3分でわかる経営戦略論
マイケル・ポーターのファイブ・フォース・モデルとは
企業が置かれている業界の分析手法の代表的なものにファイブ・フォース・モデルがあ
ります。市場に存在する5つの競争要因をもとに、業界が持つ魅力度を測定し、分析するための手法です。
△業界構造を把握できるファイブ・フォース・モデル
ファイブ・フォース・モデルは、米国の競争戦略の権威であるマイケル・ポーター氏によって生み出された経営手法です。市場に存在する5つの競争要因を認識して、業界が持つ魅力度を測定し、分析することができます。?業界内の競合の存在、?新規参入障壁の高さ、?代替品の存在、?顧客の力、?供給業者の力からなる5つの視点をいいます。
新規参入者が業界に出現すれば、市場競争は激化します。例えば販売価格の値下げ競争が始まり、製品の供給過剰の状況に陥ってしまうこともあります。新規参入組みが新たなビジネスモデルを投入することにより、従来の業界ルールが破壊され、新規の業界ルールに取って代わられることもあります。
顧客の交渉力は業界構造を左右する大きなファクターとなります。ある特定の顧客が業界の総取引量に占めるウェイトが非常に大きい場合、顧客パワーが強固になります。例えば、トヨタ自動車などのガリバー企業が該当します。購入する製品が差別化されていない場合や、競合が数多く存在する場合、顧客の収益力が低く値下げ圧力が大きい場合なども、顧客パワーが大きくなります。
いっぽう、供給業者の交渉力は、業界そのものが独占あるいは寡占状態にあるような場合、顧客に対する優位性が向上します。代替製品のない特殊な製品のような場合や、顧客が供給業者にとって重要顧客でない場合も、供給業者の交渉力が顧客よりも増大します。
△業界の魅力度の判断はどうするか
業界内に競合が多く存在すれば、業界の魅力度は低いと判断できます。競合に打ち勝つための企業努力は大変なものになるからです。参入障壁の低い製品・サービスを対象とする業界では、同業者の容易な進出を促すため、競争が激しくなり、業界の魅力度は低下します。特殊なノウハウや技術、設備などを必要としない製品やサービスでは、数多くの企業が参入してきます。
このため、コスト競争が激化し、利益率が低下するのが一般的ですので、業界の魅力度は低いものとなります。
売り手と買い手の関係で、業界構造を把握することもできます。顧客(買い手)の購買における交渉力が強ければ、売り手企業側の立場は弱くなり、業界の魅力度も下がります。
以上のように、ファイブ・フォースにおける力関係のバランスは、外部環境要因である景気変動や製品・サービス特性、競合の存在などによって、様々なパターンをとることになります。
企業活動は、プロセスが生み出す価値の総和ともいえます。プロセスのつながりから生み出される価値の連鎖というもので、企業活動を捉えることができます。
△企業活動が生み出す価値にフォーカス
バリュー・チェーン(価値連鎖)とは、米国の経営戦略の権威であるマイケル・E・ポーター氏が提唱した概念です。企業における開発、調達、生産、販売、サービス業務などの各々の活動が、サプライヤーを含めた企業内外でどのような連携関係を持たせて付加価値を生み出すかを検討する考え方を指します。
マイケル・E・ポーター氏が提示するバリュー・チェーンのモデルでは、価値連鎖は、購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスという5つの主活動、および調達活動、技術開発、人事・労務管理、全般管理(インフラストラクチャー)の4つの支援活動からなっています。
ここでは、プロセス思考の発想が要求されます。製品を生み出す企業活動では、各々のプロセス、例えば、開発というプロセスや調達、生産というプロセスが有機的にチェーン(鎖)のようにつながっています。
人、組織、情報、モノ、金などが介在する価値の連鎖のデザインが不十分なものであると、経営効率は悪化し、プロセスのコストは増加し、スピードは低下します。企業が付加価値を高めるオペレーションを実践していくためには、付加価値を生み出すための個々のプロセスが企業の最終の成果にどのようなレベルで貢献しているのかを評価する必要があります。
現状打破を図るため、企業活動における価値連鎖の強み・弱みを見極め、弱いところは強化することで、競合に負けない企業体質の形成を図ることができます。
企業活動では、企業収益の向上と売上の拡大のために関連部門が密接に関連しながら、人、モノ、金、情報の有効活用による経営資源の最適化を図ります。企業活動の価値連鎖における情報の共有化、及び一元管理を図っていくことが、スピード経営には不可欠になっています。
■戦略的マーケティングの4P&4Cとは
戦略的マーケティングでは、4P&4Cとして知られているマーケティング・ミックスのアプローチ手法があります。
△顧客と売り手の両サイドから見る4P&4Cとは
売り手の視点からみた4Pとは、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プレイス(流通チャネル)、プロモーション(広告、セールス・プロモーション、ダイレクトメール、パブリシティ)から構成されます。買い手側の顧客から見た4Cとは、顧客にとっての価値(Customer Value)、顧客の負担(Cost to the Customer)、入手の可能性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)からなる4Cとして表現できます。
マーケターがマーケティング・ミックスを販売の観点から見たものが4Pであり、顧客が価値や問題解決のための購入と考えているものが、4Cと呼ばれているものです。
顧客のニーズは、企業側との双方向のコミュニケーションを通じた製品・サービスの提供です。製品やサービスが入手しにくければ顧客の手元に届きません。顧客は、製品・サービスを容易に知ることができる手段や環境を待ち望んでいるのです。
そのため、製品の使用や廃棄に要するトータルコストが、製品価格として妥当かどうか、競合の製品と比べることで、選択を決定する購買プロセスを見抜き、顧客の購買行動の決定の主要因子を明確にするアプローチが大切です。
ベネフィットとしてよく使われるのは、カスタマイゼーション、利便性アップ、迅速かつ優れたサービス、コンサルティング、会員限定のインセンティブ、などです。
ここでは、eマーケットプレイスに見られるサイバースペース上での電子商取引に対応できる業務プロセスと顧客管理システムが要求されます。流通チャネルも多様化し、電子カタログ、電子メール、インターネット関連のWebサイトや携帯電話上でのバナー広告やブログなど、新規のアイデアを伴ったマーケティング手法により、価値伝達の手段とそのプロセスは今後、大きく変貌してくることが予想されます。
△電子商取引ビジネスにおける差別化のアプローチ
電子商取引ビジネスでは、製品・サービスの差別化をどこで図って行くべきか、顧客により多くのベネフィットをどのような形で提供していくべきか、これらに対する答えはインターネットの特性をよく理解したうえで、マーケティング活動に反映していかねばならないでしょう。
顧客データベースシステムの強化による顧客へのきめ細かい対応の仕組みの構築や、電子メールや電話の問い合わせに対して迅速な回答ができるバックオフィスの充実化がキーとなるでしょう。ここでは、物流システムの整備や、迅速な顧客の納期回答、決済手段のセキュリティ確保の仕組みなども差別化のアプローチとして有効です。
■フィリップ・コトラーの競争的マーケティング戦略とは
マイケル・E・ポーターの競争戦略では、市場シェアの視点が明確に取り込まれていま
せん。マーケティング戦略の権威であるフィリップ・コトラーは、競争的マーケティング戦略において市場シェアの概念を植え込んでいます。
△市場シェアでポジショニングする競争地位別戦略
フィリップ・コトラーは、マーケティングにおける市場地位のポジショニングの視点で、競争的マーケティング戦略を編み出しました。市場における企業の相対的規模および地位と、マーケティング戦略との関係を明らかにしています。市場シェアの視点から、マーケット・リーダー、マーケット・チャレンジャー、マーケット・ニッチャー、マーケット・フォロワーの4つの分類からなる市場地位のポジションを提示しています。
マーケット・リーダーは、市場で最大のマーケット・シェアを有している企業のことです。競争企業の標的ともなる存在です。リーダー企業の狙いとするところは、市場でのトップの地位を維持することです。マーケット・シェアを維持・拡大するとともに、市場規模全体を一層大きくするために必要な方法を発見することがマーケティング・リーダーの目的となります。
マーケット・チャレンジャーは、市場の地位でマーケット・リーダーには劣りますが、リーダーに次ぐ豊富な経営資源と市場シェアを有しています。チャレンジャーは、リーダーから市場シェアを奪い、リーダーの地位を脅かす存在です。新製品の投入や低価格戦略などによって、リーダーに戦いを挑んでいく戦略を採ります。
あるいは、イノベーションによる画期的商品の市場投入やサービス改善、製造コスト低減、広告・販売促進の強化を図るアプローチもあります。リーダーの弱点を発見し、その攻めやすさを評価したうえで、攻撃対象をリーダーにするか、あるいは、追随企業ないしは弱小企業に的を絞るかを決定することになります。
マーケット・リーダーにすべての追従企業が挑戦するわけではありません。マーケット・リーダーが総力戦で望めば、対抗企業は、病弊して、再起不能となるケースも出てきます。
マーケット・フォロワーの戦略は、マーケット・リーダーの反撃を受けないように現状のシェアを維持し、市場での生き残りを模索します。フォロワーは、リーダーを模倣し、低コストへの努力と高い品質やサービスの維持に傾注する戦略を採ることで、一定のシェアを安定的に獲得することを目指します。
いっぽう、マーケット・ニッチャーは、ニッチ市場を狙い、集中化戦略を採用します。ニッチ市場では、まず、利益を確保できるだけの市場規模と購買力があるかがポイントになります。次に、成長潜在性があり、自社の経営資源を最大限に発揮できるだけでなく、大手企業の参入が難しい市場であることが要求されます。
■ボストン・コンサルティング・グループのPPMとは
経営戦略の策定の手法として、製品と事業に焦点を当てたPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)があります。
△4つのカテゴリーで事業を特徴付けるPPM
PPMは、1960年代半ば以降の米国で巨大コングロマリット企業による事業再編の中で、大手コンサルティング・ファームのボストン・コンサルティング・グループが開発した経営戦略策定の経営手法です。PPMの手法では、事業・製品の魅力度を表す市場成長率と、業界における事業・製品の強さ・弱さを表すマーケット・シェアからなるマトリックスで評価して、事業の重点分野と撤退分野を選別し、経営資源の最適な組み合わせを検討できます。
PPMでは、市場成長率とマーケット・シェアの2軸からなるマトリックスによって、事業を、?花形製品(高成長・高シェア)、?金のなる木(低成長、高シェア)、?問題児(高成長、低シェア)、?負け犬(低成長、低シェア)に区分し、企業全体として最適な経営資源の配分(ポートフォリオ・マネジメント)を検討することができます。
多角化を行っている企業では、各事業領域をSBU(Strategic Business Unit:戦略事業単位)と呼んで、事業別の採算管理をシビアに行っているところが多くあります。PPMにより、自社が保有する人材、モノ、金、技術、ノウハウ、及び情報などの経営資源をどのように各事業に最適配分すれば、経営効果の最大化が見込めるかを判断できます。選択と集中の視点で、戦略的重点事業分野と撤退事業分野を見極め、経営資源の最適化を図り、事業運営を図っていくことができます。
場合によっては、強い事業の優れた人材や経営手法を弱い事業に水平展開することで、シナジー(相乗)効果を狙うアプローチや、他社の経営資源を活用するために、買収、合併も選択肢に入ってきます。金のなる木の事業で稼いだキャッシュは、成長著しい問題児の事業や花形製品に投入され、将来の有望事業に育成していくための戦略がとられます。
花形製品は、市場シェアが高く、成長率が高いため、売上高の向上が見込めますが、市場の成長が著しいため、事業を維持し、競合に対抗するために必要な投資も増加するのが一般的です。花形製品では、成熟期に達するまで市場シェアを確保し、金のなる木にもっていく事業戦略がポイントになります。
PPMの適用で注意すべき点は、市場成長率とマーケット・シェアの2軸だけで評価するため、場合によっては評価軸が不足し、経営判断を誤ることがあるということです。
PPMを使いこなすためには、事業ドメインというものを知っておくと有効です。企業における事業のドメイン(事業領域)は、顧客、ニーズ、コア・コンピタンスの3つの軸で捉えることができます。ターゲットとする顧客は誰なのか、顧客のセグメント化がポイントになります。
■マッキンゼーの7Sとは
マッキンゼーの7Sは、組織を評価するうえで有効な経営分析手法です。企業戦略におけるファクターの多様性と相互関係を表すことができます。
△組織を多角的に評価できるフレームワーク
世界的なコンサルティング会社のマッキンゼーは、7Sという組織評価モデルを開発しています。7Sとは、Structure(機構)、Strategy(戦略)、System(システム)、Staff(人材)、Skill(技術)、Management Style(経営スタイル)、Shared Value(共通の価値観)の7つからなる組織のファクターを指しています。
Structure(機構)では、事業部制組織、マトリックス組織、プロジェクト組織、機能別組織、ネットワーク型組織など、事業特性や組織目的によって各種の組織形態が選択されます。
Strategy(戦略)では、企業の競争優位を確保し、経営資源の最適化を目的とした経営方針とアクション・プランを評価します。
System(システム)では、企業のオペレーションの仕組みや企業ルール、情報システムを評価します。
Staff(人材)では、組織の人材の特徴や特性、能力の視点から、戦略推進の源泉となる人材を評価します。
Skill(技術)では、組織が有する技術やナレッジ、組織能力を評価します。Style(経営スタイル)では、企業文化や企業風土を評価します。
Shared Value(共通の価値観)では、企業の経営理念や社会的な存在意義、従業員の行動規範や価値観を評価します。
7Sのモデルでは、Shared Value(共通の価値観)を組織の求心力とみなし、7Sを統合するものとしています。7Sのそれぞれのファクターは、有機的な結合を保っている状態が理想です。7Sの中で、整合性を保てないような状況に陥った場合は、そのファクターにフォーカスし、組織の改革を図っていくことになります。
■アンゾフの製品・市場マトリックスと多角化戦略とは
アンゾフは、企業成長のフレームワークを製品・市場マトリックスで提唱しました。ど
の市場にどのような製品を供給するかを明確に解き明かした成長戦略です。
△4つの製品・市場マトリックスとは
アメリカの経営学者H・I・アンゾフが著した経営戦略の古典「グループで製品・市場の成長の方向性を示す製品・市場マトリックス企業戦略論」で紹介された手法です。新製品を輩出できない企業は、いずれ、顧客ニーズの変化に追随できず、資本市場から撤退を余儀なくされることになります。アンゾフは、既存製品と新製品、既存市場と新市場という枠組みにフォーカスし、そこで策定されるべき戦略を、2×2の4パターンに類型化しました。
企業は、既存の製品および市場をベースに事業拡大を図っていくことで、事業成長を目指します。アンゾフは、横軸の製品と縦軸の市場からなるマトリックスにおいて、4つのパターンに戦略を類型化しました。すなわち、市場浸透戦略、市場開発戦略、製品開発戦略、および多角化戦略からなる4つの戦略を製品・市場マトリックスに配置しました。
●市場浸透戦略のアプローチ
市場浸透戦略では、既存市場において、既存の製品を浸透させる戦略を練ります。企業にとって新たな経営資源投入の負担とリスクが少ない戦略といえます。
この戦略では、マーケット・シェアの拡大を図るために、既存顧客に対する顧客単価の増大を図るとともに、未だ自社製品を購入していない顧客に対しては、販売を促進していくことになります。
ここでは、製品の原価の低減による販売価格の値下げや、流通の合理化を進めていくアプローチがとられます。
●製品開発戦略のアプローチ
既存の市場で、新規の製品を市場投入していく戦略です。既存顧客に新製品をいくつも勧める戦略が当てはまります。既存顧客には、なじみある製品を通じて、顧客ロイヤルティを企業が獲得しているため、新製品に対しても、抵抗が少なく、ブランド志向や、指名買いによる購買行動が期待できます。
●市場開発戦略のアプローチ
新市場に対して、既存製品の浸透を図り、売上の拡大を狙う戦略です。この戦略では、まったく新規のエリアを市場開拓する場合だけでなく、既存商品の新用途開発による市場開拓のアプローチもあります。
例えば、肌を美しくする女性用化粧品を、肌のスキンケアに敏感な男性向けにも販売するようなケースが挙げられます。
●多角化戦略のアプローチ
多角化戦略は、既存市場、既存製品の範疇からはみ出た戦略のことです。新市場において、全くの新製品を投入する戦略です。多角化戦略の目的には、事業のリスク分散やシナジー効果の追求などがあります。
■ナレッジ・マネジメントとは
多様な顧客のニーズにきめ細かくカスタマイズ化で対応できる知的財産戦略を有する企業のみが競争優位のポジションを確保できる時代が到来しています。
△目に見えない資産(Intangible Asset)を管理するナレッジ・マネジメント(KM)
個人の頭の中にこもっている知識を暗黙知と呼んでおり、言葉やイメージなどに容易には表現できないものです。形式知とは、個人的経験としての暗黙知を言語化し、コード化したものです。
ナレッジ・マネジメント(Knowledge Management)とは、個人に埋没しているノウハウや経験、知恵などの目に見えない知的資産(暗黙知)を組織で共有し、体系的に管理、活用することにより、組織の知的生産性の向上を図っていく手法です。
ナレッジ・マネジメントは、暗黙知の提唱者であるマイケル・ポラニーに端を発し、その後、米国のピーター・M・センゲや、野中郁次郎によって進化してきています。
従来、企業の資産は、目に見える資産(Tangible Asset)に重きを置いた経営を行ってきました。土地、建物、設備など、製品を生み出すための資産をいかに多く所有し、効率よく使用するかによって、企業業績は左右されました。
ところが、現代では、目に見えない資産(Intangible Asset)である知的資本をいかに活用するかという知的財産戦略を持たない企業は、厳しいサバイバル競争に生き残れない時代になっています。
例えば、知的財産権の代表格である特許の分野では、大手企業が、活用されないで埋没している自社の保有特許の活用に向けて、知的財産戦略を打ち出しているところが多くあります。
知識創造のプロセスでは、知識資産は、個人、組織、企業の各レベルへの昇華のステップを辿っていく過程で、その内包する付加価値のレベルを上げていき、企業にとって、戦略的価値を持つものに転換されます。知識資産の蓄積・測定においては、企業内に散在する知識資産を分類、層別化、体系化するプロセスを踏みます。
経営戦略、事業戦略の観点から、体系化された知識資産に重み付けを行い、事業のコアとなる知識資産を明確にし、ビジネスモデルの源泉に結び付けていくことになります。
目に見えない資産(Intangible Asset)の代表格は、キャッシュを投じて獲得した人材やノウハウ、技術、IT資産のソフトウェアやブランド・エクイティ(ブランドの資産及び負債を表わす概念のことで、米国のデービット・A・アーカーが提唱)です。
優秀な人材の活用により、企業内において、経験・ノウハウが蓄積され、最適な経営が実践されます。
ここでは、ナレッジ・マネジメントの導入により、ビジネス・プロセスの付加価値を向上させることができます。個人が所有するナレッジ(知識)や経験・ノウハウを、組織として蓄積・共有・活用することで、目に見えない資産(Intangible Asset)の価値は向上します。目に見えない資産(Intangible Asset)である知的資本を組み替えたり、新規に導入したり、活用することによって、決算書には直接には数値で表記できませんが、収益向上という数値の結果となって表れてきます。
この意味で、キャッシュ(決算書の目に見える資本)とナレッジ(目に見えない知的資本)は相互に転換の連鎖を繰り返すものであるといえます。
■コア・コンピタンスとは
コア・コンピタンスとは、企業の核となる強み(競争力)のことで、C・K・プラハッドとG・ハメルが提唱した概念です。利益の源泉となり、他社と比較して優越した自社独自のスキルや技術を指します。
△企業競争力の決め手となるコア・コンピタンス
内部環境分析としての自社分析では、技術力、販売力、ブランド力、シェア、収益性、売上高、及び経営資源としての人材、組織、ノウハウ、スキルなどの強み・弱みの分析対象要素があります。
コア・コンピタンスは、多角化した企業を樹木に見立てて、生命力の源である根をコア・コンピタンス、幹と大きな枝をコア製品とし、細い枝をビジネス・ユニット、さらに葉や果実、花を最終製品と解釈しています。コア・コンピタンス、すなわち核となる企業競争力の強化には、集団学習と多様な技術やノウハウの統合化が決め手になることを示しています。
ミクロ環境要因では、コア・コンピタンス以外に、その企業を取り巻く業界構造や市場があります。競合分析では、市場におけるシェア、参入障壁、業界構造、強み、弱みを検討します。市場規模、成長性、顧客動向、顧客ニーズ、購買行動、ライフスタイルなどは市場分析の対象となります。
多角化事業を行なっている企業では、不採算事業を抱えて苦しんでいるところが多くあります。このような企業では、不振事業は、リストラを行うと同時に、本業のもつ魅力や強みを洗い出し、そこに経営資源を集中することによって、事業基盤の強化を図ることができます。コア・コンピタンスは、本業のなかにこそ、キャッシュフローを稼ぐための源泉が潜んでいることを示してくれます。
△マクロ分析のPEST
いっぽう、マクロの視点で外部部環境分析を行う手法にはPESTという手法があります。政治、経済、技術、文化、環境、人口統計が対象となります。PESTは、市場に影響を与えるものは何かを見極め、マクロ環境の変化を4つの切り口で分析します。
マクロ環境の変化を見る要因には、政治的環境要因(Politics)、経済的環境要因(Economic)、社会的環境要因(Social)、技術的環境要因(Technology)があります。これらの頭文字をとり、「PEST分析」と呼んでいます。
政治的環境要因には、企業経営全般に関わる法制度の変化、戦争、規制緩和などがあります。経済的環境要因には、マクロ経済の変化、民間設備投資動向、人口動態変化、公定歩合の変動、地価動向、消費者物価指数などが挙げられます。
社会的環境要因では、人口構成やライフスタイルの変化などに着目します。技術的環境要因みは、IT技術革新、基盤技術の開発、新規マネジメント手法などがあります。
■ベンチ・マーキングとは
ベンチ・マーキングは、競合他社や優れた企業と自社の実力を比較する分析手法です。ギャップを明確にし、それをベースにして改革のあるべき方向を打ち出すことができます。
△優秀企業とのギャップ分析で改革を進めるベンチ・マーキング
ベンチ・マーキングは、先進的な同業他社や競合他社の優れたビジネスのやり方や業務プロセス、製品、サービス、財務などを自社のものと比較、分析し、そのギャップを埋めるための企業改革を図っていくための手法です。ベンチ・マーキングの起源は、米国のゼロックスが業績不振に陥っていたとき、ロバート・C・キャンプがコンサルタンとして経営指導した手法に求めることができます。
ベンチ・マーキングでは、企業の核となる能力やノウハウ、技術、マネジメント・スキルなど、いわゆるコア・コンピタンス(企業の核となる強み)を見極める必要があります。
次にこのギャップを埋め、競合に打ち勝つために目標基準を設定し、ビジネスの改革を図っていきます。ベンチ・マーキングにより、目標とすべき企業のベスト・プラクティス(優れたビジネスのやり方)に習い、アクション・プランによる改革を図っていくことができます。
ベンチ・マーキングの方法論の代表的なものには、?戦略的ベンチ・マーキング、?競合ベンチ・マーキング、?プロセス・ベンチ・マーキング、?社内ベンチ・マーキングの4種類を挙げることができます。
戦略的ベンチ・マーキングでは、世界レベルの経営戦略のベスト・プラクティスを見習って、戦略の方向性を明確にし、経営資源の戦略的な最適配分を行ないます。
■製品ライフサイクルPLCとは
製品のライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)は、製品が市場に投入されてから撤退するまでの一連のサイクルのことをいいます。導入期、成長期、成熟期、衰退期という4つのステージから構成されます。
△製品、事業の年齢に応じた最適な戦略を練る製品ライフサイクル
PLC(Product life Cycle)とは、製品や事業、ブランドの年齢を導入期→成長期→成熟期→衰退からなる4つのフェーズで捉え、製品や事業、ブランドがどのフェーズにあるのかを見極め、フェーズごとに最適な戦略を策定するマーケティングの手法です。ライフサイクルのフェーズごとに売上や利益率が上下に大きく変動するため、フェーズの特性にマッチした競争戦略やマーケティング戦略が要求されます。
導入期では、設備投資や、研究開発投資、およびマーケティング費用の比重が大きく、市場の認知度も低いため、事業の立ち上げ当初は、キャッシュフローがマイナスとなるのが一般的です。
ここでは、販売促進のための各種の施策やブランド構築のアプローチが要求されます。市場が小さく、売上の伸びが低いため、競合の参入も比較的少ないケースです。
成長期では、製品やサービスの市場浸透が進むにつれて、投資回収が可能になってきますが、競合の参入も増えてくるため、収益性は思ったほどには上がらず、低コストを武器としたコスト・リーダーシップ戦略や、機能やデザインなどで製品の差別化を図ることにより、利益率の向上を図ります。生産設備の強化やマーケティング活動に要するコストが膨らむため、キャッシュフローはマイナスになりがちです。
成熟期では、市場が成熟し、投資回収が本格的に進み、収益性の高い事業となり、キャッシュの増加が期待できますが、競合の参入による競争激化のため、売上高、収益性の低下に陥りがちです。市場の細分化による新規顧客の開拓も必要となります。
成熟期には、競合他社との差別化を図るアプローチが要求されます。衰退期では、製品・サービスの陳腐化が進み、競合製品の進出により、製品・サービスの市場における魅力度も下がってきます。市場は、縮小傾向となり、事業の採算悪化により、事業の見直し、撤退などの選択肢も要求される段階となります。
競合ベンチ・マーキングでは、世界中の同業の競合他社と業績、経営方法、プロセス、方法論などの違いを見極め、競合に優位に立つための方策を検討します。
プロセス・ベンチ・マーキングでは、具体的な業務活動のプロセスを改善します。開発プロセスは競合に勝っているが、生産力が弱い場合には、生産力の強化に向けた戦略を練ります。
ここでは、革新的な生産方法の開発や生産設備の増強、生産システムの強化といった選択肢が浮上してきます。
例えば、生産リードタイムがライバルに比べて2倍かかっているケースや一人当たり売上高がライバルよりも少ないことが判明すれば、そのギャップを埋めるためにいかなる対応を図っていくべきなのかを検討することになります。
社内ベンチ・マーキングでは、グループ企業、他工場、他事業所など、対象が企業グループ内に存在し、社内でのベストな手法やプロセスの水平展開を図ります。
下記の拙著をご参考に願いましたら幸いです。
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Balanced Sheet and Profit/Loss Analysis Training: 70 Analysis Knowledge for Strategic Management
- 作者: Tomohisa Fujii
- 出版社/メーカー: Createspace Independent Pub
- 発売日: 2014/12/08
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