バランス・スコアカードの実践と経営手法の連携


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経営戦略論 図解入門 バランス・スコアカードがよくわかる教科書

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図解入門 3分でわかる決算書読解力練習帳70の鉄則のすべて

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バランス・スコアカードの実践では、ビジネスマネジメント改革に役立つ経営戦略手法をうまく活用することによって、戦略的マネジメントシステムを構築することができます。
経営戦略手法は、体系的に理解することによって、問題解決にマッチした経営分析手法を選択し、効果的に使いこなすことができます。

 経営戦略手法は、業務プロセス・組織分析手法、環境・競合分析、品質・コスト・ものづくり分析手法、財務分析手法からなる4つのカテゴリーに分類して、体系的にマスターできます。

 業務プロセス・組織分析手法のカテゴリーには、企業活動プロセスどうしの価値をつなぐバリュー・チェーンボトルネックを発見するTOC、業務の流れを可視化するDFD(データ・フロー・ダイアグラム)、品質マネジメントシステムを構築するISO9000、組織の成熟度をレベル付けする日本経営品質賞、組織のリーダーシップ・スタイル、データマイニング、エリアマーケティングGISFSP分析、プライバシーマーク、SCMとVMI、ナレッジ・マネジメント、CRMSFA/CT、PMBOKアウトソーシング、およびマッキンゼーの7Sがあります。

 環境・競合分析のカテゴリーには、ライバルの輪郭がくっきり見えてくるベンチ・マーキング、パワー・バランスを縦横に把握できるファイブ・フォース・モデル、クロス思考で強み、弱み、機会、脅威を組み合わせるSWOT分析、4つの経営的視点で評価するバランス・スコアカード、マクロ環境がわかるPEST分析とコア・コンピタンス、4つのカテゴリーで事業の成長度合いを見るPPM、ビジネススクリーン、事業と製品の年齢を知る成長サイクル曲線、シナリオ・プランニング、イノベーションの分析、ポーターの競争戦略、コトラーの競争的マーケティング戦略、アンゾフの製品・市場マトリックス多角化戦略ゲーム理論があります。

 品質・コスト・ものづくり分析手法のカテゴリーには、超品質を極めるシックスシグマ、製品開発に画期的効果を出せるタグチメソッド、機能・コスト・価値を最適にデザインするVA/VE、ものづくり手法の王者JIT、コストを分析・マネジメントするABC/ABM、工程・作業分析の王道インダストリアル・エンジニアリング(IE)分析、創造的な問題解決に威力を発揮するTRIZ、在庫管理のすっきり化のツールABC分析と流動数曲線、影響因子を見抜く重回帰分析、在庫発注モデル分析、数値データの分析に役立つQC七つ道具、言語データの分析に有効な新QC七つ道具、および原価差異分析があります。


 財務分析手法のカテゴリーには、事業の魅力度がわかる成長性分析、企業活動の巧拙を分析する生産性分析、儲かり具合度を判定する収益性分析、経営の危険度をチェックする安全性分析、経営効率のレベルを知る効率性分析、お金の流れを可視化するキャッシュフロー分析、事業採算を見極める損益分岐点分析、財務諸表と米国企業改革法、投資評価の分析手法、などがあります。

 バランス・スコアカードの実践では、ビジネス戦略の巧拙が大きくものをいいます。バランス・スコアカードは、いったんできあがってしまうと、モニタリングが中心となり、バランス・スコアカードのレベルアップが中断してしまう企業がよく見受けられます。ここでは、ビジネス戦略の創出が組織的に欠落していることが原因となっていることがよくあります。バランス・スコアカードを常に進化させるためには、業務プロセスの視点におけるビジネス改革を継続化することが要求されます。

 ビジネス改革を図っていくためには、世界中の著名な経営手法やビジネス戦略手法をうまく適用し、経営課題の解決を図っていく必要があります。組織そのものが戦略思考のレベルアップを常に図り、業務プロセスを革新していくアプローチこそが、バランス・スコアカードの実践には必須となります。その意味で、バランス・スコアカードとビジネス戦略手法は、車の両輪のようなものであり、相互の活用によって、組織体は飛躍的な成長を遂げることができます。バランス・スコアカードの前に「ビジネス戦略ありき」の視点をもつことが大切です。


 例えば、SWOT分析は、経営戦略策定における外部環境、内部環境を分析する際によく用いられる経営手法です。不況期には、SWOT分析を使いこなし、企業の強み、弱みと、外部環境としての機会、脅威を分析し、経営戦略を策定するアプローチが有効です。
 SWOT(スウォット)の4つのアルファベットは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威,(Threat)を意味しています。企業を取り巻く外部環境(政治、経済、為替変動、業界、競合状況、顧客など)と内部環境(人、モノ、金、情報、組織、ビジネス・プロセス、チャネル、経営状況など)を強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つのカテゴリーで区分し、要因分析を行います。ここでは、クロス分析という特徴ある戦略ロジックを用います。
 クロス分析では、企業を取り巻く内部環境と外部環境における強み、弱みを見極め、相互の最適な組み合せを考えます。ここでは、自社の強みを活かした事業機会は何かを探り、自社の強みによって脅威を回避できないかを検討します。
 また、機会に乗じて弱みを強みに転換する戦略を検討できます。さらに、脅威と弱みが鉢合わせになるリスクの回避策を練ります。これにより、企業として取り組んでいくべきCSF(Crirtical Success Factor:重要成功要因)を発見し、強化すべき、あるいは改革を図っていくべきテーマを絞り込みます。
 ここでいうCSFとは、ビジネス改革を成功させるための最重要経営課題のことです。SWOT分析により、経営資源の最適化、ビジネスの再構築を図るためのCSFを見極め、優先順位付けを行い、IT化の具体的なテーマにブレークダウンしていくステップを踏むことで、企業戦略課題の解決を図っていくことができます。
 このように、経営戦略策定において、SWOT分析は事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図るうえで役立つ手法です。ここで、SWOT分析の使い方を具体的に考えてみましょう。
 たとえば、ある大手家電メーカーで、業界トップレベルの技術を持ちながら、優秀な人材の活用が図れていない場合、成長の著しい分野に活用できていない人材を投入し、新市場に参入す戦略を練ることができます。また、強みとして品質やデザイン、ブランド力を有している場合、その強みを活かした製品の開発、販売により、競合による値引き攻勢に対処する戦略が考えられます。
 さらに、全国の拠点に存在している特約店の維持費が経営を圧迫して弱みになっている場合はどうでしょう。逆に弱みである特約店販売の経営資源を活用して、地域密着型の販売政策強化する戦略も選択肢として検討できるケースも出てくるでしょう。
 いっぽう、流通の中抜きが進み、インターネット販売などによる直接販売がこの企業にとって脅威となっている場合には、弱みである特約店販売のチャネルが影響を受けないように対策を練る必要があります。
 以上のように、内部環境と外部環境における強み、弱みを見極め、相互の最適な組み合せを検討することで、経営資源の最適化、ビジネスの再構築を図ることが可能になります。

☆4つのカテゴリーで事業を特徴付けるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
 不況期には、スピーディな事業の見極めが企業の浮沈を決定するでしょう。4つのカテゴリーで事業を特徴付けるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を紹介しましょう。
 PPMは、大手コンサルティング・ファームのボストン・コンサルティング・グループが開発した経営戦略策定の経営手法です。
 PPMの手法では、現有の製品と事業を総合的に評価して、事業の重点分野と撤退分野を選別します。市場成長率とマーケットシェアの2軸からなるマトリックスによって、事業を、花形製品(高成長・高シェア)、金のなる木(低成長、高シェア)、問題児(高成長、低シェア)、負け犬(低成長、低シェア)の4つに区分し、企業全体として最適な経営資源の配分を検討することができます。
 多角化を行っている企業では、各事業領域を、SBU(Strategic Bisiness Unit:戦略事業単位)と呼んで、事業別の採算管理をシビアに行っているところが多くあります。
 PPMにより、自社が保有する人材、モノ、金、技術、ノウハウ、情報などの経営資源をどのように各事業に最適配分すれば、経営効果の最大化が見込めるかを判断できます。選択と集中の視点で、戦略的重点事業分野と撤退事業分野を見極め、経営資源の最適化を図り、事業運営を図っていくことができます。
 場合によっては、強い事業の優れた人材や経営手法を弱い事業に水平展開することで、シナジー(相乗)効果を狙うアプローチや、他社の経営資源を活用するために、買収、合併も選択肢に入ってきます。金のなる木の事業で稼いだキャッシュは、成長著しい問題児の事業や花形製品に投入され、将来の有望事業に育成していくための戦略がとられます。
 花形製品は、市場シェアが高く、成長率が高いため、売上高の向上が見込めますが、市場の成長が著しいため、事業を維持し、競合に対抗するために必要な投資も増加するのが一般的です。花形製品では、成熟期に達するまで市場シェアを確保し、金のなる木にもっていく事業戦略がポイントになります。
 さらに、PPMを使いこなすためには、事業ドメインというものを知っておくと有効です。企業における事業のドメイン(事業領域)は、顧客、ニーズ、コア・コンピタンスの3つの軸で捉えることができます。ターゲットとする顧客は誰なのか、顧客のセグメント化がポイントになります。
 たとえば、ある家電製品の顧客ターゲットを若年層の10代、20代の年齢別、地域別などに細分化・層別化して、きめ細かいマーケティング活動と顧客ニーズの吸収を図るアプローチが考えられます。企業が保有する強みであるコア・コンピタンス、たとえば、技術力、販売力、生産力や、その企業特有のノウハウなどにより、顧客ニーズ(機能)を実現して、製品、サービスの提供を行います。