バランス・スコアカード

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☆ バランス・スコアカード ☆
バランス・スコアカードは、企業をはじめ、公共団体や病院などにも導入が活発化してきている戦略的マネジメント手法の一つです。ここでは、その基本的構造を紹介しましょう。
☆ 全方位型戦略的マネジメントシステム−バランス・スコアカードの仕組みとは
バランス・スコアカードは、経営戦略の立案を支援し、業績評価の仕組みを構築するための戦略的マネジメント手法です。4つの指標からなる評価によって,目標と達成度合いのギャップを数値で把握します。
 4つの指標は,①財務会計の視点,②顧客の視点,③内部業務プロセスの視点,④学習と成長の視点,からなります。
 財務会計と顧客の2つの視点は,ステーク・ホルダーの視点に基づくカテゴリーです。財務戦略は事業の成長期には成長性,持続期には利益率,収穫期にはキャッシュフローの最大化を狙います。
 
 顧客の視点では,①市場占有率,②顧客定着率,③新規顧客定着率,④顧客満足度,⑤顧客別利益、などの評価指標があります。
 内部業務プロセスの視点では,顧客と株主にバリュー(価値)を与え,戦略目的を達成するために最適な業務プロセスを評価します。一般的には、品質,コスト,納期,新製品導入率などで評価されます。
 学習と成長の視点は,組織の長期的成長に必要な基盤を指します。①人材,②ITシステム,③モチベーションやエンパワーメント(権限委譲),から構成されます。
  
 経営方針と評価指標を明確にして、バランスのとれた4つの視点で経営を評価し、組織を階層的に整合させ、戦略的にマネジメントするバランス・スコアカードは、全方位型の戦略マネジメント手法といえます。
☆ バランス・スコアカードのSTRATEGY MAPとは
 STRATEGY MAPは、バランス・スコアカードを駆使するための必須ツールです。一言で言えば、①人材の学習と成長の視点 → ②内部業務プロセスの視点 → ③顧客の視点 → ④財務の視点、の流れの順に沿って、経営改革の戦略のシナリオを作ることです。
 財務の視点は、経営成績の結果としての決算書に現れる数値で評価されるため、過去の視点ともいえます。
 顧客、内部業務プロセスは、現在の視点ともいえます。
 学習・成長の視点は人材の育成、変革能力の強化という意味合いから未来の視点ともいえるものです。
 このように、4つの視点を時間軸で眺めると、それぞれの視点が属する時間のゾーンは違っているということがわかるでしょう。
 STRATEGY MAPは、ゴルフのプレーでたとえれば、4つの視点は、到達すべきホールということになります。各ホールに到達するまでには、様々な障害が待っています。天候や、プレーヤーの体調、芝生の状況、ゴルフアイアンの選択など、プレーを成功させるためには、これらの外部環境、内部環境をうまくミックスさせて、最終ゴールに最高スコアで達成できるプレーにもっていけるように戦略のストーリーをプレーヤー自らが練る必要があります。
 STRATEGY MAPの基本構造は、4つの視点の各々に対して、①戦略目標(KGI:Key Goal Indicator)、②重要成功要因(CSF:Critical Success Factor)、③重要評価指標(業績評価指標:KPI:Key Performance Indicator)、④ターゲット(KPIの具体的目標数値)、⑤アクション・プラン(実行具体策)から構成されます。
 4つの視点を構成する各種のファクターを原因と結果というつながりで、矢印で結んでいきます。その結果、戦略的な視点から組みあがったマップが出来上がってくるのです。
 経営トップのバランス・スコアカードは、事業部門長のバランス・スコアカード、グループリーダーのバランス・スコアカード、一般社員のバランス・スコアカードというように階層構造となってブレークダウンされていきます。この仕組みによって、全社の戦略マップは全ての組織階層において整合性を確保できることになります。階層間での戦略にギャップが発生して改革のベクトルがバラバラになるのを防ぐことができるわけです。私はこれをピラミッド・ベクトルと名付けています。

☆ バランス・スコアカードにおけるKGI、KPI、CSFとは
 
 経営改革を進めていく際の目標達成度の評価指標として、KGI(Key Goal Indicator:経営目標達成指標)とKPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)の2つがあります。
 KGIは、たとえば、3年後の自社の売上を3倍に拡大したいといったような財務の最終ゴールとも言える経営目標です。全社的な経営方針の具体化のために不可欠な経営指標です。
 KPIは、KGIの子供ともいえるものです。親であるKGIの期待を受けて、それを実現するために、具体的にどういった切り口で達成すればよいかを具体的なアクションで評価するための指標です。
 例えば、Aさんは、親として、自分の子供B君に優秀な企業の重役になって1億円プレーヤーの収入を確保できる高給取りになってほしいと願っているとしましょう。これが、AさんのKGIになり、最終ゴールの戦略目標です。優秀な企業に就職するためには、優秀な学校にいれて、家庭教師を付け、様々な習い事をさせ、その成績は、学校のクラスで3番以内でなければならいとします。これが、KPIになります。
 ここで、優秀な企業に就職するために、優秀な学校にいれて、家庭教師を付け、様々な習い事をさせるアクションが、アクション・プランというものです。
 ここでの重要成功要因は、一流の企業に子供を就職させることができるかどうかということが該当します。KGIとKPIの橋渡しをするものが重要成功要因(CSF)です。
 KGI、KPIは、具体的な数値で客観的に第三者が評価できるため、経営戦略の策定におけるモニタリング(監視、評価)の機能の役割を担います。
 ここで、KGI、CSF、KPIの3つのコンビからなるスコアカードは、財務の視点、顧客の視点、内部業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの各々に対して作成する必要があります。
☆ バランス・スコアカードとKPIというタイタニック
 
 バランス・スコアカードの活用で最も注意すべき点は、業績評価指標KPIのデザインにあります。最近の大手企業の事故には、このKPIの設定において、現場の実態や現場の受容能力(Capacity)を無視し、効率経営一本に陥った経営陣の暴走がよくみられます。バランス・スコアカードは、全体最適を狙う企業活動を実践していくものですが、トップが誤った経営方針を全社的に浸透させてしまうリスキーな側面を持っています。
 なぜならば、バランス・スコアカードは、経営トップからミドル、現場の担当者、従業員までが、一丸となってピラミッド・ベクトルを形成していくものであるため、巨艦のかじとりに失敗すると、その企業はとんでもない方向に進んでしまいかねないからです。最悪の場合、氷山に衝突するタイタニック号の悲劇に陥らないとも限りません。KPIは、巨艦の運命を左右する面舵であり、司令塔でもあるのです。
 現場に無理強いをするような高いレベルのKPIを設定し、過度なアクションプランの必達を強制する組織では、品質問題や安全事故問題、さらにはリコール問題が多発しがちです。トップによる飽くなき事業拡大や生産性と利益率の向上の鞭によって、事業活動の第一線にある現場従業員の受容能力が限界に達すると、組織構造は機能不全に陥るからです。
 ここでは、都合の悪い情報は組織間でよどみ、うまく流れていかず、フィードバック・アクションの遅延をもたらし、事が大きくなって発覚して、組織上層部が大慌てするという事態に陥ってしまうものです。
 かつて、ローマ帝国が、世界制覇を目指し、帝国のグローバル化の遠征を繰り返すことで、兵は病弊し、ローマ帝国の崩壊の遠因になったことは歴史が証明しています。
☆ ビジョンと戦略が推進力になる
 ビジネス改革の第一ステップでは、バランス・スコアカードの手法を活用し、全体最適の企業戦略の方針、ビジョンと業績評価指標を明確にします。
 企業経営では、明確なビジョンと戦略は、羅針盤の役割を担い、企業の浮沈を決定すると言っても過言ではないでしょう。
 経営トップが明確なビジョンと経営戦略、事業戦略を従業員に示すことができなければ、現場の第一線で企業活動に携わる幹部や従業員は、右往左往することになります。企業活動のベクトルが各部門でバラバラな方向に向いて統制が取れなくなり、経営資源の無駄使いやロスが発生して、企業経営は衰退の道を辿ることになります。バランス・スコアカードでは、明確なビジョンと戦略の設定は、企業の経営能力開発における推進力という位置付けにあります。
 ビジョンと戦略は、自動車におけるナビゲーターにたとえることができるでしょう。たとえば、大手自動車メーカーが「環境を重視した製品を市場に供給する」という明確なビジョンのもとに、「優れた技術力・生産力・販売力によって、5年後に世界市場シェアの10%を確保する」という戦略を打ち立てたとしましょう。この明確なビジョンは、自動車のナビゲーターでいえば、目的地の到達地点の住所をインプットしたことに当たります。 
 戦略では、どのようなアプローチによって実現するのかということを明確にします。自家用車でいくのか、自動車は使わずに、やっぱり新幹線で寝ながら、ゆっくりとした旅の気分を満喫しながらいきたいといった基本的な方針を検討することになります。自動車と新幹線のいずれを選択するかによって、事前準備すべき内容も大きく異なってきます。事業環境の激しい中での企業経営において、戦略は、アプローチの選択を誤ると、場合によっては、存亡の危機にさらされることもありえます。
 戦略は、さらに、具体的な実行策として戦術(アクション・プラン)に展開する必要があります。その目的地に到着するまでの距離、必要なガソリンの量、及び所要時間の計算、食料の確保(あるいは、途中でのサービスエリアの確認)、その他、諸々の準備などを明確にしておく必要があります。たとえば、ガソリンはどうやって調達するのか、セルフサービスのガソリンスタンドを見つけて安く調達するのか、クレジットカードで支払うか、現金払いか、といったことを決める必要があります。このような具体的なアクション・プランが戦術といわれるものになります。
☆ 4つの視点が意味するものは
 顧客の視点では、企業は、企業経営において、自社製品やサービスに対する市場占有率(市場シェア)、顧客定着率、新規顧客獲得率、製品別顧客別利益率などの向上を追求します。企業経営におけるITシステムの存在価値は、これらの業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の向上を実現していくための経営支援ツールとしてITシステムが十分にその能力を発揮できるかどうかにかかっています。顧客の視点とは、企業の経営ニーズをKPIで表現したものといえます。
 財務会計の視点では、企業の事業の成長性や利益率、キャッシュフローの向上を狙ったITシステムを構築する必要があります。ここでは、経営目標達成指標(KGI:Key Goal In dicator)が設定されます。
 以上のような顧客、財務会計における目標指標を達成させるために、企業では、内部業務プロセスにフォーカスし、業務プロセスの改善・改革を図っていきます。ここでは、製品・サービスにおける品質・コスト・納期、及び新製品の導入率などが主要な管理ポイントになります。
 学習・成長の視点では、経営資源の核となる人材開発を図ります。ここでは、ITシステムが情報・ノウハウの共有化を促進する役割を担います。組織としての学習効果を高め、成長を目指すためには、組織を構成する人材のモチベーション(動機付け)を高め、日々の業務に対するやりがいや達成感を味わえる企業風土の醸成が不可欠といえます。さらに、エンパワーメント(権限委譲)の仕組みにより、若手メンバーの潜在的能力を発揮させ、組織として活性化された状態に持っていくことが企業成長には不可欠です。