グローバル企業に飛躍できるバランス・スコアカード

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 まず、国内に目を向けると、第一に挙げられる中長期的な懸念要因は、人口の減少と高齢化問題です。高齢者にとって年金額の減少は避けられない死活問題です。また、少子化は国の活力を低下させる大きなリスク要因となっています。日本のマーケットは、今後、中長期的には縮小化し、衰退の方向に向かう予想が一般的ですが、世界に目を向けると、マーケットの成長が大いに期待できる国々も多くあることは確かです。日本企業がこの厳しいサバイバル競争に生き残る道は、いかに早くグローバル企業に変身できるかに一にかかっているといっても過言ではないでしょう。
 グローバル企業とは、どのような企業を意味するのでしょうか。一番端的に定義できるのは、オンリーワンの技術を備えた製品群で、その企業の売上高の海外市場に占める比率を少なくとも50%レベルに引き上げることです。経営の半分は、外貨で稼ぐことにより、グローバル企業としての条件を備えた企業として生き残ることができるでしょう。
 グローバル企業に飛躍していくためには、時間と投資が要求されます。時間をいかに稼ぐか。いかにスピーディにグローバル企業に変身していくか。ここでは、海外市場におけるマーケットシェア拡大に向けたビジネスモデルの戦略立案が要求されますが、重要なポイントは、打って出た海外のその国の国家政策に自社の描くビジネスモデルをうまく整合させていく手法です。その国の投資優遇策をうまく利用するとともに、マーケット成長が大いに期待できると見込める海外市場を制覇していくやりかたです。今後の大きな成長を期待でるマーケットは、東南アジア、インドあたりでしょう。
 最近の成功事例では、大手商社が、マレーシアの壮大なイスカンダル計画に参画し、空港近くに壮大なショッピングモールを建設し、安く良い商品を提供できるビジネスを展開し、成功している例が参考になります。イスカンダル計画は、マハティール首相が、今後、20年ほどの期間にわたり、約13兆円をかけて、隣国のシンガポールに負けない最先端の夢のような都市を創り上げる壮大な国家プロジェクトです。欧米やアジアの大手企業の資本参加のもとに推進中です。
 グローバル企業が備えるべき内部資源の条件に目を向けてみましょう。企業の経営資源では、ヒト、モノ、カネ、情報が必ず挙げられます。グローバル企業では、企業の買収や合併、資本参加も重要な経営戦略になってきますが、ここで、よくつまずくのは、ITシステムの統合や、従業員の経営参画意識の低下、業務プロセスが世界各拠点でバラバラなものになってしまうという問題です。

 グローバル企業にとって、ITシステムの整備や統合化は、経営の最重要課題に挙げるべきテーマであるべきです。ITシステムは、グローバル企業の事業競争力強化のための推進役を担うものであるからです。IT戦略は、経営戦略の推進役を担うと同時に、整合性のとれたIT・経営戦略のバランスをうまく図ることがポイントです。事業のグローバル化を進める経営戦略に、IT戦略をいかにマッチさせるか、この命題は非常に重要なファクターを備えています。
海外企業を買収したが、ITシステムの統合がうまくいかず、失敗した事例は数多くあるでしょう。ITシステムは、ある意味で、暗黙知の領域ともいえるものであるため、経営トップや幹部にとっては、理解しにくい領域の事象であるといえるでしょう。
 暗黙知をいかに形式知にかえて、経営の見える化を図るか、この問いは、経営の根本にかかわる非常に重要な問題です。IT化では、ビジネスにかかわる様々な情報や業務プロセスをいかに標準化の仕組みに仕立て上げ、暗黙知形式知に変換できるシステムとして構築できるかがポイントになります。
 事業環境は絶え間なく変わっていくことを前提に、ITシステムは、柔軟な変更・更新ができるようなITプラットフォームを選択することが重要です。さらに、自前の人材で、ITシステムの開発・変更・更新ができるようなIT人材の育成を図っていくことにより、事業環境変化に対応できるITシステムの運用が可能になります。

 ところで、経営活動では、まず、トップが定めた経営ビジョンという企業存続の絶対命題が全従業員に認知される必要があります。たとえば、10年後に売上高を3倍するという経営数値目標を掲げたとしましょう。このような経営目標数値は、KGI(Key Goal Indicator)と呼んでいます。
 このKGIを企業の各事業部、各管理階層、一般従業員までに落とし込んで、全員参加の業務改革活動につなげていける仕組みを構築することが、IT化の整備、統合化の前提条件となります。
 ここで、経営的なインパクトが期待できるのが、バランス・スコアカードという戦略的な経営手法です。
バランス・スコアカードは、米国のハーバード大学で開発され、欧米の名だたる主要大手企業のみならず、アジアや日本の企業・公共団体でも活発に導入されてきています。
 日本では、三菱東京UFJ銀行が、バランス・スコアカードの導入により、世界的なメガバンクに成長したことで有名です。
 バランス・スコアカードは、一言でいえば、全従業員の業務改革ベクトルを一致させ、全社一丸となった業務改革を推進させるための手法です。バランス・スコアカードには、全従業員が、各人の担当分野で、経営目標数値とその実行具体策について、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習・人材成長の視点、財務の視点で、記述し、PDCA(計画、実行、チェック、改善)を回していくシンプルな経営手法です。
 ITシステムの整備、統合化や再構築の際には、このバランス・スコアカードをうまく利用すれば、全従業員の経営参画のモチベーションのレベルの確認や、業務改革のPDCA見える化が全社的に図ることができる大きなメリットを見出すことができます。
 バランス・スコアカードの導入は、欧米機関投資家に対するIR効果も期待できるため、グローバル企業には、経営メリットが大いに期待できる戦略的な経営手法といえるでしょう。
 特に、経営がグローバル化してくると、人材の多様化が進むとともに、その企業のアイデンティが失われてくるケースも出てきます。世界中の各拠点の企業の構成員を束ねて、全社ベクトルを一本化する必要性に迫られてきます。企業の合併、買収、統合を繰り返すようなグローバル企業では、バランス・スコアカードは、そのパワーを大いに発揮してくれることでしょう。

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