中小企業診断士・IT資格受験対策講座:経営情報

■経営手法とIT化手法を理解する
 企業経営を進めていくうえで重要な経営手法やIT化手法について説明します。経営資源の有効活用を図り,顧客満足度の向上につながる企業活動の仕組みを構築するための各種のアプローチ手法として,BPR,SIS,コア・コンピタンスアウトソーシング,SCM,CRMなどがあります。ここでは、情報共有・全体最適化、顧客管理、経営戦略策定、プロセス・コストの4分野における改革・革新のカテゴリーに分けて理解します。

■経営手法とビジネスプロセス
 経営手法は、企業活動におけるビジネスプロセスの強み、弱みを見極め、競合に負けているビジネスプロセスを強化するために適用されます。各種の経営手法が企業活動におけるどのビジネスプロセスで活用できるのかをよく知っておくことが重要です。企業活動におけるビジネスプロセス毎にマッチした経営手法にはどのようなものがあるのか、相互の関係をしっかり把握することが大切です。
 たとえば、コンカレントエンジニアリングという手法は開発、設計、調達、生産、販売、サービスの全部門が一体になって、製品コンセプトの確定、コストの作り込み、及び調達方針、生産方法、販売方法、などの決定を企業活動の源流段階プロセスで行っていく活動です。コンカレントエンジニアリングの経営手法の適用のポイントは、企業活動の源流段階というプロセスにマッチさせなければ効果が出ないという点です。
 顧客満足の極大化を図っていくためには、顧客を起点にして、企業活動におけるビジネスプロセスを設計していくことが大切です。CRMという経営手法では、顧客ニーズの製品・サービスへの反映を図っていくために、顧客を起点ベクトルにして、サービス−>販売―>
物流―>生産―>調達―>設計―>開発 という逆転のベクトルでアプローチしていく選択肢も考えられます。 企業活動では,経営資源の最適化を図り,効率的な経営を実践していくためには,開発,調達,生産,販売,サービスからなる企業活動のオペレーションマネジメントにおいて,競合他社に差別化を図っていくことが不可欠です。
□SCM(Supply Chain Management)
 情報技術(IT)を活用して情報の共有化による企業間連携を高め,取引先との受発注,調達,在庫,製造,物流などを最適に管理する手法です。企業の供給活動におけるモノ・情報・金の流れを供給連鎖(サプライチェーン)と捉えて、情報システムに参加する企業間で最適に一元管理できます。
 リードタイムの短縮化や在庫の低減化,流通コストの削減に効果を発揮します。企業活動、生産活動をチェーンの連鎖にたとえたサプライ・チェーン理論では、企業活動を構成する各部門の活動(オペレーションやプロセス)がチェーンに相当し、企業活動のチェーン全体の強度は最も弱い部分の強度で決まります。企業の体質強化のためには、この弱いチェーンにおける制約条件を発見し、チェーンの強化を図っていくために、ビジネスプロセスを改善・革新していくアプローチが必要になります。
 企業間の垣根を越えて、需要情報、生産情報、顧客情報、製品情報など、企業活動に関わる情報を参加企業間で共有することがポイントです。

□SN(Supply Network)
SCMを発展させた経営手法で,インターネットなどのネットワークを活用して,サプラ
イヤを含めたN:Nの関係における企業間連携を図り,経営資源の最適化と一元管理を目指すものです。米国におけるSCMの概念は、SN(サプライネットワーク)という手法で発展しつつあり、業界の電子商取引プラットフォームの標準化も進んでいます。
 すなわち、従来の1:Nによる企業間取引の形態が変化し、インターネットのくもの巣状のネットワーク機能を活用したM:Nによる企業間取引の形態に移行してきています。SCMは、顧客、供給業者、製造業者、流通業者などがサプライ・チェーンに参加した、CRMを包含するコラボレーティブ・サプライ・ネットワークに変化を遂げつつあります。

ERP(Enterprise Resource Planning)
 ERPとは企業活動の基幹業務をソフトウェアパッケージにしたものです。生産管理,販売管理,人事管理,財務管理など,一般的には各業務分野別にモジュール化されています。
ERPでは、対象となる業界で最も優れた業務のやり方(ベストプラクティスという)を
取り入れ,パッケージ化しているものが多いといえます。企業の実態にパッケージの仕様を合わせようとするとカスタマイズ化の費用が発生する点にも留意することが必要です。

□MRP(Material Requirement Planning)
 MRPは,資材所要量計画とよばれ,基準生産計画(MPS:Master Planning Schedule)、部品表(BOM:Bill of Materials),在庫情報などにより,部品表の展開から必要な資材や部品の所要量を計算するものです。

CRP(Capacity Requirements Planning)
CRPは,MRPから得た製造日程計画や部品調達計画がサプライヤや社内の生産能力を
検討したうえで実施できるかを判断する能力所要量計画のことを指します。
■顧客管理の改革・革新のための手法

□顧客ロイヤルティ
 顧客ロイヤルティとは、顧客が自社に対する顧客の忠誠心(ロイヤルティ)がてこになって、長期間にわたって顧客からの指名買いを維持することをいいます。
 顧客ロイヤルティが生まれることで、顧客が他の企業の商品やサービスへ切り替えようとするのを防ぐことが可能になり、企業に安定した企業収益をもたらします。「顧客と企業の関係が企業の価値を決定する」とも言われるのはこのためです。
 一般的に、20%の優良顧客が80%の利益を生み出すといわれています(パレートの法則)。企業の経営資源を優良顧客の発見・維持・拡大に振り向け、無駄なコスト負担となる非・優良顧客を選別するためにも、顧客ロイヤルティの測定は欠かせません。

□顧客ポートフォリオ管理 
顧客ロイヤルティを測定する手法としては「顧客ポートフォリオ管理」などがあります。これは、横軸に売上高や購入量、縦軸に収益率をとった顧客ポートフォリオ図により、顧客のポジショニングを行います。優良顧客は売上高、収益率ともに高い位置に来ることになります。
これにより、優良顧客の特定、重要度の明確化を図り、数値化による継続的な測定を行うことが可能です。「顧客ポートフォリオ」のほか、商品・サービスの購買頻度、リピート率、客単価の増加率などのファクターも、顧客を選別するための重要なデータとなります。

CRM(customer relationship management)
顧客と製品・サービスを提供する企業とが相互に信頼関係を築いていけるようなきめ細かい顧客管理を行う経営手法のことです。企業と顧客の信頼関係の確立を目指して,企業は顧客の消費プロセスに深く関わって行く企業活動の展開が必要です。顧客への個別対応と信頼関係の強化がマーケティングの重要課題になってきています。

 CRMにより、特定の顧客のセグメントニーズに着目して掘り下げ、そのニーズに合った商品やサービスを開発、提供することで、顧客との緊密な信頼関係を築くことができます。
ここでは、統計的分析手法を活用して、顧客の購買行動を徹底的に分析し、顧客の消費プロセスに深く関わっていくことで、顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)に接点をもち、顧客の囲い込みを図っていくことができます。
特に、既存顧客の維持管理では、既存顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)を十分に見極めたうえで、維持管理コストを見込んだ収益性の見通しを検討することが大切です。
 CRMの実践では、新規顧客の開拓、既存顧客との取り引きの拡大及び維持管理のための活動が不可欠です。既存顧客に対しては、既に購入している商品やサービスの頻度・レベルの向上を狙うアップグレードのアプローチがあります。既に購入した商品やサービスに関連した他の商品を販売するクロスセリングの手法もあります。 
 顧客行動の分析や購買行動パターン発見には、データウェアハウスによる科学的な分析手法を活用することが効果的です。CRMの情報システムは、一般的に、顧客との接点を受け持つフロント・オフィス、顧客データベース管理及びデータ分析管理をカバーするミドル・オフィス、さらに、業務データをコントロールするバック・オフィスの3つの要素から構成されます。

エリアマーケティング(area marketing)
エリアマーケティングとは、商圏の地域特性を把握するために、地図情報、各種統計情報をベースにして市場を地域別に細分化し、商圏分析、顧客管理、販売促進計画、既存店評価、新規出店計画などに役立てる手法を意味します。地域特性からくる地域ニーズにきめ細かく対応していくことで、地域ごとの顧客価値を最大限に引き出せます。
さらに、その地域におけるシェアの拡大と利益の向上を図るための地域戦略を支援することが可能になります。
地域特性に最適な地域戦略を策定するうえで、エリアマーケティングでは、商圏における地域を細分化し、地域特性の違いからくる需要やマーケットシェアを明確にする点に特徴があります。地域特性、産業特性、顧客層、商品などによる切り口で細分化した地域はエリアと呼んでいます。
エリアごとの市場規模や成長性、競合状況などは、各種統計情報や調査データをもとに明確にすることができます。競合他社の動向を勘案しながら、自社の強みが発揮できるように差別化を図り、各々の細分化市場の特性にマッチしたマーケティングミックス(商品、価格、販売経路、販売促進手段の最適な組み合わせ)を検討していくアプローチが必要です。

GIS(地理情報システム)
 GIS(Geographic Information System:地理情報システム)とは、コンピュータで地図を扱うためのシステムのことです。地図、ポイントデータ、統計データなど、様々な情報をポイント、グラフ、表、画像などの形で重ねあわせて表示することにより、データを地図上で視覚的に扱うことができます。
 GISは、土地、道路、施設の管理やカーナビゲーションといった用途で使われるのはもちろん、マーケティングの分野でも広く活用されています。地図情報をビジュアル化して、企業内で保有する顧客情報、競合店舗情報など様々なインナーデータなどと有機的にリンクさせることで、各種の意思決定支援やマーケティング活動に役立てることができます。
 例えば、GISマーケティングの分野では、ワン・ツー・ワン・マーケティングを支援するツールとして有効です。顧客の位置を地図上に表示し、顧客属性情報を貼り付けることで、効率的な営業活動が行えます。
 GISマーケティングに活用するには、企業のインナーデータを整備し、GISと連携できる形でデータベース化することが不可欠です。

□4P&4C
 戦術的マーケティングにおけるマーケティング・ミックスの手段として、4P&4Cがあります。
 4Pとは、売り手の視点から、マーケターがマーケティング・ミックスを販売の観点から見たものです。①プロダクト(製品)、②プライス(価格)、③プレイス(流通チャネル)、④プロモーション(広告、セールス・プロモーション、ダイレクトメール、パブリシティ)から構成されます。いっぽう、4Cとは、顧客起点で買い手側から見たもので、顧客が価値や問題解決のための購入と考えているものです。①顧客にとっての価値(Customer Value),②顧客の負担(Cost to the Customer),③入手の可能性(Convenience),④コミュニケーション(Communication)からなります。製品・サービスの差別化をどこで図って行くべきか、顧客により多くのベネフィットをどのような形で提供していくべきかがポイントになります。顧客へのベネフィットでは、①カスタマイゼーション、②利便性アップ、③迅速かつ優れたサービス、④コンサルティング、⑤会員限定のインセンティブ、などがあります。
パーミション・マーケティング
 顧客に興味や関心がある分野をWebサイトなどで、事前に登録してもらい、顧客が許可した情報だけを提供し、不要な情報は送らないマーケティング手法です。一方的な情報を送付せずに、顧客ニーズにマッチした情報を提供する仕組みによって、潜在顧客を発掘し、企業と顧客の信頼関係を強化することで、顧客層の維持・拡大を図っていくことができます。

SFA(Sales Force Automation)
顧客訪問日,営業結果などの履歴を管理し,データ・ベース化することで,メンバー・部門間で情報の共有化を図り,見込客や既存客に対して効果的な営業活動を行うシステムのことです。これにより,業務の効率化と顧客対応の強化が図れます。

CTI(Computer Telephony Integration)
 顧客からの電話の問い合わせに対して,コールセンターの担当者が,顧客データベースから,顧客履歴情報などをアクセスし,迅速かつ的確なリスポンスにより,顧客満足度の向上を図るシステムです。SFACTIのシステムを連携させて,営業からサービスまでのプロセスに一貫性をもたせることが可能になります。

□ベスト・オブ・ブリード       
 ベスト・オブ・ブリードとは、特定のベンダーに企業のシステム全体を任せるのではなく、各々の分野で最良のシステムを選択して組み合わせる手法です。企業間の合併・統合の動きが増す中、TCOを図るための注目すべきアプローチです。ここでは異なるパッケージ間のインターフェースをEAI(Enterprise Application Integration)ツールで統合することで、特定ベンダー依存のシステムから脱却し、コスト優位性を確保することも可能になります。

クラウドコンピューティング
 クラウドコンピューティングとは、ネットワーク経由の大規模なデータセンターを介して、従来は自分のシステムで利用していたフトウェアやデータなどをサービス形式で必要の都度、利用する方式を指します。
 ユーザーは、システムの投資や更新・バックアップ管理などから開放されるメリットがありますが、セキュリティ管理上の問題が残ります。

□データウェアハウス 
 データウェアハウスは、生データの専用倉庫からスピーディに抽出したデータを分析・運用し、意志決定に役立てるためのデータベースシステムです。企業に散在する未整理状態のデータを明確な目的のもとに仕分けし、分析や仮説検証型の解析に生かせるような仕組みを提供します。意志決定のスピードアップと情報活用能力の向上を図ることが可能となり、顧客満足の向上による競争優位の確立と収益及び売り上げ拡大を狙えます。
 データベースマーケティングの分野では、優良顧客の発見、購買パターン予測のための仮説及び検証評価や、ロイヤルティ向上による顧客囲い込みに利用されます。ワン・ツー・ワン・マーケティングに見られる顧客のきめ細かいセグメント別管理が可能になります。データウェアハウスはITソリューションとしても、情報システムのコアとなる役割を担うものといえます。

OEM(Original Equipment Manufacturer)
 OEMとは相手先と生産提携を行い,相手先ブランドで製品を供給することをいいます。ブランド力が弱くても,生産能力が十分にある企業は,OEMにより,生産量の増加が狙え,その結果として製品コストの低減化が図れます。
□競争的マーケティング戦略
 フィリップ・コトラーは、マーケティングにおける市場地位のポジショニングの視点で、競争的マーケティング戦略を編み出しました。市場における企業の相対的規模および地位と、マーケティング戦略との関係を明らかにしています。市場シェアの視点から、マーケット・リーダー、マーケット・チャレンジャー、マーケット・ニッチャー、マーケット・フォロワーの4つの分類からなる市場地位のポジションを提示しています。
 マーケット・リーダーは、市場で最大のマーケット・シェアを有している企業のことです。競争企業の標的ともなる存在です。リーダー企業の狙いとするところは、市場でのトップの地位を維持することです。マーケット・シェアを維持・拡大するとともに、市場規模全体を一層大きくするために必要な方法を発見することがマーケティング・リーダーの目的となります。
 マーケット・チャレンジャーは、市場の地位でマーケット・リーダーには劣りますが、リーダーに次ぐ豊富な経営資源と市場シェアを有しています。チャレンジャーは、リーダーから市場シェアを奪い、リーダーの地位を脅かす存在です。新製品の投入や低価格戦略などによって、リーダーに戦いを挑んでいく戦略を採ります。あるいは、イノベーションによる画期的商品の市場投入やサービス改善、製造コスト低減、広告・販売促進の強化を図るアプローチもあります。リーダーの弱点を発見し、その攻めやすさを評価したうえで、攻撃対象をリーダーにするか、あるいは、追随企業ないしは弱小企業に的を絞るかを決定することになります。
 マーケット・リーダーにすべての追従企業が挑戦するわけではありません。マーケット・リーダーが総力戦で望めば、対抗企業は、病弊して、再起不能となるケースも出てきます。
マーケット・フォロワーの戦略は、マーケット・リーダーの反撃を受けないように現状のシェアを維持し、市場での生き残りを模索します。フォロワーは、リーダーを模倣し、低コストへの努力と高い品質やサービスの維持に傾注する戦略を採ることで、一定のシェアを安定的に獲得することを目指します。
 いっぽう、マーケット・ニッチャーは、ニッチ市場を狙い、集中化戦略を採用します。ニッチ市場では、まず、利益を確保できるだけの市場規模と購買力があるかがポイントになります。次に、成長潜在性があり、自社の経営資源を最大限に発揮できるだけでなく、大手企業の参入が難しい市場であることが要求されます。

■企業間・企業内の情報の流れと業務内容
 企業活動は,モノの流れ,お金の流れ,人の流れ,情報の流れを切り口にして把握できます。
 企業活動においては,組織の各部門の機能,役割分担を明確にし,業務効率の最大化を目指した業務の流れを検討します。
 たとえば,製造業では,マーケティング情報をもとに,製品の企画・開発・設計が行われ,採算に見合う生産方法,部品・材料の調達方法,販売方法が検討されます。在庫を最小限に抑え,かつ最小のコストで,顧客に最短のリードタイム(材料や部品の調達から製品の生産,出荷,販売までに要する時間のこと)によって,製品を提供できるように,生産計画,調達計画,販売計画が組織全体の調整のなかで決定されます。経理部門では,社員の給与計算を行ったり,出張旅費の精算を行います。人事部門では,人材の採用・部門間移動・退職,昇格などに関わる業務を行います。
 企業活動では,企業収益の向上と売り上げの拡大のために関連部門が密接に関連しながら,人,モノ,金,情報の有効活用による経営資源の最適化を図ります。開発,調達,生産,販売,サービス,さらにはサプライヤを含めた価値連鎖における情報の共有化,一元化を実現していくことが,スピード経営には不可欠になっています。情報システムは,このような企業活動を支援していくための経営のツールであり,投資に見合う効果を発揮させることが大切です。
 特に、ここではイノベーションの視点が重要です。イノベーションの一般的なアプローチには、企業活動の各プロセスの革新を図っていくプロセス・イノベーション及び、製品そのものの革新を図っていくプロダクト・イノベーションがあります。


□価値連鎖
:価値連鎖とは、企業における開発、調達、生産、販売、サービス業務などの各々の活動が、サプライヤを含めた企業内外でどのような連携関係を持たせて付加価値を生み出すかを検討する考え方を指します。
 米国の競争戦略の権威であるマイケル・E・ポーター氏が提唱しました。企業活動における価値連鎖の強み・弱みを見極め、弱いところは強化することで、競合に負けない企業体質の形成を図ることが可能になります。


    
経営資源
 健全な企業経営により企業収益の確保と売り上げの拡大を図っていくためには,企業活動において人,モノ,金,情報からなる経営資源をいかに効率よく活用できる仕組みを作れるかが重要です。
□マネジメントサイクル
 企業活動のマネジメントサイクルはPLAN,DO,CHECK,ACTIONからなります。企業活動は事業計画を立て,利益・採算性を検討します。事業計画を実行するための前準備として,最適な企業活動の仕組みを検討します。組織を作り,人,予算を当て,業務内容を明確にし,責任と権限ならびに役割・機能を決めて経営資源が最適に活用されるような仕組みの実現です。事業を実践し,結果に対する収益・採算性の評価と事業ならびに組織的な業務活動の統制を行い,改善します。
  

■情報共有・全体最適化のための手法

ナレッジマネジメント(KM;Knowledge Management)
個人が所有するナレッジ(知識)や経験・ノウハウを、組織として蓄積・共有・活用することで、組織全体の知的生産性の向上を図る手法です。
経験の浅い組織のメンバーは、ベテランのメンバーと知識・経験を共有することによって、業務効率が上がります。ナレッジマネジメントの導入により、商品やサービスなどの付加価値を向上させることができます。
組織内にナレッジを蓄積し、共有・活用の一元管理を図るために、グループウェアやデータウェアハウスが利用されます。ナレッジには,特定の個人のノウハウや知識に依存し,データベース化が難しい暗黙知と,データ化,コード化が可能な形式知があります。
さらに、暗黙知は、形式知に転換されていく相互依存のサイクルが成り立ちます。
■IT化のビジネスモデル
 ここでは、人材資源、ビジネスのやり方、製品力、技術開発力、生産力、販売力、コストダウン対応力、IT活用能力、組織構造、収益構造などの観点から、自社の強み、弱みを競合他社と比較して見直すことが重要です。
 企業活動の生命線は,資本市場の評価に答え得る適切な企業収益を継続的に生み出し得るかどうかにかかっています。しかも,顧客への提供価値において,競合他社よりも優れた製品・サービスを創造しうる経営を実践できなければ,企業の社会的存在価値は市場では評価されない時代に入っています。
 ここでは,業務プロセスの改革・刷新を図り,絶えざるコストダウンができるコストマネジメントの能力も要求されます。
 IT時代に勝ち組みの企業に残るために特に注目すべき企業能力は,ITを活用した,競合他社に勝るビジネスモデルの創造力です。I
 T化において,自社の強みであるコア・コンピタンスに特化した情報武装により,経営を実践して成功している企業もあります。例えば,営業マンを全く持たず,情報システムだけで営業を行っているある証券会社は,リアルビジネスを凌駕するIT化のビジネスモデルの仕組みによって,証券業界にIT旋風を巻き起こしています。
 さらに,事業環境変化の激しい時代には,リスクマネジメントも重要な経営能力の一つです。IT時代では,情報システムにおけるセキュリティマネジメントの重要性が指摘されています。
 以上のように,IT経営の実践の場において,IT化と企業能力は深い関わりを持ち,経営戦略の実践はIT戦略そのものにつながっているのです。

BTO
IT化でSCMの実践により成功している企業では、米国の大手コンピュータメーカーであるデル・コンピューターのビジネスモデルがあります。インターネット通信販売の手法を採用し、顧客とインターネットを介して直接、注文のやり取りを行うオンラインショッピングの仕組みを持っています。
顧客とデル・コンピュータ間におけるWebシステムの導入により、双方向の情報のやり取りが可能になっています。きめ細かい顧客ニーズの吸収と製品開発へのフィードバックが可能になる仕組みを構築しています。
 製品の生産では、BTO(Build To Order)という注文生産方式を採用しています。基幹部品はモジュールで適正在庫され、顧客の要求する仕様に応じて、迅速に手際よく生産されます。同社の協力会社は月次・週次ベースの需要予測、生産計画、受注状況の情報をリアルタイムで共有し、打ち合わせも担当者間で頻繁に行われます。
 こうした仕組みにより、在庫回転率のアップを図っています。さらに、インターネットの連携機能を活用し、顧客の重要度に応じたセグメント別のWebのサイトを設け、顧客情報の一元管理をデータウェアハウスで実現することで、顧客とのリレーションシップの強化を図っています。
 これにより、製品開発・製造・サービス並びに協力会社における顧客情報の共有化を図り、迅速なアクションにつなげています。しかもWebを介したサポートデスクにより、製品トラブルや顧客の質問にも迅速に対応できるサービス体制により、顧客満足度の向上を狙っています。
□ ITと企業経営 
 経営にITがなぜ必要なのかについて考えてみましょう。ITは企業における経営効率の向上にはなくてはならないものになっています。ITは経営効率の向上における、てこの役割を担うものでなくてはなりません。
 ITとは、そもそも情報を活用する技術です。企業活動には様々な情報が飛び交っています。販売情報、生産情報、顧客情報、クレーム情報、物流情報、財務情報、人事情報など、企業における関連部門では様々な情報を収集・生成し、取捨・選択・加工して業務活動を行っています。情報の種類は様々であり、部門によっては価値ある情報もあれば、不要な情報もあります。
 また、情報の取得のタイミングも重要であり、クレーム情報や顧客需要動向などの情報は鮮度が要求されます。情報の流通機能がうまく働かなければ情報はただのデータになってしまいます。情報の持つ価値は収集のタイミングといかに活用して付加価値のある企業活動につなげられるかによって決まってきます。そのためには情報の流通機能が正常に発揮されるような仕組み作りが要求されるのです。
 このように情報を管理し、活用する情報駆使能力はIT化によって飛躍的なパワーを発揮することができます。経営とはこの意味で情報の流通機能を最大限に発揮させ、価値ある情報をタイミングよく発見し、活用する活動であるともいえます。ここにおいて顧客への価値の創造が可能になり、企業の付加価値の向上も期待できます。情報を効率よく管理し、活用できる仕組みはIT化によって実現できるのです。
 ITには、経営課題に応じて各種の最適なソリューションがあります。流通分野で従来から最も良く使われてきているのはPOSシステムです。コンビニエンスストアでは売れ筋、死に筋商品の動向分析や商品政策への展開に必須のツールになっています。POS端末から収集された商品の購買情報は本部のデータセンターにネットワーク経由で瞬時に伝送され、データウエアハウスで集中管理されます。
 在庫情報、発注情報に展開され、商品の補充が物流部門に指示されていきます。物流担当の運転手は携帯端末で物流の指示を受け、搭載した商品を迅速に店頭に届けることができます。各店舗において日々、リアルタイムで収集されたPOS情報は本部のサーバで分析し、店舗毎の売れ行き傾向を把握して、次の商品政策の見直しに活かされるのです。
 このように、コンビニエンスストアにおける企業活動では、POSシステム、携帯端末、データウエアハウスなどの各種のITソリューションが有機的にネットワークで連携されて、顧客に最も好まれる商品の迅速な提供を行う仕組みがあります。ここではITソリューションは企業活動の骨格を形成しており、IT化は企業活動の実践の場においてなくてはならない必須のインフラになっています。

□ITと企業活動の本質とは
 企業活動は、モノの流れ、お金の流れ,人の流れ,情報の流れを切り口にして把握できます。
 企業活動においては,組織の各部門の機能,役割分担を明確にし,業務効率の最大化を目指した業務の流れを検討します。
 たとえば,製造業では,マーケティング情報をもとに,製品の企画・開発・設計が行われ,採算に見合う生産方法,部品・材料の調達方法,販売方法が検討されます。
在庫を最小限に抑え,かつ最小のコストで,顧客に最短のリードタイム(材料や部品の調達から製品の生産,出荷,販売までに要する時間のこと)によって,製品を提供できるように,生産計画,調達計画,販売計画が組織全体の調整のなかで決定されます。経理部門では,社員の給与計算を行ったり,出張旅費の精算を行います。人事部門では,人材の採用・部門間移動・退職,昇格などに関わる業務を行います。
 企業活動では,企業収益の向上と売り上げの拡大のために関連部門が密接に関連しながら,人,モノ,金,情報の有効活用による経営資源の最適化を図ります。開発,調達,生産,販売,サービス,さらにはサプライヤを含めた価値連鎖における情報の共有化,一元化を実現していくことが,スピード経営には不可欠になっています。情報システムは,このような企業活動を支援していくための経営のツールであり,投資に見合う効果を発揮させることが大切です。
経営資源の最適化を図り,効率的な経営を実践していくためには,開発,調達,生産,販売,サービスからなる企業活動のオペレーションマネジメントにおいて,競合他社に差別化を図っていくことが不可欠です。ここでは、人材資源、ビジネスのやり方、製品力、技術開発力、生産力、販売力、コストダウン対応力、IT活用能力、組織構造、収益構造などの観点から、自社の強み、弱みを競合他社と比較して見直すことが重要です。
 企業活動の生命線は,資本市場の評価に答え得る適切な企業収益を継続的に生み出し得るかどうかにかかっています。しかも,顧客への提供価値において,競合他社よりも優れた製品・サービスを創造しうる経営を実践できなければ,企業の社会的存在価値は市場では評価されない時代に入っています。ここでは,業務プロセスの改革・刷新を図り,絶えざるコストダウンができるコストマネジメントの能力も要求されます。
 IT時代に勝ち組みの企業に残るために特に注目すべき企業能力は,IT活用による競合他社に勝るビジネスモデルの創造力です。IT化において,自社の強みであるコア・コンピタンスに特化した情報武装により,経営を実践して成功している企業もあります。

 
 事業環境変化の激しい時代には,リスクマネジメントも重要な経営能力の一つです。IT時代では,情報システムにおけるセキュリティマネジメントの重要性が指摘されています。
 以上のように,IT経営の実践の場において,IT化と企業能力は深い関わりを持ち,経営戦略の実践はIT戦略そのものにつながっているのです。

DOA( data oriented approach)
 データ中心アプローチのことです。情報システム構築において,要件定義や設計を行う上流工程で,データ項目やその流れを分析します。ユーザーのニーズの把握が容易になり,要件定義の明確化が図れます。クライアントサーバーシステムのGUIによる開発や,オブジェクト指向によるデータフロー・ダイヤグラム(DFD)作成に用いられます。

□CASEツール (computer aided software engineering tool)
 CASEとは,ソフトウエア工学によるソフトウエア開発用ツールのことをいいます。アプリケーション開発に要求される各種定義情報を入力すれば,ソース・コードは自動的に生成されます。ソフトウエア開発の下流工程用の下流 CASEツール,要求分析やシステム設計用の上流工程を対象とする上流 CASEツールからなります。
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