バランス・スコアカードと戦略手法

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☆ 経営資源と企業環境を総合的に把握するSWOT分析
 バランス・スコアカードの戦略的アプローチでは、SWOT分析の併用が有効です。
SWOT分析では、企業を取り巻く外部環境(政治、経済、為替変動、業界、競合状況、顧客など)と内部環境(人、モノ、金、情報、組織、ビジネスプロセス、チャネル、経営状況など)を強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威,(Threat)の4つのカテゴリーで区分し、要因分析を行います。自社の強みを活かした事業機会は何かを探り、自社の強みによって脅威を回避できないかを検討します。また、機会に乗じて弱みを強みに転換する戦略を検討できます。さらに、脅威と弱みが鉢合わせになるリスクの回避策を練ります。このように、経営戦略策定において、SWOT分析は事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図るうえで不可欠な手法です。

☆バランス・スコアカードでマイホーム計画を立てる!
 
 頭脳トレーニングに役立つものには、ロジカル・シンキングやマインド・マップなど、様々なものがあります。 これらは、優れたツールではありますが、そこから体系的な戦略を生み出すには弱い側面を持っているといえるでしょう。
 
 バランス・スコアカードは、ハーバードビジネススクールのロバート・S・キャプラン氏らが開発したビジネス戦略手法ですが、環境分析の手法であるSWOT分析といっしょに使いこなせば、戦略思考を飛躍的に高めることができます。
「万物は流転する」と唱えた古代ギリシャの哲学者であるヘラクレイトスは、この世の秩序を支配する原理は、戦いと争いであり、物事の本質は隠れるのを好むとも言っています。ビジネスは、事業環境変化と競争にいかに打ち勝てるアイデアを生み出しうるかにかかっています。アイデアは、可視化されなければ、説得力を持たず、衆知を集めて戦略として実行することができません。
 バランス・スコアカードは、戦略の可視化にフィットするすばらしい機能を持っています。しかも、ビジネス戦略の策定だけに限らず、人生設計やライフスタイルの見直しの際に、優れた効果を発揮する戦略ツールにもなります。
 
 たとえば、マイホーム計画を立てるには、資金計画を練り、物件を調査し、パートナーや知人の意見、不動産会社などの話をよく聞いた上で、ああでもない、こうでもないといろいろと思いをめぐらしながら、時間をかけて購入物件の選定を行うのが一般的でしょう。
 バランス・スコアカードでマイホーム計画を練ることができるようでしょうか。答えはYESです。バランス・スコアカードでは、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習・成長の視点からなる4つに視点にフォーカスし、戦略を練ります。
 パートナーは、顧客の視点に関わってきます。資金計画は、財務の視点です。物件探しは、業務プロセスの視点です。知人や不動産会社から得る情報は、学習と成長の視点に関わってきます。
 
 ここで、これら4つの視点において、各々、KGI(最終目標:KEY GOAL INDICATOR)を達成するためのアクション・プランを評価するパラメーターとして、KPI(業績評価指標:KEY PERFORMANCE INDICATOR)を設定する必要があります。PDCA(PLAN、DO、CHECK、ACTION)のC(CHECK)に当たるステップで、KPIが効果を発揮します。
 
 これら4つの視点において、機会・脅威・強み・弱みという内外の環境分析に役立つSWOT分析の手法を組み合わせて、戦略シナリオとしての「戦略マップ」を練るというプロセスを踏むことによって、バランスのとれた戦略的なアクション・プランを見出すことができます。
  
 このように、バランス・スコアカードは、人生設計やライフスタイルのチェンジに役立つ戦略思考ツールとなります。
☆ バランス・スコアカードとCRMによるアプローチ
 顧客消費プロセスへの浸透 
従来の商品中心のマス・マーケティングは時代遅れになって来ています。顧客中心のリレーションシップ・マーケティングCRM)やワン・ツー・ワン・マーケティングへの転換が事業の成否を決める時代に入っています。顧客への個別対応と信頼関係の強化がマーケティングの重要課題になってきています。
 特定の顧客のセグメントニーズに着目して掘り下げ、そのニーズに合った商品やサービスを開発、提供することにより、顧客との緊密な信頼関係を築くことがCRMでは重要です。顧客の消費プロセスに深く入りこむことにより、顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)に接点をもつことができます。
 顧客との接点のチャネルにおいて、顧客価値を最大化するためには、統計的分析手法により、顧客の購買行動を徹底的に分析することがポイントになります。
 顧客ロイヤルティ向上へのアプローチ
 さらに、顧客に対し、ロイヤルティ向上のためのマーケティング活動が要求されます。
CRMの実践においては、新規顧客の開拓、既存顧客との取り引きの拡大及び維持管理が必要です。既存顧客に対しては、既に購入している商品やサービスの頻度・レベルを上げるアップグレードのアプローチがよく用いられます。また、既に購入した商品やサービスに関連した他の商品を販売するクロスセリングの手法も使うと効果的です。 
 特に、既存顧客の維持管理においては、既存顧客のライフサイクル・バリューの見極めが重要であり、維持管理コストを勘案した収益性の見通しを慎重に予測する必要があります。
 顧客行動の分析や購買行動パターン発見には、データウエアハウスによる科学的な分析手法を活用することが効果的です。
 さらに、顧客の購買行動データの収集においては、多様なデータチャネルから情報を補足する必要があります。たとえば、顧客との接点であるコールセンター、クレジットカード、Webサイト、携帯電話、販売員などが上げられます。
 CRMの情報システム構成としては、一般的に、顧客との接点をカバーするフロント・オフィス、顧客データベース管理及びデータ分析管理を受け持つミドル・オフィス、そして、業務データをカバーするバック・オフィスの3つの要素からなります。
 
CRMとKMの融合
 
 今後の方向として、CRMとKM(ナレッジ・マネジメント)との融合のシステム形態が重要になってくるでしょう。複雑化する事業環境とニーズの変化の激しい顧客に対応したニュービジネスを開拓し、創造的な新商品やサービスを提供していくためには、顧客情報の体系化、再利用化、学習化を通じて、直接的な価値を生み出せるような知識のマネジメントの仕組みを構築していくことが大切です。
☆ バランス・スコアカードにおける業務プロセスの視点とTOC、SCM
 TOC、SCMは、製造業、流通業を始め、あらゆる業界に浸透してきている経営手法の大御所です。
 SCM(サプライチェーン・マネジメント)は、企業内外の垣根を越えて、供給活動におけるモノの流れ、情報の流れ、キャッシュの流れを価値連鎖として、参加企業間で最適に一元管理するものです。
 キャッシュフロー経営に転換していくために有力な戦略的経営管理手法として、脚光を浴びています。
 SCM(サプライチェーン・マネジメント)のアプローチは、全体の効率を阻害する要因であるボトルネックを企業活動の中で発見し、改善を加え、全価値連鎖の同期化、スピードアップを部門間、企業間の枠を越えて行う仕組みを構築することにあります。
 これにより、企業活動に関わる情報のシームレスな共有化を図りながら、トータルリードタイムの短縮化、在庫削減、売り上げ機会損失の低減とキャッシュフローの最大化を狙うことができます。
 TOC(THEORY OF CONSTRAINTS)についても触れておきましょう。この理論はイスラエルのエリヤフゴールドラット氏が提唱したもので、その著書である「ザ・ゴール」の小説仕立ての解説で一躍脚光を浴びました。
 最初に、サプライチェーン(供給連鎖)を構成するメンバーである各々の企業、ミクロ的にみると、部門あるいは製造工程において、プロセス・チェーン間の同期化を阻害しているサプライチェーン全体の供給スピードを下げてしまうようなボトルネックを発見します。そして、一旦、全てのプロセス・チェーンをネックのレベルに同期化させます。次に、ボトルネックを改善します。これらのステップを繰り返し、プロセス・チェーン全体の最適スピード化を図っていく理論です。ネックを拡張して捉えると、経営全般に適用できます。
 企業活動、生産活動をチェーンの連鎖にたとえたサプライ・チェーン理論(マイケル・E・ポーターが提唱)では、ここの構成要素の活動がチェーンに相当し、スループットはチェーンの強度に対応します。企業活動、生産活動のチェーン全体の強度は最も弱い部分の強度で決まります。すなわち、スルーップットの増大はこの弱いチェーンである制約条件の発見、強化を図ることにあります。
 TOCにおける企業のゴールの目指すものは、制約条件に着目して、販売時点でのスループットの最大化と在庫及び業務費用の最小化を達成することです。

☆ バランス・スコアカードにおける業務プロセスの視点とコンカレント・エンジニアリング(CE)
 源流段階にフォーカス 
 製品コンセプト及び目標コストを決定する源流段階のプロセスにおいて、開発、製造、物流、販売及びサービスの各部門の垣根を取り払い、同時並行処理による全部門一体の協調活動体制のもとに俊敏な製品開発を進めることをいいます。
 製造コストの70〜80%は製品企画段階で決まると言われています。すなわち、川下の製造段階、あるいは、調達段階でコストダウンを図ろうにも、改善の余地は限られてくることになります。
 コスト、品質を源流の開発段階で、前倒しで作り込むことにより、試作回数の削減による試作コストの大幅な低減を狙うことができます。さらに、製造の容易性の評価や現有設備とのマッチングの検討といった最適な工程設計や生産設計は、製品構造や形状が確定する前に、関連部門の担当者が同じ土俵で進めていくことが大切です。
 トータルコスト・マネジメントの視点
 大競争時代ではコストは事業の生命線です。今後は、廃棄及びリサイクル化まで含めた製品ライフサイクルコストを一元的にマネジメントできるような情報化の仕組みを構築していくことが環境経営にシフトしていくためにも必要です。
 特に、製造原価のみでなく、ディーラー・マージンなどの販売コスト、開発コスト、ユーザー・コスト、廃棄コスト、リサイクル・コストを、コスト要因が確定する製品企画及びマーケティングの段階で、しっかりと把握することが重要です。ここで、留意すべきことは、必要コストを積み上げてコストをはじくやり方は顧客主導の時代には受け入れられないということです。顧客が主役の市場においては、まず市場価格ありきなのです。市場価格から目標利益を引いた残りの中で必要コストを積み上げ、事業の規模、人員、設備などを計画していかなければ競争優位に立てません。
 このような引き算の発想による事業戦略、製品戦略のもとに、経営資源の再配分と最適化を図りながら、コンカレント・エンジニアリング活動を進めていくことが企業活動のキーとなります。
 企業経営における収益性、効率性、安全性、生産性、成長性の視点は、バランス・スコアカードにおける財務の視点のKPIに使われます。
 バランス・スコアカード戦略では、PDCA(PLAN、DO、CHECK、ACTION)のサイクルをしっかり回すことが大切です。特に、財務会計の視点で、経営の評価を数値でモニタリングすることが重要です。 
  財務諸表を使って分析することにより、経営分析の切り口をうまく使いこなせば、会社経営の実態がくっきりと見えてきます。経営分析の基本情報は、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書の3つから収集できます。
 財務諸表の数値をいろいろな切り口で加工して計算すれば、各種の有益な経営判断データを導き出すことができます。業界・競合・時系列・目標値の比較によって分析することも有効です。業界情報、競合他社情報、数年間の過去の経営数値など、各種の経営情報をベースに、経営指標を相互比較することによって、事業の経営レベルを把握することができます。


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