することで、ニュービジネスを生み出しているところが多くあります。

情報システムがうまく機能していない企業では、トップダウンによる情報化アプローチの徹底化が図られていないところが多いものです。現場の声高なニーズに振り回されて部分最適に陥っている情報化のアプローチからの脱却を図っていくことが必要です。

経営戦略と情報化戦略が一体化してきている今日、ボトムアップ的な情報化アプローチでは、経営的効果の追求が不十分なばかりではなく、経営戦略課題に直結した情報化戦略を立てるのは不可能であるといえます。経営戦略に関わっている部門の管理者やトップは、情報化戦略の立案においては、戦略の立案の当初の段階から主体的に関わっていくスタンスが要求されます。事業戦略を勘案し、競合に対しビジネスの差別化を図れる情報システムは、経営効果となって大きなキャッシュ・フローを生み出します。

ここでは、全体最適化の企業活動のデザインをイメージできるかどうかが情報戦略の成否に大きく影響します。
SEは、経営トップや管理者との積極的な対面、レビューを繰り返し、クライアント企業が抱えている問題点の本質を捉え、経営課題の抽出に注力することが重要です。SEは、クライアント企業の経営戦略を十分に理解したうえで、経営課題の解決を図るために情報化戦略企画・策定を行い、主要成功要因(CSF)を見極め、情報化によって具現化するステップを踏みます。

□経営戦略の基本軸とSEの能力
競争優位に立つ企業に飛躍していくためには、限られた経営資源の最適化を図り、企業付加価値の最大化を目指したビジネスモデルを構築することが不可欠であるといえます。ビジネスモデルの再構築や創造においては、独自性のあるアイデアを情報システムに組み込み、ビジネスモデル特許で独占的ポジションを確保することが競争優位に立つためのビジネス基盤の形成につながります。

インターネットが普及し、電子商取引市場が拡大する中で、消費者と企業の購買行動は大きく変化しつつあります。このような時代の潮流に対応して、企業活動の新たなる仕組みを不断に追及していくことが企業のサバイバル競争の絶対条件になってきています。

そのためには、顧客ニーズを十分に把握し、IT活用により、業務プロセスの革新を図っていく必要があります。ここでは、顧客へのサービス、ロジスティクス、販売、生産、調達、設計、開発というように、従来の業務プロセスのベクトルを反転させて顧客の視点からビジネスモデルをデザインするというアプローチが重要です。ITソリューションには様々なものがありますが、プロジェクト案件の性格やクライアント企業の事業特性・実態にマッチしたものを取捨選択し、経営効果が発揮できるものが要求されます。

上級SEに飛躍していくためには、全体最適の視点で、顧客を起点ベクトルに据えた業務プロセスの革新を図るとともに、バリュー・チェーン(価値連鎖)の再構築を図ることで、ビジネスのスピードとコストを追求していく能力を身に付ける必要があります。

ここでは、経営的視点と情報化の視点をバックボーンにして、バリュー・チェーン(価値連鎖)に関わるビジネス知識の習得を図ることが不可欠です。各業界のオペレーション・マネジメントの基本をしっかりとマスターする必要があります。経営資源の最適化を図るために、人、設備の稼働率を高め、調達先を巻き込んだ企業連携の関係を確立し、競合に優位に立てるビジネス活動の仕組みを追求していく必要があるでしょう。企業の付加価値創造のシナリオを、いかなる業務プロセス及びバリュー・チェーンのデザインによって描くかということです。

ビジネスプロセスの評価基準として、ベンチマーキングによるベストプラクティスの手法がよく用いられます。これは、その業界での最適なビジネスの手法を実践している企業を評価尺度の対象にして、自社のレベルを評価し、両者のギャップを解消するための方策を検討するものです。

さらに、情報化の推進においては、プロジェクトマネジメントの能力を有することが、SEにとっては不可欠です。限られた時間、予算、納期、人員の制約条件の中で、様々なプロジェクト環境の変動要因に対処しながら、当初の目的を達成するには、リーダーシップの発揮による効率的なプロジェクト運営管理の能力が要求されます。

バランス・スコアカードの実践と経営手法の連携


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経営戦略論 図解入門 バランス・スコアカードがよくわかる教科書

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図解入門 3分でわかる決算書読解力練習帳70の鉄則のすべて

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バランス・スコアカードの実践では、ビジネスマネジメント改革に役立つ経営戦略手法をうまく活用することによって、戦略的マネジメントシステムを構築することができます。
経営戦略手法は、体系的に理解することによって、問題解決にマッチした経営分析手法を選択し、効果的に使いこなすことができます。

 経営戦略手法は、業務プロセス・組織分析手法、環境・競合分析、品質・コスト・ものづくり分析手法、財務分析手法からなる4つのカテゴリーに分類して、体系的にマスターできます。

 業務プロセス・組織分析手法のカテゴリーには、企業活動プロセスどうしの価値をつなぐバリュー・チェーンボトルネックを発見するTOC、業務の流れを可視化するDFD(データ・フロー・ダイアグラム)、品質マネジメントシステムを構築するISO9000、組織の成熟度をレベル付けする日本経営品質賞、組織のリーダーシップ・スタイル、データマイニング、エリアマーケティングGISFSP分析、プライバシーマーク、SCMとVMI、ナレッジ・マネジメント、CRMSFA/CT、PMBOKアウトソーシング、およびマッキンゼーの7Sがあります。

 環境・競合分析のカテゴリーには、ライバルの輪郭がくっきり見えてくるベンチ・マーキング、パワー・バランスを縦横に把握できるファイブ・フォース・モデル、クロス思考で強み、弱み、機会、脅威を組み合わせるSWOT分析、4つの経営的視点で評価するバランス・スコアカード、マクロ環境がわかるPEST分析とコア・コンピタンス、4つのカテゴリーで事業の成長度合いを見るPPM、ビジネススクリーン、事業と製品の年齢を知る成長サイクル曲線、シナリオ・プランニング、イノベーションの分析、ポーターの競争戦略、コトラーの競争的マーケティング戦略、アンゾフの製品・市場マトリックス多角化戦略ゲーム理論があります。

 品質・コスト・ものづくり分析手法のカテゴリーには、超品質を極めるシックスシグマ、製品開発に画期的効果を出せるタグチメソッド、機能・コスト・価値を最適にデザインするVA/VE、ものづくり手法の王者JIT、コストを分析・マネジメントするABC/ABM、工程・作業分析の王道インダストリアル・エンジニアリング(IE)分析、創造的な問題解決に威力を発揮するTRIZ、在庫管理のすっきり化のツールABC分析と流動数曲線、影響因子を見抜く重回帰分析、在庫発注モデル分析、数値データの分析に役立つQC七つ道具、言語データの分析に有効な新QC七つ道具、および原価差異分析があります。


 財務分析手法のカテゴリーには、事業の魅力度がわかる成長性分析、企業活動の巧拙を分析する生産性分析、儲かり具合度を判定する収益性分析、経営の危険度をチェックする安全性分析、経営効率のレベルを知る効率性分析、お金の流れを可視化するキャッシュフロー分析、事業採算を見極める損益分岐点分析、財務諸表と米国企業改革法、投資評価の分析手法、などがあります。

 バランス・スコアカードの実践では、ビジネス戦略の巧拙が大きくものをいいます。バランス・スコアカードは、いったんできあがってしまうと、モニタリングが中心となり、バランス・スコアカードのレベルアップが中断してしまう企業がよく見受けられます。ここでは、ビジネス戦略の創出が組織的に欠落していることが原因となっていることがよくあります。バランス・スコアカードを常に進化させるためには、業務プロセスの視点におけるビジネス改革を継続化することが要求されます。

 ビジネス改革を図っていくためには、世界中の著名な経営手法やビジネス戦略手法をうまく適用し、経営課題の解決を図っていく必要があります。組織そのものが戦略思考のレベルアップを常に図り、業務プロセスを革新していくアプローチこそが、バランス・スコアカードの実践には必須となります。その意味で、バランス・スコアカードとビジネス戦略手法は、車の両輪のようなものであり、相互の活用によって、組織体は飛躍的な成長を遂げることができます。バランス・スコアカードの前に「ビジネス戦略ありき」の視点をもつことが大切です。


 例えば、SWOT分析は、経営戦略策定における外部環境、内部環境を分析する際によく用いられる経営手法です。不況期には、SWOT分析を使いこなし、企業の強み、弱みと、外部環境としての機会、脅威を分析し、経営戦略を策定するアプローチが有効です。
 SWOT(スウォット)の4つのアルファベットは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威,(Threat)を意味しています。企業を取り巻く外部環境(政治、経済、為替変動、業界、競合状況、顧客など)と内部環境(人、モノ、金、情報、組織、ビジネス・プロセス、チャネル、経営状況など)を強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つのカテゴリーで区分し、要因分析を行います。ここでは、クロス分析という特徴ある戦略ロジックを用います。
 クロス分析では、企業を取り巻く内部環境と外部環境における強み、弱みを見極め、相互の最適な組み合せを考えます。ここでは、自社の強みを活かした事業機会は何かを探り、自社の強みによって脅威を回避できないかを検討します。
 また、機会に乗じて弱みを強みに転換する戦略を検討できます。さらに、脅威と弱みが鉢合わせになるリスクの回避策を練ります。これにより、企業として取り組んでいくべきCSF(Crirtical Success Factor:重要成功要因)を発見し、強化すべき、あるいは改革を図っていくべきテーマを絞り込みます。
 ここでいうCSFとは、ビジネス改革を成功させるための最重要経営課題のことです。SWOT分析により、経営資源の最適化、ビジネスの再構築を図るためのCSFを見極め、優先順位付けを行い、IT化の具体的なテーマにブレークダウンしていくステップを踏むことで、企業戦略課題の解決を図っていくことができます。
 このように、経営戦略策定において、SWOT分析は事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図るうえで役立つ手法です。ここで、SWOT分析の使い方を具体的に考えてみましょう。
 たとえば、ある大手家電メーカーで、業界トップレベルの技術を持ちながら、優秀な人材の活用が図れていない場合、成長の著しい分野に活用できていない人材を投入し、新市場に参入す戦略を練ることができます。また、強みとして品質やデザイン、ブランド力を有している場合、その強みを活かした製品の開発、販売により、競合による値引き攻勢に対処する戦略が考えられます。
 さらに、全国の拠点に存在している特約店の維持費が経営を圧迫して弱みになっている場合はどうでしょう。逆に弱みである特約店販売の経営資源を活用して、地域密着型の販売政策強化する戦略も選択肢として検討できるケースも出てくるでしょう。
 いっぽう、流通の中抜きが進み、インターネット販売などによる直接販売がこの企業にとって脅威となっている場合には、弱みである特約店販売のチャネルが影響を受けないように対策を練る必要があります。
 以上のように、内部環境と外部環境における強み、弱みを見極め、相互の最適な組み合せを検討することで、経営資源の最適化、ビジネスの再構築を図ることが可能になります。

☆4つのカテゴリーで事業を特徴付けるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
 不況期には、スピーディな事業の見極めが企業の浮沈を決定するでしょう。4つのカテゴリーで事業を特徴付けるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を紹介しましょう。
 PPMは、大手コンサルティング・ファームのボストン・コンサルティング・グループが開発した経営戦略策定の経営手法です。
 PPMの手法では、現有の製品と事業を総合的に評価して、事業の重点分野と撤退分野を選別します。市場成長率とマーケットシェアの2軸からなるマトリックスによって、事業を、花形製品(高成長・高シェア)、金のなる木(低成長、高シェア)、問題児(高成長、低シェア)、負け犬(低成長、低シェア)の4つに区分し、企業全体として最適な経営資源の配分を検討することができます。
 多角化を行っている企業では、各事業領域を、SBU(Strategic Bisiness Unit:戦略事業単位)と呼んで、事業別の採算管理をシビアに行っているところが多くあります。
 PPMにより、自社が保有する人材、モノ、金、技術、ノウハウ、情報などの経営資源をどのように各事業に最適配分すれば、経営効果の最大化が見込めるかを判断できます。選択と集中の視点で、戦略的重点事業分野と撤退事業分野を見極め、経営資源の最適化を図り、事業運営を図っていくことができます。
 場合によっては、強い事業の優れた人材や経営手法を弱い事業に水平展開することで、シナジー(相乗)効果を狙うアプローチや、他社の経営資源を活用するために、買収、合併も選択肢に入ってきます。金のなる木の事業で稼いだキャッシュは、成長著しい問題児の事業や花形製品に投入され、将来の有望事業に育成していくための戦略がとられます。
 花形製品は、市場シェアが高く、成長率が高いため、売上高の向上が見込めますが、市場の成長が著しいため、事業を維持し、競合に対抗するために必要な投資も増加するのが一般的です。花形製品では、成熟期に達するまで市場シェアを確保し、金のなる木にもっていく事業戦略がポイントになります。
 さらに、PPMを使いこなすためには、事業ドメインというものを知っておくと有効です。企業における事業のドメイン(事業領域)は、顧客、ニーズ、コア・コンピタンスの3つの軸で捉えることができます。ターゲットとする顧客は誰なのか、顧客のセグメント化がポイントになります。
 たとえば、ある家電製品の顧客ターゲットを若年層の10代、20代の年齢別、地域別などに細分化・層別化して、きめ細かいマーケティング活動と顧客ニーズの吸収を図るアプローチが考えられます。企業が保有する強みであるコア・コンピタンス、たとえば、技術力、販売力、生産力や、その企業特有のノウハウなどにより、顧客ニーズ(機能)を実現して、製品、サービスの提供を行います。

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☆☆ バランス・スコアカード ☆☆
バランス・スコアカードは、企業をはじめ、公共団体や病院などにも導入が活発化してきている戦略的マネジメント手法の一つです。ここでは、その基本的構造を紹介しましょう。
☆ 全方位型戦略的マネジメントシステム−バランス・スコアカードの仕組みとは
 バランス・スコアカードとは、ハーバードビジネススクール教授のロバートS.キャプラン教授と、コンサルティング会社のデビットP.ノートン氏が編み出した戦略的マネジメントシステムです。このビジネス戦略手法の特徴は、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点からなる4つの視点をバランスよく採用し、業績評価をスコアカードで行う点です。4つの指標からなる評価によって,目標と達成度合いのギャップを数値で把握します。

 財務会計と顧客の2つの視点は,ステーク・ホルダーの視点に基づくカテゴリーです。財務戦略は事業の成長期には成長性,持続期には利益率,収穫期にはキャッシュフローの最大化を狙います。
 
 顧客の視点では,市場占有率,顧客定着率,新規顧客定着率,顧客満足度,顧客別利益、などの評価指標があります。
 内部業務プロセスの視点では,顧客と株主にバリュー(価値)を与え,戦略目的を達成するために最適な業務プロセスを評価します。一般的には、品質,コスト,納期,新製品導入率などで評価されます。
 学習と成長の視点は,組織の長期的成長に必要な基盤を指します。人材,ITシステム,モチベーションやエンパワーメント(権限委譲),から構成されます。
  
 経営方針と評価指標を明確にして、バランスのとれた4つの視点で経営を評価し、組織を階層的に整合させ、戦略的にマネジメントするバランス・スコアカードは、全方位型の戦略マネジメント手法といえます。
☆ バランス・スコアカードの戦略マップとは
 戦略マップは、バランス・スコアカードを駆使するための必須ツールです。戦略マップとは、一言で言えば、人材の学習と成長の視点 → 内部業務プロセスの視点 → 顧客の視点 → 財務の視点、の流れの順に沿って、経営改革の戦略のシナリオを作ることです。
 財務の視点は、経営成績の結果としての決算書に現れる数値で評価されるため、過去の視点ともいえます。
 顧客、内部業務プロセスは、現在の視点ともいえます。
 学習・成長の視点は人材の育成、変革能力の強化という意味合いから未来の視点ともいえるものです。
 このように、4つの視点を時間軸で眺めると、それぞれの視点が属する時間のゾーンは違っているということがわかるでしょう。
 戦略マップは、ゴルフのプレーでたとえれば、4つの視点は、到達すべきホールということになります。各ホールに到達するまでには、様々な障害が待っています。天候や、プレーヤーの体調、芝生の状況、ゴルフアイアンの選択など、プレーを成功させるためには、これらの外部環境、内部環境をうまくミックスさせて、最終ゴールに最高スコアで達成できるプレーにもっていけるように戦略のストーリーをプレーヤー自らが練る必要があります。
 戦略マップの基本構造は、4つの視点の各々に対して、戦略目標(KGI:Key Goal Indicator)、重要成功要因(CSF:Critical Success Factor)、重要評価指標(業績評価指標:KPI:Key Performance Indicator)、ターゲット(KPIの具体的目標数値)、アクション・プラン(実行具体策)から構成されます。
 4つの視点を構成する各種のファクターを原因と結果というつながりで、矢印で結んでいきます。その結果、戦略的な視点から組みあがったマップが出来上がってくるのです。
 経営トップのバランス・スコアカードは、事業部門長のバランス・スコアカード、グループリーダーのバランス・スコアカード、一般社員のバランス・スコアカードというように階層構造となってブレークダウンされていきます。この仕組みによって、全社の戦略マップは全ての組織階層において整合性を確保できることになります。階層間での戦略にギャップが発生して改革のベクトルがバラバラになるのを防ぐことができるわけです。筆者はこれをピラミッド・ベクトルと名付けています。

バランス・スコアカードは、経営戦略を策定し、業績評価に役立つ戦略マネジメントのビジネス戦略手法です。企業経営に抜群なパワーを発揮してくれます。

これらの視点を4つの全方位型に絞り、「四眼レフ経営」を実践できる点が、その存在価値の輝きを放っている理由です。一眼レフカメラは、非常に写りのよいクリアな写真を提供してくれます。バランス・スコアカードは、一眼レフカメラを4つ集めた「四眼レフカメラ」といえるぐらいに経営がくっりきとすばらしくよく見えてくるものです。

 

 なぜ財務の視点なのでしょうか。お金を使って、いくら優れた製品を世に送り出しても、その企業が儲からなければ、いずれ倒産してしまいます。財務基盤がしっかりしていて、資本市場の信任を得ることが企業存続の絶対条件です。その意味で、バランス・スコアカードは、財務の視点を採用しています。

次に、なぜ、顧客の視点なのでしょうか。性能や機能が優れていて、いくら見栄えの良いデザインを有していても、使い勝手が悪い製品や、アフターサービスが悪い製品には、顧客は見向きもしないでしょう。ここでは、顧客のニーズにマッチする製品コンセプトを明確にして、適正な価格で顧客に購入してもらえるかがポイントです。顧客の視点は、企業活動の存在価値を問うものでもあるのです。

 3つ目の視点である業務プロセスの視点についてはどうでしょうか。業務プロセスは、製品やサービスの「品質」・「コスト」・「納期」のレベルを左右するファクターを備えています。これら3つのファクターは、ものづくりの絶対条件といえるものですが、いずれかひとつでもレベルが下がると、製品・サービスは顧客のニーズを満足できなくなります。

4つ目の視点である学習・成長の視点は、企業組織を構成する人材の質に関わってくるものです。人材は、人財ともいわれるように、組織学習の繰り返しによって優秀な人材を育成していくことは、企業の永続性を左右するともいえます。

 バランス・スコアカードの4つの視点は、時間軸のゾーンが異なっています。財務の視点は、経営成績の結果として、例えば決算書のような経営数値で評価されるため、過去の視点といえるものです。顧客、業務プロセスは、現在進行形の活動状況に対するものであり、現在の視点といえます。


ここでは、顧客、市場、競合を分析し、最適な業務プロセスを編み出します。学習・成長の視点は人材の育成及び改革能力の強化を図るものであり、未来の視点といえます。これら4つの視点同士は、過去、現在、未来からなる全ての時間軸を備えており、見落としなく、業績評価をバランスよく行える特徴を持っています。

 ここで、新たな5つ目の視点として、たとえば、リスクの視点や環境の視点を加えることもできます。ここは、企業の特性や事業内容に応じて最適な視点を加えることにより、バランスのとれたコントロールができる企業経営を実現できます。

 バランス・スコアカードでは、業績評価指標にKGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)というものを採用しています。

KGIは、企業における経営の最大目標を数値で評価するものです。「利益率10%達成」、「売上高2倍の必達」というように、経営の目標数値として資本市場に公開されます。

KPIは、KGIを達成するために具体的なアクション・プランにおいて、業績評価指標として詳細に細分化します。経営のモニタリング・パラメーターといえるものです。KPIは、4つの視点において、相互に整合性を持たせながら、各々に様々なものを設定します。それらの総和としてKGIの達成につながる必要があります。

財務の視点のKPIでは、売上高に比例して利益率も伸びているのか、低下しているのかをチェックします。毎月、どの程度、変化しているのか、目標値に対して、クリアしているのか、悪化しているのかをモニタリングします。KPIは、改革の実践の結果生み出された価値を目に見える形にしてくれます。経営的視点を用いて、時系列で価値やレベルを数値で評価するモニタリング(監視)の役割を担います。

 KGIの内容は、ビジネス改革の進捗具合や競合の状況、事業環境の変化に応じて、都度、軌道修正がかかります。それに伴って、戦略の変更が不可避となり、アクション・プラン及びKPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)の見直し・修正や、新規設定、組み換えが必要になってきます。すなわち、全社的なバランス・スコアカードの見直しが行われ、業績評価の枠組みの衣替えが行われます。

 KPIは、目標値を高く設定した場合、それを達成できれば、企業として大きな収穫を得ることができます。しかしながら、企業の実力に見合わないような背伸びした目標値をKPIに設定すると、場合によっては、企業は暴走します。たとえば、無茶な販売ノルマを達成するために、社員が売上の水増しを行うケースがよくあります。

 このように、KPIは、諸刃の剣ともなる非常にナイーブな経営のモニタリング(監視)のツールなのです。KPIをどのような指標として選択するか、その数値をどのようなレベルに決めるかを検討する際には、競合と自社のギャップ分析だけではなく、関連部門間の十分な調整のもとに、企業の受容力や真の実力のレベルを様々な角度からよく見極めることが重要です。

 バランス・スコアカードに組み込んだ業績評価指標(KPI)が本当に現場で使いこなせる業績指標を選択できているか、事業環境変化に対応できないような意味のないものになっていないかチェックすることも必要です。

たとえば、競合のパフォーマンスが向上すれば、それに伴って、KPIの見直しが必要になります。あるいは、KGIが変更になれば、同時にKPIの修正軌道が必要です。KPIとは、KGIを達成するための具体的な推進指標ともいえ、親子の関係にあります。



☆ バランス・スコアカードにおけるKGI、KPI、CSFとは
 
 経営改革を進めていく際の目標達成度の評価指標として、KGI(Key Goal Indicator:経営目標達成指標)とKPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)の2つがあります。
 KGIは、たとえば、3年後の自社の売上を3倍に拡大したいといったような財務の最終ゴールとも言える経営目標です。全社的な経営方針の具体化のために不可欠な経営指標です。
 KPIは、KGIの子供ともいえるものです。親であるKGIの期待を受けて、それを実現するために、具体的にどういった切り口で達成すればよいかを具体的なアクションで評価するための指標です。
 例えば、Aさんは、親として、自分の子供B君に優秀な企業の重役になって1億円プレーヤーの収入を確保できる高給取りになってほしいと願っているとしましょう。これが、AさんのKGIになり、最終ゴールの戦略目標です。優秀な企業に就職するためには、優秀な学校にいれて、家庭教師を付け、様々な習い事をさせ、その成績は、学校のクラスで3番以内でなければならないとします。これが、KPIになります。
 ここで、優秀な企業に就職するために、優秀な学校にいれて、家庭教師を付け、様々な習い事をさせるアクションが、アクション・プランというものです。
 ここでの重要成功要因は、一流の企業に子供を就職させることができるかどうかということが該当します。KGIとKPIの橋渡しをするものが重要成功要因(CSF)です。
 KGI、KPIは、具体的な数値で客観的に第三者が評価できるため、経営戦略の策定におけるモニタリング(監視、評価)の機能の役割を担います。
 ここで、KGI、CSF、KPIの3つのコンビからなるスコアカードは、財務の視点、顧客の視点、内部業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの各々に対して作成する必要があります。
☆ バランス・スコアカードとKPIというタイタニック
 
 バランス・スコアカードの活用で最も注意すべき点は、業績評価指標KPIのデザインにあります。最近の大手企業の事故には、このKPIの設定において、現場の実態や現場の受容能力(Capacity)を無視し、効率経営一本に陥った経営陣の暴走がよくみられます。バランス・スコアカードは、全体最適を狙う企業活動を実践していくものですが、トップが誤った経営方針を全社的に浸透させてしまうリスキーな側面を持っています。
 なぜならば、バランス・スコアカードは、経営トップからミドル、現場の担当者、従業員までが、一丸となってピラミッド・ベクトルを形成していくものであるため、巨艦のかじとりに失敗すると、その企業はとんでもない方向に進んでしまいかねないからです。最悪の場合、氷山に衝突するタイタニック号の悲劇に陥らないとも限りません。KPIは、巨艦の運命を左右する面舵であり、司令塔でもあるのです。
 現場に無理強いをするような高いレベルのKPIを設定し、過度なアクションプランの必達を強制する組織では、品質問題や安全事故問題、さらにはリコール問題が多発しがちです。トップによる飽くなき事業拡大や生産性と利益率の向上の鞭によって、事業活動の第一線にある現場従業員の受容能力が限界に達すると、組織構造は機能不全に陥るからです。
 ここでは、都合の悪い情報は組織間でよどみ、うまく流れていかず、フィードバック・アクションの遅延をもたらし、事が大きくなって発覚して、組織上層部が大慌てするという事態に陥ってしまうものです。
 かつて、ローマ帝国が、世界制覇を目指し、帝国のグローバル化の遠征を繰り返すことで、兵は病弊し、ローマ帝国の崩壊の遠因になったことは歴史が証明しています。
☆ ビジョンと戦略が推進力になる
 ビジネス改革の第一ステップでは、バランス・スコアカードの手法を活用し、全体最適の企業戦略の方針、ビジョンと業績評価指標を明確にします。
 企業経営では、明確なビジョンと戦略は、羅針盤の役割を担い、企業の浮沈を決定すると言っても過言ではないでしょう。
 経営トップが明確なビジョンと経営戦略、事業戦略を従業員に示すことができなければ、現場の第一線で企業活動に携わる幹部や従業員は、右往左往することになります。企業活動のベクトルが各部門でバラバラな方向に向いて統制が取れなくなり、経営資源の無駄使いやロスが発生して、企業経営は衰退の道を辿ることになります。バランス・スコアカードでは、明確なビジョンと戦略の設定は、企業の経営能力開発における推進力という位置付けにあります。
 ビジョンと戦略は、自動車におけるナビゲーターにたとえることができるでしょう。たとえば、大手自動車メーカーが「環境を重視した製品を市場に供給する」という明確なビジョンのもとに、「優れた技術力・生産力・販売力によって、5年後に世界市場シェアの10%を確保する」という戦略を打ち立てたとしましょう。この明確なビジョンは、自動車のナビゲーターでいえば、目的地の到達地点の住所をインプットしたことに当たります。 
 戦略では、どのようなアプローチによってビジョンを実現するのかということを明確にします。自家用車でいくのか、自動車は使わずに、やっぱり新幹線で寝ながら、ゆっくりとした旅の気分を満喫しながらいきたいといった基本的な方針を検討することになります。自動車と新幹線のいずれを選択するかによって、事前準備すべき内容も大きく異なってきます。事業環境の激しい中での企業経営において、戦略は、アプローチの選択を誤ると、場合によっては、存亡の危機にさらされることもありえます。
 戦略は、さらに、具体的な実行策として戦術(アクション・プラン)に展開する必要があります。その目的地に到着するまでの距離、必要なガソリンの量、及び所要時間の計算、食料の確保(あるいは、途中でのサービスエリアの確認)、その他、諸々の準備などを明確にしておく必要があります。たとえば、ガソリンはどうやって調達するのか、セルフサービスのガソリンスタンドを見つけて安く調達するのか、クレジットカードで支払うか、現金払いか、といったことを決める必要があります。このような具体的なアクション・プランが戦術といわれるものになります。
☆ 4つの視点が意味するものは
 顧客の視点では、企業は、企業経営において、自社製品やサービスに対する市場占有率(市場シェア)、顧客定着率、新規顧客獲得率、製品別顧客別利益率などの向上を追求します。企業経営におけるITシステムの存在価値は、これらの業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の向上を実現していくための経営支援ツールとしてITシステムが十分にその能力を発揮できるかどうかにかかっています。顧客の視点とは、企業の経営ニーズをKPIで表現したものといえます。
 財務会計の視点では、企業の事業の成長性や利益率、キャッシュフローの向上を狙ったITシステムを構築する必要があります。ここでは、経営目標達成指標(KGI:Key Goal In dicator)が設定されます。
 以上のような顧客、財務会計における目標指標を達成させるために、企業では、内部業務プロセスにフォーカスし、業務プロセスの改善・改革を図っていきます。ここでは、製品・サービスにおける品質・コスト・納期、及び新製品の導入率などが主要な管理ポイントになります。
 学習・成長の視点では、経営資源の核となる人材開発を図ります。ここでは、ITシステムが情報・ノウハウの共有化を促進する役割を担います。組織としての学習効果を高め、成長を目指すためには、組織を構成する人材のモチベーション(動機付け)を高め、日々の業務に対するやりがいや達成感を味わえる企業風土の醸成が不可欠といえます。さらに、エンパワーメント(権限委譲)の仕組みにより、若手メンバーの潜在的能力を発揮させ、組織として活性化された状態に持っていくことが企業成長には不可欠です。
 
☆ 経営資源と企業環境を総合的に把握するSWOT分析
 バランス・スコアカードの戦略的アプローチでは、SWOT分析の併用が有効です。
SWOT分析では、企業を取り巻く外部環境(政治、経済、為替変動、業界、競合状況、顧客など)と内部環境(人、モノ、金、情報、組織、ビジネスプロセス、チャネル、経営状況など)を強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威,(Threat)の4つのカテゴリーで区分し、要因分析を行います。自社の強みを活かした事業機会は何かを探り、自社の強みによって脅威を回避できないかを検討します。また、機会に乗じて弱みを強みに転換する戦略を検討できます。さらに、脅威と弱みが鉢合わせになるリスクの回避策を練ります。このように、経営戦略策定において、SWOT分析は事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図るうえで不可欠な手法です。

☆バランス・スコアカードでマイホーム計画を立てる!
 
 頭脳トレーニングに役立つものには、ロジカル・シンキングやマインド・マップなど、様々なものがあります。 これらは、優れたツールではありますが、そこから体系的な戦略を生み出すには弱い側面を持っているといえるでしょう。
 
 バランス・スコアカードは、ハーバードビジネススクールのロバート・S・キャプラン氏らが開発したビジネス戦略手法ですが、環境分析の手法であるSWOT分析といっしょに使いこなせば、戦略思考を飛躍的に高めることができます。
「万物は流転する」と唱えた古代ギリシャの哲学者であるヘラクレイトスは、この世の秩序を支配する原理は、戦いと争いであり、物事の本質は隠れるのを好むとも言っています。ビジネスは、事業環境変化と競争にいかに打ち勝てるアイデアを生み出しうるかにかかっています。アイデアは、可視化されなければ、説得力を持たず、衆知を集めて戦略として実行することができません。
 バランス・スコアカードは、戦略の可視化にフィットするすばらしい機能を持っています。しかも、ビジネス戦略の策定だけに限らず、人生設計やライフスタイルの見直しの際に、優れた効果を発揮する戦略ツールにもなります。
 
 たとえば、マイホーム計画を立てるには、資金計画を練り、物件を調査し、パートナーや知人の意見、不動産会社などの話をよく聞いた上で、ああでもない、こうでもないといろいろと思いをめぐらしながら、時間をかけて購入物件の選定を行うのが一般的でしょう。
 バランス・スコアカードでマイホーム計画を練ることができるようでしょうか。答えはYESです。バランス・スコアカードでは、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習・成長の視点からなる4つに視点にフォーカスし、戦略を練ります。
 パートナーは、顧客の視点に関わってきます。資金計画は、財務の視点です。物件探しは、業務プロセスの視点です。知人や不動産会社から得る情報は、学習と成長の視点に関わってきます。
 
 ここで、これら4つの視点において、各々、KGI(最終目標:KEY GOAL INDICATOR)
を達成するためのアクション・プランを評価するパラメーターとして、KPI(業績評価指標:KEY PERFORMANCE INDICATOR)を設定する必要があります。PDCA(PLAN、DO、CHECK、ACTION)のC(CHECK)に当たるステップで、KPIが効果を発揮します。
 
 これら4つの視点において、機会・脅威・強み・弱みという内外の環境分析に役立つSWOT分析の手法を組み合わせて、戦略シナリオとしての「戦略マップ」を練るというプロセスを踏むことによって、バランスのとれた戦略的なアクション・プランを見出すことができます。
  
 このように、バランス・スコアカードは、人生設計やライフスタイルのチェンジに役立つ戦略思考ツールとなります。
☆ バランス・スコアカードとCRMによるアプローチ
■顧客消費プロセスへの浸透 
従来の商品中心のマス・マーケティングは時代遅れになって来ています。顧客中心のリレーションシップ・マーケティングCRM)やワン・ツー・ワン・マーケティングへの転換が事業の成否を決める時代に入っています。顧客への個別対応と信頼関係の強化がマーケティングの重要課題になってきています。
 特定の顧客のセグメントニーズに着目して掘り下げ、そのニーズに合った商品やサービスを開発、提供することにより、顧客との緊密な信頼関係を築くことがCRMでは重要です。顧客の消費プロセスに深く入りこむことにより、顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)に接点をもつことができます。
 顧客との接点のチャネルにおいて、顧客価値を最大化するためには、統計的分析手法により、顧客の購買行動を徹底的に分析することがポイントになります。
 顧客ロイヤルティ向上へのアプローチ
 さらに、顧客に対し、ロイヤルティ向上のためのマーケティング活動が要求されます。
CRMの実践においては、新規顧客の開拓、既存顧客との取り引きの拡大及び維持管理が必要です。既存顧客に対しては、既に購入している商品やサービスの頻度・レベルを上げるアップグレードのアプローチがよく用いられます。また、既に購入した商品やサービスに関連した他の商品を販売するクロスセリングの手法も使うと効果的です。 
 特に、既存顧客の維持管理においては、既存顧客のライフサイクル・バリューの見極めが重要であり、維持管理コストを勘案した収益性の見通しを慎重に予測する必要があります。
 顧客行動の分析や購買行動パターン発見には、データウエアハウスによる科学的な分析手法を活用することが効果的です。
 さらに、顧客の購買行動データの収集においては、多様なデータチャネルから情報を補足する必要があります。たとえば、顧客との接点であるコールセンター、クレジットカード、Webサイト、携帯電話、販売員などが上げられます。
 CRMの情報システム構成としては、一般的に、顧客との接点をカバーするフロント・オフィス、顧客データベース管理及びデータ分析管理を受け持つミドル・オフィス、そして、業務データをカバーするバック・オフィスの3つの要素からなります。
 
■CRMとKMの融合
 
 今後の方向として、CRMとKM(ナレッジ・マネジメント)との融合のシステム形態が重要になってくるでしょう。複雑化する事業環境とニーズの変化の激しい顧客に対応したニュービジネスを開拓し、創造的な新商品やサービスを提供していくためには、顧客情報の体系化、再利用化、学習化を通じて、直接的な価値を生み出せるような知識のマネジメントの仕組みを構築していくことが大切です。
☆ バランス・スコアカードにおける業務プロセスの視点とTOC、SCM
 TOC、SCMは、製造業、流通業を始め、あらゆる業界に浸透してきている経営手法の大御所です。
 SCM(サプライチェーン・マネジメント)は、企業内外の垣根を越えて、供給活動におけるモノの流れ、情報の流れ、キャッシュの流れを価値連鎖として、参加企業間で最適に一元管理するものです。
 キャッシュフロー経営に転換していくために有力な戦略的経営管理手法として、脚光を浴びています。
 SCM(サプライチェーン・マネジメント)のアプローチは、全体の効率を阻害する要因であるボトルネックを企業活動の中で発見し、改善を加え、全価値連鎖の同期化、スピードアップを部門間、企業間の枠を越えて行う仕組みを構築することにあります。
 これにより、企業活動に関わる情報のシームレスな共有化を図りながら、トータルリードタイムの短縮化、在庫削減、売り上げ機会損失の低減とキャッシュフローの最大化を狙うことができます。
 TOC(THEORY OF CONSTRAINTS)についても触れておきましょう。この理論はイスラエルのエリヤフゴールドラット氏が提唱したもので、その著書である「ザ・ゴール」の小説仕立ての解説で一躍脚光を浴びました。
 最初に、サプライチェーン(供給連鎖)を構成するメンバーである各々の企業、ミクロ的にみると、部門あるいは製造工程において、プロセス・チェーン間の同期化を阻害しているサプライチェーン全体の供給スピードを下げてしまうようなボトルネックを発見します。そして、一旦、全てのプロセス・チェーンをネックのレベルに同期化させます。次に、ボトルネックを改善します。これらのステップを繰り返し、プロセス・チェーン全体の最適スピード化を図っていく理論です。ネックを拡張して捉えると、経営全般に適用できます。
 企業活動、生産活動をチェーンの連鎖にたとえたサプライ・チェーン理論(マイケル・E・ポーターが提唱)では、ここの構成要素の活動がチェーンに相当し、スループットはチェーンの強度に対応します。企業活動、生産活動のチェーン全体の強度は最も弱い部分の強度で決まります。すなわち、スルーップットの増大はこの弱いチェーンである制約条件の発見、強化を図ることにあります。
 TOCにおける企業のゴールの目指すものは、制約条件に着目して、販売時点でのスループットの最大化と在庫及び業務費用の最小化を達成することです。

☆ バランス・スコアカードにおける業務プロセスの視点とコンカレント・エンジニアリング(CE)
 源流段階にフォーカス 
 製品コンセプト及び目標コストを決定する源流段階のプロセスにおいて、開発、製造、物流、販売及びサービスの各部門の垣根を取り払い、同時並行処理による全部門一体の協調活動体制のもとに俊敏な製品開発を進めることをいいます。
 製造コストの70〜80%は製品企画段階で決まると言われています。すなわち、川下の製造段階、あるいは、調達段階でコストダウンを図ろうにも、改善の余地は限られてくることになります。
 コスト、品質を源流の開発段階で、前倒しで作り込むことにより、試作回数の削減による試作コストの大幅な低減を狙うことができます。さらに、製造の容易性の評価や現有設備とのマッチングの検討といった最適な工程設計や生産設計は、製品構造や形状が確定する前に、関連部門の担当者が同じ土俵で進めていくことが大切です。
 
■トータルコスト・マネジメントの視点
 大競争時代ではコストは事業の生命線です。今後は、廃棄及びリサイクル化まで含めた製品ライフサイクルコストを一元的にマネジメントできるような情報化の仕組みを構築していくことが環境経営にシフトしていくためにも必要です。
 特に、製造原価のみでなく、ディーラー・マージンなどの販売コスト、開発コスト、ユーザー・コスト、廃棄コスト、リサイクル・コストを、コスト要因が確定する製品企画及びマーケティングの段階で、しっかりと把握することが重要です。ここで、留意すべきことは、必要コストを積み上げてコストをはじくやり方は顧客主導の時代には受け入れられないということです。顧客が主役の市場においては、まず市場価格ありきなのです。市場価格から目標利益を引いた残りの中で必要コストを積み上げ、事業の規模、人員、設備などを計画していかなければ競争優位に立てません。
 このような引き算の発想による事業戦略、製品戦略のもとに、経営資源の再配分と最適化を図りながら、コンカレント・エンジニアリング活動を進めていくことが企業活動のキーとなります。
 企業経営における収益性、効率性、安全性、生産性、成長性の視点は、バランス・スコアカードにおける財務の視点のKPIに使われます。
 バランス・スコアカード戦略では、PDCA(PLAN、DO、CHECK、ACTION)のサイクルをしっかり回すことが大切です。特に、財務会計の視点で、経営の評価を数値でモニタリングすることが重要です。 
  財務諸表を使って分析することにより、経営分析の切り口をうまく使いこなせば、会社経営の実態がくっきりと見えてきます。経営分析の基本情報は、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書の3つから収集できます。
 財務諸表の数値をいろいろな切り口で加工して計算すれば、各種の有益な経営判断データを導き出すことができます。業界・競合・時系列・目標値の比較によって分析することも有効です。業界情報、競合他社情報、数年間の過去の経営数値など、各種の経営情報をベースに、経営指標を相互比較することによって、事業の経営レベルを把握することができます。
☆ 決算書とバランス・スコアカード
 
 企業の決算書を読み解く能力は、ビジネスパーソンや投資家にとって必須能力となっています。新会社法が施行され、決算書の内容も変更になっています。従来の資本の部は、純資産の部と呼ぶようになりました。従来の利益処分計算書に変わり、新たに株主資本等変動計算書により、期首および期末における資本の増減を明確に理解できるようになりました。
 
 バランス・スコアカードは、業績評価のモニタリングの仕組みを提供する経営ツールであるため、有効な戦略的マネジメントシステムであるといえるでしょう。組織階層のピラミッド構造にバランス・スコアカードを組み込ませることで、組織を挙げての全社的なKPI(業績評価指標)のコントロールとモニタリングが可能になります。すなわち、決算書は、KPIによって組織的に監視できるわけです。バランス・スコアカードは、欧米では、IR情報の充実化には不可欠であり、資本市場からの資金調達には、必須のツールとなっています。その意味で、企業活動に従事するものだけでなく、投資家にとってもバランス・スコアカードは常識といえるでしょう。
 特に、決算書は、数々の優れた業績評価指標をステークホルダーに論理的に提供してくれるビジネス戦略手法であるといえます。決算書の数値は、経営分析という理論によって、企業の経営状況、財政状況を明確に判断できるものに価値転換されます。ここでは、経営数値に対する精緻な洞察力と企業経営の基本理論を熟知していることが重要です。