プロフェッショナルのロードマップ:36 ANALYSIS MATRIX VECTOR

☆ プロフェッショナルとは−ロード・マップをデザインする!
 

プロフェッショナルに飛躍していくためには、日々、ビジネスに関するナレッジの吸収に努め、必須能力の向上を図り、実践の場で、獲得したナレッジを応用展開していく確固としたスタンスを保持している必要があります。
 好循環の能力開発のサイクルと職人気質・・
 プロフェッショナルへの自己革新とは、狭い領域のナレッジにとらわれない幅広い見識と専門性、人間性を兼ね備えた人材を目指した自己成長を図り、それが、周りのメンバーへ好影響を与え、組織として進化していくことを意味しているといえます。このような好循環の能力開発のサイクルが機能することで、組織としての強みが発揮でき、顧客の信頼を獲得することにつながり、ビジネス展開も良い方向に向かっていく企業体質が形成されるのです。
 市場、クライアント企業のニーズを見極める・・
 プロフェッショナルに飛躍するためには、自己革新をどのようにイメージし、アプローチしていけばよいのか。
 ここで、一つの自己革新モデルを提示しましょう。まず、第一に認識すべきことは、市場のニーズ及びクライアント企業のニーズです。プロフェッショナルとしての市場価値は、市場及びクライアント企業のニーズを具現化しうる能力を備えているかどうかで決まるともいえます。ITの活用により、企業活動における製品やサービスのQCD(品質・コスト・納期)の向上を追求し、クライアント企業が解決したい経営課題を解決しうる能力を発揮しうるかどうかです。
 ニーズの把握と市場価値とは、ペアで考える習慣を身に付けましょう。市場やクライアント企業のニーズとプロフェッショナルの能力との間で大きなギャップがあると、コミュニケーション以前の問題として、プロジェクトそのものが成り立たなくなります。
 世の中の潮流を見極める・・

 第二に認識すべきことは、世の中の潮流をしっかりと認識することです。世の中のライフスタイルの変化、消費者の好みの変化、価値観の変化、企業のビジネス形態の変化(アウトソーシンググローバル化現地生産化、など)、各業界標準規格動向など、マクロな視点で「変化(Change)」を常に、「継続的に問題意識を持ってウォッチングする習慣」を身に付ける必要があるということです。
 
 世の中の流れを見極めることができない思考力では、市場、クライアントのニーズにマッチする提供価値はアウトプットできません。
 コア・コンピタンスを見極める・・

 第三に認識すべきことは、自己の強み、弱みを把握することです。ここでは、自己のコア・コンピタンス(核となる強み)を見極めることがポイントです。特に、自己にとってのライバル(競合)の認識が大きな飛躍につながります。ライバル(競合)の認識は、内なるライバルと外部のライバルからなります。
 内なるライバルでは、例えば、自己のリーダーシップ不足やコミュニケーション能力の不足も、弱みであると同時に、内なるライバルとして捉えれば、これらの能力不足を克服することが、ライバルの撃退につながるわけです。あるいは、性格的な弱みとして、マイナス思考でものごとを考える傾向があれば、これも内なるライバルとして認識すれば、プラス思考へのチェンジという克服すべき目標の一つとしてクローズアップされます。弱みを強みに変える、あるいは、強みを一層強化するロード・マップを描く必要性を認識することが大切です。
 ただし、様々な弱みは、一度で短期間に解消することは不可能です。ここでは、「チリも積もれば山となる」の発想へのシフトが重要です。知識の蓄積・学習の反復プロセスである能力開発では、時間が絶対的要素となります。
 人間の能力は、大宇宙に匹敵するぐらいの奥深い可能性を秘めたものです。いわゆるダーウィンの進化論によれば、古代の原人の時代から、数百万年の時間の経過を経て、人間のDNAが突然変異と自然淘汰を繰り返し、環境の変化に適応できるものだけが生き残ってきました。驚異的な進化を遂げてきたDNAを有する21世紀の地球生命体は、革新的な未踏の世界に突入しようとしています。
 道端の石ころの一つ一つがどれ一つとして同じ形のものがないように、人それぞれが持つ能力の可能性にも、必ず、光る個性で覆われたパワーがあるものです。これをいかに早く見つけ、時間をかけて丹念に磨き、光る玉に替えていくかという夢を持つことが自己革新のエネルギーの源泉になります。
 自己革新の根源のパワーを何に持ってくるかは、自己の価値観やものの考え方の違いにより、一意に決めることはできませんが、人類の科学文明の進化の過程を振り返ると、かなえたい夢を現実化するアプローチによって、様々な分野で、技術革新が行われ、現在の文明のレベルに辿り着いたといえます。
 また、好きこそ物の上手なれという言葉がありますが、自分の仕事に興味を持ち、好きになることが自己革新の第一歩といえるでしょう。
 自己の将来像をイメージする・・

 第四に認識すべきことは、自己の将来像をイメージし、現状とのギャップを認識することです。このギャップをいかに小さくし、解消していくか、ここでプロフェッショナルを目指したロード・マップを、オーダーメイドで自分で作成しましょう。作成したロード・マップは、同僚や親しい友人、上司、あるいは、機会があれば、その分野の専門家の意見を仰ぎ、客観的な批評を得ることが、より、現実的かつ熟した(matured)ロード・マップとしてこなれたものになっていくでしょう。
 ここで、各種のスキル標準といったような出来合いのロード・マップを自己に押し付けても定着しません。自己の土壌に合った種を選び、自分の手で、日々、水をやり、大切に育てていくことで、青い芽が出て、枝葉を青くまぶしい大空にのびのびと広げた大樹に育ちます。ロード・マップの作成は、時間をかけて、十分に納得できるレベルまで落とし込みましょう。
 ここでは、短期的視点(1年から2年のスパン)と中期的視点(3年から5年のスパン)、長期的視点(5年から10年のスパン)の3つのステップに区切って、各ステップでのアウトプット(成果)を明確にし、メリハリを付けたイメージを形成することがポイントです。
 人は努力を続けていると、ある時、突然、視界の開けた高みにたどりつくものです。自分で丹念に作り上げた地図(ロード・マップ)を頼りに、アナログ・ロードの連続(安定)な山道から、デジタル・ロードの不連続(不安定)な吊橋にさしかかり、そこを渡ると、新たな山に入り、その山に奥深く入っていくと、突然、地平線の見える青い海の視界が眼前に開けて、海が天まで昇ってくるような情景の中で、そよ風が全身の汗を吹き飛ばしていったという爽快な状況に出会うことが期待できるものです。
 連続(安定)は不連続(不安定)に連なり、不連続(不安定)は、更なる連続(安定)につらなり、これらのアナログの世界とデジタルの世界の連環サイクルで構成されたモデルが能力開発そのものであるのです。新たな世界に踏み込む決意をして、危なっかしい吊橋を渡るか(1)渡らないか(0)というデジタル・ロードの選択の意思決定は自分で行う状況に追い込む必要があります。自分の辿っている道は果たして目指すゴールに達するのだろうかと日々悩みながら能力開発に取り組んでいる読者もいることでしょう。ここでは、自己責任自己推進のスタンスがロード・マップの実践と完遂には不可欠であるといえるでしょう。
 ところで、第一ステップの短期的スパンにおける目標のアウトプットを設定したとしましょう。このステップの最終時期に達した時、当初の目標が達成されているかどうか、自分で評価し、場合によっては、周囲の同僚や友人、上司から意見を伺ったり、評価してもらうことも必要です。
 あるいは、各種の資格試験などにチャレンジすることで、客観的な評価を得ることも可能です。辿ってきた道を振り返り、反省し、目標をクリアできなかった場合は、要因分析を行い、アプローチを変えたり、目標の見直し・変更を行うことも必要になってくるでしょう。
 このように、各ステップごとの区切りでは、モニタリングによる明確な評価が必要であると同時に、軌道修正をかけるスパイラルアプローチが有効です。目標を掲げていれば、日々の努力の積み重ねによって、次第に到達地点に収束してくるものです。まず、成し遂げようという意欲と、必ず達成できるという信念がロード・マップを価値あるものに転換させていくでしょう。
 多忙な日々の中で、能力開発に打ち込める時間を作る意識付けが自己成長の環境作りの出発点といえます。ドイツの大詩人ゲーテは、才能は孤独の中で創られるといっています。小刻みな時間を有効活用したタイムシェアリング管理により、自己学習の時間作りの習慣付けを定着させることがポイントであるいといえます。

☆ プロフェッショナルとしての差別化アプローチ
 プロフェッショナルとしての差別化を図るために、能力開発では、コミニュケーションンスキル、専門性、バランス感覚、センス、実行力、調整力、マネジメント能力、革新能力の向上に注力しなければならないでしょう。
 プロフェッショナルに飛躍していくためには、ライバルに負けないという内なるキーワードにより、チャレンジ精神の発揮が不可欠です。ここでは、能力を客観的に自己及び上司が評価できる仕組みが必要です。自己の目標レベルと上司の目標レベルのすり合わせを十分に行い、双方が納得できるように十分なコミュニケーションの場を設けることで、能力開発は組織的に機能します。
 体系的な能力評価とスキル・マネジメントの仕組み・・

 評価の仕組みでは、業務軸、業界軸、専門的な技術軸、及び人材の資質軸をベースに4次元でマトリックス化し、体系的に多角的な視点で評価できる仕組みが必要でしょう。
 プロフェッショナルに要求される能力は多岐にわたりますが、T字型あるいはπ型の能力開発のアプローチが有効でしょう。得意分野はコア・コンピタンスとして強化することで、差別化できるプロフェッショナル能力を獲得することができます。
 T型では、例えば、ネットワーク技術に特化してチームの第一人者を目指すことで、市場価値の向上も期待できます。
 π型では、ネットワーク技術と企業会計の知識にフォーカスし、コア・コンピタンスの2本柱として、ロード・マップを描く能力開発のアプローチも考えられます。
 能力評価とスキル・マネジメントの仕組みでは、業務軸、業界軸、技術軸、資質軸からなる人材データ・ベースを活用します。
 ここでは、プロジェクトマネジメント能力に優れた人材、企業会計や生産管理の業務に精通した人材、販売管理に長けた人材、Web技術、セキュリティ技術、ネットワーク技術を十分に活用できる人材というように、専門領域の区分で人材データ・ベースを構築します。さらに、業界分野ごとに人材スキルを区分します。製造業、流通業、金融業といったように細分化し、セグメント別に分類して、人材をデータ・ベース化します。
 
 例えば、製造業では、自動車、製薬、食品、繊維、鉄鋼、機械、といったグループで、各分野でのプロジェクト経験やスキルのレベルを管理します。
 これにより、自社の人材資源における強み、弱みを明確にし、人材調達戦略、技術調達戦略を練ることが可能になります。機動的なプロジェクト活動を支えるためのナレッジ・マネジメントを実践していくナレッジのインフラが組織的かつ体系的に形成されます。

☆ ことわざはビジネス戦略の指南の宝庫
  −36マトリックス・アナリシス・ベクトル−
 ビジネス戦略は、古今東西、様々な手法が編み出されてきています。その中でも、ことわざは、ビジネス戦略を端的な一行のキーワードで表現した人類の叡智といえるものです。プロフェッショナルを目指す者にとって、ことわざは、人生最高のみちしるべとなるでしょう。
−36・アナリシス・マトリックス・ベクトルとは−
ここで、いくつか紹介しましょう。
 急がば回れ・・
 急いで事を実行しようとするなら、危険な近道よりも、回り道でもして安全な方を選択するのが賢明であるという意味です。
 石橋を叩いて渡る・・
 石でできた橋でも、棒で叩いて橋が壊れていないことを確認して、用心を重ねて渡るように、物事の実行には、慎重さがもとめられるということです。石橋を叩いても渡らない経営者もいますが、一度、スタートを切れば、後戻りはできません。実行しないことが最も賢明であるという中国の名将の戦略もあります。じたばたせず嵐が過ぎ去るのをじっと待つのも手法の一つです。

 彼を知り己を知れば百戦危うからず・・
 −36・アナリシス・マトリックス・ベクトル(36 ANALYSIS MATRIX VECTOR)−
 勝負では、相手を知るだけでは勝てません。自己の能力を客観的に分析し、相手の能力とのギャップ分析を多角的に行って、シナリオプランニングを用意する必要があります。戦略の基本は、戦いに関係するあらゆるファクターを洗い出して、外部環境、内部環境、機会、脅威の4象限、過去・現在・未来の3時間軸、分析、予測、選択の3次元からなる4象限×3次元時間軸×3次元アクションからなる36マトリックスのシナリオの組み合わせを徹底的に行うことが大切です。
 私は、この手法を「36・アナリシス・マトリックス・ベクトル(36 ANALYSIS MATRIX VECTOR
と呼んでいます。
 柔よく剛を制す・・
 柔軟な思考力、行動は、かえって、強引に出てくるやり方に勝るということです。硬直化したスタッフやトップ、組織体は、敵に侵入の機会を与えるものです。状況変化への迅速かつ柔軟な対応ができる人材、組織でなければ、環境変化の脅威に埋没してしまうことになります。

 創業は易く守成は難し・・
 ビジネスは思いつきで事業化するのは容易ですが、一旦出来上がった事業や企業を受け継いで、維持していくことは、創業時の苦労に比べると、一段とパワーが要求されるものであるということです。事業は失敗すれば、大きな負債を抱え込みます。特に、ベンチャービジネスでは、このあたりの理屈が認識できるかがどうかが事業成功のターニングポイントになるでしょう。
 歴史は繰り返す・・
 ビジネス戦略で迷った時は、先人の智恵や歴史書を紐解いてみるのも一法でしょう。人類のDNAは、進化を遂げてきていますが、思考パターンは類型化でき、視点を変えて長い人類の歴史を振り返ってみれば、そこで、すばらしい解を発見できることもあります。

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