交渉力 マクロとミクロの視点

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 交渉力を鍛えるには
 交渉力を鍛えるためには、現場での場数を踏んで、経験を積むことが効果的ですが、交渉力が冴えない、伸びないといった悩みに直面している場合は、基本に戻ることがポイントです。
□ 基本に戻る
交渉力を鍛えるにはどのようなアプローチが有効でしょうか。交渉力が冴えない、伸びないといった悩みに直面している読者の方も多いことでしょう。自己の能力を磨くには、基本、すなわち、自己にマッチしたアプローチや、自己の強み、弱みを常に振り返り、原点に戻ることがいかに効果的であるかが理解できます。自己の強み、弱みを認識し、そこをスタートラインにして、自己能力の開発を継続的に行うことが、飛躍していくための必須条件ともいえます。
 SEやプログラマーの世界でも同様のことが言えます。「苦手な業界の情報化の商談が舞い込んでしまったが、まったく、経験がない、果たして、きちんと交渉できるだろうか。上司にはっきりと、できませんといいたいところだが。」−読者の方の中には、このような悩みを抱えて、現状打破に躊躇し、途方にくれるケースに出会ったことがあるでしょう。
 あるいは、苦手な技術分野や、交渉やコミュニケーションがうまくいかないクライアントの案件に対応しなければならない場合もあるでしょう。苦手意識を抱えたままでは、本来の潜在能力を十分に発揮することはできません。
□ 交渉のテクニック
 交渉では、正攻法がクライアントの信頼を獲得するための最も優れたアプローチといえますが、現場では、正論だけで商談がうまくいくことはまれです。交渉の場では、人間心理を踏まえた交渉の展開がポイントになります。ここでは、心理学の知識も役立つでしょう。
 交渉では、お互いが納得できるような形で交渉が成立するスタイルが理想的です。いわゆるWIN−WIN関係(当事者双方が勝つという状態)が交渉成立には欠かせませんが、実際は、発注側に立つクライアントが、受注側にあるITベンダーに属するSEやプログラマーよりも交渉上、有利なポジションにあります。ここでいかに有利な交渉に持ち込むかは交渉力のレベルに大きく左右されることになります。敵を知り、己を知れば百戦危うべからずということわざがありますが、クライアントの内情はなかなか、明かしてくれるものではないのが一般的です。 
 ここでは、クライアントが何をこちら側に期待しているのか、その真意を汲み取ることに全力投球することが大切です。その期待に対して、いかに応えていくべきかというキャッチボールを繰り返すことで交渉を成功に導いていくことができます。ここでは、クライアントの様々な話題やアプローチに対して、真意はどこにあるのかという視点から、会話の内容をメモに書き留め、情報を整理して、再考することが有効です。
無理難題を持ちかけられた場合、間のとり方もポイントになります。一旦、宿題を持ち帰って、社内で専門家や上司を交えて十分に検討した上で、再度、足を運び、交渉に臨むアプローチもあります。ここでは、要求と譲歩の臨界点をしっかり認識し、事項を整理する必要があります。この交渉では、何が一番のネックになっているのか、そこを解消すれば、交渉は展開していくのかといった考察が要求されます。
たとえば、システム提案の内容は、競合の見積もり案に対して優れている場合でも、投資額が高すぎる場合やクライアントに実績がない新技術を採用している場合には、リスクの視点が優先して、交渉が難航することもあります。高い投資や新技術がネックになっている場合には、システムの段階的な導入により、投資リスクや技術リスクを避けることができます。
同時に、パイロット導入では、問題点の抽出の機会が与えられることになります。学習効果が期待できると同時に、確固たる実績に結びつけば、クライアントとの信頼関係を勝ち取ることも可能です。アプローチには、様々な工夫が可能であり、いわゆるシナリオプランニングの発想がここでは役立ちます。


 交渉に失敗した場合でも、落胆しているだけでは、交渉力の向上には寄与しません。新たなるビジネスを生み出すこともできません。ここでは、常にプラス思考を持って交渉に臨むことで、良好なクライアントとの人脈が形成されるという無形の付加価値が生まれることに意義があります。
 しかも、交渉の失敗の要因分析を行い、次の案件の交渉で活かすことができます。再度のチャレンジにより、新たな交渉の機会を見つけることも可能になります。このように、交渉では、プラス思考が交渉力の強化とリンクします。クライアントとのよりよい関係の形成に結びつき、次なるビジネスにつながることを心に留めておきましょう。


 SEに必須のマクロとミクロの視点を各種のケースごとに探り、応用展開が図れるような能力を身に付けることを狙います。

■ ビジネスプロセスにおけるマクロとミクロの視点とは
 SEがクライアント企業から与えられた情報化のミッションを達成するためには、ものの見方やアプローチのあり方をネットワーク時代にマッチしたものに変革していく必要があります。ここでは、大局的なマクロの視点と分析力を駆使したミクロの視点が要求されます。
 情報化のアプローチでは、現状の企業活動プロセスを全体最適化の視点から徹底的に見直すことが大切です。事業収益力が弱く、競争力のない企業では、いわゆる部門間の壁、事業部間の壁による部分最適に陥った事業形態、業務プロセスが幅を利かせていることが多いものです。
□ 競合と事業環境をいかに認識するか
情報システム構築では、クライアント企業の事業における業界ポジションを明確に把握する必要があります。クライアント企業の情報化ニーズでは、現状のレベルから、どの程度のレベルまでステップアップしたいのかということをしっかり把握しなければなりません。情報システムのデザインでは、ベンチマーキングが不可欠になるからです。ベンチマーキングは、先進的な同業他社や競合他社の優れたビジネスのやり方や業務プロセスを自社のものと比較して,目標基準を設定し,自社とのギャップを埋めるような改善活動につなげていく手法です。自社と目標とすべき成功企業とのギャップを分析し、埋め、重要成功要因の発見をベースに現状を改善し、改革へと導いていくことができます。ベンチマーキング手順は次の5つのステップからなります。
①対象の決定と実行プロジェクト体制の確立
②現行プロセスの分析と主要業績指標の設定
③ベンチマーキング対象企業・プロセスの選択・契約及び相手先企業での情報収集
④ギャップ及びプロセスの分析
⑤ベスト・プラクティスの見極め、適用と導入

ここで注意しなければならないことは、クライアント企業における競合の認識のポイントは企業のみではないということです。消費市場におけるライフスタイルの変化、価値観の変化もクライアント企業の脅威になりえます。あるいは、世界の数々の企業におけるビジネスのやり方、製品・サービスの新コンセプトや付加価値創出の新たな視点の出現なども経営リスクとなりえます。判断・評価基準・指標のグローバルスタンダード化などは、グローバルな巨大圧力となって、クライアント企業の事業活動にダイレクトに影響してきます。クライアント企業の競合は、マクロ的視点を駆使しなければ見えてこないという点を、上級SEを目指す読者はしっかりと認識することが大切です。
マクロ的な視点から事業環境と競合を十分に分析し、経営資源及び事業における強みと弱みを洗い出すことが重要です。情報化における企業付加価値の向上と競合優位を目指した企業経営の実現は、マクロ的視点とミクロ的視点をいかにうまくバランスよく使いこなすかにかかっています。
 まず、マクロ的視点で、大競争時代を概観してみましょう。競合は従来の業界のみから出現してくるとは限りません。企業間連携はビジネス改革のエンジンともいえるものになってきています。業界や業態の境界線を越えた新
業態の出現が企業活動のダイナミズムを創出する中で、潜在的なライバルの動向に絶えず注目し、動向の変化を監視して、クライアント企業に及ぼす影響を予測しなければ、クライアント企業の望む情報システムの構築は競争力を失ったり、十分に機能しなくなるリスクも出てきます。

全体最適というマクロの視点
従来の情報システムのアプローチでは、企業内において、部門ごとにプラットフォームや設計思想の異なった様々なシステムを部分最適の発想で作りこんでいました。このため、企業内では、データのやり取りがうまくいかず、データ変換の仕組みに多大なインタフェースコストを要していました。コード体系や帳票、オペレーション画面が統一されず、データ変換プログラムをあちこちのシステムで作ったり、データの二重入力、多端末現象などの問題を解消することができませんでした。企業間での情報のやり取りがスムーズに行える共通のITインフラも整備されていませんでした。
近年、部分最適の罠にはまっていた従来の情報システム開発のアプローチは、全体最適というマクロの視点を情報化に持ち込むことによって、パラダイムシフトを起こしました。
この背景には、業界共通のITプラットフォームやOSの進化、インターネット環境の充実化、普及拡大などの動きがあります。
 情報システムのデザインでは、まず、マクロの視点で、「全体最適ありき」の発想が重要になります。IT業界動向を常にしっかり把握し、陳腐化の早い情報システムにならないように、最新技術動向もチェックし、取り入れることができる能力開発が、SEには要求されます。

 キャシュフロー経営と情報化
 ここで、マクロとミクロの視点で、キャッシュフロー経営を概観しておきましょう。
キャッシュフローを重視した企業経営は国際会計基準に対応した経営を実践していくための必須条件です。SEは、ミッションを達成していくためのベースとなる経営的視点による情報化アプローチのあり方を十分に考察する必要があります。
□ キャッシュフロー経営とSCMの動向
キャッシュフローの改善を図っていくためには、売掛金や在庫を減らし、ビジネスリードタイムの短縮化を図っていくことが重要です。関連部門、協力会社とビジネスに関わる情報の共有化を図り、金、モノ、情報の同期化を図っていくことが可能な仕組みへのシフトです。顧客主導の時代では、顧客の需要に応じた市場連動型の生産により、在庫ロスの最少化を実現できる企業活動の仕組みを情報化で形成する必要があります。
サプライチェーン・マネジメント(SCM)は、企業間連携のもとに、企業内外のハードルを越えて、事業活動におけるモノの流れ、情報の流れ、キャッシュの流れを最適に一元管理する仕組みにより、企業内外の関連部門・企業、サプライヤ間でシームレスな情報ストリームを実現できます。ITを活用した情報の共有化の仕組みにより、顧客の需要予測精度をアップし、在庫ロスを防ぎ、受注生産型の生産計画及び調達計画を目指す企業が増加しています。
顧客満足度の向上と収益力の強化、事業成長の実現を図っていくために、SCMの導入により、バリュー・チェーン(価値連鎖)の最適化を目指した企業連携の仕組みを構築する必要があります。米国におけるSCMの概念は、「SN(サプライネットワーク)」という手法で発展しつつあり、業界の電子商取引プラットフォームの標準化が進んでいます。SCMは、顧客、供給業者、製造業者、流通業者などがサプライチェーンに参加した、CRMを包含する「コラボレーティブ・サプライ・ネットワーク」に変化してきています。従来の「一対多(ONE2N)」による企業間取引の形態が変化し、インターネットのクモの巣(Web)状のネットワーク機能を活用した「多対多(N2N)」による企業間取引の形態に移行してきています。

□ SCMの実践モデル
 SCMにおけるビジネスプロセスの再構築では、クライアントの企業活動の価値連鎖のリデザインを行うに当り、インターネットを基本軸において、顧客の視点で販売方法、物流方法、製造方法、調達方法における各々のオペレーションのプロセスを見直します。
SCMの実践で成功している企業では、米国の大手コンピュータメーカーであるデルのビジネスモデルが際立っています。インターネット通信販売の手法を採用し、顧客とインターネットを介して直接、注文のやり取りを行うオンライン・ショッピングの仕組みを採用しています。
これにより、流通の中抜きを実現し、物流コストの低減とリードタイムの短縮を図っています。顧客満足度の向上と顧客囲い込みの強化を図るために、インターネットの連携機能を活用し、顧客の重要度に応じたセグメント別のWebのサイトを設け、顧客情報の一元管理をデータウェアハウスで実現しています。
製品在庫は一切持たず、IT(情報技術)活用による精度の高い需要予測の仕組みによって、顧客の注文を受けてから製品を短期間で組み立て、出荷できる方法を採用しています。
これは、BTO(Build To Order)と呼ばれる注文生産方式です。基幹部品はモジュールで適正在庫され、顧客の要求する仕様に応じて、迅速に手際よく生産されます。デルと協力会社は月次・週次ベースの需要予測、生産計画、受注状況の情報をリアルタイムで共有し、打ち合わせも担当者間で頻繁に行われます。

さらに、製品開発・製造・サービス並びに協力会社における顧客情報の共有化を図り、迅速なアクションにつな
げています。顧客サービスの向上を図るために、コールセンターを整備し、Webを介したサポートデスクにより、製品トラブルや顧客の質問にも迅速に対応できるサービス体制を構築しています。

■ プロジェクトマネジメントにおけるマクロとミクロの視点とは

プロジェクトでは、WBS(Work Break−Down Structure)によって、プロジェクト全体の作業内容を洗い出し、プロジェクト全体の作業負荷計画をもとに、構成メンバーのスキルレベルに応じた役割分担を決め、要員の割り当てを行います。
□ 運命共同体の認識がポイント
チームの構成員は運命共同体であり、情報が共有される情報ストリームの仕組みが機能しなければ、プロジェクトは失敗します。
プロジェクトでは、情報や問題点は、担当者が一人で抱え込むと、そこからダムのように亀裂が広がり、プロジェクト全体の岩盤を破壊しかねません。大洪水を巻き起こし、プロジェクトというダムを消滅させるパワーに変化しかねるリスクがあります。プロジェクトリーダーとしてのSEは、チームワーキングを円滑に進めるために、情報の一元管理の仕組みを、グループウェアなどのITを駆使して整備することが重要です。
プロジェクトで発生する様々な情報は、まず、5W2H−WHAT−IFによるマトリックスにより、整理する必要があります。ITプロジェクトマネジメントでは、多角的な視点で、プロジェクトの構成要素や、プロジェクトに影響を及ぼす因子を洗い出し、目標到達レベルと現状レベルとのギャップを明確にしておくことが重要です。
 ここでは、プロジェクトマネジメントの品質向上と効率化を図る上で、5W2H(WHAT、WHO、WHY、WHEN、WHERE、HOW、HOW MUCH)、及びWHAT−IFのチェックにより、複雑に絡み合った多数の対象事項を層別化し、整理することが必要です。これにより、マクロ的なチェックと問題点の発見が容易になり、迅速な対策の立案、組織的な漏れのないアクションへと展開できます。関係部門、関係者、関連企業など、利害関係者の相互関係や、数多くの問題点・対策の関係を連鎖構造で把握することがポイントです。
ある問題がどのような要因に関係しているか、ある対策の前後にはどのような;事前準備や事後対策が必要になるかといったような思考をめぐらせて、多角的にシステム思考でプロジェクトに影響を及ぼす因子を考察、検討していくことが重要です。同時に、個別の因子については、ミクロの視点で、目を凝らして詳細化し、分析評価を行い、技術的・専門的な対応を図るアプローチも要求されます。
プロジェクトマネジメントにおけるミクロの視点で重要なものは、コストを分析し、評価し、改善のアイデアをクライアントに提示できる能力です。ここでは、財務分析力、コスト分析力など、経営的知識が問われます。ビジネス知識は、日頃から継続的に、雑誌、新聞、専門書などで吸収する習慣を身に付けていないと、にわか勉強では対応できません。クライアント企業の属する業界事情や業界慣習、独特な思考法、ビジネスのやり方など、業界研究、企業研究も欠かせません。IT=経営という構図が成り立つ時代に入っていることを認識する必要があります。
特に、企業の事業の形態や特性によって各種の原価計算手法が存在し、企業会計を駆使できる能力は、SE能力としての差別化には有効でしょう。

デジタル組織化と無形資産のパワー

■ 企業内外のデジタル組織化とは
情報化では、ビジネスに関わるデジタル情報の共有により、関連部門や取引先など、企業内外のステークホルダー(利害関係者)間で、双方向のコミュニケーションがリアルタイムで行えるインフラを形成することが重要です。

ステークホルダーのメリット・デメリットの調整
デジタル組織化とは、デジタル情報、すなわち電子情報が中心となる業務プロセスにより、企業間連携の強化を図っていく考え方です。インターネットを情報システムのインフラに据えて、ビジネススピードの向上とビジネスコストの低減、ビジネス情報の共有化を狙う情報化アプローチといえます。
様々な立場の利害関係者(ステークホルダー)が参画する場では、相互のメリット・デメリットをいかなる視点と判断基準によって、調整するかがポイントになります。クライアントからは、様々な利害の絡む難題が持ち出されます。
たとえば、ネットワークインフラの多様性について考えてみましょう。大手自動車メーカーならびにその関連企業群、サプライヤが参画するJNX(Japanese automotive Network eXchange)では、このネットワークに加入していないサプライヤは、大手自動車メーカーやその関連企業群との取引が難しくなります。
いっぽう、例えば、ADSLによるインターネットを介して取引を行っているサプライヤにとっては、新たにJNXに参加するメリットがないケースもありえます。サプライヤにも様々な情報システムを採用しているケースが考えられます。オフコンレガシーシステム(*パソコンやネットワークが黎明期だった頃の設計による旧式の巨大システムの通称のこと)が稼動しているサプライヤもいるかもしれません。
新規ネットワークを検討しているクライアントが、このように様々なネットワークに参加しているサプライヤと取引している場合、SEは、どのようなネットワーク提案をクライアントに提示すべきでしょうか。
ここでは、全体最適の戦略的視点が要求されますが、参画メンバー間の利害を調整しうるリーダーシップの発揮がスーパーSEには不可欠といえます。ネットワークの複数の選択肢におけるメリット、デメリットを十分に検討した上で、クライアントに対して、十分に納得してもらえるような案を代替案も含めて、複数提示し、クライアントの経営トップ及び情報化プロジェクトの総括責任者に選択の判断を仰ぐ必要があります。
しかも、ネットワーク加入コスト、ネットワークスピード・負荷対応能力、参加サプライヤ数、ネットワーク運用管理コスト、ネットワーク信頼度、など、技術的ならびに経営的な観点から、メリット、デメリットを明確にしなければ、クライアントは納得しないでしょう。
ここでは、組織間の壁、企業間の壁、システムの壁、人の壁、投資予算の壁、タイムスケジュールの壁、業務プロセスの壁、既得権の壁、その他、様々な壁が立ちはだかっています。デジタル組織化では、電子情報が中心となり、紙を用いる従来のビジネスプロセスは駆逐されることになります。
そのため、参加者、参加企業間における様々な企業文化の対立(情報化コンフリクト)が発生します。情報化プロジェクトは、経営的視点に立った共通目標・認識のもとに、情報化コンセプトの共有が企業内外の参加メンバー間で十分に徹底される場つくりが成功するか否かにかかっているといえるでしょう。ここは、デジタル情報による組織作りの最も重要なポイントです。


 デジタル組織化の代表格サプライチェーン・マネジメント(SCM)
  製造業、流通業を始め、あらゆる業界に浸透してきている経営手法がSCMです。企業内外の垣根を越えて、企業活動の全プロセスにおけるモノの流れ、情報の流れ、キャッシュの流れを価値連鎖として、デジタル組織化を図り、参加企業間で最適に一元管理するものです。

SCMのターゲットとTOC理論
デジタル組織化の実践では、企業活動の全体最適化を目指したSCMの導入が代表格といえるでしょう。
サプライチェーン・マネジメント(SCM)の狙いは、全体の効率を阻害する要因であるボトルネックを企業活動の中で発見し、改善を加えるアプローチを継続していくことで、企業価値連鎖(バリュー・チェーン)の最適化、ビジネススピード向上を図れる情報共有の仕組みを企業内外の利害関係者間で構築することにあります。
これにより、利害関係者間のシステムや組織の壁をクリアし、企業活動に関わる情報のストリーム(流れ)をシームレス(継ぎ目のない)な勢いのあるものにし、トータルリードタイムの短縮化、在庫削減、売上げ機会損失の低減とキャッシュフローの向上を狙うことができます。
SCMをサポートするTOC理論は、イスラエルのエリヤフゴールドラット博士が提唱したものです。その著書である「ザ・ゴール」の小説仕立ての解説で有名です。サプライチェーン(供給連鎖)を構成する多数の企業、ミクロ的視点では、部門や製造工程において、個々のプロセス間の同期化の阻害要因を排除し、ボトルネックサプライチェーンの弱い箇所)を改善します。
そして、一旦、全てのプロセスをネックのレベルに同期化させ、更なるボトルネックを改善していきます。これらのステップを繰り返すことで、プロセス間のサプライチェーンの強度を増し、企業内外における全プロセスの最適化を図っていく理論です。

□ スループット会計の意味するもの
 従来の伝統的原価計算では、個別工程や部門毎の部分最適化を目指したコスト低減を追及する活動が一般的でした。そのため、顧客需要に応じた生産量のコントロールを十分にできず、見込み生産による在庫の増加を招き、生産トータルではコスト増加の罠にはまっていました。
SCMの評価基準には、スループット会計というものが適用されています。スループット会計では、キャッシュフローである売上高から資材費を除いた限界利益に相当するものをスループットと呼んでいます。生産力に余裕があれば、スループットがプラスである限り、売価を下げても受注を増加させることがキャッシュフロー増大に寄与するという点が従来の標準原価計算ではカバーできなかったところです。
企業活動プロセスをチェーンの連鎖に見立てたTOC理論では、スループットはチェーンの強度に対応します。企業活動、生産活動のチェーン全体の強度は最も弱い部分の強度に依存します。この弱いチェーンである制約条件の発見、強化を図ることで、スルーップットの増大化が図れます。
 TOCでは、企業のゴールの目指すものとして、制約条件に着目して、販売時点でのスループットの最大化を狙っています。これにより、在庫及び業務費用の低減化を図ることを目指しています。