中小企業診断士・IT資格受験対策講座:損益分岐点改善と経営安全率

amazon paper book:

http://www.amazon.com/s?ie=UTF8&page=1&rh=n%3A133140011%2Cp_27%3ATomohisa%20Fujii
http://www.amazon.com/dp/B00QU3114U



□ 損益分岐点改善と経営安全率
 売上高の拡大が見込めず、今後、売上高が低下する懸念がある場合、いくらまで売上高が減少すると、赤字に陥ってしまうのかを検討する方法はないものでしょうか。このような状況に直面したときに役に立つのが、経営安全率の考え方です。


□ 経営安全率とはなにか
 経営安全率は、赤字になるまでにどの程度の余裕があるかを示すもので、その値が高いほど、収益の安全性が高いことを示しています。余裕の売上高は、売上高から損益分岐点売り上高を差し引いたものになります。この値を売上高で割ったものが、経営安全率となります。
 損益分岐点売上高を売上高で割ったものは、損益分岐点比率と呼んでいます。
   
経営安全率=(売上高−損益分岐点売上高)÷売上高
=1−損益分岐点比率

=1−損益分岐点売上高÷売上高


事業採算検討に有効な限界利益の考え方―
企業経営では、固定費を抑え、製品1個当たりに必要な変動費の最小化を図れるような事業形態を実現することで、コストの低減を図ることができます。

□ 粗利益から限界利益を見る


 売上高から、売上高と比例して増減する費用である変動費を引いたものが、限界利益(粗利益)です。限界利益から固定費を除いた残りが利益になります。逆にいえば、限界利益は、固定費と利益の合計となります。利益がゼロの時の売上高が損益分岐点売上高となります。


売上高 − 変動費限界利益
限界利益 − 固定費 =利益
利益 = 売上高 − 変動費 − 固定費




 損益分岐点により、どれだけの売上高をあげれば費用の全てを回収できるかがわかります。利益を生み出すには、損益分岐点以上の売上高が必要になります。損益分岐点売上高を実際の売上高で割った損益分岐点比率は、売上高の減少に対して耐えられる度合いを示します。この比率が低くなれば利益率は向上します。
ここで、ある目標利益を達成するために必要な売上高は次式によって求められます。

目標利益を出すために必要な売上高=(固定費+目標利益)÷(1−変動費÷売上高)
                =(固定費+目標利益)÷限界利益


 ある一定の目標利益を達成する際に、目標売上高が小さいほど、利益の出しやすい企業体質であるといえます。限界利益率は、売上高に対する限界利益の割合を示しています。限界利益率は高い方が優れています。損益分岐点売上高によっても、売上規模の成長性が把握できます。適正な限界利益率を確することで、成長性の健全性もチェックすることがポイントです。固定費を稼ぐために赤字受注によって、売上の確保や事業拡大を図っているような企業では、採算の悪い事業経営を図っていることになります。


会社経営が順調に行われているかどうかを分析する視点は、収益性、効率性、安全性、生産性、成長性の5つです。企業経営の成果は収益性によって判断できます。収益性は、いかにうまく儲けているかを見るために必要な視点です。収益性は資本の運用の巧拙や製品力のレベルなどにより左右されます。収益性の評価指標として、資本利益率、売上高総利益率、売上高営業利益率などがあります。収益性を判断するのに、損益分岐点分析の考え方も有効です。

株投資では、会社の成長性のチェックは、株価格の上昇に不可欠な視点です。売上の伸びが一時的なものなのか、体質強化をベースにした継続的な伸びなのか、競合他社からシェアを奪うことによる伸びなのか、あるいは市場そのものの伸びに連動しているのかといった視点で判断することが大切です。会社の成長性のチェックでは、売上や利益に関する年々の推移の指標を見ます。企業の成長性を判断する評価指標には、売上高伸び率、営業利益伸び率、経常利益伸び率、自己資本伸び率、総資本伸び率などがあります。


 安全性の分析は、取引先における危ない会社を見分けるために不可欠な視点といえます。安全性の分析には、会社の基礎体力や、負債の支払能力、運転資金など、財務面でのチェックがポイントです。事業環境変化の激しい現代では、会社倒産の危機は常について回ります。順調に推移していた業績が、コンプライアンス問題や、戦争、地震災害など、突発的な事象の発生で悪化する場合があります。取引先の倒産により、現金回収ができずに、倒産の危機に追いやられたり、競合による売上減少で、事業縮小、撤退、倒産の憂き目を見る場合もあります。

安全性の経営指標として、たとえば、支払い能力をチェックする流動比率は、100%以上が最低の安全ラインといわれますが、100%以上の会社でも倒産するケースがあります。期末の押し込み売上によって、利益はアップし、流動比率は改善されます。棚卸在庫の評価方法によっては、原価法を採用した場合、実態の資産よりも大きくなり、流動比率が良く見えたりします。当座比率で厳しくチェックすることもポイントです。

 会社経営の効率性では、会社が資本や資産をいかに効率よく使っているかをチェックします。効率性の指標には、売上債権回転率、棚卸資産回転率、自己資本回転率、総資本回転率などがあります。いかに資本や製品、商品の回転スピードを上げている経営を行っているかを見るためのものです。回転スピードが下がると、資本効率が落ちたり、在庫が増えて、経営効率がダウンし、経営コストの悪化につながってきます。
 
 債権管理の効率性では、売上債権回転日数、及び棚卸資産回転日数を短くしてカネの回収スピードをアップするとともに、買入債務回転日数を延ばして、カネの支払いスピードを遅らせることが基本です。効率性の指標には、他に次のものがありますので、チェックしましょう。固定資産のリース化や、固定費を削減し、変動費化を図ることで、身軽な経営が可能になります。ここで、固定費は操業度の変化によらず常にかかってくる費用ですが、変動費は操業度の変化によって変化する費用です。

 生産性とは、企業の生産活動において、投入する経営資源と産出高との関係から企業の経営効率のレベルを分析するものです。企業におけるものづくりの力を表すものともいえます。生産性の評価では、従業員一人当たりの売上高や売上利益率などをチェックします。生産性は、製品や商品のコスト低減力の評価に直結する視点です。安い人件費で効率的にものを作れるような生産力の向上や、単位時間当たりに生産できる製品の数量がアップすれば、生産性が高くなっていると判断できます。

図解 IT戦略マネジメント入門(改訂最新版)

図解 IT戦略マネジメント入門(改訂最新版)

図解入門 決算書経営分析力 100の極意(改訂版)

図解入門 決算書経営分析力 100の極意(改訂版)