ITプロジェクト成功のための4つの視点

 ITプロジェクト成功のための4つの視点―






 プロジェクトメンバーが各々の価値基準や判断で情報収集及び情報の取捨選択を行なっては、ビジネス改革の要件定義において実態に合わない新システムの絵を描いてしまうリスクが発生じかねません。




□プロジェクト成功のための4つの視点のコントロール


プロジェクトマネジメントで、最も重視すべきことは、クオリティ、コスト、スピード、インタフェースの視点を駆使することに尽きます。クオリティとは、構築する情報システムの品質です。バグのない情報システムは、クリアすべき、最低条件となります。ここは、妥協があってはならない橋頭堡ともいえるものです。バグの発生は、企業に多大の影響を及ぼします。できあがった情報システムは、企業の従業員だけではなく、そのシステムに関わる顧客、協力会社、得意先など、非常に広範囲のエリアをカバーしているのが一般的だからです。




 ここでは、関係者、関係部門、関係会社からなるステークホルダーにより、プロジェクト・クオリティとしての評価基準を経営的視点から明確にすることも必要です。プロジェクトの評価では、PDCAを回し、モニタリングを実施して、投資対効果の見極めをしっかり行う体制を整備することも重要です。




 プロジェクト・コストは、TCO(Total Cost Of Ownership)という視点で捉える必要があります。情報システムの設計、開発、導入、運用、廃棄に関わる全プロセスに要するコストです。運用コストの比重が非常に大きくなってきている中で、いかに運用の最適化を図れるビジネスデザインをクライアントに提示できるかということが、ITビジネスの差別化の大きなファクターになってきています。




 プロジェクト・スピードは、プロジェクトをユーザーから要求された納期をいかに遵守して、情報システムを構築できるかということを意味しています。スケジュール管理は、プロジェクトリーダーの能力のレベルに大きく関わってきます。プロジェクトメンバーの人材配置をいかにうまく計画し、メンバーが持っている能力をいかに最大限に発揮させることができるかによって、納期をクリアできるかが決まってきます。ここでは、リスクマネジメント能力も要求されます。プロジェクトでは、当初予想しなかった様々なリスクが発生するからです。







 プロジェクト・インタフェースは、現場ユーザーとのコミュニケーション、およびプロジェクトメンバー間におけるコミュニケーションのあり方の問題です。現場ニーズが的確に把握できないと、大きなコストオーバーや納期遅延につながってきます。これは、能力を超えた負荷がプロジェクトチームにプレッシャーとなってきますので、バグの多発にもつながってきます。インタフェース・コストというものを認識することが重要です。コミュニケーション機能がうまく働かないと、コストに大きくはねかえってくるということなのです。

 このインタフェース・コストは、プロジェクトマネジメントにおいてだけではなく、異種システム間のデータ連携の検討においても見逃してはならない視点です。データ連携のためにカスタマイズ費用が大きく発生してくるようなデザインを行うと、インタフェース・コストに跳ね返ってきます。




□ 推進体制の整備とインタフェース機能の発揮


プロジェクトリーダーは、まず、プロジェクトメンバーの役割・責任分担を明確にして、プロジェクトメンバーの組織図を作り、経営トップの承認を得ておくことが大切です。ここでは、プロジェクトの総括責任者、技術責任者、システム設計責任者、運用管理責任者、実行メンバーといったように役割・機能分担を明確にします。

 さらに、ユーザーからは、現場の実務に精通したメンバー並びにプロジェクト全体の企画・調整・推進窓口の役割を担う事務局代表メンバーの参画が不可欠です。プロジェクトの推進体制をクライアント・ユーザに明確に説明し、安心感を与えることも大切です。




 プロジェクト内での情報のインタフェース機能を十分に発揮させるためには、プロジェクトリーダーが中心になって、定期的にプロジェクト進捗状況チェックのための会議を開催することが重要です。プロジェクトメンバー間で意思疎通を十分に図り、プロジェクト推進上の問題点、課題を全員で議論、検討し、コミュニケーションの徹底を図らねばなりません。

 場合によっては、経営トップの参画により、高所からの判断・指示を仰ぐことも必要です。プロジェクト組織はその意味でオープンな議論と意思決定ができる場でなければなりません。問題点、課題を個人レベルで抱え込んでしまい、時間切れになって発覚するといったことがないように組織的なコミュニケーション・インタフェースの形成を図る必要があります。




 会議においては、各メンバーの現状報告から始まり、各役割を担うメンバーに固有の問題点や課題をまずは洗い出す必要があります。その上で、プロジェクトリーダーは、ユーザーのニーズや社内事情、予算、スケジュール、人材資源、技術レベル、実践における難易度、経験度などの視点から調整・判断し、問題点、課題の層別化、優先度順位付けを行います。この際、ユーザーの参画により、現場ニーズをできる限り反映する形でプロジェクトを推進する場作りも必要なケースがあることを忘れてはなりません。




 プロジェクトのインタフェース機能のポイントは、関係者、関連部門、関連企業の理解を得るためのコミュニケーションの場作りが成功するかどうかにかかっているといえます。利害関係が絡む当事者同士の集まりにおいては、部分最適化の論理が幅を利かした発言がIT化の障害要因になることも多々あります。関係者、関連部門、関連企業にIT化の目的・狙いを理解してもらい、十分な協力を得るために、IT化推進に関する説明会や議論の場を設けることが重要です。

 部分最適化の発想からいかに脱却し、全体最適化の視点への転換を図るか、ここにも、インタフェース機能を十分に発揮させるための組織戦略が要求されます。IT化によって、関係者、関連部門、関連企業相互間で生まれるメリット、デメリットをいかに全体最適化の視点で調整していくか、プロジェクトリーダーの調整手腕が問われるところです。

環境変化に対応できるシナリオプランニング―






 IT化では、ビジネスの付加価値を向上させ、スピーディな企業活動を実現していくために、いかに情報を収集し、活用するかというコミュニケーション管理の仕組みをデザインできるセンスがポイントになります。さらに、環境変化に対応できるシナリオプランニング能力が要求されます。




□ コミュニケーション管理と組織戦略


プロジェクトリーダーは、プロジェクトの推進に当たっては、システム開発の負荷を見積もり、作業分割(WBS:Work Breakdown Structure)により、担当者別に作業量を割り当て、スケジュールを決定しますが、ここでは、様々なスキルや専門技術を持った人材が必要になります。多様な人材を束ねて、情報をプロジェクトリーダーが一元管理できるためには、プロジェクト構成メンバーが一致団結して、持てる能力を最大限に発揮できる場作りがポイントです。プロジェクト活動は情報が飛び交う場でもあり、必要な情報をいかに整理し、IT化デザインの源泉として生かし切るかが重要です。プロジェクトを構成する様々なメンバーが作り出す各々のコミュニケーションの場において、インタフェースとしての情報の流通が機能しないと、情報はよどみ、情報の品質の劣化が生じます。現場で収集した情報は、事実なのか、あるいは、ヒアリング時に紛れ込んだ価値判断が上乗せされたものなのか、といったことが起きます。

 さらに、個人的な性格や思考パターンが情報を色付けしてしまうこともあります。その意味で、情報のインタフェース機能としてのプロジェクトのインタフェースが正常に本来の機能を発揮して、プロジェクト活動における情報品質の確保と向上を図れるような場の形成が必須です。ここでは、コミュニケーション管理における情報品質のレベルを向上させるための役割をプロジェクト・インタフェースは担います。プロジェクト活動における情報流通機能を発揮させるためのプロジェクト・インタフェースを組織戦略の視点からデザインする必要があります。




 ここでは、プロジェクトマネジメントの品質向上と効率化を図る上で、5W2H(WHAT、WHO、WHY、WHEN、WHERE、HOW、HOW MUCH)、及びWHAT−IFのチェックにより、混み入った多数の対象事項を層別化し、整理することが不可欠です。これにより、マクロ的なチェックと問題点の発見が容易になり、迅速な対策の立案、組織的な漏れのないアクションへとつなげることができます。関係部門、関係者、関連企業などの相互の関係や、問題点、対策の関係を「連鎖のくくり」で明確にすることがポイントです。

 ある問題がどのような要因に関係しているか、ある対策の前後にはどのような;事前準備や事後対策が必要になるかといったような思考をめぐらせて、多角的にシステム思考でプロジェクトに影響を及ぼす因子を考察、検討していくスタンスが望まれます。同時に、個別の因子については、ミクロの視点で、詳細化・分析を行い、技術的・専門的な対応を図るアプローチも必要です。




□ IT化範囲の特定と契約文書の作成の徹底化


さらに、ITベンダーとの契約段階では、IT化の範囲(スコープ)を明確にし、見積もり予算の範囲内で、スケジュール、狙い、効果の達成度評価指標、及び、成果物(要求定義書、システム設計書、プログラム、運用マニュアル、など)の明確化を図って、文書で取り決めておくことが大切です。

 ここで留意すべきことは、ITベンダーとユーザー企業とのコミュニケーションの円滑化、正確化、迅速化を図るための情報管理体制の整備を図っておくことです。特に、システムの仕様変更が頻繁に起きるケースでは、情報の変更・更新管理の手続きをルール化し、システム開発に支障を来たさないように組織的な対応を図っておく必要があります。

 また、システム化では避けて通れないバグや不測のシステム障害に対して、事前に、想定しうる不測事象対応計画を策定し、ITベンダーとユーザー企業とが十分に相互理解を深めておくことが重要です。不測のトラブルが発生した場合、費用負担をどうするのか、プロジェクトの計画の見直しをどのように行うのか、スケジュール最優先か、コストのオーバーを許容できるのか、品質最優先か、支援体制をどうするかといったことが議論に上ってきます。




 ところで、IT化の対象領域の設定は、プロジェクトの品質を決めるうえで、決定的な役割を果たします。対象領域のレベル設定では、?部門内での業務レベル課題解決のためのIT化、?関連部門を含む業務レベル課題解決のためのIT化、?事業戦略に関わる事業部レベルにおける課題解決のためのIT化、?経営戦略に関わる全社課題解決のためのIT化、?サプライチェーン・マネジメント(SCM)の具現化のような企業内外の関係する企業(サプライヤ、物流業者、販売店など)との連携ビジネスにおける課題解決のためのIT化、に階層化できます。




 さらに、対象領域のコンテンツの設定では、?業務プロセスの改善・改革・革新、?新ビジネスモデルの創造・構築、?既存ビジネスのリエンジニアリング、?新業態の創出、?競争優位の確立、?コスト低減、?ビジネススピードアップ、?企業間連携、?合併&買収によるシステムの統合化、?新製品の輩出、?技術革新への対応(ブロードバンド化や新ITシステム形態など)があります。




 企業において、S1からS11及びTS1からTS5までの評価で、スコアを設定することで、プロジェクト全体の価値を評価でき、複数プロジェクトの優先順位付けに役立てることができます。すなわち、プロジェクトの全体価値=ΣSi×TSiで求めることができます。


 ITマネジメントのアプローチを知ろう!―





ITマネジメントのアプローチでは、実践のステップを関係者に明らかにして、十分な理解を得るとともに、各ステップでの課題とアウトプットを明確にする必要があります。




□ IT化の全ステップの中身


第1ステップから第7ステップまでの全てのアプローチを図表に示します。ここでは、様々な経営手法及びITソリューションをIT化のどのステップで適用すべきかを提示しています。IT化における各ステップごとに、IT化テーマの性格に応じて、経営手法とITソリューションの最適な選択と組み合わせを行うことがポイントです。




 第1ステップでは、企業を取り巻く外部環境と内部環境を分析・把握します。ここでは、SWOT分析やバランス・スコアカードが用いられます。企業における強み、弱みを外部環境、内部環境を睨みながら明確に認識します。ここから、弱みを強みに転換し、強みの一層の強化を図る方策を練ります。




 第2ステップのビジネスモデルのデザインでは、企業の存在目的、企業価値、事業価値を明確にします。経営ビジョンを打ち立て、全社的な共有を図る仕組みを構築します。この経営ビジョンの実現に向けて、IT化のデザインを描くことになります。ここでは、ビジネスの成功要因(CSF:Critical Success Factor)の発見、抽出がIT化の成否に関わってきます。どこにITのメスを入れれば、ビジネスが成功するのかを見極めることがポイントです。例えば、ある企業において、開発力が非常に優れているにもかかわらず、販売力が劣る場合、販売力の強化に向けたIT化の推進を図っていくのが有効であるということになります。




 第3ステップのデータ・アーキテクチャのデザインでは、情報の一元管理が可能な情報共有化の仕組みを検討します。ネットワークシステムの参加企業間におけるデータ連携では、インタフェース・コストをいかに最小化できるかがポイントです。ITの業界標準化動向を見極め、情報共有コストの低減が図れるシステムデザインを図ることが大切です。



第4ステップのアプリケーション・アーキテクチャのデザインでは、バリュー・チェーン(価値連鎖)のリデザイン(再設計)を図ります。ベンチ・マーキングにより、競合や業界の優秀なビジネスモデルと比較し、ギャップ分析を行うことで、ビジネスプロセスの弱みを発見し、改善・改革を図るべく、最適なオペレーションズ・マネジメントを検討します。事業価値、顧客価値、企業価値を高めていくために、いかなるビジネスプロセスが最適なのか、競合を睨みながらエクセレンス・ビジネスモデルをデザインします。




 第5ステップのテクノロジー戦略では、企業にとってのコア・テクノロジーやノウハウ並びにIT技術動向を見極め、既存システムとの融合を図り、競合との差別化を実現できるようなテクノロジー戦略を計画します。


第6ステップでは、ネットワークシステムに参加するステーク・ホルダー(利害関係者)間における利害調整を図り、相互が、IT化のメリットを享受できるようなWIN-WIN(参加者全てが勝利者)の関係をデザインします。




 第7ステップのITキャッシュフローマネジメントでは、IT投資効果を多角的に検討し、企業トップや幹部の承認を得ます。ここで初めて、本格的なIT化のスタート地点を確保できます。


ITプロジェクト企画書の作成では、プロジェクトの狙い・背景をまず、明確に記述することが重要です。なぜ,IT化を進めなければならないのか、事業性や競合他社の動向、業界の動向、技術革新の動向など、企業内外の環境を十分に把握したうえで、現状の問題点を整理し、全体最適化の発想をベースに戦略思考でもって、問題点の解決策を練ります。



問題点を解決するためのITソリューションの選択では、投資効果、現状のITの整備状況、IT人材の情報システムの運用管理能力やスキルなどを見極めたうえで、明確なソリュ−ションの絵を描く必要があります。




プロジェクトの推進においては、様々な問題や障害に万全の体制をもって望まなくてはなりません。プロジェクトの推進スケジュールを関連部門、関係者、ITベンダーとの調整のもとに明確にします。ここでは、?IT化のための現状調査・分析、ユーザ・ニーズのヒアリング、?システム設計、開発、テスト、?システム導入・本格稼働・運用管理からなる日程計画を記述します。




プロジェクト成功のキーは,リーダーシップをとって推進していける優れた人材にかかっているとも言えます。各役割別に必要なスキル、専門性、資質を明らかにし、適切な人材の選抜からなるプロジェクト推進体制を整備することが大切です。




企画書には、以上のように、プロジェクト推進上の問題点、課題を明確にします。KGI、KPIによる定量効果の表現では、目標効果の明細をできる限り金額、数値で記述することがポイントです。














 プロジェクトに関わるコストでは人材資源に関わるコスト、情報システム設計に関わるコスト、情報システムのハード・ソフトの調達に関わるコスト、情報システムの運用管理に関わるコストなど各種のコストを詳細に細分化してマネジメントする必要があります。さらに、プロジェクトにおけるステークホルダーは多面体であると見なして、マネジメントできるスタンスが必要です。




□ プロジェクトのトータルコストを把握する


プロジェクトにおけるコストマネジメントの重要なポイントは、発生コストをトータルで把握し、プロジェクトのターゲットにマッチさせるために、バランスのとれたコスト配分をIT化の各ステップで検討する必要があるという点です。
 例えば、システムの要件定義では、場合によっては外部コンサルタントの支援を仰ぐ必要が出てくるケースもあります。ここではコンサルタント費用が発生します。ハード・ソフトの調達コストの低減化を図るために、ITベンダー間で競合させる状況を作り出す必要が出てくる場合もあります。あるいは、システム設計は社内の経験豊富なITスキルのレベルが高い優秀な人材で賄うことができる場合もあります。システム運用は外注化を検討してコストダウンを図る必要性が出てくるケースもあります。特に、セキュリティリスク対策には上限がなく、投資対効果のバランスの見極めがポイントになります。



このように、コストマネジメントにおいて、プロジェクト推進における様々なアプローチ選択肢のアイデアを創出する能力がプロジェクトリーダーには要求されます。


プロジェクトのコストマネジメントでは、プロジェクトの進行の各ステップにおいて、絶えず継続的に当初に計画したコストレベルに対して、実際に発生したコストを詳細に時系列で把握し、計画値と実績値を比較・分析する必要があります。そして、プロジェクトを推進しながらコストの軌道修正をかけていくスパイラルアプローチがポイントになります。
 ここでは、次回の新たなるプロジェクトの推進時にノウハウとして活用される仕組みを作っておくことも大切です。すなわち、業界標準のコストをにらみながら、経験・実績に裏打ちされた目標とすべき新たな標準コストを更新していくマネジメントが重要です。全社的にオーサライズされたコスト評価基準を設定することにより、IT化プロジェクトにおける優先順位の設定のミスを未然に防ぐことが可能になります。なぜなら、あいまいなコスト評価基準では、プロジェクトの経営効果そのものを客観的に評価できず、経営にマイナス効果となって影響を及ぼすIT化に陥ってしまうリスクがあるからです。場合によっては、数多くあるIT化プロジェクトの優先順位の設定において、誤った判断により、経営戦略、事業戦略に齟齬をきたすケースも出てきます。




□ アウトソーシングの視点とは


業務の外部委託であるアウトソーシングはコスト低減の切り札ともいえるものです


が、適用においては慎重な取り組みが必要です。業務の外部委託であるアウトソーシングはコスト低減の切り札ともいえるものですが、適用においては慎重な取り組みが必要です。



アウトソーシングでは、まず、企業の核となる強みであるコア・コンピタンスを明確にして、外部に委託しても経営資源の観点からデメリットが生じないようなテクノロジー戦略が要求されます。IT化のアウトソーシングのアプローチでは、IT化の企画部門は社内に置き、システムそのものと運用管理業務を外注化したり、ITベンダーと合弁で運用管理会社を作ったりするケースがよく見られます。




デメリットの検討に際しては、選択と集中の発想で、コア・コンピタンスが外部に


流出してしまわないように社内にて確保すべきキー・テクノロジーと外注化してよいテクノロジーを明確に色分けします。企業ノウハウの漏洩・流出といった事態は避けなければなりません。コア技術は企業成長あるいは競合他社との差別化の源泉となるものであり、リスクマネジメントがここに要求されます。

 ITアウトソーシングでは、品質や納期の確保は最重要課題になってくるため、いかに、優秀な現地の人材を確保し、マネジメントできるかによって、ITプロジェクトの成否は決まるともいえます。外注指導では、経営的な支援および技術的な支援を活発に行うことで、アウトソーシングの提携企業と太いパイプを作るアプローチも必要でしょう。外部の経営資源をいかに活用し、グローバルな企業活動をいかに進めていけるか、この問いに答えることができるのは、ITアウトソーシング対する斬新な経営的ビジョンをもった経営トップのリーダーシップにかかっているのです。


ITソリューション戦略の検討において、留意すべきことは、現場ユーザと一体になって企業活動の仕組みの見直しを十分に行うステップを踏まずに、ITソリューションの絵を描いてはならないということです。




□ 経営手法とビジネスプロセス


IT化では、IT投資効果を見極め、経営的視点からITの導入を検討できる能力が不可欠です。企業活動の仕組みの再構築を図っていくステップでは、企業の事業特性や企業文化、さらには、組織特性、製品特性、事業特性などの実態にマッチした最適な経営手法を導入し、ITソリューションで企業活動の枠組みを固める必要があります。



経営手法は、企業活動におけるビジネスプロセスの強み、弱みを見極め、競合に負けているビジネスプロセスを強化するために適用されます。各種の経営手法が企業活動におけるどのビジネスプロセスで活用できるのかをよく知っておくことが重要です。企業活動におけるビジネスプロセス毎にマッチした経営手法にはどのようなものがあるのか、相互の関係をしっかり把握することが大切です。




 例えば、顧客管理強化のための経営手法であるCRM(customer relationship management)では、顧客と製品・サービスを提供する企業とが相互に信頼関係を築いていけるようなきめ細かい顧客管理を行うことができます。企業と顧客の信頼関係の確立を目指して、企業は顧客の消費プロセスに深く関わって行く企業活動の展開が必要です。顧客への個別対応と信頼関係の強化がマーケティングの重要課題になってきています。CRMにより、特定の顧客のセグメントニーズに着目して掘り下げ、そのニーズに合った商品やサービスを開発、提供することで、顧客との緊密な信頼関係を築くことができます。




 企業間連携による全体最適の仕組みの構築に不可欠な経営手法であるSCM(Supply Chain Management)では、IT(情報技術)を活用して、情報の共有化による企業間連携を高め、取引先との受発注、調達、在庫、製造、物流プロセスに関わる情報などを共有し、最適にマネジメントすることで、リードタイムの短縮化や在庫の低減化,流通コストの削減に効果を発揮します。




 企業の供給活動のプロセスにおけるモノ・情報・金の流れを供給連鎖(サプライチェーン)と捉えて、情報システムに参加する企業間でこれらの経営資源全体最適の視点で一元管理できます。ここでは、企業間の枠組みにとらわれず、需要情報、生産情報、顧客情報、製品情報など、企業活動に関わる情報を参加企業間で共有し、あたかも同じ屋根のもとで参加企業が一体化できる仕組みを構築できるかどうかがポイントです。




□ ステークホルダー(利害関係者)からみた評価


多数の利害関係者(ステークホルダー)が参加する情報システムでは、関係者や関連部門、関連企業の満足ある評価を得なければ、プロジェクトの推進に支障を来たし、システムの定着化も図れません。スパイラルアプローチによる評価・軌道修正のフィードバックサイクルが機能するためには、プロジェクト評価項目を明確にしておくことが大切です。


プロジェクトの企画・計画段階では、企業の経営トップをはじめ、利害関係のある関係者・関連部門、関連企業のプロジェクト評価尺度を予め情報収集します。関係者のリーダー格のメンバーからなる会議で十分に議論を尽くし、プロジェクト評価尺度を決定します。これは、プロジェクトメンバーの目標設定を可能にし、モチベーションの形成を促し、プロジェクト推進のエネルギーの源泉となります。



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プロジェクトでは、WBS(Work Break−Down Structure)によって、プロジェクト全体の作業内容を洗い出し、プロジェクト全体の作業負荷計画をもとに、構成メンバーのスキルレベルに応じた役割分担を決め、要員の割り当てを行います。
□ 運命共同体の認識がポイント
チームの構成員は運命共同体であり、情報が共有される情報ストリームの仕組みが機能しなければ、プロジェクトは失敗します。
プロジェクトでは、情報や問題点は、担当者が一人で抱え込むと、そこからダムのように亀裂が広がり、プロジェクト全体の岩盤を破壊しかねません。大洪水を巻き起こし、プロジェクトというダムを消滅させるパワーに変化しかねるリスクがあります。プロジェクトリーダーは、チームワーキングを円滑に進めるために、情報の一元管理の仕組みを、グループウェアなどのITを駆使して整備することが重要です。
プロジェクトで発生する様々な情報は、まず、5W2H−WHAT−IFによるマトリックスにより、整理する必要があります。ITプロジェクトマネジメントでは、多角的な視点で、プロジェクトの構成要素や、プロジェクトに影響を及ぼす因子を洗い出し、目標到達レベルと現状レベルとのギャップを明確にしておくことが重要です。

 ここでは、プロジェクトマネジメントの品質向上と効率化を図る上で、5W2H(WHAT、WHO、WHY、WHEN、WHERE、HOW、HOW MUCH)、及びWHAT−IFのチェックにより、複雑に絡み合った多数の対象事項を層別化し、整理することが必要です。これにより、マクロ的なチェックと問題点の発見が容易になり、迅速な対策の立案、組織的な漏れのないアクションへと展開できます。関係部門、関係者、関連企業など、利害関係者の相互関係や、数多くの問題点・対策の関係を連鎖構造で把握することがポイントです。

 ある問題がどのような要因に関係しているか、ある対策の前後にはどのような;事前準備や事後対策が必要になるかといったような思考をめぐらせて、多角的にシステム思考でプロジェクトに影響を及ぼす因子を考察、検討していくことが重要です。同時に、個別の因子については、ミクロの視点で、目を凝らして詳細化し、分析評価を行い、技術的・専門的な対応を図るアプローチも要求されます。
プロジェクトマネジメントにおけるミクロの視点で重要なものは、コストを分析し、評価し、改善のアイデアをクライアントに提示できる能力です。

 特に、財務分析力、コスト分析力など、経営的知識が重要になってきます。ビジネス知識は、日頃から継続的に、雑誌、新聞、専門書などで吸収する習慣を身に付けていないと、にわか勉強では対応できません。クライアント企業の属する業界事情や業界慣習、独特な思考法、ビジネスのやり方など、業界研究、企業研究も欠かせません。IT=経営という構図が成り立つ時代に入っていることを認識する必要があります。特に、企業の事業の形態や特性によって各種の原価計算手法が存在し、企業会計を駆使できる能力は、SE能力としての差別化には有効でしょう。
下記の拙著をご参考に願いましたら幸いです。
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It Management Approach Essential

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