中小企業診断士・IT資格受験対策講座:ビジネス戦略とプロセス改革



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図解入門 3分でわかるITエンジニア・PM・SEのための能力開発の極意: IT戦略論シリーズ

図解入門 3分でわかるITエンジニア・PM・SEのための能力開発の極意: IT戦略論シリーズ

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■システム思考のセブン・ダイアモンド・ルール
 
 情報システムは、知識、情報をコントロールし、企業経営活動を支援するための知能マシンといえます。コンピュータは、科学の粋の集合体であり、知性の結晶です。自動車運転のスキルが優れているドライバーが最新の自動車に乗れば、その優れた性能を発揮できるような快適なドライブが楽しめますが、運転の下手なドライバーが運転すれば、場合によっては、事故を起こし、最新の自動車は鉄屑となるばかりではなく、前後を走っていた回りの自動車と衝突し、大きな影響を周囲の人に与えかねません。

 情報システムも、自動車と運転と同様のことが言えます。運転のスキルは、システムのデザインのスキルやシステム運用のスキルに該当します。ここで要求されるスキルは、情報システムをうまく活用するためのスキルです。自動車でたとえれば、行き先に該当するソフトウェアというコンテンツを決定するのは、ドライバーではなく、クライアントです。プロジェクトリーダーは、ユーザーのニーズを要求仕様という形で受け取り、それをコンピュータという知能マシンにシステム化しなければならない役割を担っています。

 ここでは、企業のビジネス・マネジメントの知識やスキルも必須です。ユーザーが要求する内容を十分に理解できないままシステム化してしまうと、情報システムは暴走し、ユーザー、関連する部門や企業に多大なリスクを与えることになります。 21世紀中には、コンピュータは、高度な知的自律機能を備え、インターネットを介して、あらゆる情報、知識、ノウハウを吸収し、自己修復、自己成長を図ることができるような知的生命体に近いものに姿を変えていることでしょう。プログラムのバグを自動修復し、ソフトウェアのバージョンアップも自動で行い、外部環境変化にも自在に対応できる知性を備えていることでしょう。

 例えば、会計基準が変更になれば、コンピュータは、そのルールを自動的に学習して、自動的にソフト変更を行い、画面に表示される項目や、帳票の内容も自動で修正してしまうような機能を持っていることでしょう。ハードの構成管理やソフトウェア管理のわずらわしさから開放される日が近い将来、やって来ることでしょう。 コンピュータとシステム思考でもって付き合うことで、無限の可能性を秘めた知能マシンである情報システムからその優れたパワーを引き出すことができるのです。

 では、システム思考とはどういうものなのか。筆者は、システム思考には、次に示すような7つのポイントを「システム思考のセブン・ダイアモンド・ルール」を必須条件として提示します。システム思考のセブン・ダイアモンド・ルールルール1.事象はインプット、アウトプットの構造で考えるルール2.事象に関連するファクターを洗い出し、グルーピング化、抽象化、数式化するルール3.事象は、ロジカル化し、マイナス面、プラス面の表裏で見るルール4.事象におけるパラメータを変化させて、シミュレーションするルール5.図解でイメージ化し、事象間の連環、連携の関係を明らかにするルール6.事象は基本軸・系を設定して、単純化、モデル化、DNA化するルール7.事象の体系化、フレームワーク構築を試みる

■ビジネスプロセスの革新戦略−IT時代の調達プロセスにフォーカス−   

 消費者と企業における購買行動はインターネットのパワーによって大きく変化しています。従来のリアルビジネスのやり方に比べ、利便性やコストの点で優れたインターネット活用のビジネスモデルが、大手企業だけでなく中堅・中小企業でも活発です。

 その中でも、特に各業界でインターネットを活用したネット調達が活発です。中間マージンの削減効果や調達コストの低減、調達スピードの向上、さらには調達先の選択肢の拡大を狙うものです。インターネットで顧客と直接販売を行う購買スタイルはビジネスモデルとして試行錯誤をくりかえしているところはあるものの、ネット調達の流れは様々な業界で調達のインフラとして定着してきています。産業界における調達分野はまだまだ原価低減努力の未開拓の領域であり、ビジネスモデルの開拓の余地が大きいといえます。



■自社の強みが発揮できる顧客ターゲットを狙おう!

 ネット調達の場であるeマーケットプレイスとはどのようなものかについて概観しながら、企業間におけるネット調達への取り組み方を考えてみましょう。  

売り手企業として、中堅・中小企業が数多くのeマーケットプレイスから最適なところを選んで参加する場合は、まず第1に、自社の製品・商品やサービス、及び事業の特性がサイトにアクセスする顧客のニーズにマッチするかどうかがポイントになります。

 オープンマーケットにおける価格の透明性と合理的商取引が進展するなかで、顧客ターゲットを明確に絞ることが大切です。中堅・中小企業においては、自社の強みを最大限に発揮できるような顧客価値の提供を図っていく事業展開がポイントになります。

 顧客に提供するコンテンツには、自社の独自性で勝負できる競争優位に立ったビジネスモデルの創造能力が要求されます。例えば、グリーン調達が企業課題としてクローズアップされていますが、リサイクル可能な製品を提供できる技術、ノウハウをベースに製品提案できる企業は、今後、ビジネス拡大のチャンスが開けてくるでしょう。

 顧客によっては、ISO9001やISO14001プライバシーマークの取得を取引の前提条件にしているところもあり、企業体質の強化が問われます。ノウハウ、技術の不足は、共同受注が可能なeマーケットプレイスに参加することでカバーすることも可能です。多数の中堅・中小企業の会員からなるバーチャルカンパニー(仮想企業)の形態を活用するわけです。このパワーを活用すれば、経営資源に余裕のない中堅・中小企業にとって、自社の強みの分野に特化した事業戦略を実践していくことができます。 

Web-EDIを武器に顧客サービスの向上を図ろう! 

 第2のポイントは、Web-EDIを徹底して活用したビジネスモデルを検討するということです。Web-EDIは、顧客へのサービスレベルの向上とグローバル市場を目指す企業にとって不可欠な手段です。
 自社でサーバーシステムを導入せずに、サーバのレンタルやホスティングサービス(運用管理代行)を利用して経費を抑える選択肢もあります。このように、手軽なWeb-EDIを活用すれば、資本力の弱い中堅・中小企業でも世界の市場でチャレンジできるITインフラを提供してくれるわけです。

 近年、従来の製品中心のビジネスから脱却し、製品とサービスを融合させて、いかに顧客が満足する価値を提供できるかという視点からビジネスプロセスを見直す企業が増加していますが、ここにもWeb-EDIの活躍の場があります。 

 例えば、サイト訪問者のWebアクセスのパターンを解析し、サイトアクセスパターンに応じた魅力のある提供情報の更新により、戦略的なマーケティングアプローチを図ることで顧客ニーズに答えるサイトが数多く出てきています。 ブロードバンド化が進展する中で、Web3Dのツールにより、立体感のある製品の3次元動画像によって販促効果を狙うことも可能です。電子メールによる販促効果などで顧客に密着したサービスを提供している企業もあります。

■プロセスの電子化ではコスト低減を追求しよう! 

 第3のポイントは、ネット調達では、見積もり依頼・回答、承認・決済、など受発注に関わる一連のプロセスをリアルビジネスと連携させ、トータルでIT化できる仕組みが低コストで実現できるかが生命線になるということです。 サイバー空間におけるネット調達のビジネスでは、対面販売とは違って、様々な制約が新たに発生し、納期と品質の保障に支障を来しているサイトも多く、リアルビジネスに比べて反ってコストアップを招くこともあります。

 ホームページや電子メールなどによる情報のやり取りには限界があります。ここではネット調達に対応できる企業活動のオペレーションの基盤をしっかり形成できるかがポイントになります。 コスト面では、参加費用に見合うだけのメリットが享受できる仕組みがなければ参加企業数の拡大は見込めず、サイト運営費用の確保も難しくなります。魅力的な顧客価値を提供するためには、受発注プロセスの電子化や物流サービスの充実化を図り、利便性のアップや間接業務コストの低減を図る必要があります。

 参加会員へのインセンティブの提供も重要です。大手のeマーケットプレイスのサイトでは、会員増加の伸び悩みから、従来の固定料金制から従量課金制へのシフトにより、収益拡大を図るところもあります。 サイトの収益性の追求では市場や事業の特性、競合サイトに対する優位性確保などの観点から、様々なビジネスモデルが模索されているのが現状です。

■セキュリティを確保しよう! 

 第4のポイントは、ネットセキュリティの問題をクリアし、安全な決済手段を確保することが極めて重要であるということです。決済における企業情報の漏洩や不正利用のケースが多発し、セキュリティの確保が社会的問題になっています。 

 しかしながら、取引先の与信紹介、決済手段など、電子商取引におけるセキュリティの問題は、電子認証やデータ暗号化技術の進展や新形態の代行業者の出現とともに少なからず解決されていくでしょう。

■物流機構を整備し、社内基幹システムとの連携を図ろう! 

 第5のポイントは、顧客からのJIT(ジャスト・イン・タイム)生産対応の要求に機敏に対応できる物流機構の整備を図るとともに社内基幹システムとの連携を図っていくことです。 まず、需要量の変化への対応や短納期納入対応など、顧客のニーズが厳しさを増している中で、スムーズな製品供給を可能とするような物流体制をしっかりと構築しておく必要があります。

 いわゆるロジスティクスの改善・改革においては、例えば、専門の宅急便の業者を使って物流管理と決済管理を外部委託する方法があります。アウトソーシングのアプローチにより、物流コストの低減と物流ノウハウを取り込むわけです。ここで留意すべきことは、物流専門業者はできる限り、1社あるいは2社程度に絞って、物流管理の集中化を図り、物流情報と物流コストの一元管理を図る仕組みを組織的に構築しなければならないということです。 

 さらに、調達プロセスの改革では、見積もりコストの分析・査定の要となるコストデータ・ベースを構築し、コストの標準化を図ることが大切です。社内的に認知された合理的なコスト基準レベルを拠り所にしてコスト最適を目指した調達が組織的に可能になる仕組みを構築するわけです。

 これにより、コスト査定では担当者の経験や勘に頼るリスクが減り、組織的な調達コストマネジメントができます。 調達機能の電子化では、バックヤードに控えている会計システムや生産管理システムとのデータのやり取りが実現できる形態に発展させていくことが全体最適化には不可欠です。

 例えば、ERPを導入済みの企業では、Web−EDIとの連携によって、調達に関わるデータをERPに取り込む仕組みを検討することが大切です。相互の既存システム間におけるデータのやりとりが、帳票やデータの重複入力作業による人海戦術によって無駄なインタフェースコストの発生を招いているような場合には、調達プロセスから会計、生産管理までのデータの流れを一気通貫で電子化することで、大幅なコストの低減とビジネススピードのアップが狙えます。 以上のように、調達の電子化を検討するうえで、バックヤードである物流システム、及び社内基幹システムとの連携の仕組みをしっかりとデザインすることがポイントです。

■企業経営と4つの革新能力 

 インターネットはビジネスや生活に深く根ざし、社会インフラとして不可欠な神経網になってきています。地球上に張り巡らされたこのグローバルなインフラをいかに活用できるかで、ビジネス展開の方向は大きく変わってくるといえます。経営戦略においてインターネットパワーをいかに活用できるかが問われているのです。

 IT時代が企業活動にもとめる重要な革新能力として、まずは「スピード向上能力」を挙げることができます。 スピードは企業活動を効率化し、顧客への製品・サービスの提供能力を高めるからです。スピードが上がれば、生産性が上がり、必然的に製品・サービスを顧客のもとに提供するまでにかかるコストも下がってきます。情報処理能力と情報コントロール能力が企業活動のスピードアップの源泉といえます。企業活動のスピードアップを図るには、ビジネス・プロセスを抜本的に改革できる能力が要求されます。

 第2の革新能力は大競争時代においてライバル企業に打ち勝てる「コスト低減能力」です。 企業は組織的な改善活動の繰り返しのなかで製品・サービスのコスト低減を図り、資本市場が求める適切な利益を生み出し、自己成長を図っていくことができます。ここでは、経営数値に強くなるための基本的な知識として、原価計算や決算書を読み解く専門性の獲得が必須です。 

 第3の革新能力は「経営品質の向上能力」です。ISO9001、ISO14001の国際標準規格を取得できない企業が、市場から締め出されている現状から明らかなように、経営品質レベルの向上は企業の必須の経営課題です。 

 リコール問題や粉飾決算などで企業の存続が危うくなるケースを挙げるまでもなく、経営品質がしっかり確保できない企業は経営が成り立たなくなってきています。IT化を進めていくうえで経営品質レベルの向上を目指した企業活動の仕組みを構築できる能力がビジネスパーソンに要求されるのです。ここでは、コンプライアンス法令遵守)をベースに、ビジネス・プロセスと組織構造を抜本的に見直して、内部統制の再構築を図り、ビジネス・マネジメント能力のブラッシュアップ、革新を図っていく必要があります。

 企業活動のグローバル化の進展の中で、米国企業改革法SOX法)への対応は、企業の規模を問わず、グローバルな経営活動を目指す企業にとってのパスポートとなる時代がすぐそこまで来ています。

 第4の革新能力は「ネットワークの活用能力」です。ネットワークパワーはe−ビジネスにもみられるように新市場の創造を促す源泉でもあります。このようにネットワークパワーが秘める潜在力は非常にダイナミックなものであり、ここに注力できるビジネスパーソンはビジネスチャンスの飛躍的な拡大が期待できるでしょう。 

 各業界において固定費の削減や経営資源統合、などを目指して企業間における合併やビジネス連携が国内外で活発化しています。 ビジネスの連携や統合化における様々な問題も噴出しています。合併しても企業文化の壁の前に赤字決算を強いられる企業もあります。また、既存システム間の統合で失敗するケースも見られます。

 今後のビジネス展開におけるネットワークの活用は経営資源の最適化を図り、グローバルな企業活動を目指す企業にとって不可欠な能力といえます。ビジネスパーソンは、IT化においてネットワークパワーが企業経営を支える重要な屋台骨であることを認識することが大切です。

■ITソリューションと企業経営 

 ここで経営にITがなぜ活用できるのかについて考えてみましょう。ITは企業における経営効率の向上にはなくてはならないものになってきています。ITは経営効率の向上における、てこの役割を担うものでなくてはなりません。

 ITとは、そもそも情報を活用する技術です。企業活動には様々な情報が飛び交っています。販売情報、生産情報、顧客情報、クレーム情報、物流情報、財務情報、人事情報など、企業における関連部門では様々な情報を収集・生成し、取捨・選択・加工して業務活動を行っています。情報の種類は様々であり、部門によっては価値ある情報もあれば、不要な情報もあります。

 また、情報の取得のタイミングも重要であり、クレーム情報や顧客需要動向などの情報は鮮度が要求されます。情報の流通機能がうまく働かなければ情報はただのデータになってしまいます。情報の持つ価値は収集のタイミングといかに活用して付加価値のある企業活動につなげられるかによって決まってきます。そのためには情報の流通機能が正常に発揮されるような仕組み作りが要求されるのです。 

 このように情報を管理し、活用する情報駆使能力はIT化によって飛躍的なパワーを発揮することができます。経営とはこの意味で情報の流通機能を最大限に発揮させ、価値ある情報をタイミングよく発見し、活用する活動であるともいえます。ここにおいて顧客への価値の創造が可能になり、企業の付加価値の向上も期待できます。情報を効率よく管理し、活用できる仕組みはIT化によって実現できるのです。 

 ITには、経営課題に応じて各種の最適なソリューションがあります。流通分野で従来から最も良く使われてきているのはPOSシステムです。コンビニエンスストアでは売れ筋、死に筋商品の動向分析や商品政策への展開に必須のツールになっています。POS端末から収集された商品の購買情報は本部のデータセンターにネットワーク経由で瞬時に伝送され、データウエアハウスで集中管理されます。 在庫情報、発注情報に展開され、商品の補充が物流部門に指示されていきます。物流担当の運転手は携帯端末で物流の指示を受け、搭載した商品を迅速に店頭に届けることができます。各店舗において日々、リアルタイムで収集されたPOS情報は本部のサーバで分析し、店舗毎の売れ行き傾向を把握して、次の商品政策の見直しに活かされるのです。

 このように、コンビニエンスストアにおける企業活動では、POSシステム、携帯端末、データウエアハウスなどの各種のITソリューションが有機的にネットワークで連携されて、顧客に最も好まれる商品の迅速な提供を行う仕組みがあります。ここではITソリューションは企業活動の骨格を形成しており、IT化は企業活動の実践の場においてなくてはならない必須のインフラになっています。

■ITと企業活動の本質とは

 企業活動は、モノの流れ、お金の流れ,人の流れ,情報の流れを切り口にして把握できます。 企業活動においては,組織の各部門の機能,役割分担を明確にし,業務効率の最大化を目指した業務の流れを検討します。

 たとえば,製造業では,マーケティング情報をもとに,製品の企画・開発・設計が行われ,採算に見合う生産方法,部品・材料の調達方法,販売方法が検討されます。在庫を最小限に抑え,かつ最小のコストで,顧客に最短のリードタイム(材料や部品の調達から製品の生産,出荷,販売までに要する時間のこと)によって,製品を提供できるように,生産計画,調達計画,販売計画が組織全体の調整のなかで決定されます。経理部門では,社員の給与計算を行ったり,出張旅費の精算を行います。人事部門では,人材の採用・部門間移動・退職,昇格などに関わる業務を行います。

 企業活動では,企業収益の向上と売り上げの拡大のために関連部門が密接に関連しながら,人,モノ,金,情報の有効活用による経営資源の最適化を図ります。開発,調達,生産,販売,サービス,さらにはサプライヤを含めた価値連鎖における情報の共有化,一元化を実現していくことが,スピード経営には不可欠になっています。情報システムは,このような企業活動を支援していくための経営のツールであり,投資に見合う効果を発揮させることが大切です。経営資源の最適化を図り,効率的な経営を実践していくためには,開発,調達,生産,販売,サービスからなる企業活動のオペレーションマネジメントにおいて,競合他社に差別化を図っていくことが不可欠です。

 ここでは、人材資源、ビジネスのやり方、製品力、技術開発力、生産力、販売力、コストダウン対応力、IT活用能力、組織構造、収益構造などの観点から、自社の強み、弱みを競合他社と比較して見直すことが重要です。 企業活動の生命線は,資本市場の評価に答え得る適切な企業収益を継続的に生み出し得るかどうかにかかっています。しかも,顧客への提供価値において,競合他社よりも優れた製品・サービスを創造しうる経営を実践できなければ,企業の社会的存在価値は市場では評価されない時代に入っています。

 ここでは,業務プロセスの改革・刷新を図り,絶えざるコストダウンができるコストマネジメントの能力も要求されます。 IT時代に勝ち組みの企業に残るために特に注目すべき企業能力は,ITを活用した,競合他社に勝るビジネスモデルの創造力です。IT化において,自社の強みであるコア・コンピタンスに特化した情報武装により,経営を実践して成功している企業もあります。 例えば,営業マンを全く持たず,情報システムだけで営業を行っているある証券会社は,リアルビジネスを凌駕するIT化のビジネスモデルの仕組みによって,証券業界にIT旋風を巻き起こしています。

 事業環境変化の激しい時代には,リスクマネジメントも重要な経営能力の一つです。IT時代では,情報システムにおけるセキュリティマネジメントの重要性が指摘されています。 以上のように,IT経営の実践の場において,IT化と企業能力は深い関わりを持ち,経営戦略の実践はIT戦略そのものにつながっているのです。
  
■ピラミッドとプロジェクトの意味するものとは

  ピラミッドとプロジェクトの意味するものとは□プロジェクトはナレッジの結晶体 古代ピラミッドの構築プロジェクトでは、目的の品質とコスト、納期を達成するためには、建築技術、土木技術、資材を調達するためのロジスティクス技術、天文学、数学など、各種の基幹技術や学問の専門性が要求されたことでしょう。

 多くの労働者や技術者、専門家を効率よく配置し、個々人の技量を最大限に発揮させるには、優れた統率能力と、緻密な計算能力、壮大な構想力を兼ね備えたリーダーが存在したと考えられます。古代、様々な国家レベルのプロジェクトが世界中で行われてきたことでしょう。

 その中には、失敗したプロジェクトもあれば、様々な困難を乗り越えて成功に導いたプロジェクトもあったことでしょう。歴史に残る名プロジェクトとして、後世に言い伝えられるプロジェクト案件を経験してみたいと望むものでしょう。 

 いずれにしても、職業人としてのいきがいや、やりがいにつながるようなプロジェクト活動でありたいものです。熱砂の砂漠に立つ岩石の集積体であるピラミッドの威容と均整の取れた景観には、圧倒されるものがありますが、そこには、緻密に計算され尽くした人間の叡知とエネルギーの結晶が今も息づいています。

 プロジェクトは、ある意味で、均整の取れたナレッジの集積体と言えなくもありません。プロジェクトとは、クライアントの目に見えないニーズをシステムのハードという目に見えるオブジェと、目に見えないソフトというナレッジの集積体に変換する仕事といえます。

 いわゆる有形資産(Tangible Asset)と無形資産(Intangible Asset)の集合体と言えなくもありません。ピラミッドでは、様々な寸法と重量を持つ岩石を緻密な立体強度計算によって適正な位置に配置することで、総体としてのピラミッドが形成されています。ピラミッドを構成する無数の岩石は、システムのソフトを構成する数多くのモジュールにたとえることができます。

 ひとつひとつの岩石の存在は、ピラミッドを眺める旅人から見れば、点の存在にしか見えないでしょう。しかしながら、ピラミッドを構成するこの点に過ぎない一つ一つの岩石は、ピラミッドにとってなくてはならない存在であり、それらの幾つかが破壊されたりすると、徐々にピラミッド本体を崩壊に導く遠因にもなりかねません。システムのソフトを構成する個々のモジュールもピラミッドの岩石と同じような役割を担っているといえます。 
 システムのソフト機能を支える個々のモジュールは、あるべき機能を発揮することで、その存在価値が明確になります。いっぽう、品質に問題があるソフトのモジュールは、システム全体に侵食を繰り返し、場合によっては、システム全体を崩壊に追いやる事態に発展させることもあります。プロジェクトリーダーは、メンバー個々人の能力が、組織のチームワーキングの結果として総体的に発揮されなければシステムは機能しないということをよく認識することが大切です。

 プロジェクトでは、予期しない様々なリスクに見舞われます。困難に直面した時に最初に行うべきことは、自己能力の確認と、不足する能力やパワーに対して支援を仰げそうな上司やメンバーなど、周りのマンパワーをいかに取り込むかということです。自己の力と周りの力を掛け合わせることで、相乗効果が発揮できます。場合によっては、自ら新しいストリーム(流れ)を作り出す努力も必要です。困難なストリーム(流れ)は、自らの意思で変えていかなければ、難局を乗り越えることはできません。

マイケル・E・ポーターの経営手法−ファイブ・フォース・モデルと競争戦略
 業界構造分析に役立つ経営手法−ファイブ・フォース・モデル企業の経営リスク・マネジメントを強化するためには、その事業環境を論理的かつ実際的な視点で分析する必要があります。企業が置かれている業界の分析手法の代表的なものにファイブ・フォース・モデルがあります。

 これは、競争戦略の権威である米国のマイケル・E・ポーター氏が編み出した理論です。市場に存在する5つの競争要因を認識して、業界が持つ魅力度を測定し、分析するための手法です。
 対象の業界を?業界内の競合の存在、?新規参入障壁の高さ、?代替品の存在、?顧客の力、?供給業者の力、の5つの視点で分析します。 業界内に競合が多く存在する状況では、業界の魅力度は低いと判断できます。参入障壁の低い製品・サービスを対象とする業界では、同業者の容易な進出を促すため、業界の魅力度は低下します。代替品の存在は、既存の製品・サービスに対して脅威となりえます。

 また、顧客(買い手)の購買における交渉力が強ければ、企業側の立場は弱くなり、業界の魅力度も下がります。部品・原材料などを供給する供給業者(売り手)の力が強いと、企業側は製品・サービスのコスト上昇のリスクが大きくなり、業界の魅力度は低下します。

■競争戦略とは

 マイケル・E・ポーターは、市場における競争優位のポジションを獲得するために、コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中化戦略からなる3つの基本戦略を提示しています。 コスト・リーダーシップ戦略は、業界内で最小のコストという優位性によって、市場で競争優位のポジションを確保するための戦略です。

 最小コストを達成するためには、製品・サービスのバリュー・チェーン(価値連鎖)の改革や、製品設計の見直し、調達コストの低減や製造ラインの生産性の向上を図るといったアプローチが必要です。

 差別化戦略は、競合他社にはない独自性や特徴を追求し、競合他社の追随を跳ね除けて、独自の土俵で製品・サービスをブラッシュ・アップする戦略です。競合他社にない機能や、デザイン、サービス、インセンティブ、ブランド、配送など、様々な差別化手段があります。 

 集中化戦略では、業界の特定の市場セグメントにフォーカスして、限定された範囲の市場で競争優位のポジションの獲得を狙います。 経営資源に限界がある中堅・中小企業や、ベンチャー企業は、ニッチ(狭い)市場に経営資源を集中化することにより、独自の製品・サービスを創造し、その市場で覇者になることも可能です。


■プロフェッショナルとは−ロード・マップをデザインする指南!

 プロフェッショナルとはプロフェッショナルに飛躍していくためには、日々、ビジネスに関するナレッジの吸収に努め、必須能力の向上を図り、実践の場で、獲得したナレッジを応用展開していく確固としたスタンスを保持している必要があります
 プロフェッショナルへの自己革新とは、狭い領域のナレッジにとらわれない幅広い見識と専門性、人間性を兼ね備えた人材を目指した自己成長を図り、それが、周りのメンバーへ好影響を与え、組織として進化していくことを意味しているといえます。このような好循環の能力開発のサイクルが機能することで、組織としての強みが発揮でき、顧客の信頼を獲得することにつながり、ビジネス展開も良い方向に向かっていく企業体質が形成されるのです。

■市場、クライアント企業のニーズを見極める

 プロフェッショナルに飛躍するためには、自己革新をどのようにイメージし、アプローチしていけばよいのか。 ここで、一つの自己革新モデルを提示しましょう。まず、第一に認識すべきことは、市場のニーズ及びクライアント企業のニーズです。プロフェッショナルとしての市場価値は、市場及びクライアント企業のニーズを具現化しうる能力を備えているかどうかで決まるともいえます。ITの活用により、企業活動における製品やサービスのQCD(品質・コスト・納期)の向上を追求し、クライアント企業が解決したい経営課題を解決しうる能力を発揮しうるかどうかです。

 ニーズの把握と市場価値とは、ペアで考える習慣を身に付けましょう。市場やクライアント企業のニーズとプロフェッショナルの能力との間で大きなギャップがあると、コミュニケーション以前の問題として、プロジェクトそのものが成り立たなくなります。

■世の中の潮流を見極める 

 第二に認識すべきことは、世の中の潮流をしっかりと認識することです。世の中のライフスタイルの変化、消費者の好みの変化、価値観の変化、企業のビジネス形態の変化(アウトソーシンググローバル化現地生産化、など)、及び各業界標準規格動向など、マクロな視点で「変化(Change)」を常に、「継続的に問題意識を持ってウォッチングする習慣」を身に付ける必要があるということです。  世の中の流れを見極めることができない思考力では、市場、クライアントのニーズにマッチしない空の箱だけのアウトプットに陥ってしまうというリスクは避けなければなりません。

コア・コンピタンスを見極める 
 
 第三に認識すべきことは、自己の強み、弱みを把握することです。ここでは、自己のコア・コンピタンス(核となる強み)を見極めることがポイントです。ここでは、特に、自己にとってのライバル(競合)の認識が大きな飛躍につながります。ライバル(競合)の認識は、内なるライバルと外部のライバルからなります。 

 内なるライバルでは、例えば、自己のリーダーシップ不足やコミュニケーション能力の不足も、弱みであると同時に、内なるライバルとして捉えれば、これらの能力不足を克服することが、ライバルの撃退につながるわけです。あるいは、性格的な弱みとして、マイナス思考でものごとを考える傾向があれば、これも内なるライバルとして認識すれば、プラス思考へのチェンジという克服すべき目標の一つとしてクローズアップされます。弱みを強みに変える、あるいは、強みを一層強化するロード・マップを描く必要性を認識することが大切です。 

 ただし、様々な弱みは、一度で短期間に解消することは不可能です。ここでは、「チリも積もれば山となる」の発想へのシフトが重要です。知識の蓄積・学習の反復プロセスである能力開発では、時間が絶対的要素となります。 人間の能力は、大宇宙に匹敵するぐらいの奥深い可能性を秘めたものです。古代の原人の時代から、数百万年の時間の経過を経て、人間のDNAが突然変異と自然淘汰を繰り返し、環境の変化に適応できるものだけが生き残るという、いわゆるダーウィンの進化論によって、21世紀は、革新的な未踏の世界に突入しようとしています。

 道端の石ころの一つ一つがどれ一つとして同じ形のものがないように、人それぞれが持つ能力の可能性にも、必ず、光る個性で覆われたパワーがあるものです。これをいかに早く見つけ、時間をかけて丹念に磨き、光る玉に替えていくかという夢を持つことが自己革新のエネルギーの源泉になります。

 自己革新の根源のパワーを何に持ってくるかは、自己の価値観やものの考え方の違いにより、一意に決めることはできませんが、人類の科学文明の進化の過程を振り返ると、かなえたい夢を現実化するアプローチによって、様々な分野で、技術革新が行われ、現在の文明のレベルに辿り着いたといえます。 また、好きこそ物の上手なれという言葉がありますが、自分の仕事に興味を持ち、好きになることが自己革新の第一歩といえるでしょう。

■自己の将来像をイメージする

 次に認識すべきことは、自己の将来像をイメージし、現状とのギャップを認識することです。このギャップをいかに小さくし、解消していくか、ここでプロフェッショナルを目指したロード・マップを自分の力で、納得の上、オーダーメイドで作成します。作成したロード・マップは、同僚や親しい友人、上司、あるいは、機会があれば、その分野の専門家の意見を仰ぎ、客観的な批評を得ることが、より、現実的かつ熟した(matured)ロード・マップとしてこなれたものになっていくでしょう。 ここで、出来合いのロード・マップを自己に押し付けても定着しません。自己の土壌に合った種を選び、自分の手で、日々、水をやり、大切に育てていくことで、青い芽が出て、枝葉を青くまぶしい大空にのびのびと広げた大樹に育ちます。ロード・マップの作成は、時間をかけて、十分に納得できるレベルまで落とし込みましょう。 

 ここでは、短期的視点(1年から2年のスパン)と中期的視点(3年から5年のスパン)、長期的視点(5年から10年のスパン)の3つのステップに区切って、各ステップでのアウトプット(成果)を明確にし、メリハリを付けたイメージを形成することがポイントです。 人は努力を続けていると、ある時、突然、視界の開けた高みにたどりつくものです。自分で丹念に作り上げた地図(ロード・マップ)を頼りに、アナログ・ロードの連続(安定)な山道から、デジタル・ロードの不連続(不安定)な吊橋にさしかかり、そこを渡ると、新たな山に入り、その山に奥深く入っていくと、突然、地平線の見える青い海の視界が眼前に開けて、海が天まで昇ってくるような情景の中で、そよ風が全身の汗を吹き飛ばしていったという爽快な状況に出会うことが期待できるものです。 

 連続(安定)は不連続(不安定)に連なり、不連続(不安定)は、更なる連続(安定)につらなり、これらのアナログの世界とデジタルの世界の連環サイクルで構成されたモデルが能力開発そのものであるのです。新たな世界に踏み込む決意をして、危なっかしい吊橋を渡るか(1)渡らないか(0)というデジタル・ロードの選択の意思決定は自分で行う状況に追い込む必要があります。自分の辿っている道は果たして目指すゴールに達するのだろうかと日々悩みながら能力開発に取り組んでいる読者もいることでしょう。ここでは、自己責任自己推進のスタンスがロード・マップの実践と完遂には不可欠であるといえるでしょう。

 ところで、第一ステップの短期的スパンにおけるアウトプットで、例えば、データ・ベース技術とWeb技術の習得に設定したとしましょう。このステップの最終時期に達した時、当初の目標が達成されているかどうか、自分で評価し、場合によっては、周囲の同僚や友人、上司から意見を伺ったり、評価してもらうことも必要です。 あるいは、各種の資格試験などにチャレンジすることで、客観的な評価を得ることも可能です。辿ってきた道を振り返り、反省し、目標をクリアできなかった場合は、要因分析を行い、アプローチを変えたり、目標の見直し・変更を行うことも必要になってくるでしょう。

 このように、各ステップごとの区切りでは、モニタリングによる明確な評価が必要であると同時に、軌道修正をかけるスパイラルアプローチが有効です。目標を掲げていれば、日々の努力の積み重ねによって、次第に到達地点に収束してくるものです。まず、成し遂げようという意欲と、必ず達成できるという信念がロード・マップを価値あるものに転換させていくでしょう。 多忙な日々の中で、能力開発に打ち込める時間を作る意識付けが自己成長の環境作りの出発点といえます。ドイツの大詩人ゲーテは、才能は孤独の中で創られるといっています。小刻みな時間を有効活用したタイムシェアリング管理による自己学習の時間作りの習慣付けがポイントであるいといえます。

 能力開発では、コミニュケーションンスキル、専門性、バランス感覚、センス、実行力、調整力、マネジメント能力、革新能力の向上に注力しなければならないでしょう。 プロフェッショナルに飛躍していくためには、ライバルに負けないという内なるキーワードにより、チャレンジ精神の発揮が不可欠です。ここでは、能力を客観的に自己及び上司が評価できる仕組みが必要です。自己の目標レベルと上司の目標レベルのすり合わせを十分に行い、双方が納得できるように十分なコミュニケーションの場を設けることで、能力開発は組織的に機能します。

■体系的な能力評価とスキル・マネジメントの仕組み

 スキル・マネジメント評価の仕組みでは、業務軸、業界軸、専門的な技術軸、及び人材の資質軸をベースに4次元でマトリックス化し、体系的に多角的な視点で評価できる仕組みが必要でしょう。プロフェッショナルに要求される能力は多岐にわたりますが、T字型あるいはπ型の能力開発のアプローチが有効でしょう。得意分野はコア・コンピタンスとして強化することで、差別化できるプロフェッショナル能力を獲得することができます。

 T型では、例えば、ネットワーク技術に特化してチームの第一人者を目指すことで、市場価値の向上も期待できます。

 π型では、ネットワーク技術と企業会計の知識にフォーカスし、コア・コンピタンスの2本柱として、ロード・マップを描く能力開発のアプローチも考えられます。能力評価とスキル・マネジメントの仕組みでは、業務軸、業界軸、技術軸、資質軸からなる人材データ・ベースを活用します。

 ここでは、プロジェクトマネジメント能力に優れた人材、企業会計や生産管理の業務に精通した人材、販売管理に長けた人材、Web技術、セキュリティ技術、ネットワーク技術を十分に活用できる人材というように、専門領域の区分で人材データ・ベースを構築します。さらに、業界分野ごとに人材スキルを区分します。製造業、流通業、金融業といったように細分化し、セグメント別に分類して、人材をデータ・ベース化します。 

 例えば、製造業では、自動車、製薬、食品、繊維、鉄鋼、機械、といったグループで、各分野でのプロジェクト経験やスキルのレベルを管理します。 これにより、自社の人材資源における強み、弱みを明確にし、人材調達戦略、技術調達戦略を練ることが可能になります。機動的なプロジェクト活動を支えるためのナレッジ・マネジメントを実践していくナレッジのインフラが組織的かつ体系的に形成されます。

■プロジェクトにおける万有引力の法則と本質のキャッチアップ
 プロジェクトにおける万有引力の法則と本質のキャッチアップ□ 本質はどうすれば見えてくるのか 物事の本質を究めると複雑な事象がくっきりと見えてきます。表面的な雑然とした数々の事象に惑わされずに、それらの背後にある基本原理や基本軸を読み解くことによって、ビジネスを成功にみちびくことができます。

 プロジェクトに携わるビジネスパーソンにとって、日々、顧客のニーズが変化し、その対応に追われる状況において、このいたちごっこの現状を何とか打開できる方法はないものかと思い悩んでいる読者も多いことでしょう。クライアントがなぜ、こうも多くの仕様変更を繰り返し要求してくるのか。限界というものがあるが、なかなか、相手に切り出せないものです。予算オーバー、人材不足、期限超過、赤字プロジェクトの非難轟々、・・・。

 ここで、本質を究めるということが現状打開策には有効であることをお話しましょう。本質を見極めるということがいかにパワーを発揮するものであるのかということについて考えてみましょう。 万有引力の法則を発見したニュートンは、りんごが木から落ちるということを見て、引力の存在を発見したといわれています。引力とは、まさしく、地球の中心に向かって物体が引っ張られる力のことです。 木から落ちるりんごを見て、この現象が地球の中心に向かって引っ張られているということを見抜いたニュートンは、目に見えない力の存在を肌で感じとることができる能力を持っていたといえます。もし、この万有引力の法則が発見されていなければ、どういうことになっていたでしょうか。

 力F=質量M×加速度αの公式を用いなければ、宇宙ロケットや航空機、自動車、船、高層建築物などは、存在することができないでしょう。 

 精緻な設計を要求する文明の利器は、万有引力の法則のおかげで生まれてきたともいえます。万有引力の法則という、ひとつの事象を見極めた能力は、現代文明に飛躍的な進歩をもたらしました。本質を究めるということが、いかに、関連する周囲の存在への影響力が大きいかわかるでしょう。本質を究めることにより、偉大なパワーを引き出すことができるのです。

■プロジェクトにおける万有引力の法則を発見する 

 皆さんは、万有引力のような偉大な発見は、土台無理な話だと二の足を踏まれることでしょう。日々のビジネスでは、万有引力の法則とはいかないまでも、小さな法則や基本軸なるものは、発見できる機会があるはずです。

 例えば、ある製造業のシステム化のプロジェクトに参画している若手のSE(システムエンジニア)がいたとしましょう。製造業にも様々な生産形態が存在します。大量生産方式を採用しているクライアントもあれば、受注生産方式を採っているクライアントもいます。生産形態が異なれば、システムデザインの基本コンセプトも大きく違ってきます。 

 このケースでは、万有引力や基本軸に相当するものものは、業界事情に精通したビジネスマネジメント知識をベースにした生産形態であるともいえるわけです。基本軸は、ビジネスプロセス全体を司る系とでも言い換えることができます。 ここを見極めることができずに、システム開発に着手してしまうと、クライアントのニーズは全て、違った方向に解釈されてしまうリスクが発生してしまいます。

 以前、A業界で受注生産方式のシステム構築の経験があるから、今回のB業界のクライアントも同じ発想で取り組めば大丈夫だといった判断で、システムデザインに取り組んでしまうと大変なことになってしまいます。 

 業界や対象製品が違えば、同じ受注生産方式でも仕組みが大きく違ってくる場合があります。プロジェクトのスタートにおいては、新規プロジェクトを支配する万有引力の法則とは何なのかをしっかり見極めることが重要です。競合の存在や企業文化が万有引力となる場合もあります。

 これらは、システムの仕組み、性格を大きく方向付けるものであると同時に、システムデザインにおける大きな制約のファクターともなるからです。IT化で狙うべきものは、企業活動におけるビジネスマネジメントの改革・革新です。顧客との関係を強化し、売上および収益の拡大を図るとともに、ビジネスプロセスを見直して、コストの低減と品質の向上を進め、スリムでスピーディな企業活動の仕組みを構築することにあります。

■複雑な事象と経営手法

 この世の中は、不思議な現象に満ちています。そこでは、様々な要因が複雑に絡まりあっていますが、事象としてわれわれに認識できるのは、一つのアウトプットとしての事象です。アカシックレコード(Akashic Record)という言葉があります。この宇宙に存在するあらゆる現象や生命体の知識、経験といったナレッジから構成される超宇宙データベース版とでも言うものです。

 そこには宇宙ビッグバンの過去から現在までに蓄積されてきた莫大な知識や知恵、真理、さらには未来までのナレッジが格納されているといわれていますが、インターネットはこのアカシックレコード(Akashic Record)の巨大なデータベースにアクセスする端末になりつつあるといえるでしょう。

 夜空にちりばめられた色とりどりの星を眺めていると、様々な思いが巡ってくることでしょう。宇宙空間に浮いている巨大な天体や銀河の存在は謎の超集合体です。なぜ、あのような巨大な天体、数多くの星が、宇宙空間上に浮かんでいるのでしょうか。筆者は天文学者ではないので、うまく説明できませんが、素人の頭で思いをめぐらしても、謎だらけの世界といえます。重力の存在とは何なのか。万有引力は存在していますが、それだけでは、宇宙空間に見られる天体のストーリーは説明できません。

 ダークマターという目には見えない物質の存在も指摘されています。数え切れない数の星は、何らかの秩序や物理法則にもとづいて、規則的な移動運動を繰り返しているのでしょうか。宇宙膨張説というものもありますが、プールに浮き輪を浮かべるのとなんら変わりないような状況が、無限の宇宙空間でも存在していることを考えると、全く、説明がつかず、呆然としてしまいます。

 しかしながら、解明できない現象に頭を抱えているだけでは、進歩はありません。事象を構成する要因を洗い出し、それらの関係を明らかにし、何らかの解を結論として論理的な枠組みの中でアウトプットする必要があります。なぜの繰り返しのゴールは、最適解でなければならないのです。人知の限界と、限られた時間、コストなどの制約条件の中で、絶対的な解ではなく、最適な解を追求するところに、経営分析手法の弱みと曖昧さがあるわけですが、納得できるアウトプットにともかく到達することによって、経営分析手法はビジネスパーソンに強みを与えてくれるビジネスツールともいえます。

■経営手法によるビジネス改革

 複雑な事象に取り囲まれた現代のビジネスパーソンは、経営手法がビジネスに役立ちそうだということは、直感的にわかるでしょう。経営手法を幅広い分野を視野に入れて眺めてみると、非常に面白い、興味深く、役に立つ経営手法を発見できます。

 忙しいビジネスパーソンの読者の皆さんは、マンネリ化した業務に活を入れて、なにか、面白いビジネスの世界に入っていきたいと思うことがないでしょうか。ここでも、経営手法が出番となります。面白い手品芸を見物すると、興奮と興味が湧いてきますが、そこには必ず、種明かしが付録としてついてきます。種明かしを教えてもらって初めて、「そういうものか、それなら、自分でもできそうだ、今度、機会があれば、人前で、同じように披露してみたいものだ」という境地に達するのが人情というものでしょう。

 これと同じように、経営分析手法のしくみをこのコ-ナーで種明かしをしてもらえば、ぜひ、日々のビジネスの実践で活用しようという気になってくるでしょう。

■発明王エジソンの謎

 発明王エジソンは、GEというとてつもない巨大企業を世に生み出しました。エジソンは、子供の頃から非常に探究心の強い少年でしたが、謎解きの世界にはまって、そこから、様々な優れた文明の利器を作り出しました。最たるものは、蓄音機と電球でしょう。この二つは、現代社会に大きな恩恵をもたらしました。

 ある意味で、数々の新しい文明の利器を生み出したエジソンの頭脳は、本人だけが知っている経営手法のノウハウを持っていたのかもしれません。エジソンには、これらのノウハウを体系化して、活字の本にするような時間の余裕は全くなく、新しい製品の輩出に全エネルギーを注ぎ込んでいたのかもしれません。エジソン自信が経営手法を生み出したかどうかは定かではありませんが、GEという企業から、様々な優れた経営手法が編み出されてきたのは事実であり、現代のビジネスパーソンは、無意識に使っているのが実態でしょう。 過去から現代に至る数々の経営手法には、99%の先人の汗と努力と、1%の天才的なひらめきに満ち充ちているといえるでしょう。これは、「発明は、99%の忍耐、汗、努力と1%のインスピレーションによるものだ」というエジソンの言葉を言い換えたものです。

■経営リスクマネジメントと経営分析手法 

 企業活動のグローバル化や人材の流動化が進展することで、経営リスクに出くわす確率は非常に高くなってきています。従来の日本企業の強みでもあった均質的な従業員の砦は、今や崩壊し、グローバルな次元での労働力の確保と活用が、大競争時代には企業生き残りの必須条件となっています。 
 
 このことは、裏返して考えてみれば、多様な経済プラットフォームと労働力が潜在的に抱え込んでいる経営リスクが、一挙に、日本企業に到来している構図が成立しているという現実に直面している証となっています。突発的に発生する経営リスクに対応するための手段として、経営分析手法は、とても頼りがいのある経営ツールとなります。過去・現状のデータ分析をベースにして、未来を予測できるからです。 売上拡大のためには、どのような因子にフォーカスして、ビジネス・アプローチのチェンジを図っていけばよいのか、といったビジネスパーソンの悩みが、経営分析手法を知ることにより、ビジネスで直面している問題点や課題にマッチした処方箋を得ることができるでしょう。

■思考力を鍛えるアプローチ

 ビジネス活動は、多様なファクター、企業風土、企業文化、組織、ビジネスプロセス、競合などが絡んでいます。ここでは、多様な分析能力を備えた柔軟な思考力がビジネス活動を支えます。 経済情勢、市場環境、競合や株主の存在などは、企業にとっては、外部環境になります。企業の風土や文化、人材、組織、ビジネスプロセスなどは、内部環境といえるものです。経営資源には、人材、モノ、金、情報などがあります。企業価値を高め、適正な利潤による収益拡大を追求する企業として存続していくためにはどうすればよいのでしょうか。

 ここでは、経営資源をどのように最適に活用すべきかという経営課題を解決するために企業戦略を策定し、戦略を実現していくために最適なビジネスモデルを設計することにより、ビジネスマネジメントを実践していきます。 ビジネスパーソンは、基本的なビジネス知識だけではなく、企業経営者や幹部と渡り合えるだけの経営分析手法を駆使しうる思考力を常日頃から鍛えておく必要があります。ギリシャのことわざに、「教育とは懲らしめることである」という一言があります。中国のことわざにも、「本人が自分の力で理解しようとするまでは教えてはならない」といった意味のような一言があります。

 人間の能力は無限ともいわれますが、脳は鍛えなければ、次第に退化していきます。ビジネスの実践の場では、イラスト入りの優しい入門書の道案内人は存在しないからです。時には、難解な文章で埋め尽くされた書物も紐解いて、自分で汗しながら、じっくり読み込む努力が必要です。

 理解しようという意思による学習プロセスを介して初めて能力は鍛えられるのです。スポーツの世界でもいえることですが、人材というものは徹底的に鍛えられると、ある臨界点に達し、そこを越えると、新たなる能力の飛躍の獲得が期待できるものなのです。 ある日突然、昨日までできなかった苦手な逆上がりが、公園の鉄棒にぶら下がるとひとりでに体が宙に浮いて、眺めのよい風景に変わっていたという体験を持っている読者もいることでしょう。  

■ビジネスマネジメントとスキル
 ビジネスマネジメントとスキル ビジネスマネジメントを革新していくためには、ビジネスの基本構造を理解できる能力とスキルが要求されます。< ビジネスをDNAレベルで解明できる洞察力とは > ビジネスパーソンは、グローバルな次元で競争力をつけなければならない時代に入っています。ビジネスパーソンに必要なビジネスマネジメント知識には様々なものがありますが、ビジネスの本質に迫れる優れたシステム思考の能力を身につけることが大切です。

 ビジネス活動に関係を持つ顧客、企業、人、情報、プロセス、組織など、各種のファクターからなるビジネスモデルを再構築できる能力が、プロフェッショナル人材に飛躍していくためには必須となります。
 ここでは、ビジネス活動についてビジネスの専門知識をベースに、高いコミュニケーションスキルやリーダーシップ能力だけではなく、ビジネスの実践の現場を、DNAレベルの本質にまで迫って洞察できる能力が必須となります。

 そこから、問題点、課題を抽出し、経営戦略、事業戦略に組み込み、企業の体質にマッチした最適な経営課題、事業課題の解決を図るシナリオを練ることができるスキルが必要です。<ビジネスパーソンの絶対条件> ビジネス活動は、多様なファクター、企業風土、企業文化、組織、ビジネスプロセス、競合などが絡んでいます。経済情勢、市場環境、競合や株主の存在などは、企業にとっては、外部環境になります。企業の風土や文化、人材、組織、ビジネスプロセスなどは、内部環境といえるものです。

 経営資源には、人材、モノ、金、情報などがあります。企業価値を高め、適正な利潤による収益拡大を追求する企業であるためには、経営資源をどのように有効活用すべきか、いかなる企業戦略を策定し、実現していくべきかが問われます。ここでは、企業経営に関わるビジネスマネジメントの基本知識を身に付けておくことがビジネスパーソンの絶対条件となります。

■思考力を鍛える
 プロフェッショナルを目指すビジネスパーソンは、基本的なビジネスマネジメントの知識だけではなく、企業経営者や幹部と渡り合えるだけの思考力を常日頃から鍛えておく必要があります。時には、難解な文章で埋め尽くされた書物も紐解いて、自分で汗しながら、じっくり読み込む努力が必要です。理解しようという意思による学習プロセスを介して初めて能力は鍛えられるのです。スポーツの世界でもいえることですが、人材というものは徹底的に鍛えられると、ある臨界点に達し、そこを越えると、新たなる能力の飛躍の獲得が期待できるものなのです。   

■ヒューマン・スキルを極める

 ヒューマン・スキルには、コミュニケーション能力やリーダーシップ能力、プレゼンテーション能力などがありますが、ビジネスパーソンにとって、まず、第一に身に付けるべき能力は、コミュニケーション能力です。クライアントとのコミュニケーションでは、いかに相手の言うことを正確に理解し、それをシステム仕様に展開できるかというイメージ能力が問われます。言葉というものは、話す側と聞く側の価値観、経験、環境などの違いにより、相互におけるギャップが生まれます。このギャップにより、場合によってはプロジェクトの推進に支障を来たします。

 ギャップ解消を図るには、まず、相互を理解し、信頼関係を築くことができるヒューマンスキルのレベルにかかっているともいえます。コミュニケーションスキルでは、様々なテクニックや基本的なアプローチが要求されますが、究極は、人と人との意思伝達であり、相手の考え方や価値観を理解することからスタートすることが大切です。

 ここでは、相手の理解を助けるのにクライアントニーズを図表化するアプローチも有効です。さらに、5W2H―WHAT−IFにより、事象を整理することは、コミュニケーションの基本です。クライアントとのコミュニケーションギャップのリスクを解消するためには、ヒューマンスキルを日頃から実践の場で磨く必要があります。 

 クライアントとの交渉では、様々な難題も持ち上がってくるでしょう。あるいは、専門的なビジネス知識を持ち合わせていないと、コミュニケーションが全く機能しない場合も出てきます。ここでのポイントは、視点やアプローチを変えたり、発想の転換を図ることで、難局を打開できる場合もありうるということです。

■プロジェクトにおけるコミュニケーションギャップとは

 ビジネス改革プロジェクトでは、様々なスキルや経験、能力を持った人材がチームの構成員となります。ここでも、コミュニケーションギャップのリスクが発生します。プロジェクトリーダーは、情報の一元管理の仕組みを作り、プロジェクトに関わる情報は、データベース化し、メンバー間で共有化を図るインフラの整備を行うことが不可欠です。

 情報が特定個人に埋没し、円滑な情報流通の仕組みがなければ、そのプロジェクトはいずれ、方向性を失い、メンバーが各々バラバラのベクトルで行動するため、プロジェクトが立ち往生してしまうケースが多々発生します。メンバーが有するスキルを明確にし、プロジェクト推進の経営資源のパワーとして、最大限に発揮できるようなスキル管理の仕組みを整備することも必要です。メンバー相互間のスキルの強み、弱みを補完し合い、チームワーキングが円滑に機能するように図っていく仕組みが必要です。  

■プロセス思考と経営分析手法の関係

 経営手法は、プロセスの現状把握からスタートしますが、プロセスの見極めが不十分であると、分析結果は当初の意図からはみ出し、とんでもないものになってしまいます。経営手法の中には、ビジネス改革に役立つものが多くありますが、ここでは、プロセス思考を持たないと経営分析手法はその機能をうまく発揮できません。プロセス思考とは、企業活動や顧客の購買行動をプロセスの流れとして捉える考え方です。いくら数多くの現場データを収集し、経営分析手法を活用しても、データの分析結果と実際の状況との因果関係がうまく説明できない場合が起こってきます。

 ここでは、プロセス思考が欠落していることが事象の解明の妨げになっている場合が多くあります。プロセス思考では、企業のビジネス・プロセスや顧客の購買プロセスは、短期間でできたものではないということを頭に入れておくことが大切です。企業の業務プロセスや顧客の購買プロセスは、人類のDNAの進化のように幾多の淘汰を繰り返し、取捨選択されて今日、存在するものなのです。

 そこでは、利害者関係(ステークホルダー)の力学や、生まれ育ちの歴史、背景、環境というべきものが存在します。企業のビジネス・プロセスでは、例えば、開発部門が幅を利かしているような企業では、後工程の調達部門、生産部門などにビジネス・プロセスで大きく負担を強いるケースがよく見受けられます。開発部門の設計変更が多いと、部品、原材料を調達する部門は、大変です。注文の手配を完了したにもかかわらず、突然、発注中止ということになったり、場合によっては、部品在庫が膨らんでくるからです。開発部門の発言力が組織的に強い場合、調達部門、生産部門は、設計変更がなぜ多々発生するのか、発生しないようなビジネス・プロセスに改善すべきだなどと、開発部門に言いたくてもいえない状況になっています。

 このような企業では、ビジネス・プロセスは硬直した非効率なものになっています。設計変更の多発は、数多くの無駄な業務を発生させ、関係する人員を巻き込むはめに陥ってしまいがちです。コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係企業活動におけるプロセスを見極め、ビジネス改革を検討する際には、コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係を見抜くことが大切です。

 例えば、プロセスのスピードを上げようとすると、プロセスのコストはアップするのが一般的です。生産性を上げようとすれば、より多くの作業要員を生産ラインに投入したり、新規の設備投資で生産能力をアップさせる方策が採られます。プロセス・クオリティを上げようとすると、プロセスのコストはアップします。プロセス・クオリティとは、一連の業務プロセスにおける品質のレベルのことです。業務プロセスは、ルールに則り文書化され、定常化されているか、組織的な改善活動が行われているかといったようなことです。クオリティとコストもトレードオフの関係が成立します。
 
 このプロセス・クオリティのレベルが悪化すると、プロセス・スピードの低下を招き、プロセス・コストは上昇します。プロセスのインタフェースの側面も見逃してはなりません。プロセス・インタフェースとは、部門間のプロセスを連携させる情報のやり取りの仕組みを意味しています。すなわち、プロセス・インタフェースとは、IT化そのものでもあるのです。部門間相互で情報のやり取りがうまくいかないとプロセス・クオリティは悪化します。不十分な情報や不正確な情報では、判断に迷いが生じ、業務そのものが成り立たないからです。情報のやり取りがうまくいかないと、プロセス・コストも肥大化してきます。正確な情報を得ようとする担当者は、余分な仕事をこなさなければならなくなるからです。

■SCMと業界標準電子商取引サイト

 SCMと業界標準電子商取引サイト ロゼッタネット、JNX   <SCM(Supply Chain Management)とは> SCMは、流通分野や製造分野で、在庫削減、リードタイム短縮などに効果を発揮する関連企業群の情報一元管理の仕組みを言います。SCMでは、情報システムを駆使して、サプライヤーと親企業があたかも同じ屋根の下で生産情報、顧客情報、商品・製品情報、物流情報などを共有し、全体最適のオペレーションズ・マネジメントの企業活動の仕組みを実現できます。

ロゼッタ・ネットとJNX> ロゼッタ・ネットは、電子部品業界やパソコン業界などが企業間における電子商取引を目的として策定した国際規約のことです。ロゼッタ・ネットでは、受発注や在庫情報など、SCMに参加する企業間でやり取りする各種のデータや業務プロセスを定義しています。サプライチェーンの企業間EC(電子商取引)システムをXML(拡張可能マークアップ言語)により構築しています。

 ロゼッタ・ネットでは、メーカー、卸・流通業者、販売店、エンドユーザ企業など、様々な業種の企業の協力によって、グローバルなサプライチェーンの構築に必要な技術仕様や業務プロセスを策定しています。 JNX(Japanese automotive Network eXchange)は、自動車産業を中心に企業間電子商取引を目的として形成されたセキュアな共通ネットワークのことです。JNXは、大手自動車メーカーやその協力会社、サプライヤーが参加するビッグな電子商取引市場です。自動車業界だけでなく、産業界に幅広く共通で使用できるB to B(Business to Business:企業間電子商取引)のためのネットワークインフラを提供しています。 JNXでは、電子決済による資材調達をはじめ、コンカレントエンジニアリング(開発・製造・サービスなどの各部門による源流段階での一体活動)の推進に必要な各種の情報サービスを提供しています。  

アインシュタインの本質を極める心とは
  物理学者アインシュタインは、1905年に「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」を次々と発表しました。アインシュタインは、ニュートン力学とは違って、相対性理論では、高速で運動する物体では時間の進み方が遅くなるという原理を発見しました。また、一般相対性理論では、重い物体の周囲では時間と空間がゆがむとし、この理論は、はるか上空を飛ぶ衛星の時計が地上より早く進む現象によっても確認できます。 アインシュタインは、「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションのことである」と言っています。「観察したり理解したりする喜びは、自然からの最大の贈り物だ」とも言っています。

 アインシュタインは、複雑な事象の本質を究めるためには、常識を捨て、自然現象に愛着を持ち、深く溶け込んで浸透していく素直な心が大切であるということを言っているのではないでしょうか。

■事象にフィットした視点と心とは  

 本質を見極めるのに不可欠なものに、視点というものがあります。視点とは、物事や事象をどの角度から眺めて、分析、解釈を行うかということです。ある意味で、次々に発生する物事や事象は、複雑に絡んだ因果関係からなる、多様なファクターの産物ともいえますが、切り口によって、見え方が違ってくるということです。人の顔を正面から見た場合と横から見た場合では、明らかにその人が持つ顔の形だけでなく、相手に与える印象も違ってきます。

 米国が人類初で月に宇宙ロケットで人を送り込むことに成功したとき、世界中で賞賛の声が沸きあがりました。このときの宇宙飛行士は、はるか宇宙のかなたから、音声とともに電波で地球の映像を送ってきましたが、ここでは、地球にいる人類は、初めて、自分が存在する場所をはるか宇宙という外から眺めることができたわけです。この体験は、様々な人々に多様な影響を及ぼしたと推測できます。一人の勇敢なパイロットが地球上の人類に与えた感銘とそれによってもたらされたインパクトは絶大なものであったといえるでしょう。宇宙工学は民間分野の産業に転用され、現在のITを生み出したともいえます。

 これらのことから言えるのは、物事や事象というものは、多面体であるということです。その多面体を構成するある一角を正確に真正面から見ようとすれば、視点をその一角の面に合わせてやる必要があるということなのです。ここでは、最適な経営分析手法の選択を誤らなければ、複雑な事象の中に潜んでいる要因間の関係や法則が見えてくるのです。様々な経営分析手法の歴史は、一言で言えば、ビジネスの世界で発生する様々な現象の本質を解明する過程で生み出された分析理論の体系ともいえるからです。 

 様々な業界の、様々な企業風土や企業文化のもとでビジネス活動を行う企業体が生み出したビジネスプロセスは、この多面体にたとえることができます。業界が変われば、物事の視点や考え方もチェンジしなければならないということです。複雑な事象の分析においては、事象の特性にマッチした経営分析手法の選択が求められるということなのです。ここでは、本質を見極め、多様な視点をもつスタンスを確保することが、ビジネスの成功につながっていくのです。  


■グローバル競争時代のスキル−独自性を極める 
 グローバル競争時代の変化に対応していくためには、どうすればよいのか、日々、思い悩んでいる読者もいることでしょう。一つの有効なアプローチは、自己の独自性を磨き、発揮させるということです。独自性がなければ、アウトソーシングされてしまう時代です。他人では代用できない確固たる独自性を身につけることが、自己の成長機会の獲得にも結びついてきます。 では、独自性とは、なになのか。この答えは、各人によって様々ですが、必ず、持ち合わせているものです。問題は、その独自性が時代や市場、本人が属する企業のニーズにマッチしているかがポイントです。しかし、時代と市場は常に変化しています。独自性の追求も外部環境の変化に合わせて柔軟に方向転換を図っていく勇気が求められます。時代、市場に受け入れられる独自性は、市場価値が高くなるため、ビジネスとしても有利に展開するだけでなく、本人にとっても自己のキャリアを磨く上で不可欠なものです。  欧州の有名な自動車メーカーに、高価な高級車でありながら、独自性を追求し、自動車のニッチ市場で確固たる地位を築いている世界的企業があります。この企業では、ドライバーの安全性の確保を製品コンセプトの第一に位置付けています。安全性の徹底的な追求をベースにした自動車の開発は、顧客の支持を受け、優良固定顧客による指名買いにより、安定した事業収益を確保しています。独自性に徹底的にこだわることで、競合他社の参入を阻止し、独自のビジネスモデルが成功するわけです。

■独自性は市場価値を生み出す 

 独自性を何に置くかは、外部環境やライバルの存在、あるいは自己の価値観によっても様々ですが、ここで重要なことは、市場のニーズ、クライアントの求めるものを起点にして、それを満足できるための独自性を追求するというアプローチのあり方です。市場性のある独自性こそが、市場価値を生み出し、自己実現にもつながっていくということなのです。クライアントへの独自価値の提供により、競合他社との差別化を図ることも可能になってきます。

 例えば、流通業界の動向分析では、社内で右に出るものがないというほどの能力を持っていれば、これは、本人だけでなく企業にとっても大きな知的財産となり、企業競争力や収益の源泉となります。独自性を持った人材が数多く存在すれば、経営資源としての人材に重複がなく、企業の強みを発揮できるパワーの源となります。独自性を持った人材育成こそが、今後のスピーディかつグローバルなサバイバル競争に打ち勝つための企業組織存続の秘訣といえるでしょう。

 グローバル競争に打ち勝っていくためには、戦略的な経営アプローチが絶対条件となります。ビジネスパーソンは、経営戦略の策定における基本的仕組みを十分に身に付け、経営戦略がわかるプロフェッショナル人材を目指していくことが大切です。企業活動の新たなる仕組みを不断に追及していくことが企業のサバイバル競争の絶対条件になってきています。  ビジネスパーソンは、顧客ニーズを十分に把握し、IT活用により、ビジネスプロセスの革新を図っていくことができます。 ここでは、顧客へのサービス、ロジスティクス、販売、生産、調達、設計、開発というように、従来の業務プロセスのベクトルを反転させて顧客の視点からビジネスモデルをデザインするというアプローチが重要です。

 全体最適の視点で、顧客を起点ベクトルに据えた業務プロセスの革新を図るとともに、バリュー・チェーン(価値連鎖)の再構築を図ることで、ビジネスのスピードとコストを追求していく能力を身に付ける必要があります。経営的視点とITの視点をベースにして、バリュー・チェーン(価値連鎖)に関わるビジネスマネジメント知識の習得を図ることが不可欠です。各業界のビジネスプロセスの基本をしっかりとマスターしましょう。

 さらに、プロジェクトマネジメントの能力を有することが、ビジネスパーソンにとっては大きな差別化能力となります。限られた時間、予算、納期、人員の制約条件の中で、様々なプロジェクト環境の変動要因に対処しながら、当初の目的を達成するには、強力なリーダーシップの発揮による効率的なプロジェクト運営管理の能力がポイントです。  経営戦略の立案の当初の段階から、経営戦略に関わっている部門の管理者やトップをサポートし、主体的に関わっていくスタンスが要求されます。事業戦略を勘案し、競合に対し差別化を図れるようなビジネス改革は、経営効果となって大きなキャッシュ・フローを生み出します。ここでは、全体最適化の企業活動のデザインをイメージできるかどうかがビジネス戦略の成否に大きく影響します。 
 
■ベンチ・マーキンとは
ベンチ・マーキンとは ベンチ・マーキングでは、自社と目標とすべき成功企業や競合他社との事業力のギャップを分析します。先進的な同業他社や競合他社の優れたビジネスのやり方や業務プロセスを自社のものと比較して、目標基準を設定し、自社とのギャップを埋めるような改善活動につなげていきます。例えば、利益率や製品リードタイム、一人当たり売上高、売上伸び率などを比較指標として事業力を評価します。  ギャップ分析では、事業力の強化をもたらしている要因の見極めを行います。例えば、独自技術力や、販売ノウハウ、生産技術力といったものです。このような事業の差別化や強化に不可欠なファクターを抽出し、KPI(業績評価指標)により数値目標として明確にし、自社の事業力の強化に適用していくアプローチを採ります。 ベンチ・マーキングの方法論の代表的なものには、?戦略的ベンチ・マーキング、?競合ベンチ・マーキング、?プロセス・ベンチ・マーキング、?社内ベンチ・マーキングの4種類があります。  


■プロセスを見極める能力とは
 プロセスを見極める能力とは プロセスを見極める能力は、経営分析手法の基本的アプローチといえます。ここがぶれると分析結果は、満足できないものとなりがちです。□ プロセス思考と経営分析手法の関係 経営分析は、プロセスの現状把握からスタートしますが、プロセスの見極めが不十分であると、分析結果は当初の意図からはみ出し、とんでもないものになってしまいます。経営分析手法の中には、ビジネス改革に役立つものが多くありますが、ここでは、プロセス思考を持たないと経営分析手法はその機能をうまく発揮できません。

 プロセス思考とは、企業活動や顧客の購買行動をプロセスの流れとして捉える考え方です。いくら数多くの現場データを収集し、経営分析手法を活用しても、データの分析結果と実際の状況との因果関係がうまく説明できない場合が起こってきます。ここでは、プロセス思考が欠落していることが事象の解明の妨げになっている場合が多くあります。
 プロセス思考では、企業のビジネス・プロセスや顧客の購買プロセスは、短期間でできたものではないということを頭に入れておくことが大切です。企業の業務プロセスや顧客の購買プロセスは、人類のDNAの進化のように幾多の淘汰を繰り返し、取捨選択されて今日、存在するものなのです。

 そこでは、利害者関係(ステークホルダー)の力学や、生まれ育ちの歴史、背景、環境というべきものが存在します。 企業のビジネス・プロセスでは、例えば、開発部門が幅を利かしているような企業では、後工程の調達部門、生産部門などにビジネス・プロセスで大きく負担を強いるケースがよく見受けられます。開発部門の設計変更が多いと、部品、原材料を調達する部門は、大変です。注文の手配を完了したにもかかわらず、突然、発注中止ということになったり、場合によっては、部品在庫が膨らんでくるからです。

 開発部門の発言力が組織的に強い場合、調達部門、生産部門は、設計変更がなぜ多々発生するのか、発生しないようなビジネス・プロセスに改善すべきだなどと、開発部門に言いたくてもいえない状況になっています。このような企業では、ビジネス・プロセスは硬直した非効率なものになっています。設計変更の多発は、数多くの無駄な業務を発生させ、関係する人員を巻き込むはめに陥ってしまいがちです。

□ コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係 

 企業活動におけるプロセスを見極め、ビジネス改革を検討する際には、コスト、スピード、クオリティ、インタフェースのトレードオフの関係を見抜くことが大切です。例えば、プロセスのスピードを上げようとすると、プロセスのコストはアップするのが一般的です。生産性を上げようとすれば、より多くの作業要員を生産ラインに投入したり、新規の設備投資で生産能力をアップさせる方策が採られます。プロセス・クオリティを上げようとすると、プロセスのコストはアップします。

 プロセス・クオリティとは、一連の業務プロセスにおける品質のレベルのことです。業務プロセスは、ルールに則り文書化され、定常化されているか、組織的な改善活動が行われているかといったようなことです。クオリティとコストもトレードオフの関係が成立します。このプロセス・クオリティのレベルが悪化すると、プロセス・スピードの低下を招き、プロセス・コストは上昇します。
 さらに、プロセスのインタフェースの側面も見逃してはなりません。プロセス・インタフェースとは、部門間のプロセスを連携させる情報のやり取りの仕組みを意味しています。プロセス・インタフェースとは、IT化そのものでもあるのです。部門間相互で情報のやり取りがうまくいかないとプロセス・クオリティは悪化します。不十分な情報や不正確な情報では、判断に迷いが生じ、業務そのものが成り立たないからです。さらに、情報のやり取りがうまくいかないと、プロセス・コストも肥大化してきます。正確な情報を得ようとする担当者は、余分な仕事をこなさなければならなくなるからです。

  
■米国企業改革法とはなにか
 企業倫理・企業行動に対する社会的要請は高まり、投資のグローバル化が進展する中で、企業をチェックする投資家の厳しい監視の目が、状況によっては企業にとって命取りになる時代です。 財務諸表を初めとした経営に関わる情報開示(ディスクロージャー)を積極的に進め、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の強化により、企業価値と株主に対する信頼を得ることが、企業存続には不可欠になっています。 2002 年に制定された米国企業改革法(Sarbanes-Oxley Act:サーベンス・オクスリー法)は、エンロンワールドコムなどに見られた不正会計事件を未然に防ぐ抜本的な対策として生まれました。企業の監査報告書に虚偽の記載内容があることが発覚した場合、企業の役員は個人的に責任を追及されます。虚偽の財務報告書に故意に署名をした役員には、罰金並びに禁固が科されるという厳しい法律です。 

 米国企業改革法の主要条項として、302条「財務報告書に対する企業の責任」では、企業のCEOおよびCFOは自社の財務報告の正確性について個人名の宣誓書を添付する義務が定められています。404条「社内管理規定の評価」には、内部統制の評価と年次報告書への記載義務が規定されています。内部統制の評価では、企業における各部門の業務プロセスを詳細に文書化し、フローで明確に記述することが求められます。 米国企業改革法に対応していくためには、内部統制の整備と運用を着実に図っていくことが絶対条件になります。「内部統制の統合的枠組み」は、「統制環境」「リスク評価」「統制活動」「情報とコミュニケーション」「モニタリング(監視活動)」からなる5つの要素と、「業務効率」「財務報告の信頼性」「法令順守(コンプライアンス)」からなる3つの目的により構成されています。 

■戦略とはなにか <戦略の系譜>
 戦略とはなにか。−企業のあるべき方向と目標を明確に示し、競合に打ち勝つためのビジネスの基本計画を練ること。経営史を紐解いてみると、大きな流れとして、中国における孫子の兵法や、有名な「戦争論」を書いたクラウゼヴィッツなどがよく紹介されます。孫子は地形や兵力などの分析に注目して戦略、戦術を練るべきであると説きました。この考え方は、ポジショニングの概念として、ポジショニング学派のハーバード大学教授マイケル.E.ポーターの競争戦略やファイブ・フォース・モデルなどに受け継がれています。ファイブ・フォース・モデルは、獲物の配分の割り振りを分析した理論であると指摘する学者もいます[f: