オペレーション・マネジメントのベーシック・デザイン

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オペレーション・マネジメントのベーシック・デザイン

ビジネスモデルの再構築や創造では、ビジネスモデルのオペレーション・マネジメントの構成要素としての縦軸機能と横軸機能というものを考えます。競合他社に対し優位に立てる事業を目指して、縦軸機能、横軸機能の強み、弱みを分析し、強化すべき方策を全社的に明確にしつつ、ITを戦略的に活用したビジネスモデルをデザインします。
□ デザインの基本的アプローチ
ビジネスモデルの基本構造を考察してみましょう。多角経営を行っている企業をここで取上げます。ビジネスのオペレーションである事業別の推進力としての機能をビジネスの縦糸機能と称することにします。一方、複数の事業の推進を横断的に支える機能をビジネスの横糸機能と呼びましょう。
情報化では、両機能がバランスよく保たれたオペレーションモデルが要求されます。この縦糸機能は、複数の事業や製品を抱えている企業においては、各々の事業、製品での最適化を図る必要があります。ライン部門による特化戦略が要求される場合が多いケースです。横糸機能は複数の事業、製品のシナジー(相乗)効果を創出できるように、経営資源の最適化を目指した全社的な総合力の発揮を促す役目を担います。事業横断的にカバーしながらサポートできる機能を有します。
ビジネスの縦糸機能として、ナレッジ・マネジメント、カスタマーリレーションシップ・マネジメント、ビジネスプロセス・マネジメント、バリュー・チェーン・マネジメントが要求されます。これらの経営アプローチにより、顧客ニーズを起点としたITの戦略的活用のイメージを検討します。知識経営の総合的実践力が問われます。
横糸の機能には、コスト、リソースの2つの領域からなるマネジメントが必要です。自社の強み、弱みを見極めます。縦軸機能と横糸機能は、コーポレートカルチャ・マネジメント(企業文化)とリスク・マネジメントにより、統合化されます。企業文化は、企業の従業員が有する価値観や信条、経験、市場での行動様式などを司ります。
リスク・マネジメントは、企業の最優先課題のテーマに挙げるべきものであり、リスク管理能力は、企業の存続を左右します。ビジネスモデルの革新のベースには、イノベーションのパワーが有効に機能します。イノベーションの一般的なアプローチには、企業活動の各プロセスの革新を図っていくプロセス・イノベーション及び、製品そのものの革新を図っていくプロダクト・イノベーションがあります。

■ オペレーション・マネジメントと組織
オペレーション・マネジメントの検討では、組織の形態や問題が、業務運営と情報流通のコントロールの仕組みである情報システムに大きく関わってきます。企業における業務プロセス及び情報の流れをうまくコントロールするためには,組織の構造を理解することが重要です。組織的な側面からのアプローチにより、情報システムと組織、人、情報、プロセスがスムーズに連携し、企業経営活動のレベルが向上します。
また、組織的なアプローチにより、個々の部門の果たすべき役割と業務内容の位置付けが全体的観点から明確になり、全体最適を目指した情報システムのデザインが可能になります。
企業経営では、経営階層と職能の仕組みを理解することで、情報のコントロール系統と業務運営すなわちオペレーション・マネジメントのデザインが可能になります。官僚型組織では,経営トップを頂点にして,経営方針,経営戦略,事業戦略,部門戦略が組織の上位から下位に段階的に伝達される組織形態をとります。意思決定に時間を要し,組織の硬直化を招き易い組織形態ですが、命令系統や意思伝達経路が明確である特徴を持ち、情報コントロールと意思決定のメカニズムは明確なスタイルをとります。
いっぽう,フラット化された水平型の組織では,メンバー間の組織階層の簡素化を図ることにより,意思決定及びアクションの迅速化が図れます。大手企業や歴史の古い企業では、官僚型組織をとっているところが見られます。フラット型組織では、新興企業、特にハイテク関連のベンチャービジネスなどでよく採用されています。ネットワーク型組織は、フラット型組織を拡大したものともいえます。一つの組織がネットワークの形態で存在し、そのネットワークがさらに複数のネットワークとつながっている組織形態のことです。インターネットの網の目のように組織同士が連携しています。各組織が自立的に判断して、行動を起こし、柔軟な意思決定による企業活動を行うことが可能になります。
組織の分類は、通常、ライン部門とスタッフ部門に分けられます。ラインとは,製造部門や営業部門のように製品・商品に直接関わっている部門を指し、企業活動の第一線の現場に従事している人材を指しています。スタッフとは,開発・研究部門や人事・管理・経理部門のように,ライン部門の業務を支援する役割を担っている部門を意味します。部門横断的な機能により、全社的な経営資源の活用を図る参謀的役割を担います。
ライン組織では、上位の者が権限を持ち,下位のメンバーに指示します。「決定−>命令−>実施」という流れによる「命令統一の原則」が機能しています。この形態は、命令系統及び権限と責任の所在が明確で秩序・規律維持が保たれやすいですが,権限が最上位の個人に集中するデメリットがあります。
ライン・アンド・スタッフ組織では、ライン組織の指示命令系統を維持しながらスタッフの専門的な援助が得られる組織形態になっています。
複数の事業を抱えている企業では、カンパニー制事業部制組織というものをとっているところもあります。カンパニー制では、各事業部が独立企業として、経営責任を任されています。事業部制の特徴は,プロジェクトや事業分野あるいは製品群別,地域別,顧客別に事業部を設置して,各事業部が独自の利益責任を持つところにあります。各事業部は縦割りの組織で事業活動を行います。この形態では,事業部間の連携が弱く,経営資源の重複などの弊害が見られがちです。

機動的な組織形態として、プロジェクト制があります。この組織形態では、新たな案件が発生する都度,機動的な組織が発足し,人,予算が割り当てられ,案件が完成すると,組織は解散します。 

部門や事業部を横断的に組織化する形態には、マトリックス組織というものがあります。 通常の職能部門組織や事業部制組織と交差する形で,部門・事業部間を横断的に横割りの情報伝達と責任・権限・機能をもつ組織形態です。責任者は職能別組織の枠を越えて,縦割りと横割りの両方の組織に属し,二人の上司をもつことから,ツー・ボス・システムともいいます。職能別に分けられた上位者が,それぞれの職能に関してのみ部下を指揮命令する組織形態です。分業による専門分化が進み専門性の効果が高まりますが,複数の上司から命令を受けるため命令系統が混乱しやすい欠点があります。

製造管理分野のオペレーション・マネジメントをデザインする


ここでは、製造管理分野のオペレーション・マネジメントのデザインで要求される基本事項をマスターします。
■ 製造業の業務フローの基本
製造業の業務フローは、大きく分けると、量産の標準品対象の見込み生産形態(繰り返し生産方式)と、個別仕様に対応した受注生産形態から構成されます。
製造業の基本的な業務フローは、図表のようになっています。販売管理システムにおいて、受注生産形態の場合、顧客からの受注が確定すると、設計部門では、仕様書を作成します。量産の標準品の場合は、受注が確定すると、製品在庫ファイルを参照し、在庫確認を行います。在庫があれば在庫引き当てを行い、製品と納品書を出荷します。顧客から受領書が届いた段階で、出荷データを販売実績ファイルに書き込み、そのデータをもとに売掛管理システムにて支払請求処理を起こします。請求書は顧客に送付されます。支払請求データを売掛ファイルに書き込みます。
いっぽう、受注生産形態の製品では、仕様書をもとに、設計図が起こされ、生産計画が立てられます。生産計画情報に基づいて、生産に必要な資材の所要量がMRP(Manufacturing Resource Planning)システムによって計算されます。
この調達計画により、購買(調達)・外注管理部門は、部品・資材の発注をサプライヤに対して行います。ここで、部品・資材の調達に関して、買掛管理が必要になります.。調達方針により、部品などは内部で製作する場合と外注する場合のいずれにするか、納期・品質・コストを勘案し、内外作の振り分けが行われます。
製品が生産されると、生産実績ファイル、製品在庫ファイルが更新されます。この間、生産指示情報により、工程管理ファイルを更新します。生産計画プロセスでは、どの機種の製品をいくつ作れば納期に間に合うかを検討し、月、週ごとのカレンダーに、工程計画が決定されます。
ここでは、作業負荷量から、必要工数を割り出し、必要な作業人員の計算を行い、人員配置を決定します。必要な設備、ライン構成が決まり、生産開始に向けたライン編成が行われます。
工程計画に基づいて、生産すべき機種の生産順序に応じて、部品・資材がラインサイドに搬入されて、加工・組立・検査などの工程を経て、予定・実績の進捗管理のもとに製品が計画的に生産されていきます。生産においては、投入された人員、部品・資材などの数量の実績値が原価管理システムで収集され、原価計算が行われます。
完成品は、製品入庫管理により、倉庫で保管されます。物流管理部門から、完成品の出庫指示のデータが流れ、顧客のもとに製品が届けられていきます。ここで、製品の出荷により、顧客への代金の支払い請求が発生し、売掛管理が必要になります。
生産計画に基づき、部品・資材の在庫がない場合は、部品・資材の購買指示が出されます。部品・資材が入荷されると、部品在庫ファイルを更新し、生産指示が出されます。同時に、部品・資材の入荷情報及び取引先から送付された納品書のチェック行い、受領書を取引先に送付します。取引先から請求書が送付されてきます。これにより、買掛管理システムで検収処理が行われた後、支払い処理が行われます。買掛ファイルが更新されます。


■ 生産管理システムの基本をマスター
生産管理システムには、生産計画(資材所要量計画)、工程管理、原価管理、品質管理などのシステムがあります。ここでは、生産管理システムにおける重要な機能を理解するために、資材所要量計画、在庫発注モデルついて触れます。

資材所要量計画(MRP:Material Requirement Planning)
MRPとは、生産計画で予定された数量の製品を生産するために必要となる資材の所要量を決定するための計画のことです。正味所要量とは、必要資材の総量から資材の在庫数量を差引いた数量のことです。総所要量とは、必要資材の総量のことです。資材所要量の算出は次の手順で行います。
(1)総所要量の算出:製品の生産計画数量に部品構成ファイルの各々の構成数量を乗じて,必要な部品数の総所要   
  量を算出する。         総所要量=生産計画数×部品構成数
(2)正味所要量の算出:部品の総所要量から部品の現在の在庫数量を差し引き正味必要となる所要量を算出する。
       正味所要量=総所要量−部品在庫数量
流通管理分野のオペレーション・マネジメントをデザインする
 流通管理分野では、インターネット上での電子商取引の仕組みを理解しておくことがSEにとって不可欠です。ここでは、eマーケットプレイスの基本構造を理解し、Web戦略へのアプローチについて考えてみます。さらにPOSシステムも取り上げます。

■ eマーケットプレイスの基本パターンとPOSシステム
ここでは、流通構造の変革の大きな要因のひとつになっているeマーケットプレイスとPOSシステムを紹介します。
□ Web-EDIとeマーケットプレイス

従来のEDIシステムでは、情報のやりとりはバッチファイル伝送形態をとっていたため、VAN(付加価値通信網)に加入した特定の参加企業の間で、閉じた世界での電子商取引形態に甘んじていたといえるでしょう。価格交渉や製品の選択肢の範囲は限られ、コストダウンの低減は難しい状況でした。
企業で導入が活発化しているWbe-EDIは、企業と企業(B2B)、企業と顧客(B2C)の間で、リアルタイムの双方向のコミュニケーションを可能にします。Wbe機能により、スピード、グローバル、コスト、顧客個別対応の実現が図れます。インターネット上の電子商取引の場であるeマーケットプレイスでは、各種業界の多数の企業が電子商取引のインターネットサイトを提供し、流通の中抜きの大きな要因にもなっています。
オンライン・トレーディング、オンライン・ショッピングの急激な拡大により、B2B(企業間取引)と B2C(企業と消費者間取引)による市場規模は拡大してきています。e マーケットプレイスは、①企業の業種や産業分野に関わらず、広くユーザに必要とされる製品・商品やサービスを取引する市場(水平型e マーケットプレイス)、②産業分野別に取り扱い製品・商品、取引ルール、マーケット参加者が異なる多様な個別の市場(垂直型eマーケットプレイス)の2つに大きく分類できます。ここでは、クライアント企業は、製品やサービスの特性にマッチしたe マーケットプレイスへ参加することがポイントです。
 水平型e マーケットプレイスは、購入頻度や事務処理コストが比較的高く、単価の安い製品・商品が取り引きされる形態です。日用雑貨品などを扱う企業が対象になります。顧客はWbe画面を介して電子カタログによる商品の紹介、類似品の比較検討、購入、クレジット決済が可能です。
垂直型e マーケットプレイスでは、B2Bの企業間取引が中心になります。ここでは、価格、品質、納期、決済方法などの取引条件で、複数のサプライヤに競合させることが可能です。買い手は、最適な見積もりの提示をするサプライヤに決定するプロセスが実現します。世界市場から最適なサプライヤを選択できるメリットが買い手企業に狙えます。さらに、従来の商談業務や書面による見積書のやりとりの負担コストの低減が図れ、業務スピードのアップが期待できます。

POSシステム
流通分野で従来から最も良く使われてきているのはPOSシステムです。コンビニエンスストアでは売れ筋、死に筋商品の動向分析や商品政策への展開に必須のITツールになっています。POS端末から収集された商品の購買情報は本部のデータセンターにネットワーク経由で瞬時に伝送され、データウェアハウスで集中管理されます。在庫情報、発注情報に展開され、商品の補充が物流部門に指示されていきます。物流担当の運転手は携帯端末で物流の指示を受け、搭載した商品を迅速に店頭に届けることができます。各店舗において日々、リアルタイムで収集されたPOS情報は本部のサーバで分析し、店舗毎の売れ行き傾向を把握して、次の商品政策の見直しに活かされるのです。
 POS情報で収集した情報を分析・活用することで、店舗管理の改善や従業員管理の強化も図れます。たとえば、生鮮品を扱うマーケットでは、鮮度管理が重要です。鮮度の落ちた生鮮品は、顧客に見向きもされません。地域別曜日別時間帯別の店頭売り上げ状況を分析して、最も売り上げ状況に応じて、商品の店頭への品揃えを最適なパターンにもっていくことも可能になります。仕事帰りの主婦が多い地域では、夕方に品揃えを強化することで、商品の販売の拡大が狙えます。あるいは、郊外型のマーケットで、休日を利用して自家用車で遠方から顧客が多く来店するような立地の場合には、休日に品揃えを強化し、特売なども設定することで売り上げ拡大が見込めます。
 POS情報の従業員管理への活用では、顧客の来店動向を分析して、顧客数に応じた従業員配置の計画を練る場合などのケースが考えられます。さらに、店舗における商品の棚割り計画などにもPOS情報の分析のアプローチが有効です。ある商品を購入する際についでに、近くの棚にある商品もいっしょに買っていこうという顧客が多いものです。
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