バランス・スコアカードとは−BSCの仕組み

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バランス・スコアカードは、経営戦略を策定し、業績評価に役立つ戦略マネジメントのビジネス戦略手法です。企業経営に抜群なパワーを発揮してくれます。

 バランス・スコアカードとは、ハーバードビジネススクール教授のロバートS.キャプラン教授と、コンサルティング会社のデビットP.ノートン氏が編み出した戦略的マネジメントシステムです。このビジネス戦略手法の特徴は、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点からなる4つの視点をバランスよく採用し、業績評価をスコアカードで行う点です。

これらの視点を4つの全方位型に絞り、「四眼レフ経営」を実践できる点が、その存在価値の輝きを放っている理由です。一眼レフカメラは、非常に写りのよいクリアな写真を提供してくれます。バランス・スコアカードは、一眼レフカメラを4つ集めた「四眼レフカメラ」といえるぐらいに経営がくっりきとすばらしくよく見えてくるものです。
 
 なぜ財務の視点なのでしょうか。お金を使って、いくら優れた製品を世に送り出しても、その企業が儲からなければ、いずれ倒産してしまいます。財務基盤がしっかりしていて、資本市場の信任を得ることが企業存続の絶対条件です。その意味で、バランス・スコアカードは、財務の視点を採用しています。

次に、なぜ、顧客の視点なのでしょうか。性能や機能が優れていて、いくら見栄えの良いデザインを有していても、使い勝手が悪い製品や、アフターサービスが悪い製品には、顧客は見向きもしないでしょう。ここでは、顧客のニーズにマッチする製品コンセプトを明確にして、適正な価格で顧客に購入してもらえるかがポイントです。顧客の視点は、企業活動の存在価値を問うものでもあるのです。

 3つ目の視点である業務プロセスの視点についてはどうでしょうか。業務プロセスは、製品やサービスの「品質」・「コスト」・「納期」のレベルを左右するファクターを備えています。これら3つのファクターは、ものづくりの絶対条件といえるものですが、いずれかひとつでもレベルが下がると、製品・サービスは顧客のニーズを満足できなくなります。

4つ目の視点である学習・成長の視点は、企業組織を構成する人材の質に関わってくるものです。人材は、人財ともいわれるように、組織学習の繰り返しによって優秀な人材を育成していくことは、企業の永続性を左右するともいえます。

 バランス・スコアカードの4つの視点は、時間軸のゾーンが異なっています。財務の視点は、経営成績の結果として、例えば決算書のような経営数値で評価されるため、過去の視点といえるものです。顧客、業務プロセスは、現在進行形の活動状況に対するものであり、現在の視点といえます。

ここでは、顧客、市場、競合を分析し、最適な業務プロセスを編み出します。学習・成長の視点は人材の育成及び改革能力の強化を図るものであり、未来の視点といえます。これら4つの視点同士は、過去、現在、未来からなる全ての時間軸を備えており、見落としなく、業績評価をバランスよく行える特徴を持っています。

 ここで、新たな5つ目の視点として、たとえば、リスクの視点や環境の視点を加えることもできます。ここは、企業の特性や事業内容に応じて最適な視点を加えることにより、バランスのとれたコントロールができる企業経営を実現できます。

 バランス・スコアカードでは、業績評価指標にKGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)というものを採用しています。
KGIは、企業における経営の最大目標を数値で評価するものです。「利益率10%達成」、「売上高2倍の必達」というように、経営の目標数値として資本市場に公開されます。

KPIは、KGIを達成するために具体的なアクション・プランにおいて、業績評価指標として詳細に細分化します。経営のモニタリング・パラメーターといえるものです。KPIは、4つの視点において、相互に整合性を持たせながら、各々に様々なものを設定します。それらの総和としてKGIの達成につながる必要があります。

財務の視点のKPIでは、売上高に比例して利益率も伸びているのか、低下しているのかをチェックします。毎月、どの程度、変化しているのか、目標値に対して、クリアしているのか、悪化しているのかをモニタリングします。KPIは、改革の実践の結果生み出された価値を目に見える形にしてくれます。経営的視点を用いて、時系列で価値やレベルを数値で評価するモニタリング(監視)の役割を担います。

 KGIの内容は、ビジネス改革の進捗具合や競合の状況、事業環境の変化に応じて、都度、軌道修正がかかります。それに伴って、戦略の変更が不可避となり、アクション・プラン及びKPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)の見直し・修正や、新規設定、組み換えが必要になってきます。すなわち、全社的なバランス・スコアカードの見直しが行われ、業績評価の枠組みの衣替えが行われます。

 KPIは、目標値を高く設定した場合、それを達成できれば、企業として大きな収穫を得ることができます。しかしながら、企業の実力に見合わないような背伸びした目標値をKPIに設定すると、場合によっては、企業は暴走します。たとえば、無茶な販売ノルマを達成するために、社員が売上の水増しを行うケースがよくあります。

 このように、KPIは、諸刃の剣ともなる非常にナイーブな経営のモニタリング(監視)のツールなのです。KPIをどのような指標として選択するか、その数値をどのようなレベルに決めるかを検討する際には、競合と自社のギャップ分析だけではなく、関連部門間の十分な調整のもとに、企業の受容力や真の実力のレベルを様々な角度からよく見極めることが重要です。

 バランス・スコアカードに組み込んだ業績評価指標(KPI)が本当に現場で使いこなせる業績指標を選択できているか、事業環境変化に対応できないような意味のないものになっていないかチェックすることも必要です。

たとえば、競合のパフォーマンスが向上すれば、それに伴って、KPIの見直しが必要になります。あるいは、KGIが変更になれば、同時にKPIの修正軌道が必要です。KPIとは、KGIを達成するための具体的な推進指標ともいえ、親子の関係にあります。

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